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中小企業がおさえておきたい管理会計と財務会計の違いとは

皆さんの会社では、管理会計を実施していますか?

中小総研(株式会社エフアンドエム)が2016年8月に発表した資料によると、「月次で業績の振り返りをしている」と回答した企業は全体の73.2%にのぼります。一方で、「予算がある」と回答した企業は全体の30.1%に留まっていることから、月次の業績振り返りを行っている企業のうち43.1%は明確な指標無く業績の振り返りを行っているものと考えられます。つまり「実質的な管理会計は行われていない」ということです。

なぜ今回、管理会計の話をしているかというと、企業が明確な情報をもとに経営の意思決定を下すためには、管理会計による経営状況の可視化が何よりも欠かせないからです。日本の中小企業は海外企業に比べてデータの取り扱いが苦手と言われており、管理会計の実施状況に関しては後れを取っている部分が少なくありません。

そこで本記事では、中小企業が(絶対に)押さえていきたい管理会計と財務会計の違いについて解説します。まずは管理会計の何たるかを知り、自社に導入した場合どのような効果があるのかを想像してみましょう。

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財務会計=企業経営の状況を外部に報告する

まずは、皆さんも知るところの財務諸表から解説します。大企業と中小企業とでは、財務諸表を作成するにあたっての基準が違います。株式市場へ上場している大企業の場合、株主という利害関係者に対する経営報告と、税務署による規制が一層厳しくなっていることから税法をはじめ、金融商品取引法、証券取引法、会社法、投資家保護法、国際会計基準など複雑な会計基準をもとに財務会計を行います。

一方、中小企業が準拠すべきは税法の会計基準のみです。このため、中小企業が作成する財務諸表は確定申告の課税所得を確定するための、根拠資料という位置づけになります。そのために作成する資料というのが、「賃借対照表」「損益計算書」「株主資本等変動計算書」の3つです。

賃借対照表(B/S)

企業の資産と債務、純資産が左右対称に表示されており、一定時点の財政状態を明確にするための資料です。企業がどれほど資産を持っているか?返済しないといけない負債はいくらか?返済しなくてもよい資本はどれくらいか?などが判明します。

損益計算書(P/L)

指定した一定期間における企業の経営業績を表した資料です。主に、売上とそれにかかった諸費用、そしてそこから算出される利益を明示しています。簡単に言うと、本業でいくら利益を得たか?本業以外でいくら利益を得たか?といった企業の収益力を表すためのものです。

株主資本等変動計算書

賃借対照表の中の「株主資本」という項目を取り出し、一定期間における動きを表した資料です。ただし、中小企業では株主資本が変動するケースは多くないため、賃借対照表がしっかりと作られていれば問題ない資料です。

以上3つの財務諸表は、「企業会計原則」と呼ばれる、以下のような7つの原則に従って作成されます。

企業会計原則

1 真実性の原則
企業会計は、企業の財政状態及び経営成績に関して、真実な報告を提供するものでなければならない
2 正規の簿記の原則
企業会計は、すべての取引につき、正規の簿記の原則に従って、正確な会計帳簿を作成しなければならない
3 資本利益区別の原則
資本取引と損益取引とを明瞭に区別し、特に資本剰余金と利益剰余金とを混同してはならない
4 明瞭性
企業会計は、財務諸表によって、利害関係者に対し必要な会計事実を明瞭に表示し、企業の状況に関する判断を誤らせないようにしなければならない
5 継続性の原則
企業会計は、その処理の原則及び手続を毎期継続して適用し、みだりにこれを変更してはならない
6 保守主義の原則
企業の財政に不利な影響を及ぼす可能性がある場合には、これに備えて適当に健全な会計処理をしなければならない
7 単一性の原則
株主総会提出のため、信用目的のため、租税目的のため等種々の目的のために異なる形式の財務諸表を作成する必要がある場合、それらの内容は、信頼しうる会計記録に基づいて作成されたものであって、政策の考慮のために事実の真実な表示をゆがめてはならない

管理会計=経営状況を知るための健康診断

多い人で3ヵ月に1度、ビジネスパーソンなら少なくても1年に1回は健康診断を受けて、自分の体の状態を把握します。それは、「何か悪い病気は隠れていないか?」を知るために様々なデータを集めて、それらを分析して情報に変換するという作業です。管理会計はいわば会社の健康診断です。

月次や四半期ごとに会社の経営状況を知るためのデータを集めて、それらを分析した経営状況を把握することで、今の状態を知ることができます。

管理会計は財務会計と違い、法的義務がありません。そのため中小企業の中には管理会計を実施していないところが多く、いわゆる「どんぶり勘定」のまま経営を進めているケースがあります。管理会計の主な作業とは「予算管理」と「原価管理」を実施することです。

予算管理

中長期的な期間を通じて、事業に投じる予算を管理しながら経営へと活かしていくための仕組みです。そのためには部門別会計なども実施して、損益分岐点計算を通じて適切な予算を決定していく必要があります。また、予算を決定するのと同時に実績を把握して予実管理を徹底することで、常に軌道修正を行いながら適切な経営を目指します。

原価管理

製造業を中心として行われる管理会計ですが、非製造業においても正確な経営判断を下すのに欠かせない情報を提供してくれます。いわゆるコストの可視化によって、無駄なコストを把握して徹底排除することで、企業の利益率アップに貢献します。原価管理では目標となる原価標準値を設定し、目標となる原価の維持活動も含まれます。

会計管理では、今まで発生しなかった計算業務やデータ分析が必要なことから、導入には一定の負担がかかります。しかしながら、それらの課題を乗り越えて管理会計を導入した中小企業は口をそろえて「導入して良かった」と言います。

その最大の理由は、「自信を持って経営意思決定を下せるようになる」ことです。今まで経営者の経験則や勘に従って行われてきた経営は、地図のない航海のようなものです。次の島にたどり着けたことはまさに運のようなものであり、広い海でいつ迷い、遭難し、沈没してしまうかは分かりません。

そうした中小企業の管理会計を導入することは、明確な海図をもとに航海することと同義になります。地図があれば進むべき方向が定まりますし、迷いもなくなります。そうすることが、日本の中小企業の経営を根底から支える基盤になるでしょう。

これまで管理会計を導入してこなかった企業では、これを機に導入を検討してみてはいかがでしょうか?

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