製造業

AIによる外観検査の実用例と異常検知について

現在、外観検査のヒューマンエラーを防止するソリューションとして、AIによる異常検知の導入が注目されているのをご存知でしょうか。この記事では、そもそもAIとは何かといった基本から、AIを用いた異常検知の概要やメリット、注意点を紹介します。

AIによる外観検査の実用例と異常検知について

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AIとは

AIとは、従来は人間の手で行われていた知的作業を、コンピューターによって実行する人工的なシステムです。AIは英語の「Artificial Intelligence」の頭文字を取った用語で、日本語では「人工知能」と訳します。

AIを大きく発展させ、世界から注目を集めるきっかけになったのは「機械学習」と、それを発展させた「ディープラーニング」です。いずれもAIが記憶したデータを元に、最善策を学習するための技術を指します。

まず機械学習は、コンピューターに大量のデータを繰り返し記憶させ、その中に隠れた特徴やパターンを発見させる学習方法です。学習結果を新しいデータに活用することによって、データの分析や予測が可能となります。

次にディープラーニングとは、機械学習をより発展させた学習方法です。ディープラーニングでは、人間の神経をモデルとして作成した「ニュートラルネットワーク」を用い、より高度な分析が可能となりました。

機械学習では「何に着目してデータを見分けるか」、例えば「リンゴ」と「青リンゴ」を区別するために「色に注目しなさい」と人間が指示を出す必要があります。一方でディープラーニングでは人間による指示が必要とせず、注目すべき点をAI自身が学習し、2つを区別するのです。

なおAIの学習には膨大な量のデータが必要です。しかし今日では、ビッグデータ技術が発展したことにより、そうした学習用データも確保しやすくなりました。

AIによる外観検査の活用と異常検知とは

AIによる外観検査について何か知る前に、そもそも外観検査とは何かおさらいしましょう。外観検査とは名前の通り、製品の外観に異常がないかチェックする検査のことです。外観検査では製品の外観に傷や変形、シミなどの異常がないかを調べます。

外観検査における異常検知を人間の手で行うと、どうしてもヒューマンエラーによる見落としが発生してしまいます。そこで現在、AIの異常検知によって外観検査を行う方法が注目されているのです。

AIによる異常検知では、これまでに蓄積した大多数のデータと比較して、振る舞いが異なるデータを検知する技術が利用されます。外観検査にAIによる異常検知を用いることで、異常を正確に発見できるため、ヒューマンエラーによる見落としを予防する効果があります。

AIによる異常検知のメリット

外観検査にAIの異常検知を採用すればヒューマンエラーを防げますが、それによって、どんなメリットが生まれるのでしょうか。以下、3つのメリットをご説明します。

①属人化の解消

人間の手による外観検査では、豊富な経験と実績を持つベテラン検査員のスキルに頼って行われる傾向がありました。ベテラン検査員が退職した場合、新たに同程度のスキル・実績を持つ検査員を育成しなくてはなりません。しかし、検査員の教育には多大なコストがかかる上に、ベテラン検査員と新人・中堅検査員が混在している場合、検査の質にムラが生じるリスクも生じます。

そこでAIによる異常検知を導入すれば、ベテラン検査員と同等のスキルをAIが行使しつつ、長期間の検査を行います。もちろんヒューマンエラーも生じません。新人の検査員を教育にかかるコストもカットできる上、検査の品質も安定するでしょう。

②突発的な事故や故障の削減

人間による外観検査では、突発的な事故や故障による影響を避けられません。例えば、照明が変わるといった少しの環境変化によって、細かい異常を見逃してしまうケースが見られます。一方で、AIによる検査であれば、人間が見落としてしまっていた異常もより正確に検知可能です。これによって事故・故障の発生を大きく減らせます。

③人件費の削減

AIであれば、ベテラン検査員と同様の品質で外観検査を進められるだけにとどまらず、ヒューマンエラーも発生しません。そのためAIを導入すれば外観検査を自動化できます。新たに専門の検査員を採用する必要がないので、人件費を大幅に削減可能なのです。

