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リバースエンジニアリングが違法になるケースとは メリットや注意点を解説

開発時間の短縮やコスト削減に有用な手法が「リバースエンジニアリング」です。本記事では、リバースエンジニアリングの概要とメリット、リスクを回避するために知っておきたい注意点を紹介します。技術流出を阻止する対策を講じたうえで、適切にリバースエンジニアリングを活用すれば、競争力の維持・向上に結びつくはずです。

リバースエンジニアリングが違法になるケースとは メリットや注意点を解説

リバースエンジニアリングの意味とは

リバースエンジニアリング(reverse engineering)とは、他社が開発した既存の製品を入手して分解したり、動作を確認して製品の構造を分析したりすることにより、自社に有用な技術情報を取得する開発手法です。ハードウェア製品だけでなく、ソフトウェア製品に対してもリバースエンジニアリングは用いられており、活用シーンによってその目的や意味が異なります。

リバースエンジニアリングの活用シーン

リバースエンジニアリングは、ハードウェア・ソフトウェア製品だけでなく、製造業でも活用されています。ハードウェア製品を対象にする場合の目的は、回路パターンの解析と物理的な弱点の発見です。対象となる製品は他社製品のみでなく、設計書が引き継がれていない古い自社製品の分解を行い、製造方法を明らかにすることも可能です。

ソフトウェア製品を対象に行うバースエンジニアリングでは、設計書で把握できない詳細な技術情報の取得も可能です。CPUが理解するための機械語を人が理解できるソースコードへと復元する「逆アセンブル」「逆コンパイル」といった2つの手法が存在します。ソフトウェア製品におけるリバースエンジニアリングでは、技術を獲得するほか、ご互換性の確保やバグ、脆弱性の発見とパッチの開発も目的に含まれます。
製造業におけるリバースエンジニアリングとは、通常とは逆のプロセスをたどって開発を進めていくという意味です。部品や製品から設計図を作成していくやり方を指すため、IT業界とは意味が異なります。

リバースエンジニアリングによる開発のメリット

リバースエンジニアリングは、単なるコピーを目的に行うものではありません。リバースエンジニアリングにより得た情報を自社製品の開発に取り込めば、開発期間の短縮や、品質の向上に期待できるでしょう。またセキュリティ性強化のための分析としても非常に有効な手法です。

開発期間を短縮できる

近年では、デジタルの進歩に伴って製品のライフサイクルは短縮化する傾向にあります。そのため、開発段階で時間がかかってしまうと市場のニーズを逃し、不利な立場となる可能性があります。このようなリスクを回避するために、企業は品質の高い製品をスピーディーに開発して市場に投入しなければなりません。既存製品から獲得した情報を入手して新たなアイデアを得たり、複数の技術を組み合わせたりして開発に取り組めば、短期間での開発が実現しやすくなります。

開発コストを削減できる

新製品を開発には、多くの人手やコストを要します。しかし、リバースエンジニアリングを用いた開発であれば、従来のように試作品を作成して実験・考察・検討を何度も重ねるといったプロセスを簡素化することも可能です。プロセスの見直しや最適化によって、開発コストの大幅な削減につながるのもリバースエンジニアリングの大きなメリットです。

より良い製品づくりが可能になる

他社が開発した既存製品を解析すれば、市場や消費者の受け止め方や販売状況、どのような課題があるのかも容易に把握できます。分析により得られた情報を自社製品の改善につなげれば、クオリティの高い製品を世に送り出せるようになります。リバースエンジニアリングを活用して他社と差別化した製品の開発に成功すれば、より市場評価の高い製品づくりが実現するでしょう。

埋もれたノウハウを掘り起こし活用できる

市場には、仕様書が作られていない古い製品や、何らかの事情で図面や設計データが残されていない製品も存在します。リバースエンジニアリングを用いて、それらの製品がどのようなノウハウに基づいて開発されたのかを知り、新製品を開発する際のアイデア創出につなげる活用方法もあります。また、このように取得したデータをデジタル化して保存しておけるのもリバースエンジニアリングのメリットです。

リバースエンジニアリングは違法になる?

