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自動車業界の関係者が押さえておきたいトレンド

自動車業界も例にもれず、新型コロナウイルス感染拡大の影響を受けています。生産水準は回復しつつあるものの、多くの製造工場で生産の一時停止を余儀なくされるなど、まだまだ先行きは不透明です。本記事では、自動車業界でのコロナ禍による影響や、コロナ禍以前から期待される自動車業界のDXトレンドについて詳しく解説していきます。

自動車業界の関係者が押さえておきたいトレンド

モビリティの未来を推進する自動車業界

自動車業界における新型コロナウイルスの影響

新型コロナウイルス感染拡大の影響を受け、自動車メーカー各社が、世界的な工場の稼働停止や販売店の営業停止などに追い込まれました。その結果、2020年3月期連結決算では、国内自動車メーカー大手8社のうち、前年度比で増益となったのはSUBARU1社のみでした。ただし、SUBARUが増益となった理由は他社と比べて北米市場での売り上げ比率が高かったことが挙げられます。北米で新型コロナウイルスの影響が本格化したのは3月中旬だったため、ダメージを最小限にとどめられたに過ぎません。

2021年3月期についても、各社いずれも前期実績と比べてマイナスになる見通しです。国内シェアトップのトヨタを始めとする主要4社は、第2四半期決算において世界販売台数を上方修正し、営業減益幅も縮小するなど回復基調にはあります。しかし、2021年1月現在、新型コロナウイルスは依然として世界中で猛威をふるっており、世界経済が回復するまでにはまだ時間がかかりそうです。

自動車業界の変革を推進するDXトレンド

自動車業界は今、大転換期を迎えています。新型コロナウイルス以前から、自動車業界にはデジタルトランスフォーメーション(DX)の動きがあり、かつてないスケールでのイノベーションが起きるとして注目を集めています。DXとは、デジタル技術によって、企業活動やビジネスモデルをより良い方向に変革させることです。コロナ禍で導入が一気に加速したテレワークやペーパーレス化などがその一例です。

自動車業界では、「CASE」と「MaaS」という2つのDXが起きつつあります。これらは、従来のビジネスモデルや自動車の提供価値そのものを大きく変える概念であり、新たな競争の扉が開かれたといえるでしょう。

CASEとは

CASEは、「ケース」と英語読みされ、4つの用語の頭文字をあわせた言葉です。その用語とは、Connected(コネクテッド化)、Autonomous(自動運転化)、Shared&Services(シェア/サービス化)、Electric(電動化)です。それぞれの意味や特徴、仕組みについて順番に見ていきましょう。

コネクテッドカー(Connected)

「コネクテッドカー」とは、常時ネットワークに繋がった自動車のことです。総務省は、コネクテッドカーを「ICT端末としての機能を有する自動車」と定義しています。コネクテッドカーは、車両の状態や周辺の道路状況などの情報を車内のセンサーから取得し、ネットワークを介して蓄積・分析、活用できます。

ドライバーへのメリットは、事故時の緊急通報や盗難時のリモート制御ができるようになります。また、ネットワークを介してVODを楽しめるようになり車内での楽しみの幅も広がるなど、さまざまな場面での新たな価値提供が期待されています。国内の一部メーカーではすでに実用化されており、トヨタのコネクテッドサービス「T-Connect」や日産自動車の「NissanConnect」などがその例です。

自動運転(Autonomous)

一般的に企業が用いることが多い「自動運転」という言葉は、総務省が用いる「自動走行」と同義です。自動運転とは、乗り物などの操縦を、人ではなく機械が自立的に行うことです。航空業界ではすでにオートパイロットという自動操縦システムが導入されていますが、自動車でもこの分野の開発が加速しています。

自動車の自動運転は、大きく「運転支援」と「自動運転」の2つのレベルに分けられます。運転支援は、システムがあくまで補助的に運転をサポートするものです。国内の自動車メーカー各社は、運転支援あるいはそれに近い技術を導入済みですが、さらにワンランク上の自動運転に向けた技術を採用するメーカーも現れています。