AIによる異常検知の活用事例

AIによる異常検知を導入した事例はさまざまなシーンで多数報告されており、工業製品の外観検査はもちろん、農産物・食品の遺物検査、病理組織の画像診断検査など、さまざまな分野でAIによる異常検知が導入されています。

AIによる異常検知では最初に、学習済の正常データと異常検知したいデータを比較し、その上で傷・遺物などの異常を検出します。例を挙げると半導体分野において、AIは半導体素子上の傷も解析可能なため、「AIが生成した正常画像」と「異常検知したい半導体素子の光顕微鏡写真」を比較します。このようにして、異常が出る割合をヒートマップで可視化するのです。

AIによる外観検査は万能ではないケースも

AIによる外観検査は正確ではありますが、必ずしも万能ではありません。例えばAIに機械学習をさせる場合、人間がAIに指示を出して、分析方法を覚えさせる必要がありました。しかし、AIに教える内容に不足があったり、誤ったデータを学習させてしまったりすると、AIは間違った分析をしてしまいます。

また、AIの分析自体は常に変わりませんが、外部の影響、例えば気温や湿度の関係で製品の外観が変化すると、AIは分析を誤る確率が高くなります。

それから、AIを使ったとしても不良品を残らずすべて発見できません。機械学習より高度なディープラーニングにおいても、分析可能なものは「不良品である確率」です。つまり仮に99.9%の確率で不良品を見つけられるとしても、残りの0.1%は見逃すことになります。

このように、AIによる外観検査は万能でないことを覚えておきましょう。AIの外観検査を使う際はその特徴を理解して、人間が補う範囲や、ほかの手法との組み合わせなどを検討する必要もあります。

今後、AIによる外観検査の将来性について

AIによる外観検査は期待が大きい一方で、課題も少なくありません。まず機械学習を使った外観検査は多大な工数をかけ事前準備が必要な上に、専門の技術者が必要です。機械学習を行うためには、膨大な量のデータに加え非常に高いスペックのハードウェアも求められます。これらコスト・負担と引き換えにしてもAIによる外観検査が必要になるか検討してなくてはなりません。

またAIは機械学習によって、人間と同じような思考を再現できますが、期待通りの結果を出せないこともあります。そして今日ではまだ、「AIがどんな基準で不良品と判断したか」を人間が把握することはできません。そのため、仮に想定と異なる結果が出たとしても、どうやって改善すればよいかわかりづらいという課題もあります。

一方ディープラーニングにおいても、絶対確実な外観検査を実行できているというわけではありません。そのため、より確実に不良品を発生させないように、非常に厳格なルールで判定させるようにしている例もあります。この場合、数多くの良品が不良品と誤って判断(オーバーキル)されているのです。

そのため、このケースでは不良品と判断された製品を検査員が改めて目視でチェックし、本当に不良品かをチェックしています。このチェックに関してもAIによる外観検査を持ち込みたいところですが、この判定ルール作成は困難です。

そうした一方で、アーリーアダプター(初期採用層)の中には、今後すべての検査がディープラーニングに置き換わるだろうと推測し検証を続けている人もいます。今後ディープラーニングの精度がさらに向上するためです。

AIによる異常検知を外観検査に活用すれば、ヒューマンエラーをなくせることで検査の品質向上も可能となります。そのほか、外観検査の自動化による生産性の全体的な向上も期待できます。

ただし、AIを外観検査に導入するためには専門の技術者や膨大な準備などが必要です。HOYAデジタルソリューションズは、AIなど最新テクノロジー含めたITツールについて、導入・運用サポ―トを提供しています。製造業の一員として、HOYA株式会社の基幹システムや情報系システムで得た経験とノウハウを活かせるのが同社の強みです。

まとめ

AIによる異常検知では大多数のデータと比較し、振る舞いが異なるデータを異常として検出できます。外観検査にAIによる異常検知を採用することで、ヒューマンエラーの予防や検査の精度・品質を高める効果が期待できるほか、属人化の排除や人件費削減など、さまざまなメリットが多数あるため、導入をぜひご検討ください。

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