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自治体DX推進手順書とは? 「全体手順書」を中心に四つのステップを解説

デジタル庁の開庁に象徴されるように、現在の日本では国を挙げてICT活用が進められています。そうした中、各自治体でもスムーズにDXに取り組めるよう総務省から公表されたのが「自治体DX推進手順書」です。本記事では、この資料の手引きに基づいて、自治体がDXを進めるための4つのステップをわかりやすくご紹介します。

自治体DX推進手順書とは? 「全体手順書」を中心に四つのステップを解説

自治体DX推進手順書の概要

「自治体DX推進手順書」とは、国が進めている「自治体DX推進計画」を実現するための手引書です。

日本では長年、国際競争力の維持や、少子高齢化による将来の人手不足への対策として、ICT活用への取り組みが課題となっていました。この社会的課題は、2019年に発生した新型コロナウイルスの世界的流行を受けて一層浮き彫りとなり、現在では制度や組織をデジタル化に合わせて変革していく社会全体の「デジタル・トランスフォーメーション(DX)」が強く求められています。

こうした自治体のDXをスムーズに進めるべく、総務省によって策定されたものが自治体DX推進手順書です。そこには、自治体が取り組むべきDXの優先事項・内容をはじめ、総務省や関係省庁による支援策などが取りまとめてあり、主に下記の4つの文書で構成されています。

(1)「自治体DX全体手順書」
DXの実施において必要な一連の手順を取りまとめてある文書です。この手順の概要については、次項で詳しくご紹介します。

(2)「自治体情報システムの標準化・共通化に係る手順書」
「ガバメントクラウド(Gov-Cloud)」の活用に代表されるように、自治体の情報システムを標準化・共通化する意義や効果、それを実現するための作業手順などが示されている文書です。

(3)「自治体の行政手続のオンライン化に係る手順書」
自治体の行政手続きをオンライン化するための取組方針や、それを実現するための作業手順などが記載されている文書です。

(4)「参考事例集」
自治体DX全体手順書で示されているDXの取り組みについて、先行する自治体の実施例を取りまとめた文書です。

自治体DX全体手順書とは

前項でご紹介したように、各自治体がDXに取り組むための一連の手順は、自治体DX全体手順書にて示されています。この文書は、DX推進計画のうち「自治体におけるDX推進体制の構築」に対応し、各自治体がDX を推進する際の参考資料として作成されるものです。自治体DX全体手順書において、DXの実施プロセスは次の4ステップで示されています。

ステップ0 認識の共有

自治体においてDXを実施するための前提となるのが、「認識の共有」です。DXは単に導入するだけでなく、実際に日常の業務やサービスに活用されてこそ意味があります。そのためには、自治体のトップが自らDXについての理解を深め、リーダーシップを取り、職員あるいは市民とその認識を共有していくことが欠かせません。

たとえば大阪府豊中市では、市長自ら「とよなかデジタル・ガバメント宣言」を発し、庁内外へ向けてICT活用の意気込みを表明しました。また、千葉県市川市では関係者間の意識を共有し、整合性の取れたDXを実現するために「DX憲章」を策定しています。

DXを活用するうえで重要になるのは、利用者の視点をメインに据えた「サービスデザイン思考」を共有することです。サービスデザイン思考の指針としては、国が示している「サービス設計12箇条」が参考になるでしょう。ここには、「利用者のニーズから出発する(第1条)」「サービスはシンプルにする(第5条)」「システムではなくサービスを作る(第12条)」といった具合に、DXを実際の業務やサービスに浸透させていくうえで必要な考え方が示されています。

ステップ1 方針の決定

DXの基本的な理解を得たら、次はDXを全庁的に実施していくための全体方針を決定し、広く共有します。個別のサービスのデジタル化などは、この全体方針に基づいて実施していくものです。全体方針は、「DX推進のビジョン」と「工程表」を主軸に策定していきます。

まず、DX推進のビジョンを作る際に重要なのは、自治体DXの原則的な意義や標準的な取り組み内容を押さえつつ、地域の実情も踏まえたうえで、実際のDX推進の構想を描くことです。また、工程表の策定においては、自組織のデジタル化の進捗状況を踏まえて、DXの取組内容や取り組む順序などを考えていきます。

