ワークフローの自作を考えているものの、どのようにつくればよいのかと悩んでしまうケースは少なくありません。ワークフローの自作は可能ですが、いくつか大切なポイントを把握しておく必要があります。
本記事では、ワークフローの自作が可能かどうか、つくり方のポイントや注意点などについて解説します。
ワークフローとは何か
ワークフローとは、業務の流れを指します。また、業務の流れを分かりやすく図にしたものも、ワークフローと呼んでいます。
企業における業務の多くは、一定のルールのもと進むのが一般的です。また、明確なルールが存在していなくても、慣習で一連の流れが決まっているケースも少なくありません。
例えば、仕事で使う備品を発注するケースでは、担当者が申請を行い、上司や該当部署の責任者が申請書をチェックし、最終的に総務部門が発注を行います。この流れこそ、ワークフローです。
企業が 業務改善 を進めるにあたっては、ワークフローの作成や見直しが欠かせません。ワークフローで業務における一連の流れを可視化すれば、省ける無駄を明確にでき、業務負担の軽減や効率化の促進につながります。
ワークフローシステムとは何か
ワークフローシステムとは、企業内の業務プロセスを電子化し、効率的に管理・運用するためのシステムです。業務の見える化や自動化によって、無駄を省き、生産性を向上させます。
ワークフローシステムの主な機能
ワークフローシステムには、業務効率化を支えるさまざまな機能が搭載されています。
主な機能として、まず
申請・承認プロセスの自動化
が挙げられます。これにより、申請者がフォームを提出すると同時に、承認者に通知が送信され、スムーズな業務の進行が可能です。
次に、 タスクの進捗管理機能 です。この機能を使えば、業務の各段階での進捗をリアルタイムで確認でき、遅延の防止や迅速な問題解決に役立ちます。
また、 文書管理と保管 も重要な機能の1つです。全ての書類や履歴がシステム上に保存されるため、過去のデータを簡単に検索・閲覧できる他、情報の紛失や改ざんのリスクも軽減されます。
ワークフローシステムを導入する目的
ワークフローシステムの導入目的は、
業務効率化を図ることにあります
。
具体的には、申請・承認手続きの迅速化や文書保管の最適化を通じて、作業の無駄を削減し、全体的な生産性を向上させることが可能です。
申請
従来、申請業務は紙やメールで行われることが多く、進捗確認や手続きの遅延が発生しやすい課題がありました。
ワークフローシステムを導入することで、 申請内容が自動で記録され、即座に関係者に通知されるため、手続きがスムーズになります 。これにより、業務の停滞が減り、迅速な対応が可能になります。
承認
承認プロセスもワークフローシステムによって効率化されます。
従来の手法では、担当者が不在の場合に承認が滞ることもありましたが、システムを導入すれば 承認フローが自動化され、担当者がどこにいても承認作業が可能 です。さらに、承認履歴が記録されるため、透明性が向上し、不正を防ぐことにもつながります。
文書保管
文書の管理もワークフローシステムの導入によって大きく改善されます。
作成された書類は自動的にデジタル保管され、 必要なときに迅速に検索・閲覧が可能です 。
その結果、紙の書類管理に伴う紛失や情報漏えいのリスクを軽減し、セキュリティ面でも安心して利用できます。
ワークフローシステム自作可能な方法6選
ワークフローシステムは、市販のツールを導入せずとも、自作することが可能です。ここでは、コストを抑えながら効果的にワークフローシステムを構築できる6つの方法を紹介します。
それぞれのツールやプラットフォームには特徴があり、自社のニーズに合ったものを選択することが重要です。
①Microsoft Excel
Microsoft Excelは、手軽に始められるワークフロー構築ツールとして人気です。
ExcelのマクロやVBA(Visual Basic for Applications)を活用すれば、
シンプルなワークフローを自動化できます
。
例えば、申請書のテンプレートを作成し、データ入力と自動計算を組み合わせることで、手作業を大幅に削減できます。また、Excelは多くの企業で使用されているため、導入に際して新たな学習コストがほとんどかからない点も魅力です。
ただし、大規模なワークフローや複雑なプロセスには向かない場合があるため、用途を見極めて活用することが求められます。
②Googleフォーム
