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映像制作はAIでの自動化が可能 AIを活用したフレーミングソリューションを紹介

自社で制作している映像メディアのフレーミングを、AIで自動化できないか検討している社内マーケティング担当者の方は多いのではないでしょうか。映像制作をAIで自動化することにより、映像制作の効率化が可能です。本記事では、AIを活用した映像制作の方法やメリットについて詳しく解説していきます。

映像制作はAIでの自動化が可能 AIを活用したフレーミングソリューションを紹介

映像制作はAIで自動化が可能

AIによる映像の自動制作はすでに可能です。ディープラーニングという新たな機械学習の登場や、ストレージ技術の向上によるビッグデータの活用が普及したことなどを受け、近年AIの能力は飛躍的に向上しています。AI技術は、現在様々な分野で活用されていますが、映像制作の現場についても例外ではありません。

たとえば、スポーツ中継の世界では、すでにAIカメラを用いた撮影や編集が実用化されています。カメラマンによる撮影のように、AIカメラでもフィールド上の選手やボールを適切に追尾しながら試合を自動撮影することが可能です。また、なかには単に映像を自動撮影するだけではないAIカメラも登場しています。サーバーに送信した一連の映像をAIが編集し、まるでプロのカメラマンが撮影しているかのような中継映像に仕上げてくれるのです。自動でCM映像を挿入できる機能もあるため、何人分もの撮影・編集スタッフの仕事を代行していることになるでしょう。

こういったAIカメラの登場が示すように、映像の撮影から編集に至るまで、AIによる映像制作は既に一部の分野で実用化されています。本記事の最後で紹介するように、AIによるフレーミングの自動化も現在開発が進んでおり、今後AI技術がさらに成長し、普及していくにつれ、映像制作の現場においてAIが担当する仕事はますます増えていくでしょう。

AIを活用した映像制作のメリット

上記のようにAIを活用した映像制作は既に実用段階に達していますが、人の代わりにAIに映像制作を代行することでどのようなメリットを得られるのでしょうか。以下では、AIを活用した映像制作のメリットについて解説していきます。

映像制作のコスト削減

従来のように人間の手によって映像を撮影・編集する場合、カメラマンやエディターなどに支払う人件費が必要です。しかし、AIが映像の撮影・編集を自動で行うようになれば、こうした人件費の9割は削減できると言われていています。これによって企業は多くのコンテンツを低価格で制作できるようになり、たとえばマイナースポーツのように比較的市場が小規模でも、ファンのニーズに応えられる多様なコンテンツを提供することが可能です。

動画編集が簡単に行える

現在のAIは高度な画像認識能力や自然言語処理能力を備えています。こうした機能によって人間の顔を検出し、そこにモザイクをかけてマスク処理をしたり、音声を文字起こししたりすることも可能です。AIは撮影した映像を特定の要件の下でピックアップすることもできるので、単純な映像編集フローはAIに任せることで編集コストを下げられます。

映像の分析が可能

高度な画像認識機能によって正確な人物認識などができるAIを用いることで、映像の分析をすることが可能です。たとえば、映像の配信においては、一般人のプライバシー保護といったコンプライアンスの観点から、不適切人物の映り込みは避けることが推奨されます。こうしたコンプライアンス課題に対して、AIの画像認識機能と編集機能を活用することで、街頭での撮影において出演者の背後を歩く一般人の顔をAIに自動でモザイクをかけてもらうといった対策ができるでしょう。

AIを活用した映像制作の注意点

様々なメリットが存在する一方、AIによる自動映像制作にはまだ課題も存在します。

そのひとつとして、AIには感情がないため撮影した映像にメリハリがなく、興奮や感動が伝わりづらいことが挙げられます。これは「AIが芸術を理解できるか」といった問題にも通じるところがあるでしょう。そのため、AIが撮影・編集したコンテンツに人間のカメラマンが撮影したような個性を期待するのは難しいのが現状です。

とはいえ、現時点でもAIを活用することで映像制作が大いに効率化することも確かなため、たとえば映像の切り出しなど、一部の単純作業だけをAIにやってもらうというのも有効な手立てでしょう。いずれにせよ、AIに全ての作業を任せるのではなく、肝心な部分は人の手を加えたり確認したりした上で、最終的にリリースする映像を完成させることが大切です。

ソニーの映像自動切り出しシステムで映像制作の自動化を支援

AIを用いた映像制作技術は、日本においても研究が進んでいます。ソニービジネスソリューション株式会社は、日本テレビ放送網株式会社と共同で実施した、AI技術による「映像自動切り出しシステム(オートフレーミングソフトウェア)」の実証実験の結果を2021年3月19日に公表しています。

ソニーが開発したAI技術は、骨格推定や人物認識、最適な画角の推定などの機能を有しています。映像自動切り出しシステムでは、このAI技術を活用し、4Kで撮影された映像から任意の画角のHD映像を自動的に切り出すことが可能です。ユーザーは、このようにオートフレーミングされた画像をタッチパネルモニターで確認することが可能で、使用したい映像をタップすることで出力する映像を選択したり、映像の倍率を操作したりすることができます。

さらに、この映像自動切り出しシステムの特徴としては、多彩な仕様で映像のフレーミングができることが挙げられます。たとえば、単独の出演者だけを映したかったら「ワンショット」、複数人を同じ画角内で映したければ「グループショット」を選択することで、希望通りの映像をフレーミングできます。また、ワンショット映像を合成して複数画面に表示するといった使い方も可能です。

本システムの開発は2019年5月から開始され、2021年2月には、日本テレビ系列の番組収録で実際にその性能検証も行われています。この実証実験によって、本システムを活用することで撮影機材や人員のコストカットを実現できることが確認されています。映像自動切り出しシステムを活用することで、番組制作の効率化につながるだけでなく、撮影環境における人員の密集状態を減らすことも期待できます。番組制作現場の人員を節減できることは、新型コロナウイルスの感染予防対策としての効果も副次的にもたらされるでしょう。

ソニーと日本テレビが行った実証実験が示すように、高い専門性を要するカメラマンの業務をAIが補助して最小コストでの番組制作が可能になれば、予算や人員などのリソース不足で制作が難しかった小規模な組織でも番組制作が実現できるようになり、制作の自由度の向上やコンテンツの充実化につながります。あるいは、人の手では不可能なカメラワークもAIならば実現できるといった場合もあるでしょう。このようにAI技術を活用することで、番組制作の現場に新たな展開が生まれることが期待されます。

なお、この映像自動切り出しシステムは、2021年3月に実証実験の結果が公表されたばかりで、まだ販売はされていません。しかし、この実証実験が示すように、AIによる自動的な映像制作技術は既に実用段階にあり、今後もさらに活用の幅を広げていくことが予想されます。

まとめ

本記事ではAIを活用した映像制作のメリットや新たなシステムについて解説しました。AIによる映像技術はまだ一部で課題が残っているものの、すでに実用化されています。特にソニーが開発した「映像自動切り出しシステム」においては、AIによる多彩なフレーミングが可能なことが実証されており、早期の販売が期待されています。

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