その際、重要となってくるのはBPRについても考えておくことです。BPRとは「ビジネスプロセス・リエンジニアリング」の略で、既存の業務内容や業務プロセス、組織構造などを抜本的に見直す取り組みを指します。DXの効果を最大化するためには、既存の業務やサービスを単にデジタル化・オンライン化するだけでなく、たとえば「申請自体を不要にできないか」など、利用者目線に立って根本的なところから検討を始めることが重要です。自治体DX全体手順書には工程表の作成イメージも示されているので、これを参考にするとよいでしょう。

ステップ2 DX推進体制の整備

DXの方針を策定したら、それを実現するための体制整備に着手します。全庁的なDXを推進するには、まずDXを推進するための担当チームを結成し、そこを主軸に各業務部門と連携できる体制を構築することが有効です。

とはいえ、DXは推進チームの内部だけで完結するものではありません。全庁的あるいは部門横断的にDXを活用していくには、一般職員も職務に応じたICTスキルを身につける必要があります。それゆえDXの実施においては、ツールの導入だけではなく、デジタル人材の育成ないしは増員が欠かせません。

そのためには、たとえばICTスキルに長けた外部人材を優先的に雇用したり、既存の職員にOJTとOFF-JTの両面を組み合わせた研修を実施し、ICTの知識・スキルを育成したりするなどの取り組みが重要です。

ステップ3 DXの実行

ここまでの一連のプロセスを経たら、関連するガイドラインなどを踏まえつつ、個別のDXを実行していきます。とはいえ、DXは一度実行したらそれで終わりではありません。DXの効果を最大化するためには、各自治体が個別に進捗管理しつつPDCAサイクルを回し、継続的にDXの効果を確認・改良していくことが欠かせません。

また全体手順書では、DX実行のために役立つフレームワークとして、「OODA(ウーダ)ループ」の活用についても触れられています。OODAループとは「Observe(観察)」「Orient(方向づけ)」「Decide(意思決定)」「Act(行動)」の頭文字を取った名称で、意思決定プロセスの仕方を理論化したものです。

PDCAサイクルにせよOODAループにせよ、その根本にはDXの実効性を継続的に検証し、改善していくべきだという考えがあります。こうしたフレームワークを活用し、柔軟で速やかな意思決定をしていくことが、自治体におけるDX実現の鍵といえます。

自治体のDX推進に役立つツール

ここまで、自治体におけるDXの取り組み方について解説してきました。では、自治体のDX推進に役立つICTツールとしては、具体的にどのようなものがあるのでしょうか。ここでは、代表的なツールを2つご紹介します。

AI-OCR

「OCR」とは、スキャンした画像に含まれる数字や文字を識別する光学認識技術です。「AI-OCR」は、これに人工知能(AI)の機能を加えたもので、読み取った画像からそのパターンを認識して、データを種別に自動分類することが可能です。

AI-OCRを使えば、市民が手書きした書類を手入力でシステムに登録したり、仕分けしたりする手間が省けるので、入力ミスなどのヒューマンエラーを防ぎつつ、業務効率化につながります。AI-OCRについての詳細は、下記のページをご覧ください。

AI-OCR導入ステップガイドー導入効果を出すために事前にするべきことー

RPA

「RPA」とは「Robotic Process Automation」の略で、機械によって業務プロセスを自動化することを意味します。RPAで自動化できるのは基本、定型的な事務作業であり、自治体においては税関連や児童手当・子育て支援、人事給与などの入力業務が主な活用対象です。

RPAを導入することによって、職員はこれらの定型業務から解放されるため、都度、柔軟な判断が求められるような重要業務により注力できるようになります。これにより、人手不足の解消や残業の抑制なども期待できるでしょう。RPAについての詳細は、下記のページをご覧ください。

官公庁向け:RPA管理ツールで実現する業務自動化集中管理

まとめ

本記事では自治体DX推進手順書の内容について、全体手順書を中心に解説しました。自治体のDX導入プロセスは、「認識の共有」「方針の決定」「DX推進体制の整備」「DXの実行」という4つのステップから構成されています。自治体DX推進手順書をはじめとした各ガイドラインを参考に、ぜひDXの実現に取り組んでください。

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