Googleフォームは、無料で利用できるシンプルなツールでありながら、効果的なワークフロー構築が可能です。
フォームを作成して申請を受け付けると、自動的にスプレッドシートにデータが記録されます。このスプレッドシートをもとに、承認や進捗管理を行うことができます 。
また、Googleのスクリプト機能を活用すれば、メール通知やデータの自動処理なども可能です。クラウドベースであるため、どこからでもアクセスできる点も大きなメリットです。
ただし、複雑なカスタマイズには一定のプログラミングスキルが必要となることがあります。
③OSS
オープンソースソフトウェア(OSS)は、カスタマイズ性が高く、コストを抑えてワークフローシステムを構築したい企業に適しています。
例えば、ProcessMakerやBonita BPMなどのOSSは、 基本的なワークフロー管理機能を無料で提供しており、自社のニーズに合わせて柔軟に変更できます 。
OSSを利用することで、独自の業務プロセスに合ったワークフローを構築できますが、導入や運用には一定の技術力が必要です。サポートが限定的な場合が多いため、トラブル発生時の対応力も求められます。
④Microsoft Teams
Microsoft Teamsは、コミュニケーションツールとしての機能だけでなく、ワークフローの自作にも活用できます。 Teams内でチャットベースの承認フローを作成でき、タスクの進捗をリアルタイムで確認できます 。
さらに、Power Automateとの連携により、より複雑な自動化プロセスを組み込むことも可能です。日常的に利用しているチャットツールと連携させることで、業務の中断を最小限に抑えながらワークフローを効率化できます。
ただし、Teamsを効果的に使いこなすためには、適切な設定やユーザー教育が必要です。
⑤Power AppsとPower Automateの組み合わせ
MicrosoftのPower AppsとPower Automateを組み合わせれば、柔軟かつ有力なワークフローシステムを構築可能です。 Power Appsを使って独自のアプリを開発し、そのアプリで収集したデータをPower Automateで自動処理することで、複雑な業務プロセスも効率化できます 。
この組み合わせは、カスタマイズ性が高い一方で、直感的な操作性を備えているため、プログラミングの知識がなくても利用可能です。また、Microsoft 365環境との親和性が高く、既存のシステムにスムーズに統合できます。
⑥SharePointとPower Automateの組み合わせ
SharePointとPower Automateを活用することで、 ドキュメント管理とワークフローの自動化を同時に実現できます 。
SharePoint上で申請や承認のテンプレートを作成し、Power Automateを使ってフローを自動化することで、効率的な業務運用が可能になります。また、SharePointのアクセス権限管理を活用することで、セキュリティを強化しつつ、必要な情報を迅速に共有できます。
この組み合わせは、大量の文書を扱う企業や複雑な承認プロセスを管理したい場合に特に有効です。
ワークフローシステムを自作するメリット
ワークフローシステムを自作することで、既存のパッケージソフトでは実現しにくい独自の利点を享受できます。以下では、自作する際の具体的なメリットを3つ挙げて解説します。
各種手続きのスピード化が図れる
自作のワークフローシステムでは、 企業特有の業務フローに即した手続きを構築できるため、各種手続きが迅速に処理されます 。既存のシステムでは複雑すぎるフローも、自作であれば必要最低限のステップに絞り込み、シンプルなワークフローを設計できます。
また、自動化を取り入れることで、手作業の削減が可能です。例えば、申請から承認までのプロセスが自動で進行し、承認者には即座に通知が届くようにすることで、業務の遅延を防ぎます。このように、無駄な時間を削減し、スピード感のある業務運営が実現します。
業務に合わせた柔軟なワークフローシステムが作成できる
既製品では対応が難しい業務特有のプロセスにも、自作のワークフローシステムなら柔軟に対応できます。
業務内容や手続きの流れが頻繁に変わる企業において、変更に応じてシステムを素早く調整できるのは大きな利点 です。また、業務の細かな要件にも適応できるため、実際の運用でのギャップを最小限に抑えられます。
