本稿では、近年重視されているフィールドサービスマネージメント(Field Service Management)について概説します。
「フィールドサービス」とは顧客に販売した機械設備、ビル設備およびシステムソフトウェアなどを現場(フィールド)にて設置/保守/メンテナンスを実行するサービスの総称です。
従来のフィールドサービスはアフターサービスのような位置づけにあり、残念ながら企業がフィールドサービスに対して持っている認識は「フィールドサービスはコストばかりかかるから、極力対応頻度を減らそう」といったものです。
しかし、昨今のフィールドサービスはそうした認識とは全く違った、組織のプロフィットセンター(利益創出部門)として活躍しているケースが増加しています。その背景にあるのが「製品のサービタイゼーション(Servitization of Products)」です。
市場成熟によって、顧客が製品の導入可否を判断する目は、日に日に厳しくなっています。それに加えて競合製品やサービスは乱立し、様々な市場でコモディティ化が起きていることで、競合他社との差別化を図ることが難しくなりつつあるのです。
このような状況から、多くの企業では自社製品の売上拡大のために「早期段階でのタッチポイント創出とデジタルマーケティング」が実施されてきました。顧客が製品ニーズを感じた時点で競合他社よりも早くタッチポイントを創出し、デジタルマーケティングによってマーケティング活動を自動化することで、少ないリソースで効率良く売上を拡大していこうというわけです。しかしそれも今では当たり前の施策であり、顧客争奪戦争が起きていると言っても過言ではありません。
そうした中、販売する製品そのものの価値ではなく、製品が生み出す「コト」に着目されるようになりました。「モノからコトへ」、販売の形はモノを売るのではなくコトをサービスとして提供することにシフトしているのです。
フィールドサービスマネージメントとは?
製品のサービタイゼーションにおいて、今多くの企業が取り組んでいるのがフィールドサービスマネージメントです。文字通りフィールドサービスを管理するという取り組みですが、単にフィールドサービスの実施状況等を管理するのではなく、フィールドサービスから収益化を図るための管理を指します。
たとえば製造ラインに設置する産業機械を導入する顧客の視点から考えてみると、機械が持つ性能が高いということはもちろん、機械が安定的に稼働するという点についても重点を置いています。しかし、定期的な保守業務やメンテナンス無しに、永続的に安定稼働する機械などはありません。
加えて、定期的に実施する保守作業や事後的に実施するメンテナンスでは、後手後手となるため顧客が安定稼働に期待するニーズを満たすことは不可能です。企業は保守作業やメンテナンスの実施頻度を極力減らすように点検の期間を長めに取りますし、フィールドサービスに費やすリソースも少ないからです。
そこで、フィールドサービスをアフターサービスではなく、収益化に向けたサービスとして提供することで顧客が安定稼働に期待するニーズを満たすことができ、さらにフィールドサービスを収益化できます。
コスト削減はすベての企業にとって重要な経営課題ですが、コスト削減に取り組んでいる顧客が極限まで節制しているというわけではありません。むしろ、コスト削減の中でも価値があるものには積極的に投資したいと考えています。もしも永続的に安定的な稼働を約束するようなフィールドサービスがあれば、顧客は喜んで資金を投じるでしょう。
多くの顧客は機械設備やシステム/ソフトウェアなどが1秒でも停止することで業務にもたらす悪影響を理解しています。従って、フィールドサービスマネージメントによって安定的な稼働を約束するサービスを提供すれば、それは企業にとって大きな収益源になることでしょう。
フィールドサービスのスピードと質を向上するポイントとは?
