医療・製薬

電子薬歴とは?特徴やメリット、普及率について

薬局を運営するにあたり新たに電子薬歴システムを導入することを検討している方も多いのではないでしょうか。この記事では電子薬歴の導入を考えている方に向けて電子薬歴の概要とメリットやデメリット、導入のポイントについて解説します。

電子薬歴とは?特徴やメリット、普及率について

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「電子薬歴」とは

「薬歴」とは薬剤服用歴のことで、患者氏名や生年月日などの基本的な情報とともに薬剤の処方歴や服用の状況、副作用の記録、相談事項など薬に関するすべての情報をまとめたものです。調剤薬局の記録としては、法で記入が義務づけられている「調剤録」がありますが、調剤録と薬歴の違いは、調剤録があくまで処方した内容の記録であるのに対し、薬歴は処方内容に加えて服薬の状況や相談内容なども併せて記載するという大きな違いがあります。「薬剤服用歴管理指導料」が薬歴を記録し残すための料金に相当します。

これまでは、薬歴もその都度、紙に記録して管理する形をとっていましたが、現在では診療報酬を健保などに申請するために使うレセプトコンピュータと連動させ、薬歴を電子的に記録できるようになっています。

こうして電子的に記録された薬歴が「電子薬歴」で、主に調剤薬局で使用されることを想定して構築されたシステムになっています。

電子薬歴の特徴

電子薬歴では患者の薬歴をデジタルデータとして保管して、データベースとして管理します。全国の調剤薬局の9割以上では既にレセプトコンピュータが導入されていますが、このレセプトコンピュータには通常、電子薬歴を作成・管理する機能があり、通常はこの機能を利用して電子薬歴を作成します。

作成した薬歴のデータはインターネットに接続してクラウド上のストレージで保管する場合と、社内のPCや保存媒体に保管して運用する場合があります。

電子薬歴の電子データは外付けハードディスクや光ディスクなど各種記録媒体に容易にバックアップを取ることができます。

紙の帳簿は災害に弱く、火災や洪水などの被害に遭った場合に焼失したり汚損するリスクがありますが、電子薬歴の場合はバックアップデータを保管しておけば、データの復旧が可能で貴重な情報の紛失を免れることができます。さらにクラウドサービスを利用する場合は、店舗間でデータを共有し一元管理したり、訪問先などでデータを確認したりすることも容易に行えます。

電子データで保管する電子薬歴は、紙の場合と異なり倉庫など広大な保管場所を必要としないのも特徴です。

紙で保管した場合、患者の氏名順、処方の年月日順などに整理して必要な時に参照できるようにするためには保管庫などのある程度まとまったスペースが必要で、書類を保管庫に運び入出庫を行うなど管理の手間もかかります。また、用紙が経年劣化で破損する、記入に使用したインクが退色するなどして判読不能になるリスクもあります。

これに対して電子薬歴では、開局から蓄積されていく情報をすべて保管する場合でも、PCを置くスペースさえあれば基本的には可能です。さらに、クラウドサービスを利用してクラウド上のサーバーに保管すればそのスペースも不要です。

また、電子薬歴は、入力画面で正しい薬名をサジェストする辞書機能や、添付文書の閲覧サービスと連動して薬の内容を確認できる機能などの入力補助機能が標準で備わっていることが多いため、入力にかかる時間を大幅に短縮できるのも大きな特徴です。さらに「アレルギー」など問診で使うことが多い語句をタグ付けして分類、抽出するなどの便利な機能が使える場合もあります。

電子薬歴を導入するメリットとデメリット

ここでは電子薬歴を導入する場合のメリットとデメリットについて解説します。

メリット

電子薬歴の導入には薬局のあらゆる業務において多数のメリットがあります。

まず、入力作業を減らし、業務の効率化を行えることが大きなメリットとして挙げられます。

受付業務では、患者の薬歴を探し出して確認する時間を大幅に短縮することが可能になり、待ち時間短縮につなげることができます。

調剤の場面では、サジェストやアラートが表示される機能によって、前回から処方の内容が変更になったり医薬品の規格や適用が変更になった場合の見落としを防いだり、調剤の誤りを未然に防ぐこともできます。また、コメント機能などを使って引き継ぎ事項を確実に伝えることができます。

患者に服薬指導を行う場面も省力化が期待できます。薬歴のカルテはSOAP形式と呼ばれる規定のフォーマットに従って記入することが現在では主流になっています。これは「患者の主観(Subjective data)」「処方内容など客観的な情報(Objective data)」「医療専門家の立場での見解(Assessment)」「今後の対策(Plan)」に分けて記入する手法ですが、電子薬歴の場合、製品によってはSOAP形式に対応しており、指導の質を一定に保ちやすくなります。

デメリット

電子薬歴の導入と運用には相応のコストが発生するのがデメリットといえます。また、操作を覚えて使い慣れるまでの時間や努力が必要になり、その分の手間はかかります。

また、PCが故障したりネットワーク障害などでシステムが使えなくなり、復旧に時間がかかることもあります。システムトラブルが発生した場合の連絡先や対応方法などは事前に確認しておきましょう。

また、電子データを扱うことでセキュリティに関するリスクもあります。災害によるデータの逸失や、情報漏洩などの事故を想定して、普段から対策を講じておくことが大切です。

電子薬歴の普及率は?

厚生労働省が公表している「かかりつけ薬剤師・薬局に関する調査報告書」によると、2018年から2019年にかけて薬局を対象に行ったアンケートでは、電子薬歴システムを導入していると回答した薬局は全体の70.9%に上り、大半の薬局がすでに導入済みであるという結果になっています。電子薬歴を新たに導入する薬局は今後も増加していくことが予想されています。ICTのさらなる進歩と統括システムの整備により、電子版お薬手帳やEHR(電子健康記録)、PHR(個人健康記録)などのデータとも広く連携してよりよい医療体制の構築に活用されることが期待されています。

まとめ

電子薬歴の導入によって、調剤薬局の作業を大幅に効率化することが可能になります。また、薬歴の一括管理など患者側にとっても大きなメリットがあります。サービスによって操作性や閲覧のしやすさなどが異なりますので、それぞれの製品を見比べて、目的に合った製品を選んで運用していきましょう。

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