小売業

Eコマースの最新トレンド|2020年版(下期)

2020年は新型コロナウイルス感染症による自宅待機の影響もあり、Eコマースの利用が大幅に増加しています。そのなかでEコマースは大きな変化を遂げています。

本記事では企業でECサイトの運営を検討している方やEコマースのトレンドを把握したい人向けに、2020年に気になる最新トレンドを紹介します。

Eコマースの最新トレンド|2020年版

インフルエンサー・マーケティングの拡大

インフルエンサーマーケティングとは、タレントや著名人、モデルといった消費者に影響力を持つ人(=インフルエンサー)に依頼して自社商品・サービスを紹介してもらうマーケティング手法です。インフルエンサーが発信した情報がSNSのフォロワーを通じて拡散され多くのユーザーに影響を与えることで、自社商品・サービスの拡散を行うことが狙いです。

インフルエンサー・マーケティング自体はそれほど新しい手法ではありません。2000年代に入り読者数が多く知名度が高いアルファブロガーと呼ばれるユーザーに対して、イベント招待や商品提供を行うなどの施策が盛んに行われていました。しかし運用に対する明確なルールが決められておらず、ステマと呼ばれる、あたかも広告ではないような虚偽の投稿を行うことが問題になったことで一時は下火になりました。

最近ではSNSを利用する人が増えたことも影響して再びインフルエンサー・マーケティングが盛り上がりを見せています。運用についても広告であることを明示するように指導するWOMJガイドラインが策定されるなど、消費者に誤解されないような配慮がされています。

2020年のトレンドとしてはタレントのように数百万人規模のフォロワーを持つアカウントではなく、1,000人~数万人規模のフォロワーを持つアカウントが影響力を持って情報発信しているのが特徴です。ここ数年はInstagramの利用者増に伴い企業でもマーケティングやプロモーションにInstagramを活用する動きが強まっています。特定の分野において知名度と強い影響力を持つマイクロインフルエンサーを起用した取り組みに注目が集まっています。

AI技術による最適な接客

最近では人工知能(AI)がEコマース分野でも盛んに活用されています。

そのひとつが「Web接客」と呼ばれる分野で、ここ数年で導入する企業が増えています。これは自社サイトを訪問したユーザーに対して、どんな商品を閲覧しているか、過去にどのような行動をとったかなどを分析して最適なメッセージやキャンペーンを提案するシステムです。リアル店舗でスタッフが接客するのと同じように、ユーザーそれぞれの状況に合った接客を行う目的で活用されており、売上アップ効果が期待されています。

Web接客では、今まで人間が設定していたシナリオをAIによる自動設定にすることで、人間だけの場合と比較してより精度の高い接客対応が可能になります。さらにユーザーが増えて利用実績が増えるほどデータ量が増え、それを分析することでより効果が高い接客ができるようになります。

ほかにもAIがユーザーの質問に答えるチャットボットを導入するECサイトも増えています。商品購入前の質問に対して、それがよくある質問に含まれている場合はそのままAIが回答をし、対応が難しい質問にはオペレーターに引き継ぐことでユーザーの満足度を高めています。

DtoCによる販売が加速

D2C(Direct to Consumer)は数年前からアメリカを中心に海外で注目され始め、2020年には国内でもいっそう注目が集まっています。これは販売業者を通さずにメーカーが自社チャネル経由で直接消費者に商品を販売するモデルを指します。多くは自社店舗を持たず、自社ECサイトがメインの販売チャネルです。

販売業者・小売店を挟まない分、手数料がかからないというだけでなく、直接消費者の声や販売データを取得できることから商品開発やマーケティングに活用できるメリットもあります。さらに消費者と直接コミュニケーションを取ることで自社ブランドの理念や商品への想いといったストーリーも伝えやすくなります。

Eコマース配送の変革

Eコマース利用の増加に合わせて、膨大な荷物を処理する配送業者の負担軽減が大きな課題になっています。国内宅配便大手のヤマト運輸では、急増する荷物に対応しきれず2017年に総量規制を導入したことや、配送料金を値上げしたことは当時大きな話題になりました。それでもヤマト運輸を含む宅配便全体の取扱量は増加しています。今後はより効率的な配送手段の確立が求められています。

その解決策のひとつがロボットやAIを活用したピッキングの自動化による省人化です。2020年はそれに加えて配送自体を自動化する方向に進んでいます。そのため今後は自動運転の車両や荷物配送の技術開発が進むと見られています。

既に自動運転によるバスなどは実証実験ベースで稼働し始めています。スタートアップのZMPでは、自動運転技術を応用した宅配ロボット・デリバリーロボットの「DeliRo(デリロ)」を開発するなど実現の可能性が高まっています。

パーソナライズによるショッピング体験の向上

パーソナライズとは、その人ごとにサービスを最適化することを指します。Eコマース分野では、ユーザーが過去に購入した履歴や閲覧データに基づき、その人に合った商品を提案することなどが挙げられます。

たとえばジーンズ販売のメイドウェル(Madewell)では、ユーザーが過去に何を買ったか、その後どうしたかによってパーソナライズ体験を提供しています。たとえばユーザーが何らかの理由で返品した商品のサイズを元に、そのユーザーのサイズを把握し、ユーザーのサイズに合った商品をページに表示することで、その場で商品をカートに入れることができるようにしています。