フィールドサービスマネージメントを実施するにあたり、大切なことはサービススピードと質を同時に上げることです。保守作業やメンテナンス作業は迅速なほど良いですし、初期対応で問題を解決することができれば、フィールドサービスの効率性と顧客満足度が同時に上がります。そのためには解決すべき課題が3つあります。
課題1.持ち込み資料の軽減
フィールドでのトラブルシューティングスピードを高めるために、フィールドサービスでは大量の資料を必要とします。設計図面や作業手順、顧客情報や対応履歴などが記載された資料はとても片手では抱えられないものです。こうした大量の資料が原因でフィールドサービスの効率性が下がってしまっています。
課題2.リアルタイムな実施レポート
フィールドサービスエンジニアの多くは1日の終わりの対応案件に関する実施レポートをまとめます。Excelで実施レポートを作成する場合もシステムに入力する場合も、デスクで行わなくてはならないため仕方ないと言えば仕方ないことでしょう。しかし人間の記憶は曖昧なものなので、1日に何件もの顧客対応をしていると適切な情報が思い出せず、正確な実施レポートは完成しません。それが次回の顧客対応に影響を及ぼす可能性があるのですから、1件ごとに実施レポートを作成できるような環境が必要になります。
課題3.デバイスの統一化
フィールドサービスエンジニアはタブレット/ハンディターミナル/ハンディプリンタといった複数のデバイスを持ち歩く場合が多くあります。これも大量の資料持ち込みと同じように効率性を低下させる大きな原因ですので、デバイスの統一化を図ることが大切です。
こうした課題を解決するために大切なものは何か?それは「フィールドサービスマネージメントを徹底できるようなシステムソリューションを導入すること」であり、その製品としてマイクロソフトのMicrosoft Dynamics 365をおすすめします。
Microsoft Dynamics 365 for Field Serviceとは?
Microsoft Dynamics 365 for Field Serviceは、統合的なインテリジェントビジネスアプリケーションを提供するMicrosoft Dynamics 365に内包されているフィールドサービスマネージメント向けのシステムソリューションです。Microsoft Dynamics 365 for Field Serviceを利用することで、企業は次のようなフィールドサービスを実現できます。
リソース最適化
●スケジューリング自動化
現場に最も近い技術者を自動でスケジューリングすることで、案件数を増やす
●在庫管理効率化
初回での修理完了率を高めるため、リアルタイムな在庫情報を同期および追跡する
技術者の最適化
●ナビゲーション
どのデバイスでもリアルタイムで最適なルート、どこで曲がるかの指示、および作業指示の詳細を更新でき、技術者が時間順守できる
●顧客情報共有
指定された手順での情報入力によってお客様の選好性や履歴の包括的な情報を取得できる
●作業効率向上
技術者はデバイスを通じて技術資料を取得および更新できる
Mixed Realityヘッドセットなどのなどの製品により、技術者のハンズフリーガイダンスを実現する
IoT活用
●情報取得
IoTを活用して顧客が問題を認識する前に、問題の検出および診断を行う
●作業指示の自動化
自動的に作業指示を作成し、デバイス上に関連する顧客情報を持たせた技術者をスケジューリングおよび配置する
●予兆保守
高コストな計画的メンテナンスではなく、必要なときのみに行われるジャストインタイムの予兆保守、修理、クリーニング、パーツ交換へ移行することでフィールドサービスを収益化する
顧客エンゲージメント
●信頼構築
見積、契約、スケジューリング情報をシームレスに共有することで、透明性と信頼を高める
●手軽な利用
カスタマーポータルにより、顧客がサービス活動およびセルフスケジュール予約を追跡しやすい
●コミュニケーション
技術者の現在位置追跡や音声およびテキストによる予約リマインダーの自動化によって、サービスを受けられる時間帯の情報を顧客に提供する
プラットフォーム構築
●カスタマイズ
コーディング不要の視覚的に操作できるエディターやツールで、Web アプリやモバイル アプリの構築と展開を簡単に行える
●サービス環境結合
Microsoft Dynamics 365 のアプリケーションとサードパーティのシステムにまたがる一連のプロセスを自動化できる
今後、フィールドサービスマネジメントへ取り組みたいと考えている方は、そのためのシステムソリューションとしてMicrosoft Dynamics 365をぜひご検討ください。