さらに、特定の部署やプロジェクトに特化したフローを作成することで、 利用者のニーズにピンポイントで応えることが可能 です。これにより、従業員の操作負担が軽減され、システムの利用率も向上します。
内部統制の強化が可能
自作システムは、内部統制の強化にも効果を発揮します。
業務フローを一元的に管理できるため、 不正やミスを防ぐ仕組みを組み込むことが容易になります 。
例えば、承認フローを明確にし、各ステップの履歴を詳細に記録することで、監査やトラブル発生時の対応がスムーズになります。また、業務プロセスの透明性を高めることにより、責任の所在を明確にできる点も大きなメリットです。
さらに、アクセス権限の管理も柔軟に設定できるため、機密性の高い情報を安全に取り扱うことができます。これにより、セキュリティリスクを抑えながら、業務全体の信頼性を向上させられます。
ワークフローシステムを自作する際のデメリット
既存ツールの利用やプログラミングによる開発で、ワークフローの自作は可能です。ただ、自作は可能であるものの、明確なデメリットがあることを理解しておきましょう。主に、以下のようなデメリットが発生する可能性があります。
自作による時間コストがかかる
ワークフローシステムを自作する場合、構築から運用開始までに多くの時間を要する点が挙げられます。
まず、システムを設計するためには業務プロセスを細かく分析し、それにもとづいて最適なフローを構築する必要があります。この作業には、 関係部署との調整やフィードバックを繰り返す工程が含まれ、想定以上に時間を取られるケースが少なくありません 。
また、システムの開発自体も多くの時間を必要とします。プログラミングやテストを重ね、実際の運用に耐えうるシステムを完成させるには、専門知識を持つ人材が集中的に関与する必要があります。
トラブルが起きた際、サポートが受けられない
自作したワークフローでトラブルが生じた場合、全て自己責任です。そのため、何らかのトラブルが生じたときは、自分たちで何とかしなくてはなりません。
トラブルの発生が、企業に甚大な被害をもたらすおそれもあります。例えば、手続きが進まず決裁が遅れてしまい、大口の顧客を逃がしてしまう、取引先との契約を破棄されてしまう、といったことが考えられます。
一方、ツールとしてリリースされているワークフローシステムであれば、トラブル発生時にはサポートを受けられます。丁寧なサポートを受けられ、速やかに問題を解決できるため、被害が大きくなるリスクを避けられます。
自作には、コストを抑えられるメリットがありますが、トラブルの発生により甚大な損失を被るリスクがあることは理解しておきましょう。せっかくコストを抑えて作成できても、比にならないくらいの被害を受けてしまうようでは本末転倒です。
システム更新が難しい
柔軟で拡張性に優れたシステムを開発できれば、更新作業もそれほど問題ではありません。一方、そうでない場合には、システムの更新が難しいデメリットが生じます。
システムを使い続けていると、更新の必要性に直面する可能性があります。もっと機能を増やしたい、より便利に利用できる仕様にしたい、となったとき、更新が難しい自作のシステムでは対応できません。
では、更新しやすいシステムを最初から作成すればどうか、と考える方も中にはいるでしょう。それが可能であればよいのですが、現実的には困難です。そのようなシステムを開発するには、プログラミングに関する高度で専門的な知識、技術が必要であるためです。
また、自社で作成するとなれば、開発に携わる人材も必要です。人材がいないのなら、新たに採用する、外部から呼び寄せるなどの方法がありますが、いずれにしても大きなコストが発生します。
システムの更新ができなければ、いつまでも同じ機能や操作性のまま使い続けなくてはなりません。その結果、かえって業務効率が低下する、現場から不満が噴出する、といったリスクが発生する可能性もあります。
ワークフローシステムを自作するコツ
ワークフローシステムを自作する際には、効果的に構築し運用するためのいくつかの重要なポイントがあります。ここでは、ワークフローシステムの自作を成功させるための具体的なコツを詳しく解説します。
導入目的を明確にする
ワークフローシステムを自作する際には、まず導入の目的をはっきりさせることが重要です。業務効率化やコスト削減、内部統制の強化など、 何を達成したいのかを明確にすることで、システムの設計が目的に合ったものになります 。
