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ホロレンズ2でできることは?価格やホロレンズ3の開発状況も解説

ホロレンズ2でできることは?価格やホロレンズ3の開発状況も解説

スマートフォン向けに提供されている、撮影した写真をデコレーションできるアプリをご存じでしょうか?現実には存在しないキャラクターなどと共に撮影ができるこのようなアプリは、拡張現実を用いています。ここではマイクロソフト社から提供されている、拡張現実のさらに先、複合現実を実現するホロレンズについて説明します。

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ホロレンズとは?

ホロレンズ(HoloLens)とは、米国Microsoft社のAlex Kipman(アレックス・キップマン)氏が開発したMR(Mixed Reality:複合現実)を体験できるデバイスです。

例えばゲーム業界においては、仮想現実や拡張現実(詳しくは後述します)といった技術が用いられることが一般的になりました。スマートフォン向けゲームとして2016年にリリースされ大ヒットとなった「ポケモンGO」も、拡張現実を利用したゲームです。ホロレンズは、このような仮想世界と現実世界のより一層の融合を可能にするデバイスです。ゴーグルのようなディスプレイを装備しており、頭からかぶるように装着します。

ホロレンズの販売会社および開発者

ホロレンズは、2016年3月に発売され、2019年11月には後継の「ホロレンズ2(HoloLens2)」が販売されました。さらには2020年7月からはオンライン販売も始まっています。

MR(Mixed Reality:複合現実)とは何か

Microsoft社が販売しているMRデバイスであるホロレンズですが、そもそも「MR(Mixed Reality:複合現実)」とはどのようなものでしょうか。

MR(Mixed Reality:複合現実)とは、現実世界の形状を認識し、そこに仮想世界となるCGを重ね合わせ、現実世界と仮想世界を融合させることで新たな体験を可能とする技術です。

仮想世界を体験するための技術は他にも複数あり、仮想世界となるCGで作られた世界を体験するVR (Virtual Reality:仮想現実)、現実世界にデジタル付加情報を重ね合わせて表示するAR (Augmented Reality:拡張現実)があります。なおARとMRの違いは、ARは単純に現実世界に付加情報を重ね合わせるだけなのに対し、MRでは現実世界の3次元の情報を認識し、仮想世界の物体に近づいたり、手でCGを操作したりできるなど、現実世界と仮想世界がより一層融合している点が異なります。また、このような仮想世界を実現する技術の総称として、XR(Extended Reality)があります。

これまで製造業などで試作品を手元に置き担当者と対面でなければできなかった仕事の進め方も、MRを用いることで遠隔、非接触で進めることが可能になります。新型コロナウイルスの影響によりテレワークによる働き方が急きょ注目され、MRを用いた働き方は5Gによるネットワークの高速化やAIの発展もあり、右肩上がりに拡大していくと考えられます。

ホロレンズの価格や購入方法

ホロレンズの価格や購入方法

ホロレンズは、Microsoftのオンラインストアや、認定 Microsoft リセラーで購入できます。また、法人もしくは開発者であれば誰でも購入可能です。

ホロレンズの価格|HoloLens2の場合

Microsoftが現在提供しているホロレンズ2は、3種類あります。HoloLens 2は日本価格で422,180円、またクリーンルームなど管理された環境で使用される機器のISO 14644-14指定、危険な場所へ対応する米国の防爆認証UL Class I、Division 2などを受けた仕様のホロレンズ2 Industrial Editionは、日本価格571,780円となっています。そして、3種類目がHoloLens 2 を搭載した Trimble XR10です。

それぞれの特徴を以下の表にまとめています。詳細はMicrosoftホームページをご確認ください。

項目 HoloLens2 HoloLens2
 Industrial Edition
Trimble XR10
価格 422,180円 571,780円 5,199ドル
(日本未発売)
認証 なし ISO 14644-1 Class 5
UL Class 1、 Division 2-Groups A、B、C、D HAZLOC、
UL Class I、Division 2 認定
Class 1、Division 2-Groups A、B、C、D HAZLOC、
ノイズキャンセリング なし なし あり
保証 1年 2年 1年

Trimble XR10は、ヘルメット一体型のホロレンズです。現在はアメリカとカナダへの発送しか行っていません。

ホロレンズの購入方法|レンタルはできるのか?