その一例が日産自動車が開発した自動運転技術「プロパイロット」です。渋滞走行と長時間の巡航走行という2つのシーンにおいて、アクセル、ブレーキ、ステアリングのすべてをシステムが自動で制御するため、人がハンドルから手を放した運転を実現しました。自動運転の最終ゴールは、場所の限定なくシステムがすべてを操作する完全自動運転化です。自動運転社会が到来すれば、インフラ利用の最適化によって交通事故や渋滞が減少し、自動車はより安全で快適な交通手段になると期待されています。

ライドシェア(Shared & Services)

自動車のシェアリングが進めば、従来のカーシェアよりもさらに進んだ「ライドシェア」も可能になります。ライドシェアとは、アプリを使ってドライバーと相乗り希望者をマッチングするサービスのことです。自分の周辺にいるドライバーが迎えに来てくれ、目的地まで乗せてくれるという仕組みで、個人で車を所有することなく、ニーズがあるときだけ車移動するというスマートな生活が叶います。ライドシェアは、ユーザーにとって経済合理性が高いだけでなく、自動車の総数を減らすことにより地球温暖化や交通渋滞などの社会課題を解決できる有望な打ち手のひとつです。しかし、メーカーからすると、販売台数減少に直結しかねないライドシェアサービスの普及はまさに脅威です。タクシー産業との共存も、ライドシェアを進めるうえでの課題です。

電気自動車(Electric)

「電気自動車(EV車)」とは、充電装置でバッテリーに電気をため、その電気だけでモーターを動かし車輪を駆動する自動車のことです。ガソリン車よりもエネルギー効率が良く、エンジンを使用しないので走行中にCO2を排出しないゼロエミッション車です。環境性能に優れ、走行時の騒音も少ないのが大きなメリットです。デメリットとしては、日本ではまだ充電スタンドが少ない、充電に数時間単位の時間がかかる、ガソリン車と比べて販売価格が高い、航続可能距離が短いといった点が挙げられます。

ハイブリッド車は、エンジンとモーターの2つを効率的に使い分けたり組み合わせたりして走る自動車のことです。欧州を筆頭に、世界ではCO2排出規制を強化する動きが加速していますが、日本も例外ではありません。2020年12月には、東京都の小池知事が都内販売の新車の乗用車を2030年までに100%非ガソリン化する目標を掲げると表明し、大きな話題になりました。これは、経済産業省が調整している「2030年までに乗用車の新車販売に占める次世代自動車の割合を5~7割とする」という目標を5年以上前倒しすることを意味します。いずれにせよ、将来的に国内で販売できるのは、ハイブリッド車もしくはEV車のみということになりそうです。

MaaSとは

「MaaS」は、Mobility As a Serviceの略した言葉で、「マース」と読みます。直訳すると「サービスとしてのモビリティ」ですが、CASEを進化・統合させた先にある新モビリティ社会を意味します。ICTを活用して、自動車とバスや電車などの公共交通機関、タクシーやライドシェアなど、あらゆる移動手段をシームレスに繋げるという概念を持つのが大きな特徴です。従来、移動手段は個々人が考えて手配するものであったため、車を持っている人が選ぶ移動手段は車に偏りがちだったかもしれません。しかし、MaaSが想定する世界では、アプリ上でもっとも合理的な移動手段や組み合わせを瞬時に教えてくれます。さらに、予約から決済までを一括でできるため、実装化されれば利便性が格段に向上するでしょう。

ユーザーとしての利便性だけでなく、交通渋滞の悪化や地域経済の停滞、高齢化、地球温暖化など深刻化するさまざまな社会問題の解消も期待できます。MaaS時代の「クルマ」は、自動車は個人の所有物というよりも、社会の「公共財」の意味合いが増し、より多くの人々の生活を助けていくようになると想定されます。異業種との連携が不可欠なサービスですが、トヨタ自動車と西日本鉄道による「my route」など、国内でもすでにMaaSの実用化が始まっています。

まとめ

CASEやMaaSは、すでに国内でも実用化され始めています。自動車が、「自分で運転しないもの」「地域でシェアするもの」「環境に優しい乗り物」となる日も、そう遠くはないかもしれません。自動車メーカー各社は今、あらためて自社の存在意義を見直し、未来社会でも持続可能なビジネスモデルを構築する必要性に迫られています。

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