ECと実店舗による新たな購買体験を実現

Eコマースが増加するのに伴い、逆にリアル店舗の重要性が高まってきています。従来はリアル店舗では捕捉するのが難しかったユーザーの行動データを取得する目的や、リアル店舗だけでは獲得が難しい顧客を捕まえる目的でオンラインストアが活用されていました。しかし最近ではオンラインストアでは難しいユーザーとのコミュニケーションや商品を体験してもらう場としてリアル店舗の活用が進んでいます。

オンラインとオフラインを融合したOMO(Online Merges with Offline)というマーケティング概念も広がっています。オンラインストアで購入したユーザーに対してリアル店舗限定のクーポンを配信して来店を促したり、ショールームとしてリアル店舗を活用したりする企業も出てきています。前述のD2Cもメインは自社ECですが、ユーザーに商品を体験してもらう場として期間限定のポップアップショップを出店するといった事例も増えています。2020年はさらにECと実店舗を組み合わせて新しい購買体験を提供する動きが進むと見られています。

PWA(プログレッシブウェブアプリ)によるシームレスな購入

若い世代を中心に、スマホが生活の中心になっているのは多くの方が実感していることでしょう。Eコマースの中心もPCからスマホへとシフトしています。

そのようななかで注目されているのが、プログレッシブウェブアプリ(以下PWA)です。PWAとは、アプリのように動くWebサイトのことです。PWAはHTMLやCSS、JavaScriptといったWebサイト構築の技術を使って開発されています。対して通常のスマホアプリはネイティブアプリと呼ばれ、JavaやObject-Cなどで開発されます。PWAはWeb技術を使っているため、デバイスごとに開発しなくて済むほか、開発人口が多いなどネイティブアプリよりも開発ハードルが下がります。

PWAを活用すると、消費者がインターネット上で商品・サービスを発見して店舗へ行き、購入するまでの一連の流れをひとつのアプリで提供できるようになります。

UGC(ユーザー生成コンテンツ)の活用

UGC(User Generated Contents)とはユーザーが作成したクチコミや投稿などのコンテンツです。最近はSNSの影響力が強まり、消費者は企業が発信する情報よりもSNS上に投稿された情報のほうを信頼する傾向が生まれています。

企業側でもUGCを活用したプロモーション施策を行い始めています。たとえばSNSで商品写真を投稿してもらうキャンペーンはその一例です。ユーザーが投稿したコンテンツはUGCとして有用な資産になります。

サスティナブルなEコマースが注目される

2020年は、今まで以上にサスティナブルな商品が選ばれるようになると予測されています。サスティナブル(Sustainable)とは「持続可能な」という意味の言葉で、Eコマースの場合は環境に配慮した取り組みをしたり、倫理的に製造された商品を扱ったりすることを指します。

たとえばサスティナブル製造のひとつとして、分散製造システム(DMS)が挙げられます。これは製造拠点を小規模工場に分散させることです。製造工場と消費者を近い場所で結び、無駄な輸送をなくし排気ガスによる汚染を削減できます。また新たに工場の雇用が生まれることで地域経済活性化につながることもメリットでしょう。

サスティナブル商品は、それを包むパッケージにも配慮が必要です。よりコンパクトで無駄のないパッケージの開発や、使用後にも焼却や埋め立てをすることなくリサイクルできるシステムなどを生み出すことで、ユーザーに商品以上の価値提供できます。たとえばAmazon社では、売主にパッケージ指針の遵守を呼び掛けています。商品に対してパッケージがあまりにも大きすぎる、不必要なパッケージングをしている売主には手数料がかかってしまう仕組みを取っています。

音声によるEコマース

2017年にAmazon echoやGoogle Homeといったスマートスピーカーが上陸し、音声で操作するVUI(Voice User Interface)の普及が進んでいます。最近ではスマホの音声アシスタントを利用して音声で検索する人も増えてきています。このような流れを受けて、2020年以降はVUIを活用したオンラインショッピングが増加すると予測されています。

先行するAmazonでは、スマートスピーカー経由で「アレクサ、いつもの洗剤を再注文して」といった注文が可能になっています。現在は過去の注文履歴や一部の商品から注文する方式ですが、今後はより自由に商品を選んで注文できるようになっていくだろうと見られています。

サブスクリプションモデルに拡大

サブスクリプションとは、月単位や年単位で、一定額で商品やサービスを利用できる契約形態のことです。代表例は動画配信サービスです。Netflixでは月々1,000円前後の利用料を支払うことで、対象の動画コンテンツが見放題です。ほかにも毎月定額で高級バッグが利用できるラクサス、カーシェアリングなどモノのサブスクリプションモデル、その他ラーメンやコーヒーなどの飲食店でも利用されています。オンラインで提供されるサブスクリプションのシステム基盤であるASPサービスも利用の増加に伴い、充実の一途をたどっています。

Eコマースを運営する企業にとっては、毎月固定の利用料が入るビジネスモデルは事業計画を立てやすくなるメリットがあります。利用者にとっては、購入するよりも安価に商品・サービスを利用できる、必要なときだけ利用できる、などのメリットがあります。サブスクリプション自体は数年前から増加していますが、2020年にはその流れがさらに加速すると予測されます。

まとめ

2020年のEコマースは、ユーザーの行動変化にいち早く対応し、AIやロボットなど新しいテクノロジーを取り入れながら進化しています。今後はOMOやPWA、UGC、VUIなどを積極的に取り入れることで、ユーザーに新しい価値を提供しながらEコマースを展開していけるでしょう。

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