医療・製薬

日本の医療が抱える社会問題とは?2025年問題も踏まえて分かりやすく解説

日本の医療が抱える社会問題とは?2025年問題も踏まえて分かりやすく解説

「医療業界における社会問題は解消できるのだろうか」

当記事をお読みの方は上記の疑問をお持ちではないでしょうか。医療業界にはさまざまな社会問題が存在しています。特に団塊世代が75歳以上になることで国民の多くが後期高齢者となる2025年問題は大きな影響を及ぼすでしょう。当記事では医療業界が抱える社会問題とその影響、解決に向けての取り組みを解説します。

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日本の医療が直面する社会問題一覧

日本の医療が直面する社会問題一覧

まずは日本の医療業界が直面している社会問題の主なものを解説します。また社会問題によって引き起こされる影響もあわせて確認しておきましょう。

日本医療の現状と主要な問題

医療業界は大きく分けると医薬品(製薬)、医療用品、医療機関の3分野で構成されます。それぞれの課題を確認していきましょう。

  • 医薬品
    • 設備投資の不足
    • 伸びない医薬品市場規模
    • イノベーションが起こりにくい環境
  • 医療用品
    • 国内競争力が高まりにくい環境
    • 半導体の導入をしにくい(シェアが低いため他業界が優先されてしまう)
  • 医療機関
    • 高齢化により需要は増加が見込まれる
    • 医療従事者や病床数など医療リソースが足りない
    • 医療従事者の長時間労働の常態化

上記の通り、各分野で課題が山積みとなっています。それぞれお金や従業員(医療従事者)が足りないことが大きな要因です。また医薬品や医療用品の分野では新しい企業が入っていく余地も少なく、競争力が生まれにくい環境となっています。結果として、現在参入している企業は設備投資にも消極的になり、イノベーションは起こりにくいです。

また医療機関は需要が増えるものの供給が追いつかない可能性が年々上昇しています。従事者や医療リソースが足りないことが要因であり、乏しいリソースで供給する結果として、長時間労働が常態化してしまいました。

日本医療の社会問題によって引き起こされる影響

日本医療の社会問題が引き起こす影響として以下があります。

  • 医療従事者が不足する
  • 無医村や地域格差が生まれる
  • 病院が不足する
  • 医療費が上昇する
  • 提供する医療の質が低下する

医療従事者が不足する

医療業界の社会問題はますます医療従事者の不足を加速させるでしょう。

現状でも医療従事者や医療リソースの不足は深刻な問題です。その結果、医療従事者の長時間労働が問題となっています。今後、少子高齢化がますます進むため、医療の需要は増加していくでしょう。
少ない医療従事者でも現場を回していく必要があるため、現場の負担は大きくなります。このような厳しい労働環境のため医療従事者も定着しにくいです。

医療従事者の不足がさらなる不足を生み出す悪循環となっています。

無医村や地域格差が生まれる

医療業界の社会問題が解決せずにいると無医村や地域格差が生まれることになります。

無医村は文字通り医者がいない市町村のことです。基本的に医療従事者は人口が多い地区に集中します。これにより、無医村の住民は遠くの病院に行かなければなりません。加えて過疎地域は公共交通機関が整備されていないケースや、高齢者が多いケースがあります。よって人口過疎地域は医療を満足に受けられない環境になってしまうでしょう。

医療の地域格差ができると地域の過疎化はますます進んでいくことになります。

病院が不足する

医療業界は病院や病床が不足することも懸念されます。

いくら需要があっても、医療従事者や医療リソースが足りなければ経営状況が悪化します。結果として、病院は経営難に陥るため、病院自体が倒産してしまう可能性もあるでしょう。

病院が減れば国内全体の医療供給能力が下がってしまい、ますます医療への需要に対応できなくなってしまいます。

医療費が上昇する

医療費の上昇も社会問題の大きな影響です。

医療従事者が少ないため、従事者を確保するために医療費(診療報酬)の上昇が予想されます。また日本では急激な少子高齢化が進行中です。これに伴い、現役世代が支払う社会保障費はますます増えていくでしょう。現役世代が高齢化世代を支えていく構造のため、人口のトレンドが変わらなければ、社会保障費増加のトレンドも継続します。