目的が曖昧なままだと、実際に運用してみた際に想定していた効果を得られない可能性があります。そのため、関係部署とのヒアリングを行い、具体的な課題やニーズを洗い出すことが不可欠です。
また、この過程で優先順位をつけることで、より効率的なシステム設計が可能になります。
対象のタスクと人物の選定
ワークフローに組み込むタスクと、それを担当する人物を適切に選定することも重要です。全ての業務をワークフロー化する必要はなく、 特に効率化が求められるタスクに絞ること が成功の鍵となります。
また、タスクに関わる担当者の役割や権限を明確にし、フロー内での責任範囲をはっきりさせることで、スムーズな業務運用が可能になります。適切な担当者の設定により、 承認や確認の滞りを防ぎ、業務全体のスピードアップが期待できます 。さらに、各担当者が自分の役割をしっかり認識することで、業務の質向上にもつながるでしょう。
使用する書式を選定
ワークフローシステムを自作する際には、業務で使用する書式の適切な選定が重要です。 申請書、報告書、チェックリストなど、業務の種類に応じて必要な書式を明確に し、それらをシステムに組み込むことで業務の標準化が図れます。
書式の選定では、入力項目が過不足なくそろっているか、利用者が直感的に使いやすいかを確認することがポイントです。また、複雑すぎる書式は操作性を損なう可能性があるため、シンプルで分かりやすいデザインを心掛けましょう。
さらに、書式に関するフィードバックを業務担当者から集めることで、実際の運用に適した最適なフォーマットを作成できます。
図式化によるイメージ
ワークフローシステムを自作する際には、業務フローを図式化してイメージを明確にすることが重要です。
フローチャートやプロセスマップの作成により、 業務の全体像を一目で把握でき、各プロセスの関係性や流れが明確になります 。これにより、業務の中で無駄な手順や重複しているタスクを発見しやすくなり、効率化が可能です。
また、関係者間で共通の認識を持ちやすくなるため、システム構築時のミスや手戻りを減らせます。視覚的に業務プロセスを整理することで、複雑なワークフローも簡潔に理解でき、システム設計がスムーズに進みます。
運用マニュアルの周知
ワークフローシステムを効果的に運用するためには、運用マニュアルの作成と周知が不可欠です。 どれだけ優れたシステムでも、利用者が正しく操作できなければ本来の効果を発揮できません 。
運用マニュアルには、基本的な操作方法からトラブル発生時の対応手順、問い合わせ先までを具体的に記載し、利用者が迷わず対応できるようにします。また、マニュアルを配布するだけでなく、研修や説明会を実施して利用者にシステムの使い方を理解させることが重要です。
さらに、利用者からのフィードバックを定期的に収集し、マニュアルを更新することで、現場のニーズに合った内容を維持できます。
ワークフローシステムはPowerAutomateがおすすめ
Power Automateは、 自作でワークフローシステムを構築したい企業にも最適なサービスです 。タスクの自動化やワークフローの自動作成が可能で、Microsoft 365をはじめとするさまざまなアプリケーションと簡単に連携できます。さらに、AIと組み合わせた高度なデータ処理や、ファイルの同期、データ収集を自動化できる点も魅力です。
自作でワークフローを構築する場合、ゼロから作成するのは手間がかかりますが、Power Automateなら 多様なテンプレートを活用することで、時間と労力を大幅に削減できます 。これにより、複雑なフローも短時間で設計可能です。
直感的な操作性も特徴で、専門的なスキルがなくても簡単にシステムを自作できます。また、モバイル端末にも対応しており、オフィス外からでもワークフローの作成や管理が可能です。
まとめ
ワークフローのシステム化により、業務改善やペーパーレスの促進などさまざまなメリットを得られます。自作するのも1つの手ですが、トラブル時の対応や更新が難しいデメリットがあるため、それを理解した上で取り組むことが重要です。特に、自作の場合は設計や運用に時間がかかることも考慮しなければなりません。
安心して運用できるシステムを導入したいのなら、Microsoft Power Automateがおすすめです。ワークフローの作成やタスクの自動化などが簡単にできるだけでなく、トラブル発生時には手厚いサポートも受けられるため、システム導入後も安心して活用できます。この機会に、自社の業務に最適なワークフローシステムの導入を検討してみてはいかがでしょうか。