企業活動を円滑化し、継続的な発展と成長を望むには社内コミュニケーションの活性化が不可欠です。適切な取り組みによって、業務効率化や生産性の向上など、さまざまなメリットを享受できます。本記事では、社内コミュニケーション活性化で得られるメリットや課題などを解説します。
社内コミュニケーションとは何か?
社内コミュニケーションとは、企業に属する人間同士による、文字や言葉を介したやり取りです。朝の挨拶や些細な雑談、オンライン・オフラインのミーティング、上司による部下への面談などが該当します。
社内コミュニケーションの重要性は?
社内コミュニケーションは円滑に業務を推進するために重要であり不可欠です。不足した場合は、円滑な情報共有を阻害するほか、人間関係の悪化や業務の停滞などさまざまなリスクを招くおそれがあります。上司や同僚へ気軽に相談ができず、モチベーションが下がる社員も増加しかねません。
HR総研が2023年に実施した「社内コミュニケーションに関するアンケート」を見てみましょう。企業の人事や担当者を対象としたこちらの調査では、「社員間のコミュニケーション不足が業務の支障になりえるか」との質問に対し、全体の69%が「大いにそう思う」と回答しています。
また、「ややそう思う」が25%となっており、「大いにそう思う」とあわせると全体の9割以上がコミュニケーション不足によって業務に支障が出ると考えていることが分かりました。
近年はリモートワークの導入により、社員同士のコミュニケーション不足を懸念する企業も増えています。今後はオフィスだけでなく、リモートワーク環境下でもコミュニケーション活性化に取り組む必要があります。
また、部署を超えた横断的なプロジェクトチームが作られることも珍しくありません。面識のない社員同士がひとつの目標達成に向けて取り組むにあたっては、社内コミュニケーションを密にし、発言しやすい雰囲気を作ることが大切です。他部署との協同作業において良好なコミュニケーションが取れれば、相互理解が深まり、交流が進むことで業務の効率化にも繋がります。
社内コミュニケーション活性化で得られるメリット
社内コミュニケーション活性化への取り組みは、業務の円滑な遂行に寄与します。適切な取り組みによって、業務効率化や生産性の向上が見込めるほか、イノベーションの創出や社員のストレス軽減など、さまざまなメリットを得られます。
生産性の向上や業務効率化が期待できる
社内コミュニケーションが活性化することにより得られるメリットのひとつが、生産性の向上・業務効率化です。立場に関係なく活発に意見交換を行えるようになり、情報共有が活性化され、業務の進捗を把握しやすくなります。また、同僚をよく理解すれば仕事を任せやすくなり、業務を円滑に推進できます。
社内で広く情報共有されていることは、社内の雰囲気や業務効率化だけに好影響をもたらすわけではありません。結果的に顧客満足度が向上するといった、外部へのメリットも挙げられます。
イノベーションの創出が期待できる
コミュニケーション活性化を図り、社員が気軽に意見やアイデアを挙げられる環境を構築することで、イノベーションの創出が期待できます。部下が常に上司の顔色を窺ったり、発言がためらわれるような空気が蔓延していたりすると、社員はよいアイデアを思いついても口に出せません。
社内コミュニケーションの活性化に取り組むことにより、このような状況を回避できます。社員同士の交流も活発になり、積極的に意見やアイデアを交換することで、今まで思いつかなかった斬新な商品やサービスの構想が見えてくる可能性があります。
社員のストレスが軽減する
社員同士で気軽にやり取りできる空気が生まれると、社員が感じるストレスを軽減できます。過度な気遣いが不要となり、業務中の不安感や緊張感が緩和されれば、社員の積極的な発言に繋がります。
過度なストレスを強いられる環境で業務に取り組むのは、精神衛生上よくありません。過度なストレスが原因で、離職に繋がるケースも十分考えられます。社内コミュニケーションの活性化は、職場でのストレスに関連する問題を解消する一助となります。
会社と社員の繋がりが強くなる