医療業界の社会問題は、医療費のさらなる上昇を引き起こす可能性が高いです。

提供する医療の質が低下する

医療業界の社会問題の影響で、提供する医療の質が低下する恐れがあります。

医療従事者が少ない中でも、医療従事者は需要に対応しなければなりません。しかし、医療従事者1人が対応できる患者の人数には限りがあります。

しかし、医療従事者が需要以上に増える見込みは高くありません。よって、患者1人に対応する時間を短くするしかなく、結果として提供する医療の質が低下する可能性があります。

2025年問題・2040年問題と医療への影響

2025年問題・2040年問題と医療への影響

日本の人口問題として、2025年問題と2040年問題があります。この2つの問題も医療業界に大きな影響をもたらすことが予想されているため、早急な対応が必要です。

2025年問題についてわかりやすく解説

2025年問題とは1947~1949年生まれの団塊世代が75歳以上になることで、多くの影響が懸念される問題です。

75歳を過ぎると後期高齢者と呼ばれる年代になります。後期高齢者が増えることで、医療費の増大やそれに伴う社会保障費の増加、現役世代への負担の増加が主な問題となります。

また60歳を過ぎても働き続ける国民は増えていますが、75歳を過ぎても働く国民は横ばいです。よって2025年問題は少子化に加えて労働人口の減少を加速させる要因となります。

すでに2024年を迎えており、2025年問題の対策は難しい状況です。

2040年問題についてわかりやすく解説

2040年問題は1971~1974年に生まれた第2次ベビーブーム世代が65歳以上になることで、多くの影響が懸念される問題です。

2040年問題では、2025年問題の懸念事項がさらに深刻化すると予想されています。日本人の人口のうち、65歳以上の高齢者が35%を占めることになるためです。また2024年時点では少子化にも歯止めがかからないため、社会保障の増加や医療リソースの逼迫などの問題がますます加速するでしょう。

2040年問題まではまだ時間があるので今からでも対策を打ち出していく必要があります。

2025年問題・2040年問題と医療の関係

2025年問題、2040年問題はそれぞれ医療業界にも大きな影響を及ぼします。

人間の体は高年齢になるほど衰えるものです。よって高齢者が多い社会はそれだけ衰える人も多くなり、結果として多くの医療需要が生まれることになります。医療需要の増加に伴い、医療提供体制の強化ができれば問題ありませんが、需要に追いつけるだけの強化は見込めません。現時点での少子化や医療リソースの逼迫が深刻だからです。

よって先述した医療業界の社会問題による影響が2025年問題、2040年問題によってますます深刻化すると予想されています。

日本は前例がない超高齢社会を迎えている

2024年現在、日本は超高齢社会を迎えています。WHOや国連の超高齢社会の定義は「総人口の21%が65歳以上を占める」ことです。日本は2019年時点で総人口のうち28.4%が65歳以上であり、すでに超高齢社会になっています。

世界で見ても前例がない高齢化率です。高齢化率の高さの要因は少子化や医療技術の向上などが挙げられます。

少子化の状況から65歳以上の割合は今後も高まっていき、2040年には35%を占めることが予想されています。

世界の医療分野における社会問題

世界の医療分野における社会問題

国内の医療における社会問題を解説してきましたが、世界に目を向けてみましょう。世界でも日本国内同様に医療の社会問題があります。

地域や国ごとの医療格差が大きい

世界でも地域や国ごとに医療格差が大きいという問題があります。先進国と発展途上国では医療の提供体制や医療費に差があることは容易に想像できるでしょう。

医療体制の整備には当然ながら費用が必要です。必要な費用の例として以下があります。

  • 医療従事者の育成に必要な教育
  • 医薬品や医療機器の調達
  • 病院の建設

医療に需要があったとしても医療体制の整備ができなければ医療を供給できません。

また発展途上国に行き届いていない医療体制や衛生面の問題により、それらの地域や国で伝染病の流行や子供の死亡率が高い問題が引き起こされています。

医療を受けたい人が受けられる世界になるよう、SDGsでは「全ての人に健康と福祉を」が目標として立てられています。世界の医療格差をなくし、発展途上国でも現在の先進国同様のレベルで医療提供できるようになることで、目標が達成されるでしょう。

