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リスキリングとは?DXに対応できる人材育成の鍵を詳しく解説

リスキリングとは?DXに対応できる人材育成の鍵を詳しく解説

DXが盛んに提唱される昨今において、「リスキリング」が注目され始めています。リスキリングに向けた取り組みがさまざまな企業で行われており、とりわけDXと組み合わせたリスキリングが重要視されています。本記事ではリスキリングが重要視される背景について解説するとともに、DXリスキリングを導入する際の進め方や具体的な企業事例について迫ります。

DXについては、以下の記事で詳しく解説しています。本記事と併せてご覧ください。

DXの定義とは?重要視される5つの理由や進め方・成功事例を紹介

リスキリングとは

リスキリングとは

リスキリングという言葉は、2020年に開催されたダボス会議で「Reskilling Revolution」が発表されたことが元々の由来です。リスキリングとは、今後必要とされる業務や職業に対応するために新しいスキルや知識を獲得することを意味します。

リスキリングが注目されている理由

リスキリングが注目されている主な理由として、デジタルの発達が挙げられます。

インターネットが発達したことによって、誰もがパソコンやモバイル端末でさまざまな情報にアクセスできるようになりました。企業においてもデジタルなしでは経営が成り立たないほどにデジタル技術が経済活動に浸透してきています。

また、AI(人工知能)やロボティクスなどの新しい技術が登場したことによって、これまで人によって行われていた業務がAIやロボットに代わるようになってきました。このような背景から、デジタルに対応できる新しいスキルや知識だけではなく、AIやロボットを管理できる人材の育成が求められています。

リスキリングとリカレントの違い

リカレントとは英語の「Recurrent」から来ている言葉で、「繰り返す」を意味します。リスキリングとリカレントは、新しい知識やスキルを学んで磨くという点では共通していますが、その行為の過程がそれぞれ異なります。

リカレントは、自らの意思で仕事からいったん離れて一定期間、大学などの教育機関に所属して学ぶことを意味します。

リスキリングは仕事を続けながら企業側から従業員に新しいスキルの取得を促し習得したスキルを仕事を通じて発揮してもらうという点に主眼を置いています。

DX時代におけるリスキリングの重要性

読者の中には、最近になってリスキリングという言葉をメディアで聞く機会が増えていると感じているかもしれません。リスキリングが重要視される背景には何があるのでしょうか。

業務の効率化

ルーティン化している一部の業務は、デジタル技術を活用することで自動化できます。例えば、ローデータをシステムからダウンロードし、Excelを使用して集計する業務がある場合、RPAのような自動プログラムを開発すれば、これらの業務を自動化できます。

デジタル技術を活用したこのような取り組みを行うことで業務を効率化し、より重要な業務に時間を割くことができるようになるでしょう。

社内システムの有効活用

どのような企業にも、日々の業務を支えるデジタル技術を活用したシステムが存在します。社内にさまざまな機能が付いたシステムがあったとしても、その機能を有効に活用できるスキルが従業員にないと、そのシステムを十二分に活用できているとはいえません。

システムを活用できるようになるための前提として、従業員にデジタルに関する知識やスキルを習得してもらい、それをアウトプットできるように促す必要があります。

人材不足に対応する

人材が不足している状況においては、新しい人材の募集や業務自体の外注がその打ち手として挙げられます。しかし、そのような打ち手を実行したとしても業務量が増えてしまい慢性的な人材不足に陥ることがあります。

先述した「業務の効率化」ともつながりますが、リスキリングによって従業員がこれまでできなかったことができるようになることで、業務の効率化や内製化を実現できるでしょう。

DXリスキリングで学ぶべきスキル

DXリスキリングで学ぶべきスキル

DXを焦点に置いたリスキリングとは、具体的にどのようなスキルなのでしょうか。ハードスキルとソフトスキルに分類した上で、具体的なスキル内容について解説します。

ハードスキル

リスキリングにおけるハードスキルは、IT技術に関する知識、プログラミングやデザインなどの開発、制作スキルが該当します。また、それらの知識やスキルを動員し、新しいサービスを企画する能力や要件・プロセスを定義する能力もハードスキルに含まれます。

DXが積極的に導入されている企業においては、IT畑ではないマーケティングに所属するメンバーもエンジニアとコミュニケーションを図っていく必要があります。IT技術に関する知識があると、エンジニアが言っていることがスムーズに理解できるようになるでしょう。

ソフトスキル

ソフトスキルは、コミュニケーションスキルに重点を置いたスキルです。新しいサービスの立ち上げや既存サービスの成長には、立場の異なるメンバーや複数の部署を巻き込んだプロジェクトの推進をしなければならないケースがあります。

