小売業

小売事業に変革をもたらす電子棚札とは?

大手スーパーや家電量販店などで、商品棚の値札がデジタル化されているのを目にした方も少なくないでしょう。小型の電子ペーパー端末上に価格を表示する電子棚札は、値段変更の手間を省き、柔軟な価格対応を実現する手法として導入が進んでいます。メリットや事例とともに、電子棚札の特徴や今後の可能性について見ていきましょう。

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電子棚札とは

電子棚札とは、商品棚に掲示される値札を従来の紙からデジタル化したものです。ESL(Electronic Shelf Labels)とも呼ばれます。

基本的なしくみは、ネットワーク化された小型デジタル端末(棚札)を商品棚に設置して、管理システム側からWi-Fiや赤外線通信、Sub-GHz帯の無線通信等で価格情報を送信します。その他、商品説明やQRコード、クーポン情報を表示することも可能です。以前は液晶ディスプレイ製のものも使われていましたが、現在は電子ペーパー製の製品が主流になっています。

電子ペーパーとは、紙のように薄い表示パネルのことで液晶ディスプレイとは異なる技術が使われています。書き換え速度が遅い、フルカラー表示が不得手という短所がある反面、電力消費は画面書き換え時だけのため液晶ディスプレイよりも少ない電力で運用できるという長所があります。

電子ペーパーは、電子棚札のような用途であれば頻繁に書き換えも発生せず色数も少ないため、液晶よりも適しています。比較的大きいサイズの棚札でさまざまな情報を表示するためには、液晶ディスプレイでは消費電力が大きく不向きです。ボタン電池で何年も稼働できる電子ペーパーだからこそ実現できると言えます。

電子棚札の特徴は、従来の紙でできた価格ラベルと比較して柔軟に価格を変更できることや、人手で貼り替える必要がないため省人化できることが挙げられます。働き方改革という点でも価格変更を自動化できる電子棚札は注目されており、大規模な店舗やチェーン展開している店舗を中心に導入が進んでいます。

電子棚札を活用するメリット

電子棚札を活用することで、消費者側にも小売業者側にもメリットがあります。

小売業者側のメリット

電子棚札を導入することは小売業者側にとってメリットがあります。

一斉に価格が変更できる+手間の削減

管理システムから一斉に送信でき、リアルタイムで価格を変更することができます。従来であれば、閉店後などに人海戦術で長時間かけて価格ラベルを貼りなおす必要がありました。ラベルを手動でプリントアウトしている場合も多く、貼るまでに時間やコストもかかっていましたが、電子棚札にすることでこれらの手間を減らすことができるようになります。

人為ミスの削減

人の手で価格ラベルを交換する場合、誤って異なる商品の価格ラベルを貼ってしまったり、交換し忘れて古い価格のままになっている恐れがあります。電子棚札にすることで、システムから自動で変更できるので、そういったミスが減り、価格に関するクレームもなくなることが期待できます。

消費者側のメリット

消費者側のメリットとしては、以下のような点が挙げられます。

柔軟に価格を設定してもらえる、最新価格を表示

需要に応じて価格を変更するダイナミックプライシングは、飛行機のチケットやホテルの宿泊費で一般的な価格決定の方法です。今まではリアル店舗で買い物をする場合には、柔軟に価格を設定することは困難でした。

電子棚札を活用することで、大手家電量販店などでは本部の判断で柔軟に商品価格を変更できるようになっています。他社店舗でもっと安く販売している場合などに、電子棚札であればさらに安い金額に変更できる可能性があります。常に最新の価格が表示される点は消費者にとってメリットになります。

視認性が高い

紙の価格ラベルは、サイズが小さいことが多く、読みづらさを感じることがあります。また液晶の価格ラベルは店内で見ると反射して見えにくい場合があります。電子ペーパー製の電子棚札であれば表示が見やすく、視認性が高いと言えます。

電子棚札の導入事例

ここでは電子棚札を導入している事例をいくつかご紹介します。

株式会社ビックカメラ

大手家電量販店のビックカメラでは、2021年をめどに全店に電子棚札を導入することを決定しました。今までは1日に数回変更する価格に対応するためにプリンターで出力したラベルを1時間かけて張り替える作業が発生していましたが、管理システムからまとめて変更できる電子棚札にしたことで大幅な省人化が期待されています。さらに商品ピッキング時に該当商品の棚札を光らせることで作業効率向上も目指しています。

イトーヨーカドー

2019年8月に新規オープンしたイトーヨーカドーたまプラーザ店では、「アプリでGO!」というサービスが開始されました。これは電子棚札にNFC(近距離無線通信)機能を搭載することで、アプリを起動したNFC対応スマホをかざすと商品レビューや詳しい説明が確認できるものです。

株式会社主婦の店

三重県内でスーパーマーケット7店舗を運営する主婦の店では、2006年から電子棚札システムを導入しています。採用したのは国内の電子棚札シェア70%を占めるイシダテクノのシステムです。

広い店舗内のPOPの付け替えにおける手間と時間を削減でき、利益にも貢献できたことから、現在は全店舗で導入。時間削減だけでなく、レジと商品棚で価格が異なるトラブルやレジでの登録ミスによる混雑も防止しています。

クローガー(アメリカ)

アメリカ大手スーパーのKroger(クローガー)は2019年にマイクロソフトと協力して新たな電子棚札システムを開発しました。

電子ペーパー製の棚札に価格を表示するしくみは従来のものと同様ですが、買い物客は事前に専用アプリをインストールしておくことで来店前にチェックしておいた商品が店内のどの商品棚にあるかがわかるようになっています。(このしくみはビックカメラのピッキング支援と同様)

またアプリで商品バーコードをスキャンすることで、Amazon Goのようなセルフ精算ができるようになっています。

以上、3つの事例を紹介しましたが、それ以外にも電子棚札の導入は徐々に増えてきています。2019年9月には株式会社フジテックスがヨーロッパで100万個以上の稼働実績を持つ小売・流通業の店舗向け電子棚札システムの発売を発表しており、今後はコンビニやドラッグストアでも採用されていくと予測されています。

電子棚札によるデジタル変革

電子棚札の効果は、単純に価格ラベルを電子化することで貼り替えの手間が減るというだけではありません。それぞれの商品に対してひとつずつデジタルディスプレイが設置されることで、消費者がオフラインからオンラインへ接続しやすくなるというメリットがあります。

例えば電子棚札に表示されたQRコードをスマホで読み取ることで、その商品のWebサイトへ誘導することができます。外国語のWebサイトも同時に用意しておけば、インバウンド対応を行うことも容易です。またNFCで商品情報を読み取ってもらうことをきっかけにして消費者に対してアプリのインストールを促すこともできます。アプリで消費者と繋がることで、さまざまな施策展開が可能になります。

ネットとリアルの境界をなくしシームレスな購入を実現するオムニチャネルや、オンラインとオフラインを融合するOMO(Online Merges with Offline)の実現を各社が目指す中で、オフライン側の接点となる電子棚札は大きな可能性を秘めています。

まとめ

価格情報の一元管理による作業効率向上や、貼り間違えなどのヒューマンエラー防止のほか、クーポン表示などのプロモーション施策、商品の場所表示といった新たなサービス提供など、電子棚札の導入により様々な効果が期待できます。

これからの小売事業にとってデジタル変革は不可欠です。電子棚札の活用はその第一歩とも言えるでしょう。

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