貧富の差によって医療格差が引き起こされる

先進国や発展途上国を問わず、貧富の差によって医療格差が引き起こされています。貧富の差があれば医療を受けられる人と受けられない人に分かれることになるためです。

医療を受けるためにはお金が必要です。日本では国民皆保険として誰でも平等に医療を受けられる制度が整っています。しかし、世界各国は皆保険制度が整っているわけではありません。よって収入や住んでいる地域、身分などによって貧富の差が生まれており、医療格差が引き起こされています。

例えば、アメリカでは高額な保険に入っていなければ、莫大な診療報酬がかかることが珍しくありません。しかし、生活に苦しむ人々は高額な保険に加入できず、医療を受けられない状況になっています。

先進国でも貧富の差によって医療格差が生まれてしまっています。

コロナウイルスが浮き彫りにした医療の社会問題

コロナウイルスが浮き彫りにした医療の社会問題

2020年以降、新型コロナウイルスが私たちの生活に大きな影響を及ぼしたことは記憶に新しいでしょう。コロナ禍では流行当初から日本の医療業界における社会問題が浮き彫りになりました。

コロナ禍に生じた医療の社会問題

コロナ禍で生じた医療業界の社会問題として以下があります。

  • 医療従事者の負担増大
  • 通常の医療提供体制の崩壊
  • 国家予算における医療費の増大

医療従事者はコロナ患者に対応する必要があります。医療従事者自身が感染または濃厚接触者になるケースが頻発し、現場にいる医療従事者の負担が増大していました。感染対策のため清掃や入浴の介助などを外注できず、医療従事者の負担は普段よりも大きいものになってしまいました。

コロナ患者が増えたことで、それ以外の病気に対する医療が滞るケースもありました。手術や治療が遅れ、入院期間が長くなった患者も多数いたことでしょう。また救急車の受け入れ先の病院が決まらずに動けないなど、通常の医療提供が難しい状況に陥っていました。

コロナによってワクチンや医療費を補助するため、莫大な社会保障費が使われたことも問題の1つになっています。

今後のパンデミック時に向けた対策

新型コロナウイルスによって多くの問題が浮き彫りになりました。しかし、今後起こりうるパンデミック時には同様の問題を引き起こさないよう、以下の対策を進める必要があります。

  • オンライン診療の強化
  • 医療状況の評価指標見直し

現場(オフライン)の医療従事者による診療や治療は現場の医療体制では限界があります。また感染拡大を防ぐためにもオンラインを利用できる患者や場面ではオンライン診療を積極的に活用していく必要があるでしょう。国もオンライン診療を推奨する仕組みを整えていくべきです。

またコロナ禍では医療状況を病床数や、感染者数で測っていました。しかし、医療状況を測る指標は他にもあるはずです。例えば、別の患者の受け入れ数や、救急車での受け入れ先が決まる時間などが挙げられます。医療状況を正しく把握できる適切な指標を用いることが求められるでしょう。

日本における医療の社会問題解決に向けた取り組み

日本における医療の社会問題解決に向けた取り組み

日本の医療業界の社会問題解決に向けて以下の取り組みが進められています。

  • 労働環境の整備
  • 少子化対策
  • 医療に活用できる技術革新

労働環境の整備

医療業界の社会問題を解決するためには労働環境を整備する必要があります。社会問題の根本的な問題の1つは医療従事者が少ないことです。原因はさまざまですが以下のイメージが定着していることが原因として挙げられます。