自らがファシリテーターとしてプロジェクトを円滑に進める役割を担っている場合、他者に分かるような言葉で説明することや相手の主張を受け止め理解し、物事を前に進めるスキルが必要です。ソフトスキルとハードスキルはそれぞれが独立して存在するのではなく、その2つを併せ持つことで意味を持ちます。

具体的なスキル例

DXにおいて、リスキリングで習得する知識やスキルは広範囲にわたります。ここでは、リスキリングで習得するものが何であるかをイメージできるよう3つの例を紹介します。

プロジェクトマネージメント

さまざまなステークホルダーが参加するプロジェクトを円滑に推進するためには、それを統率するプロジェクトマネージメントが求められます。

プロジェクトマネージメントにはプロセスの定義、工数算出、人材リソースのアサインメント、スケジュール策定などが含まれます。さらに利害関係が異なるメンバーを統率していくためのコミュニケーションスキルやプロジェクトを実行する上でのリスク察知能力も必要です。プロジェクトを統括する立場にある人はプロジェクトマネージメントに関するスキルを磨くとよいでしょう。

プログラミング

プログラミングとは、プログラミング言語を用いてシステムのソースコードを記述するスキルです。

プログラミング言語は数多くあり、非エンジニアの方が習得しやすい分野としてはJavascriptやHTML、CSSが挙げられます。これらはWebサイトで用いられる言語で、自らWebコンテンツを制作する際に役に立ちます。

その他には、デ—タ分析に用いられるSQLが挙げられます。マーケティング施策を実行する際の顧客分析や、施策結果を分析する際に使用します。

デジタルマーケティング

デジタルマーケティングは、WebサイトやWeb広告、SNS、スマートフォンアプリなどのデジタルを通じたマーケティングに関するスキルです。

デジタル環境で利用できる手段やツ—ルを学んでおくと、マーケティング施策を練る際の施策の幅が広がるだけではなく、オフラインではリーチできないタ—ゲットにアプローチできます。既存顧客に対しては、顧客生涯価値を最大化させるためのロイヤルティプログラムやCRM施策を学習するとよいでしょう。

DXリスキリングの進め方

DXリスキリングの進め方

従業員に対してプログラムとしてリスキリングを導入するには、いくつかのステップを踏まなければなりません。ここではリスキリングを導入する際の基本的なステップについて説明します。

必要なスキルを定義して対象となる組織を決める

DXにおいて必要とされるスキルを定義します。実行しようと計画しているものに対して、具体的にどのような知識やスキルがどの組織で必要なのかを明確にします。

例えば、マーケティング施策としてWeb広告をインハウスで出稿するには、マーケティングに所属する担当者がWeb広告媒体の種類や特徴、広告入稿ツールの操作方法などを身に付けなければなりません。インハウスではなく代理店経由でWeb広告を出稿する場合であっても、そのような知識は必要となるでしょう。

スキル習得のためのプログラムを決める

従業員にスキルを習得させたい内容を、プログラムとして組むのがよいでしょう。プログラムには下記の内容を盛り込みます。

  • スケジュール
  • 各日に習得するスキルの定義とその内容
  • 習得するために必要となるシステム環境の定義
  • 習得したスキルが身に付いているかチェックするための試験

従業員は持ち場の仕事と並行しながらプログラムを受けるため、普段の仕事に支障が出ないように日程を組んでください。

社外のリソースを活用する

リスキリングに関するプログラムを初めて導入する企業にとって、プログラムを全て自社で設計し、準備するのは無理があるかもしれません。そのような場合には、外部で提供されているプログラムを活用するのもおすすめです。

外部プログラムには、専門知識を持った講師がいる機関に従業員が訪問したり、オンラインで受講したりするケースがあります。講師と直接質疑応答できるプログラムは、従業員のスキル習得において有意義でしょう。

習得したスキルを継続的に活用させる

習得したスキルは継続的に活用できるようにすることが、組織の業務効率化や社内リソースの最適化を図る上で重要です。リスキリングで習得したスキルや知識を実際の業務で活かせないという事態は避けなければなりません。

そのため、あらかじめリスキリングを実施した人材を適切な部署やポジションにアサインすることを前提に、リスキリングの実行を行うようにしましょう。

DXリスキリング導入|押さえておきたい2つのポイント

DXリスキリング導入|押さえておきたい2つのポイント

リスキリングを導入して成果が出るようにするには、前段階として適切なアプローチが必要です。リスキリングは手段であって、目的ではありません。リスキリングを導入する際に押さえておきたいポイントを2つ解説します。

リスキリングによる効果を理解してもらう

従業員によっては「今の仕事で手一杯なので新しいことをやる時間がない」「リスキリングによる効果が見えにくい」「新しいスキルが身に付くか自信がない」など、さまざまな反発や疑問が出てくることでしょう。