離職率が低下し定着率が向上するといったメリットも挙げられます。給与・昇進・福利厚生といった仕事に対するモチベーションと同様、もしくはそれ以上に、社内での職場環境や対人関係も社員にとっては非常に大切です。
コミュニケーションを活性化させることは、居心地のいい職場づくりに役立ちます。会社と従業員との繋がりがより強固になり、組織に一体感が生まれます。
社内コミュニケーション活性化において多くの会社が抱える課題
社内コミュニケーション活性化を進めようと取り組みを始めたものの、課題にぶつかる企業は少なくありません。交流の時間が取れない、部門間に物理的な距離があり連携がうまくいかないなどが例に挙げられます。よくある課題と、自社で顕在化している課題を明確にすることで、具体的な解決策が見つかります。
コミュニケーション活発化に立ちはだかる課題
コミュニケーション活性化の課題は、複雑であり多様です。例えば、部署同士や社員同士での連携不足、経営陣と社員との間に空間的・心理的な壁がありコミュニケーションが取りにくい状況であることが挙げられます。
また、職場環境によっては、そもそもコミュニケーションを取るための十分な時間がないこともあります。
コミュニケーション不足を解決するために社内SNSを導入した会社でも、「どう使ったらいいのか分からない」などほかの問題が発生し、うまくいかないケースも挙げられています。
社員がコミュニケーションに積極的でないことも課題のひとつです。仕事上でチャットやメールを超えた付き合いをしたくないという意見も多く見られます。
社内コミュニケーション活性化を成功させるポイント
社内コミュニケーションを活性化させるにはいくつかのポイントがあります。まずは要点を抑えてから取り組みを実施しましょう。
まずは失敗する理由を知る
失敗するときには、何か理由があるものです。社内コミュニケーションを取ろうとしてうまくいかず失敗に至る場合、「経営陣と現場との考え方が一致していない」「他部署や部署内の従業員のことを知らない」「目的が周知されていない」といった問題が見られます。
この問題は職場や状況によって異なります。職場でコミュニケーション活性化が失敗している理由を把握すれば、問題解決に向けての最善策を取ることができます。
課題を分析し目的を明確にする
まずは課題を把握し、目的を明確にしましょう。目的を明確にするためにはコミュニケーション範囲を定めることが大切です。例えばコミュニケーション活性化を目指すのはあくまで部署内のみか、それとも部署間での連結を高めることにするのかなどを決めます。部署内のコミュニケーションを活発させるなら、同僚同士、上司と部下など、対象とする範囲も決めましょう。
コミュニケーションの課題がどこにあるのかを把握するには、従業員へのアンケートを取る方法が適しています。データを集めた後は分析し、課題を見つけましょう。
対象者全員が参加しやすい仕組みを作る
社員が社内コミュニケーションに参加しやすくするためには「動機と建前」が必要です。例えば社内行事には強制力があるため、乗り気でない人も参加するようになります。このように建前があることで、従業員の自発的な行動が生じます。
仕組みを作るときに大切にしなければいけないのは、双方向のコミュニケーションを心がけることです。特に役員や主催側が中心になる際には、一方的なコミュニケーションにならないよう気をつけなければなりません。
課題に合った取り組みやすい方法から始める
難しい方法よりも、課題にあった取り組みやすい方法から始めるのが得策です。新たに社内イベントを開催しようとする場合、多くの準備作業が必要で疲弊してしまう可能性があります。導入にかかる手間や時間が少なくすむものを選んで始めるようにしましょう。
始めやすい方法として、社内掲示板・社内SNSなどが挙げられます。これらは導入に手間がかかりにくいため、計画へのストレスや疲弊を少なく抑えられます。
コミュニケーションを促進するオフィスにする
オフィスのレイアウトを工夫することで、コミュニケーションの促進が図れます。リフレッシュスペースの設置やフリーアドレス制の導入などが、その一例です。
オフィスのレイアウトをはじめとする具体例については、次の項目で詳細に解説します。