  • 業務に対して給料が低い
  • 激務
  • 休みを取りにくい
  • 生活を安定させにくい(夜勤や緊急呼び出しなど)
  • 人間関係が厳しい

そこで労働環境を整備することで、医療従事者を増やし、定着させる必要があります。具体的には以下の取り組みが必要です。

  • 賃金の上昇
  • 手当の充実
  • 勤務体制の見直し
  • サポートやメンタルケアに力を入れる

少子化対策

医療業界の社会問題を解決するためには少子化対策も必要です。少子化対策が効果を発揮し、実際に子供が増えることで以下のメリットがあります。

  • 医療従事者が増える可能性がある
  • 労働人口が増える
  • 社会保障費を負担できる人数が増える

少子化は深刻な問題になっています。しかし、今からでも少子化に歯止めをかけるような異次元の少子化対策が医療業界だけでなく日本全体を支えることになるでしょう。

医療に活用できる技術革新

医療に活用できる技術革新を起こすことも、医療業界の社会問題解決には必要です。

先述した医療従事者を増やすことと少子化対策はつながっているものです。子供が増えなければ医療従事者を今後増やしていくことは難しいでしょう。また少子化対策には時間がかかります。

そこで医療従事者が足りないまま、医療提供体制を維持するのであれば、技術革新が必要です。技術革新によって医療従事者の働き方改革に貢献することで、社会問題の解決に光が見えてきます。

具体的な技術は次項で解説します。

医療に関する社会問題を解決に導くDX

医療に関する社会問題を解決に導くDX

限られた医療リソースで医療業界の社会問題を解決へ導くためには技術が必要です。医療業界のDXに貢献する以下の技術を紹介します。

  • オンライン診療
  • 情報共有プラットフォーム
  • ビッグデータ分析
  • 医療AI

オンライン診療

オンライン診療は患者が自宅や隔離先から医師による診療を受ける技術です。

オンライン診療はコロナ禍の際に、病院に行かずに医療を受けられる方法として、注目を集めました。仮に感染者や濃厚接触者でも、オンライン診療であれば感染を広げるリスクを抑えることが可能です。また近くに病院がない地域住民や、足腰に問題があり移動が難しい患者もオンライン診療であれば受けられます。

オンライン診療はすでに実施されています。今後、オンライン診療を定着させていくためには技術だけが問題ではありません。法律や薬の配送方法、簡単な診察以外の対応など、関連する分野の問題を解消していく必要があります。

情報共有プラットフォーム

医療業界の情報共有プラットフォームは患者の健康状態や診療記録など、カルテの情報を共有するプラットフォームです。

情報共有プラットフォームが整備されれば、医療従事者間でスムーズな情報共有が実現します。現在、マイナンバーカードで保険証としての機能や医療、薬剤情報を確認できます。同様のイメージで詳しい情報を医療機関で共有できれば、どこの病院に行っても迅速な治療が可能です。

医療情報の確認は医療従事者の業務の1つです。情報共有プラットフォームにより負担を軽減できれば、医療従事者は診察や治療などに使える時間を増やせます。

ビッグデータ分析

ビッグデータ分析は膨大なデータを分析し、パターンを発見する技術です。

ビッグデータ分析によりデータを収集、分析し、発見したパターンを活用して効率的な医療や経営が実現できます。医療業界では患者や薬品、医療従事者、病院経営などさまざまなデータを扱うためです。例えば患者のデータ1つをとっても、年齢や性別はもちろん、既往歴や現在飲んでいる薬、身長、体重などさまざまな項目があります。

ビッグデータ分析は新たな技術開発、製薬にも貢献します。まずはデータの収集から始めて、パターンの発見を目指すことから取り組むことになるでしょう。

医療AI

医療AIは、人工知能を活用して医療診断や治療に関する意思決定を支援する技術です。

AIは人間と同等、またはそれ以上に得意とする分野があります。医療AIに得意な業務をさせることによって、医療従事者の負担を大きく軽減可能です。業務の例として、画像から問題がある箇所の診断や医療リソースの配置の最適化などがあります。

AIは24時間365日稼働できるため、医療従事者を長時間労働から解放する役割も期待されています。今後もさらなる技術革新が続き、医療業界にAIが使われる機会はますます増えていくでしょう。

まとめ

まとめ

医療業界は医薬品、医療用品、医療機関それぞれの分野が社会問題を抱えています。共通点として、お金や医療従事者が不足していることが根本的な問題です。
解消するためにはお金や従事者を増やせればよいですが、簡単な問題ではありません。そこで医療業界にもDX技術を活用することで、問題の程度を軽減していく必要があります。
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