 

ホロレンズは次の方法で購入、もしくはレンタルが可能です。

  1. Microsoft Storeの法人窓口・オンライン
  2. 再販パートナーで購入
  3. 認定のレンタルパートナーからのレンタル

現在日本で認定されている再販パートナーは、次の3つの企業です。

  • 日本ビジネスシステムズ (JBS)   
  • 大塚商会
  • SB C&S    

また、横河レンタ・リース社がサブスクでレンタルサービスを開始しました。料金は利用期間が3カ月以内の場合は月額60,000円、3カ月以上利用する場合は月額45,000円です。

ホロレンズの開発状況

ホロレンズの開発状況

ホロレンズの第1世代が2017年1月に発売開始となり、ホロレンズ2は2019年に発売されています。ホロレンズ2の発売開始から次世代機器の開発は進んでいるのか、その状況について解説します。

ホロレンズ2までが発売されている

前述したように現在ホロレンズ2が発売されており、ホロレンズから大きく改善されています。視野が対角約34度から対角約52度に大きくなり、グラフィックの全体が見やすくなりました。また操作性も格段に向上し、5本の指の動きを全て検出できることから、つまむ、握るといったつかみ方の違いを検出できます。装着性についても重量バランスを改善し、ホロレンズ本体の重心を頭部の中央に移動させることで長時間の装着を可能としました。

ホロレンズ3の販売も予定されていたが開発中止となっている

当初計画されていた ホログラム3の開発が2021年半ばに中止 され、MR業界に大きな衝撃を与えました。Microsoftの戦略転換や市場環境の変化など、いくつかの要因が絡み合った結果によるものです。

その後のホログラム3の開発に関する情報は発表されていません。新機種の開発など最新の情報については、公式ホームページをご確認ください。

ホロレンズでできること

ホロレンズはMicrosoft Storeで公開されている数多くのアプリケーションを導入可能なため、驚くほど多様な利用方法が考えられるのです。ここでは、ホロレンズができることについて解説します。

生産工程の全てのデータを可視化可能

ホロレンズには可視光線カメラ、視線追跡赤外線カメラ、深度センサー、加速度計、ジャイロスコープ、磁力計などさまざまなセンサーが搭載されており、これらを利用することで現実世界のものの形状を認識します。これにより利用者から見た壁や障害物などの位置を認識し、それに応じたCG(仮想世界)を投影します。投影されるCGの解像度は4096×1080(片目2048×1080)、視野角1度あたり47ドットと、CGで表現された文字の可読性も高く、細かい文字でも認識可能です。

現実世界と仮想世界の融合

ホロレンズはMR技術を使い、現実世界と仮想世界をリアルに融合することができます。例を挙げると、現実世界の部屋にある机を読み取り認識することで、仮想世界で机の上から物を落とすと机に当たったかのような反応を返します。操作は指でつまんで仮想世界のものを自在に動かせる他に、音声・ジェスチャー・視線でもできます。

共同作業・遠隔地でのコミュニケーションが可能

ホロレンズは、単に3Dホログラムを現実世界に投影するだけでなく、複数人で同時に3D空間を共有し、共同編集する機能も備わっています。

オブジェクトにコメントを追加し、他のユーザーと共有することもできます。また、音声やジェスチャーによるコミュニケーションも可能です。

3D空間を共有することで、言葉だけでは伝わりにくい情報を共有しやすくなります。また、遠隔地でもコミュニケーションが取れることで、業務効率改善にも役立つでしょう。

ドキュメントの表示が可能

ホロレンズは、画面上に文書や工程表、図面、画像などのドキュメントを表示する機能があります。従来の平面的な資料とは異なり、奥行きや立体感を活かした情報表示が可能です。

また、製品設計図や建築図面などの3Dモデルと資料を連動させ、モデル上に関連する情報を直接投影できます。モデルを操作しながら同時に資料を確認することで、設計や検証作業を効率化します。

ホロレンズはビジネスシーンでどう役に立つのか

ホロレンズはビジネスシーンでどう役に立つのか

ホロレンズは、製造業、建設業、医療業界などで最大限に活用されています。ここからは、ホロレンズが具体的にどのようにビジネスシーンで役立つのか、いくつかの視点から詳しく解説します。

製造物を3Dモデル化することで作業効率が上がる

ホロレンズは製造業において、製品の3Dモデルを作成し、作業効率を劇的に向上させるツールとして活用されています。設計段階で3Dモデルを用いることで、設計者やエンジニアは製品の詳細を正確に把握でき、デザインの不具合を早期に発見することが可能です。

さらに製造現場では、作業員がホロレンズを装着することで、実際の作業手順や部品の組み立て方法を3Dホログラムとして視覚的に確認することができます。これにより、複雑な作業も直感的に理解しやすくなり、作業時間の短縮と品質の向上が期待できるでしょう。