社内コミュニケーションを活性化させる具体策
社内コミュニケーションの活性化に向けての具体策としては、社内SNSや社内報による発信のほか、社内行事や社内イベントによる交流、社員同士が関わりやすいオフィスや仕組みづくりなどが挙げられます。
社内SNS導入や社内報を発行する
社内SNSや社内報を発行することで、よりコミュニケーションを活性化できます。とくに社内SNSは迅速にコミュニケーションを取れるようになるほか、導入するための障壁も少ないなど複数のメリットを得られます。
ただし、導入後に失敗することも少なくありません。導入の目的を周知する、プライベートの投稿が増えすぎないようにする、社内の上下関係を気にせず誰でもオープンに利用できるものにするといったポイントをしっかりと押さえておくことが大切です。
目的や節度をもって誰でも投稿しやすいようにすることが、導入を成功させる秘訣です。
社内行事・社内イベントを取り入れる
社内行事・社内行事の導入により、半強制的に社員同士が関わる環境を作れます。社内行事であれば参加への建前ができるので、多くの社員が参加すると見込まれます。
例えばバーベキューや旅行などは、普段交流のない部署の人と話すきっかけになります。社員がお互いの新たな一面を知ることは、社内コミュニケーションにおいて有益です。もし導入するのであれば、小規模なイベントから始めることをおすすめします。
話しかけやすい座席配置にする
アイランド型キッチンのように、上司や責任者のデスクだけが上座に独立しているオフィスは珍しくありません。このようなレイアウトでは、社員はどうしても上下関係を意識し、気軽に声をかけにくくなってしまいます。
社内コミュニケーション活性化を実現するにあたり、オフィスのレイアウトを見直してみましょう。個々の座席を固定しない、フリーアドレス制は有効な手段のひとつです。固定席がないため、異なる部署や役職の社員と交流する機会が増え、新たな情報やアイデアを得る機会が増加します。
オフィスラウンジの導入もおすすめです。機能性と快適性を備えたラウンジ空間をオフィスに設置することで、コミュニケーションの活性化や社員のモチベーション向上、集中力アップなどさまざまな効果が期待できます。
社員間の物理的な距離だけでなく、心理的な距離が近づくことで、情報共有がスムーズになり、チームワークが向上します。そのためには、適度にリラックスできる環境を整えることが有効です。社員同士が打ち解ければ、業務の円滑な進行だけでなく、仕事上の悩みを共有しやすくなるなどメンタル面でのサポートにも効果があります。
ABWを取り入れる
ABWとはActivity Based Workingの略であり、社員がその日の気分や業務内容などにあわせて、働く場所や時間を選択できる仕組みです。フリーアドレスと混同されがちですが、ABWは仕事場所として自宅や図書館、カフェなども選べるため、より自由度が高く柔軟に働けます。
ABWの導入は、コミュニケーション活性化にも有効です。普段とは異なる場所で業務に取り組むことによって、これまで接点がなかった社員との交流が生まれるほか、会話が弾んで新たなアイデアが生まれる可能性もあります。
ABWの導入にあたっては、事前に課題を抽出したうえで目的を明確にしておきましょう。また、社員の意見からも現状を把握し、社員全員で協力しあいながら働きやすい環境の構築に努めなくてはなりません。
社員食堂やカフェなど自然と集まれるスペースを作る
食事をしながら会話を楽しめるよう、社員食堂やカフェなどを職場に設置する企業は少なくありません。コミュニケーションが取りやすくなる、いわゆるマグネットスペースを作り出すことが大切です。人が集まると、自然とコミュニケーションが生まれます。
しかし、社員食堂やカフェなどは設置や維持のために膨大なコストがかかります。もし費用面で問題があるなら、先述したフリーアドレスのオフィス作りもおすすめです。
社内通貨を発行する
社内通貨とは、社内でのみ利用できる独自のポイント制度です。インセンティブとしての授与や、各自所持した社内通貨をお互いに贈り合うことなどを通して、社員の満足度アップやモチベーション向上に寄与します。この取り組みは、社内でプラスの感情を伝え合う際に有用です。
