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ファーストラインワーカー(現場作業員)を支えるデジタル技術とは

2019年4月にマイクロソフトがファーストラインワーカーの働き方改革を支援すると発表しました。
DX推進が加速している影響もあり、Microsoft社の発表は注目を浴びました。それでは実際に、どのような現場の支援を行おうとしているのでしょうか?今回はファーストラインワーカーを支えるデジタル技術について解説します。

ファーストラインワーカー(現場作業員)を支えるデジタル技術とは

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ファーストラインワーカーとは

ファーストラインワーカーとは、現場(小売、流通、建設、製造および医療業界)の最前線で活躍する従業員の呼称で、主にMicrosoft社が使用している用語です。

国内では人口減少と求人倍率の上昇による人手不足が問題視されていますが、ファーストラインワーカーは世界に25億人、日本に4,000万人も存在しており、労働人口の大きな割合を占めています。オフィスでPCを使用して働くインフォメーションワーカーと相対する言葉として使われています。

ファーストラインワーカーをめぐる課題

労働人口の大きな割合を占めるファーストラインワーカーは、さまざまな課題を抱えています。Microsoft社のアンケート調査結果によると、主に以下の3つが挙げられます。

労働力不足

小売、流通、建設、製造および医療業界では労働力不足の問題が発生しています。例えば建設業界では、職人の若者離れが起きており、後継者不足に悩む経営者が増えています。また、仕事量の多さや労働時間の長さで従業員が定着しないことが労働力不足の原因となっているのです。

建設業界の平均有効求人倍率は、2021年度に6.01倍と依然と高い数値を記録しています。新型コロナウイルス感染拡大の影響で有効求人倍率が下がっている中でも、人材不足の問題を抱えているのです。

このように労働力不足に陥っている業界では、長時間労働や低賃金などの課題を解決して働きやすい環境を実現していかなければいけません。

長時間労働

ファーストラインワーカーの現場では、紙ベースの非効率な書類作成作業からなかなか抜け出せません。紙ベースだと瞬時に求めている情報が探し出せなかったり、煩雑な作業の増加により人的ミスが起こりやすくなったりします。それらが仕事の効率化の障壁となり、その結果どうしても長時間労働となってしまいます。

働き方改革により、2019年4月から時間外労働の上限規制が施行されました。しかし、流通や建設の業界は対応できる状況ではなく、2024年4月から適用されることが決まりました。長時間労働の問題を解決して時間外労働の上限規制を守れる体制を整えていかなければいけません。

教育・研修体制が不十分

Microsoft社の調査結果では、ファーストラインワーカーは教育・研修体制が不十分であることに悩んでいます。現場による実践を通して業務を把握しなければならず、効率的な学習や研修ができないと悩んでいるのです。

その結果、不明点や疑問点の解決に時間がかかったり、現場の非効率な業務に誰も気づいていなかったり、問題解決を他人に任せたままにしていたりなどの問題が起こる恐れがあります。また、現場の業務が属人化してしまうと「誰に聞いたらよいのか?」「どこを探したらよいのか分からない」という状況に陥ります。

現場の業務について学びたいのにも関わらず、教育・研修体制が整備されていない状況を改善しなければ、従業員の不満が蓄積され、職場環境も悪化してしまいます。

ファーストラインワーカーを支えるDX(デジタルトランスフォーメーション)

ファーストラインワーカーで起こっているさまざまな課題は、DX推進で解決していけます。業務効率化や生産性向上、離職率減少などの課題に対して、すでにDXによる改革が始まっています。DX推進を行うことで、具体的にどのような効果が得られるのでしょうか?ここでは、DX推進のメリットを紹介します。

作業効率アップ

ファーストラインワーカーが働く業界とXR(AR・VR・MR)は非常に相性が良く、作業効率化のために多くの企業が導入しています。

例えば建設業界では、AR(拡張現実)デバイスの導入が始まっており、両手で現場作業をしながら仕様書を確認して作業効率を上げています。

また、MR(仮想世界と現実世界を融合)技術を活用した作業工程の安全性の確認を行う企業も出てきました。現場のDX推進に取り組めば作業効率がアップして、働き方改革の時間外労働の上限規制に対応していけます。

遠隔による作業支援

ファーストラインワーカーの働き方改革に寄与するXR(AR・VR・MR)は、遠隔支援にも効果を発揮します。デバイスを装着した作業員の視界情報を共有することで、遠隔で作業支援できるようになりました。現場にいない人と視界を共有することで、リアルタイムで的確なアドバイスが受けられます。

作業する上で困ったことがある場合、ヘルプを出せば遠隔地にいるベテラン作業員からアドバイスが受けられます。この仕組みは作業効率アップにも効果を発揮します。

作業員の教育・育成

ファーストラインワーカーは現場で実践を積まなければスキルが磨けないという悩みを抱えていますが、この課題をXR(AR・VR・MR)で解決していけます。

例えば、バーチャル空間に訓練場を表示させれば、場所や時間を問わずに研修が実施できます。これまで実践を通じてしか学べなかったスキルを自発的に学べます。この場合、研修センターに出向く必要はなく、スキルアップ研修や安全性研修が行えるため、トレーニングコストが抑えられたり繰り返し学べたりなど、さまざまな効果が得られることが注目を浴びている理由です。

DXツール、HoloLens 2の事例と効果

このように、ファーストラインワーカーのDX推進にはXR(AR・VR・MR)が効果的であるのは説明したとおりですが、その中でも特に注目を浴びているのがMicrosoft社の「HoloLens 2」です。HoloLens 2とは、どのように活用されるものなのでしょうか?ここでは、HoloLens 2の導入事例をご紹介します。

トヨタ:車両の塗装検査時間が4分の1に

トヨタ自動車株式会社では、塗装の品質を保証するために「塗料膜厚検査」を行っています。この検査では、塗装にムラがないかを確認できます。従来は車体に合う型紙を1から作成していました。型紙に開けた500カ所の穴に沿って計測器で塗料の膜厚を計測していたのです。この型紙を作成するのに1日程度かかっていました。

この塗料膜厚検査の作業効率化のために導入したのが、Microsoft社が提供するHoloLens 2です。HoloLens 2で車体に測定点を映し出すことで、型紙を作成する手間が省けました。これまで、2人1組で1日かかっていた塗膜検査を、1人で、しかもわずか4時間で行えるようになり、作業効率化とリードタイムの短縮に成功したのです。

長谷工:マンションの外壁検査業務を3割削減

株式会社長谷工コーポレーションは、MRを活用して「外壁検査業務」の効率化を行っています。マンションの外壁は劣化による剥離リスクがあるため、定期的な検査とメンテナンスが必要です。同社では、1人が図面を確認して、もう1人が外観の浮きやクラックを確認する2名体制で外観検査業務を実施していました。この作業を、HoloLens 2を装着することで1名体制に切り替えることができます。さらに、HoloLens 2であれば、不具合箇所を記録していけば報告書が自動生成されます。これにより、全体の作業時間が約30%も削減できることがわかりました。

労働者不足が深刻な問題となっている建設業界では省人化を実現していかなければいけません。同社は、業界の労働力不足に備えて生産性向上の取り組みを行って成果を出しています。

まとめ

ファーストラインワーカーの現場はデジタル化が遅れており、さまざまな課題を抱えています。このような課題はDX推進で解決できます。ファーストラインワーカーの支援に、DX推進に大きく貢献できるMicrosoft社のMRサービス「HoloLens 2」導入を検討してはいかがでしょうか。

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