実物とシミュレーションを重ね合わせられる

ホロレンズでは、実物とデジタルシミュレーションを重ね合わせることも可能です。例えば建設現場では、設計図やシミュレーションモデルを実際の建物に重ね合わせて表示できます。

これにより、設計の意図と現場の実際のギャップを迅速に把握し、問題を事前に解決することが可能です。また医療分野では、外科医が手術計画を患者の体に投影し、シミュレーションと実際の手術を同時に進めることで、精度の高い手術を実現します。

現場作業を遠隔地からサポートできる

ホロレンズはリモートサポートの分野でも優れた効果を発揮します。現場作業員がホロレンズを装着し、遠隔地の専門家がリアルタイムで状況を確認しながら指示を出せます。

MicrosoftのDynamics 365 Remote Assistなどのアプリケーションを使用すると、ビデオ通話を通じて遠隔地のエキスパートが現地の問題を把握し、適切なアドバイスの提供が可能です。このリモートサポートにより、移動時間とコストを削減しつつ、迅速な対応が求められる状況でも高い専門性を発揮できます。例えば、機械の故障時に現地の技術者が迅速に対応できるため、ダウンタイムを最小限に抑えられます。

業務の教育やトレーニングを実践的に行える

ホロレンズは、教育やトレーニングの分野でもその真価を発揮します。従来の教育方法では難しかった実践的なスキルの習得を、ホログラムを用いることでより効果的に行うことができます。

例えば医療トレーニングでは、学生が仮想的な手術を体験し、リアルタイムでフィードバックを受けられます。また、製造業や建設業の新入社員は、実際の機器や現場環境を再現したホログラムを使って、安全かつ効果的にトレーニングが可能です。これにより新入社員は、実際の業務にスムーズに移行でき、従業員のスキルアップと安全意識の向上にも役立ちます。

ホロレンズのビジネス活用例

ここではより具体的に、ホロレンズがビジネスで活用されている事例を紹介します。

製造業

北米トヨタでは、米国、カナダ、メキシコで毎年100万台以上の車両を生産する数万人のチームメンバーのトレーニングに、ホロレンズ 2を使用しています。
従来、トレーナーはチームメンバーに1対1で付き、作業手順が定着するのをチェックしていました。これは手順やトレーニング車両が変わった場合に支障が出る場合があります。

ホロレンズ2を利用し、トレーニング用の資料をチームメンバーが個々に使うことで効率化が図れます。また新型コロナウイルス対策としても、ホロレンズ2を用いることで密を避けたトレーニングが可能になりました。

医療現場

米国のスタートアップ企業で、マイクロソフトの Mixed Reality パートナーであるMEDIVISでは、手術向けのビジュアル化ツールである「SurgicalAR」を提供しています。このツールはCTスキャンの代わりにホロレンズを利用するもので、手術プロセスを根本的に進化させました。ホロレンズを200回以上の手術で使用し成功しており、CTスキャンの回数を減らすことによる患者の放射線被曝の削減や、患者に施すカテーテルの位置を1mmの精度で表示可能にするなどの成果を挙げています

イギリスの公的な医療保険サービスを提供するImperial College Healthcareでは、新型コロナウイルスパンデミックの初期からホロレンズを用いたソリューションを利用しています。個人用防護具を着用したまま利用が可能なホロレンズを用いて同僚や専門家とビデオ通話を行い、アドバイスを受けながら患者と会話することが可能です。また、あわせて患者の医療記録とX線を表示することが可能になるなど、治療までのプロセスを改善しています。

教育現場

米国のオハイオ州クリーブランドにあるCase Western Reserve大学は、米国の主要な研究機関の 11つです。この大学ではHoloLens2と同大学のHolos Anatomy Mixed Realityソフトウェアを使用してリモートで演習を行っています。

HoloAnatomyは解剖学を学ぶためのソフトウェアで、死体を解剖せずに各部の構造や見えにくい箇所を見ることで理解を深められます。学生はホロレンズ2を使用して自在に対象を動かしながら解剖学を学ぶことができます。実際の解剖と同等の効果があり、学習時間の短縮になっています。

他にも、教育現場においては学習内容を視覚化することで、ハンディキャップを持つ学習者の支援となることも期待されています。

まとめ

ホロレンズのようなデバイスの登場により、MR技術はこれまで実現が難しいと考えられていた作業の効率化や、より進んだコミュニケーションを実現する可能性を広げました。MR技術を積極的に活用し、新ビジネスへの応用や、これまで見直しが難しいとされてきたプロセスの改善を検討してみてはいかがでしょうか。

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