メリットの多いリバースエンジニアリングですが、他社の技術情報を入手して自社製品に取り入れることに不安を抱く方も多いでしょう。ハードウェアの内部情報を不正に獲得して悪用したり、ソフトウェアの脆弱性を探してサイバー攻撃を仕掛けたりするのは明らかな違法ですが、リバースエンジニアリングを行うこと自体は合法とされています。

リバースエンジニアリング自体は「違法ではない」

2018年、著作権法の改正に伴い「柔軟な権利制限規定」が整備されました。同年、文化庁が公表した「デジタル化・ネットワーク化の進展に対応した柔軟な権利制限規定に関する基本的な考え方」では、調査解析を目的としたプログラムの著作物利用は、プログラムの実行によりその機能を享受することに向けられた利用行為に該当しないと示しています。

このように、リバースエンジニアリングは法律上でも開発手法の一種として認められており、禁止行為ではありません。すでにリリースされている製品を入手し、それらを解析して得た情報の活用は、多くの企業が積極的に取り入れている手法です。ただし、使い方によっては違法となり、ペナルティを負う責任があることも知っておく必要があります。

リバースエンジニアリングが違法となるケース

リバースエンジニアリングの作業が著作権法の侵害に該当する翻案物や複製物に該当してしまうケースや、習得した知識を基に特許製品を製造・販売した場合には特許権侵害が発生する可能性もあります。また、不正競争防止法違反とみなされる営業秘密の不正取得も違法になるおそれがあるため注意が必要です。

ソフトウェア製品において著作権法で保護されているのはソースコードです。そのため、ソースコード自体をそのままコピーして使用してしまえば、著作権侵害となります。研究開発のためにソースコードを確認したうえで、他社の「アイデア」を活用することは問題になりません。

また、他者の特許権を流用して自らに直接利益を生じさせる行為は違法となりますが、あくまで研究や試験のために製品を分解・解析するのは合法です。思わぬリスクを避けるためにも、リバースエンジニアリングの正しい知識を身に付け、情報を活用する目的にも十分な注意が求められます。

リバースエンジニアリングによる技術盗用を防ぐポイント

リバースエンジニアリングによって多様なメリットを得られる一方、悪意ある他社が自社製品の技術情報を盗用するリスクにも備えなければなりません。企業の競争力を維持するためには、技術流出を防止して他社の市場参入を阻止する必要があります。価格競争を回避して持続的に競争優位性を獲得するためにも、自社の技術情報をしっかりと守ることが大切です。

ソースコードを難読化する

アプリケーションや自社独自のプログラムの保護対策に有効なのが、ソースの難読化です。前述したように、ソフトウェア製品のリバースエンジニアリングでは、ソースコードを盗まれるリスクが高くなります。アルゴリズムを不明瞭にするなど、解析しづらいソースコードを記述しておけば、企業の知的財産侵害や不正アクセスによる情報漏えいリスクも低減できます。

データ自体を暗号化する

難読化による対策は、いわば解読されるまでの時間稼ぎです。データを暗号化しておけば、第三者の手に情報が渡っても、内容を解読されるリスクは大幅に低減されます。暗号化アルゴリズムに個々で異なる条件を取り入れれば、第三者による解読は極めて困難になります。特定の情報にアクセスできる送信者と受信者のみが鍵を所持して適切に管理すれば、権限を持たないユーザーは情報を閲覧できません。最近では暗号化に有用なツールも登場しており、内部不正の防止にも高い効果を発揮しています。

まとめ

リバースエンジニアリングを取り入れれば、他社製品から取得した情報をヒントに品質の高い自社製品の開発を実現できます。活用する際には、目的や用途を誤って違法に問われないよう十分に注意しましょう。リバースエンジニアリングの活用と同時に、安全性の高い環境でデータを送受信するための整備も重要です。

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