リスキリングによって成果を上げるには、リスキリング実施の意味や効果、会社として必要であることをしっかりと従業員に説明することが重要です。リスキリングを行うのは従業員であるため、各従業員が能動的かつ自発的にリスキリングに取り組めるような会社側からの働きかけがポイントです。

経済産業省の補助金を活用する

経済産業省は「リスキリングを通じたキャリアアップ支援事業」として、認定された民間事業者を通じてリスキリング講座を受講した際に、受講料の一部を軽減する事業を展開しています。

リスキリングのプログラム実施を外部にアウトソーシングする場合には、認定されている民間事業者を活用するのも1つの方法です。2023年9月時点で、首都圏を中心に36社が採択事業者として認定を受けています。

参考:経済産業省

実際のDXリスキリングの事例5選

実際のDXリスキリングの事例5選

ここでは事例をもとに、各企業がどのようにDXリスキリングを導入しているのかについて解説します。自社のDXリスキリングを検討するにあたり、ぜひ参考にしてください。

日立製作所

日立製作所は2019年から、従業員向けのリスキリングを導入しデジタルや外国語のスキルアップに注力しています。独自の教育プラットフォームを構築しさまざまな講座を受講できるようにし、すでに1万人の従業員は基礎的なコースの履修を修了しているということです。

日立製作所がこのような取り組みを行う背景として、IoTをベースとしたデジタル技術によって市場における競争力を高める経営方針があります。従来からの年功序列型の人事制度からジョブ型雇用へシフトしており、社員一人ひとりがスキルに基づいた就業ができるようリスキリングを推進しています。

参考:日本経済新聞

アサヒグループジャパン

アサヒホールディングスは、DXを単なるデジタル技術に関する知識やスキルの習得としてではなく、ビジネス自体を変革し新しい価値を創造する、という考えのもとにリスキリングを従業員に導入しています。

同社はリスキリングの実施にあたり、外部パートナーであるブレインバッドを迎え、データサイエンスや統計学、AIなどを中心にeラーニング形式で従業員がコースを受講できるようにしています。

コースは1年以上の長期間にわたる本格的なプログラムで構成されています。募集人員200人に対して500人以上の応募があり、同社の取り組みは好評であったようです。

参考:日経BP

Microsoft

日本Microsoftは2021年7月から同社の従業員を対象に、パーソルイノベーション(総合人材サービスパーソルの関連会社)と協業してDXリスキリングを目的としたプログラムを導入しました。

パーソルイノベーションはリスキリングプログラムを開発し、提供するベンダーです。日本Microsoftは同ベンダーとの協業を通じ、各従業員のキャリア志向や目標に応じてパーソナライズしたリスキリングプログラムを提供しています。

また、従業員の希望に応じたキャリア相談の実施や、コミュニティの開設によるリスキリングの活性化を図っています。

参考:Microsoft

富士通

富士通は2020年からLinkedInラーニングを導入し、これまで7000人もの従業員が同プログラムを通じてDXリスキリングを行いました。富士通はIT企業からDX企業への転換という経営方針のもとに人事制度を刷新し、ジョブ型人事制度へとシフトしています。

LinkedInラーニングは従業員が好きなときに受講できるオンラインプログラムで、受講を通じてどのようなスキルが身に付いたか企業側が分かるようになっています。各従業員のスキル情報が可視化されることによって、ポジションに適した人材を配置しやすくなりました。

参考:東洋経済

ゆうちょ銀行

ゆうちょ銀行は、郵政グループである日本郵便、かんぽ生命保険と合同でDXリスキリングを推進している企業です。3社のDXを横断的にけん引するのがJPデジタルです。JPデジタルは「顧客と地域を支える共創プラットフォーム」を目指し、3社をつなぐデータ基盤とデジタル基盤の構築を行っています。

JPデジタルは、ラクスパートナーズというエンジニア派遣会社から高い専門性を持った人材を派遣採用し、郵政グループ内の従業員とともにどのようなデータがあり、新しいサービスの創造に向けてそれをどう活用できるかを協議し、開発を進めています。このような取り組みも、DXリスキリングにおける1つの方法といえるでしょう。

参考:日本郵政日経XTECH

まとめ

事例を見て分かるように、近年DXリスキリングを専門として提供する外部パートナーを活用できる環境が整いつつあります。新しい人材を採用するよりも、従業員がリスキリングを実施することによって企業価値を高めている企業も出てきているようです。

企業によっては、DXを抜きに今後の経営や人事方針について考えることはできないところもあるでしょう。本記事で解説したDXリスキリングの進め方を参考に、自社のリスキリングについて検討してみましょう。

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