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Azure NetApp Filesは、Microsoftが提供するクラウドネイティブなストレージサービスです。Azure Portalの管理コンソールを使って、わずか数分でオンラインストレージをセットアップし、SAP S/4 HANAのような業務用アプリケーションを稼働させる高性能のプラットフォームを構築します。
クラウドの利用が拡大する以前、財務会計アプリケーションを含む基幹系システムは、オンプレミスによる構築と運用が一般的でした。しかし、デジタルトランスフォーメーションの波及によって、クラウド化の動きが鈍かった金融業界においても、クラウドの基幹系システムが導入されるようになりました。
Azure NetApp Filesを使ってSAP S/4 HANAをクラウド上で構築すると、レスポンスを向上し、バックアップなどの機能を強化できます。
ここでは、Azure NetApp Filesの概要とともに導入メリットを解説します。またMicrosoftのパートナー企業であるJSOLのソリューションから、SAP S/4 HANAを導入するケースに焦点を当てて、ご紹介しましょう。
大企業の業務で扱うデータは膨大になり、ビッグデータの効率的な活用が求められています。データやファイル管理を担うストレージサービスは、ビッグデータ活用の核ともいえるシステムです。
オンプレミスで構築されていた基幹系システムのクラウドシフトが進行した理由には、以下の3つがあります。
このような背景を踏まえて、Azure NetApp Filesの概要を整理します。
Azure NetApp FilesはNetAppのONTAP(ストレージアプライアンス専用OS)を基盤とした、AzureネイティブなPaaS型ストレージサービスです。サーバー構築から運用時の障害やセキュリティの監視と対応まで、フルマネージドサービスを提供します。
「アーキテクチャ」「パフォーマンス」「管理」の3つの側面から特長をまとめました。
大企業では、部門ごとに利用しているOSやプラットフォームなどの環境が多岐に渡ることがあります。Azure NetApp Filesは複数のファイルアクセスプロトコル、WindowsやLinux(POSIX準拠)のアプリケーションをサポートしています。また、以下のようなプラットフォームのアプリケーションをAzure上で実行できます。
Windows環境(SMB:Server Message Block)で利用する場合には、Active Directoryは必須の条件になります。
SAP S/4HANAをAzureとAzure NetApp Filesで導入するアーキテクチャ例としては、高速なファイル共有プロトコルのNFS4.1を使って、SAP S/4HANAアプリケーションとデータベースをAzureのリージョンにマウントします。最大限の性能を引き出すためには、NFSは3.0ではなく4.1であることがポイントです。
このときデータベースのバックアップは、Azure BackupによってAzure BLOB Storageを利用するアーキテクチャを構成できます。Azure BLOB Storageによって、コストを抑えた迅速なバックアップが可能です。
SAP S/4HANAのようなアプリケーションのほか、Azure NetApp Filesは、データセンターのクラウド移行(リフトアンドシフト)や、AKS(Azure Kubernetes Service)などコンテナ環境の永続化ストレージにも対応します。
利用目的ごとのワークロード(処理負荷)に合わせて、Azure NetApp Filesにはパフォーマンスレベルから「スタンダード」「プレミアム」「ウルトラ」の3つがあります。ワークロードの費用は、利用するリージョンで異なります。
SAPのシステムでは高性能の入出力が求められるため、ワークロードとしては最も高性能である「ウルトラ」が推奨されています。
以下、3つのワークロードの概要です。
また、高いパフォーマンスを得るためには、ストレージのプールサイズを大きく設定することがポイントです。4TBより8TBのように、プールサイズが大きいほど高性能になります。
データ管理機能としてスナップショットやバックアップシナリオなどが充実し、Azure Portalと統合された操作性の高いエクスペリエンスを提供しています。開発者にとっては慣れ親しんだコマンドラインのインターフェースや、PowerShell、REST APIを利用することが可能です。したがって、Azureが提供している他のサービスと同様にシームレスに管理できます。
Azure NetApp FilesでSAP S/4HANAを導入ならびに運用するメリットとしては、次の3つがあります。
3つの理由のうちパフォーマンス面をピックアップして、Azure Premium SSDと比較してみましょう。
Azure Premium SSDは業務遂行に不可欠な性能を備えたソリッド・ステート・ドライブ ですが、SAP S/4HANAなどの基幹系システムにチューニングされたAzure NetApp Filesでは、起動時のメモリ展開所要時間、オンラインバックアップの所要時間、SAPクライアントコピーの時間でいずれも高速処理の結果が得られました(処理時間比率はAzure NetApp Files/Azure Premium SSD)。
「SAP on ANF性能検証結果の一例(S/4HANA 120GB構成)」
株式会社JSOL プラットフォーム事業部 資料より
SAP S/4HANAをAzure NetApp Filesで導入する場合には、Microsoftのパートナー企業に相談するとよいでしょう。というのは、AzureとSAPのシステムに関する知識とノウハウの双方に対して知見があり、豊富な導入実績があるからです。
Microsoftのパートナー企業のひとつである株式会社JSOLは、日本総合研究所から分離して2006年に設立した日本総研ソリューションズを前身としたトータル・サービスプロバイダーです。2009年に社名を変更して現在に至ります。Microsoft、NetAppとSAP on Azure NetApp Filesの導入と検証に実績があり、独自のノウハウを蓄積してきました。
2019年12月から2020年2月には、SAP S/4HANA 1909の機能と性能を検証し、以下のような項目から導入サービスを整備しました。
導入アセスメントは、SAP S/4HANAやERP6.0などSAPのシステム、Azure NetApp Filesを含むAzureのシステム導入を考えているお客さまに向けたインフラ導入アセスメントサービスです。Azure NetApp Filesに関するPOC(Proof of Concept:概念実証)も有償で提供しています。
Azure NetApp Filesの導入アセスメントは「機能検証」と「性能検証」がありますが、例えば以下のようなポイントで検証を行います。
機能検証
性能検証
クラウドによる基幹系、財務会計システムの運用は、社外の機密情報を守る目的や、非常に複雑で膨大なシステムであることから、クラウドへのリフトアンドシフトを保留にする企業も少なくありません。
しかし、クラウドの機能が進化し、セキュアな環境が提供されていること、コスト削減に大きな効果があることから、行政や金融業界においても基幹系システムのクラウド移行が進展しています。
Azure NetApp FilesでSAP S/4HANAをクラウドで運用すると、レスポンスやバックアップの面で快適な環境を実現します。既存のシステムをリフトアンドシフトする場合は、SAPシステムとAzureのいずれも実績があるMicrosoftのパートナー企業に相談することが第一歩になります。
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