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バリューチェーン分析とは?その基本やメリットについて

ビジネスでは様々な分析活動を通じて、自社の強みや弱み、競合他社との差異、市場が求めているニーズ、顧客(消費者)が感じている価値などあらゆる情報を可視化することにより意思決定の速度を高め、かつ正確な判断をサポートしています。その中で「製品やそれを提供するプロセスの価値」に着目したのがバリューチェーン分析です。

バリューチェーン分析により企業はどのような価値を創造できるのか?本記事では、ビジネスパーソンなら知っておきたいバリューチェーン分析の基本をご紹介します。

バリューチェーン分析とは?その基本やメリットについて

バリューチェーンとは?

「バリューチェーン」という言葉を生み出したのは、経営学者のマイケル・E・ポーターであり、彼が1979年に発表した「競合の戦略」にて初めて登場します。例えば製造業では、原材料や資材の供給から顧客(消費者)の手元へ製品を届けるまでのプロセスをサプライチェーン(供給の連鎖)と呼びます。

そして各プロセスの中で、それぞれ異なる付加価値が生まれています。その価値が鎖のように連なり最終的に顧客(消費者)にとっての価値として提供される大きな流れを「バリューチェーン(価値の連鎖)」と呼びます。

では、原材料や部品の調達活動、製品の加工・組立、出荷配送、マーケケティング活動、顧客(消費者)への販売、カスタマーサポート等のアフターサービス、これら一連の事業活動を通じて各プロセスが生み出す価値に着目すべき理由とは何でしょうか?

前提として顧客(消費者)は製品そのものを欲しているのではなく、製品が持つ価値はそこから生み出される体験を欲しているというマーケティングの原則があります。例えばホームセンターにて数千円でドリルを購入した人は、ドリルそのものが欲しいのではなく、ドリルによって開けられる「穴」を欲しています。言い換えれば、ドリルにではなくこれから開けるいくつかの「穴」に対してお金を支払ったわけです。

このことを理解すると、製造業の意義は製品そのものを販売することでなく、製品が持つ価値によって快適な体験等を生み出すことだと言えます。つまりは、生産活動等を通じて生まれる製品の付加価値に着目することで、顧客(消費者)にとってより価値の高い製品を開発できるようになるわけです。

バリューチェーン分析の基本

上記にご紹介したバリューチェーンを分析し、自社の「強み」と「弱み」を棲み分けて「より付加価値の高い製品を生み出すにはどうしたらいいのか?」を考えることでより付加価値の高い製品・サービスを展開するのがバリューチェーン分析の目的です。そしてマイケル・ポーター教授は企業が日々営んでいる生産活動において、製品の生産やサービスの開発、それらの流通及び消費との直接的な関連性の有無により、バリューチェーンを「主活動」と「支援活動」に分けています。

主活動

製品の生産活動やサービス提供など、製品の生産から消費までの一連の流れに直接的かかわりを持つ活動のことです。主に購買物流、製造、出荷物流、販売・マーケティング、サービスといった5つの活動が該当。

支援活動

製品の生産や消費までの一連の流れに直接的なかかわりを持っておらず、主活動の支援を主な目的として行われる活動のことです。人事労務管理、技術開発、調達、インフラ管理といった4つの活動が該当します。

バリューチェーン分析のメリット

では、バリューチェーン分析を通じて企業はどのようなメリットが得られるのでしょうか?第一に「コスト体系を把握することで質を下げずに必要コストの削減に取り組む」ことができると言われています。バリューチェーン分析を実施すると、付加価値を生み出している各プロセスにおけるコスト体系を明瞭にできます。それらのコスト体系の中には、実は利益に直接関係しないものや、中には全く関係がないものも存在しています。

プロセスごとにコスト体系を明瞭にしてそうした「コストの無駄」を発見し、要因を突き止め改善を目指すことにより製品やサービスの質を下げないままコスト削減に取り組めるというメリットがあります。また、コストというのは1つの作業で完結するものではなく、後工程へのコストにも大きく影響します。つまり、作業Aのコストを削減すると後続となる作業Bのコストまで削減できる可能性が高くなるため、バリューチェーン分析によるコスト削減効果を最大化できます。

ただし、逆に作業Aのコストは削減しても作業Bのコストが増加してしまう例もあるので、プロセスごとに繋がりをしっかりと意識しながらコスト体系の明瞭化を改善活動へ取り組むことが重要です。

バリューチェーン分析とその他の分析フレームワークを組み合わせる

マイケル・ポーター教授が提唱している分析フレームワークはバリューチェーン分析だけではありません。マーケティングにおける分析フレームワークとして有名な「ファイブフォース分析」も重要な分析活動を位置付けています。ファイブフォース分析は経営戦略の中での「競争力」に着目しており、自社が置かれている環境と他者との力関係、市場内の情勢など分析することで経営戦略の策定に活用します。ちなみに「ファイブフォース」とは以下5つの項目を意味します。

Competitive Rivalry(業界内の競合)

業界とは単に製品やサービスのカテゴリによって分類したものではなく、それらがもつ価値や効用に着目して分類した集団です。

Supplier Power(売り手の交渉力)

サプライヤ(売り手)の交渉力は彼らが価格を上げることが、どれほど簡単かによって決定します。

Buyer Power(買い手の交渉力)

バイヤー(買い手)の交渉力は、バイヤーが価格を下げることがどれほど簡単かによって決定します。

Threat of Substitution(代替品による脅威)

業界には様々な代替品が溢れており、代替品の存在によって自社ビジネスが脅かされる可能性を示しています。

Threat of New Entry(新規参入による脅威)

業界・市場へ新たに参入する競合の存在によって自社の能力が影響を受ける可能性があります。

以上5つの要素を整理する頃により、企業が帰属する業界における自社の「強み」と「弱み」、サプライヤーとバイヤーの影響力、代替品の存在や新規参入企業の可能性などを明確にすることで自社の競争力を把握できます。バリューチェーン分析に加えてこのファイブフォース分析を用いることにより、企業の内部環境と外部環境を同時に分析して企業を取り巻く環境全体を整理できます。

バリューチェーン分析へ取り組む

バリューチェーン分析の優れている点は、ビッグデータ解析のように大量のデータと解析のためのアルゴリズム構築など、専門的な知識と技術を必要としないことです。自社内における情報を整理し、並び替えるだけで誰もが実践できます。ファイブフォース分析においても同様です。今まで、これといった分析活動に取り組んだことがないという場合は、この機会にぜひバリューチェーン分析へ取り組んでみてください。日常では見えない事実を発見することで、ビジネスに新しい風を吹き込むきっかけになるでしょう。

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