獲得した通貨は、ポイントごとにギフトに換えられるなどの仕組みもあわせて検討しましょう。
スケジュールやタスクを共有する
社員間でスケジュールや個々のタスクを共有することで、より強い連携が期待できます。個々がスケジュールやタスクを意識しながら働けば、効率的に業務を遂行できる体制が整い、生産性も向上します。
スケジュールやタスク管理には、ツールの導入がおすすめです。タスクやプロジェクトを管理できるツールのなかには、メッセージでやり取りできる製品もあるので、気軽にコミュニケーションを取れます。
社内コミュニケーション活性化が目的なら、「Office 365」の導入を検討しましょう。同ツールは、「Teams」で円滑なコミュニケーションを図れるのはもちろん、カレンダーも同期できるためスケジュール管理が容易です。
1on1や面談の機会を増やす
1on1とは1対1でミーティングを実施することを指し、上司と部下という組み合わせで行われます。目標管理・業務進捗管理・プロジェクトのPDCA確認など、業務に関係することを話し合うミーティングの場です。ただの報告会にならないようにするために上司の腕が試される場でもあります。
この1on1では、部署や職種を超えた「ナナメ面談」を実施している企業もあります。「ナナメ面談」には部署内では相談できないような問題を相談できるといったメリットがあります。他部署・多職種間との繋がりをもつきっかけ作りとしても有効です。
グループウェアでテレワークを円滑化する
テレワークを導入しているのなら、オンラインで円滑にコミュニケーションを取れる環境を構築しなくてはなりません。おすすめなのは、グループウェアの導入です。グループウェアとは、業務効率化やコミュニケーションの円滑化を目的に開発されたITツールです。
Office 365なら、テレワーク環境下でも問題なくコミュニケーションを図れます。テキストで気軽にやり取りできるチャットや、Web会議にも対応しているため、テレワーク環境下でもオフィス勤務のようにミーティングを実施できます。
また、Office 365は堅牢なセキュリティ環境を構築しているため、テレワーク環境下でも安心して利用可能です。
社内部活やサークル制度を導入する
社内で部活やサークルを制度化すると、同じ趣味をもつ社員同士でのコミュニケーションが活性化されます。スポーツ系や文化系など、趣味にあわせた部活をいくつか用意しましょう。
趣味という「好きなこと」を共有することで、繋がりのなかった他部署の従業員ともポジティブな関係を築くことができます。好きなことを通して集まるので、活発なやり取りが発生すると期待できます。
活動にかかる費用を部費として支給すると、モチベーションが高まり、活動がさらに活発化するでしょう。
社内コミュニケーションを追求するオフィスの事例
内田洋行の関連企業であり、空間デザインなどを手がけるパワープレイス株式会社は、以前から社内コミュニケーション活性化へ積極的に取り組んできました。同社では、オープンタイプのミーティングスペース設置やフリーアドレスをベースとしたオフィスレイアウトなどを進め、コミュニケーション活性化と生産性の向上を実現しています。
同社の特徴は、オフィスデザインとICTの2つを軸に、コミュニケーション活性化と生産性向上を実現している点です。予約なしで利用できる打ち合わせスペースの設置や、集中して業務に取り組める1人用作業空間を完備し、なおかつクラウドシステムも積極的に活用しています。
まとめ
社内コミュニケーションの不足は、業務に悪影響をもたらし企業の成長や発展も阻害するおそれがあります。活性化させることで、生産性の向上や業務効率化、イノベーションの創出、社員のストレス軽減といったメリットが得られます。まずは、自社の課題を明確にし、そのうえでコミュニケーション活性化に向けた取り組みを始めましょう。なお、社内コミュニケーション活性化にはOffice 365の導入が有効です。コミュニケーションの円滑化を実現するさまざまな機能が実装され、なおかつセキュリティも堅牢であるため、テレワークを導入している企業にも適しています。