建設・ビル管理

人とロボットが共存する街づくりとは? 実現への展望を解説

ロボットやAIはすでに人間社会において身近な存在になりつつあります。今後さらに人々の暮らしを豊かにするためには、ロボットやモビリティ、AI などの先進技術をいかに現実世界に適合させ、共存させていく「近未来の街づくり」に向けた活動が重要となります。本記事では、未来の社会でロボットがどのように人間と共存しているか、その未来像やそこで想定される課題などについて解説します。

人とロボットが共存する街づくりとは? 実現への展望を解説

人とロボットが共存する「未来の街づくり」とは

昨今、ロボットやAIなどのテクノロジーは急激に進化しており、ビジネスにおいてもプライベートにおいてもそれらは身近な存在になりつつあります。しかし、従来の都市や建物の構造はロボットの活用を前提に設計されてはいないので、ロボットをフル活用するのに適した環境とは言えません。

そこで重要になってくるのが、10年後を見据えた「近未来の街づくり」への取り組みです。具体的には、人とロボットが共存する街づくりに向けたビジョンの構築やルール作り、新規事業領域の開発などを行うことが挙げられます。

こうした取り組みを通して、ロボットやAI、IoTなどさまざまなテクノロジーを統合的にフル活用できる環境を整えていくことが、人々の暮らしをより豊かに、より効率的に発展させていくために重要です。

未来の街におけるロボットの位置づけ

先述したように、ロボット技術は急激に進歩しており、それに伴って活用のされ方も変わってきています。たとえば、2021年頃までは、「掃除をする」「荷物を運ぶ」といった比較的単純な仕事を人間の代わりに代行する単機能型のロボットが中心でした。

しかし、現在では、ロボットがネットワークを介してシステムと連携し、状況に応じて複雑な動きもできるようになりつつあります。たとえば、施設内の設備と連携し、エレベーターが到着したことを感知してロボットが客を出迎えに行くなどです。この段階まで来ると、ロボットは人間の操作を待つ必要なしに、ある程度自律的に動けることになります。

約10年後の2030年代になると、ロボットによる自動化はここからさらに進み、浮いた分のリソースを使って人間はよりコア業務に注力できるようになると考えられます。これは人間の仕事をロボットが代行するというよりも、「ロボットが得意なことはロボットに頼り、人間が得意なことは人間が行う」という一種の協働・協調関係です。また、この時期になると、公共空間のみならず、個人の居宅内でもロボットを活用することが増えていくと考えられます。

人とロボットが共存する街づくりの展望

現在、ロボットは屋内施設で運用するものから順次実用化されており、屋外での運用についても実証実験が行われている状況です。このまま順調に進展していけば、未来の街ではビル内外を縦横無尽にロボットが走行するようになるでしょう。以下では、人とロボットが共存する未来の街において、ロボットがどのような役割を果たすのかその展望を紹介します。

ロボットと未来のオフィス

ロボットによる仕事の置き換えが進んだ結果、未来のオフィスでは清掃業務や運搬業務などを行う施設管理ロボットが多くなると予想されます。未来のオフィスはこの施設管理ロボットの活用を前提に、先進技術と融合したロボットフレンドリーな環境に整備され、ロボットはその中で動き回ります。

たとえば、さまざまな設備と関連付けられたロボットは、エレベーターやセキュリティ付き自動ドアなどと連携して階数を移動しながら仕事することもできます。配達業者が運んできた荷物を1階のロビーで受け取り、それを3階の配達先に届けるなどです。あるいは、複数のロボット同士が連携し合って、荷物の仕分けや積み下ろしなどの仕事を分担することもあるかもしれません。

このように館内を自由にロボットが動き回る状況を考えると、人とロボット、あるいはロボット同士が衝突しないように、一種の交通ルールを策定することも必要になるでしょう。たとえば、衝突しやすい曲がり角では一旦停止する、幅の狭い廊下は一方通行にするなどです。

ロボットと未来のレジデンス

2030年代には、ロボットは個々人の居宅でも利用が広がっていると想定されます。そうした中でロボットの役割として特に重要になってくるのが、急増する高齢者のサポートです。国の予測によれば、2035年には日本の高齢化率は35%を超え、3人に1人以上は65歳以上という状況になります。働き手も現在より減少していく中で、高齢者を支えるマンパワーをどのように確保するかという問題に対して、ロボットの活用はその解決策のひとつになるでしょう。

たとえば、前述の「荷物を配達業者から受け取って建物内の配達先へ届ける」という運搬ロボットは、マンションなどでも活用できます。荷物やデリバリー品などを受け取る仕事をロボットが代替してくれるとしたら、体の不自由な高齢者にとっては助かることでしょう。そもそも宅配の仕事自体、ロボットが行うようになっていることも考えられます。労働人口が不足していく中では、ロボットによって仕事を自動化していくことは非常に重要です。

また、健康寿命の延伸という点でもロボットの活用は効果が見込めます。日頃の健康管理や話し相手などを務めるロボットが普及すれば、より健康的な生活習慣を身に付けたり、病気の早期発見をしたりすることが可能です。天気のいい日には外出を勧めるといった、行動変容を促すコミュニケーションをロボットに取らせることもできます。このような仕方で一人ひとりの健康寿命の延伸を図ることは、医療費などの軽減につながります。

ロボットと共存する未来の街区はレジリエンスが高い

ロボットを積極的に活用した未来の街は、災害や非常時にも強い、持続可能で安心できる体制になることも期待できます。ロボットがさらに進化・普及していけば、危険な仕事を人間が行う機会を大きく減らせますし、自動運転技術を使って、安全で利便性の高い物流体制の構築をすることも可能です。とはいえ、これらを実現するには、ロボットを運営していくためのルールや仕組みをどれだけ整備できるかが鍵になります。

たとえば、屋内外で多種多様なロボットが稼働し、シームレスで安全に移動できるようにするには、ロボットの配送拠点を設置したり、管制システムやガイドラインなどを整備したりすることが重要です。つまり、拠点ごとにロボットを管理するのではなく、街全体に広がるソフトウェアプラットフォームを通してロボットを支援する仕組みが必要になります。

個々のロボットについてもさまざまな取り決めが必要で、自動配送ロボットの安全基準などを策定したり、認証などの仕組みを定めたりすることも欠かせません。こうしたルール作りは、民間企業だけで果たすことは困難です。したがって、ロボットを安全安心に運用できる街づくりを行うには、官民が強力に連携していくことが求められます。

人とロボットが共存するために必要なこと3つ

人とロボットが共存していくためには、「サービスモデル」「リスクアセスメント」「ガイドライン」の3要素を構築していくことが必要になります。

サービスモデル

ロボットはネットワークを介してシステムと連携することによって、柔軟に働くことができるようになります。したがって、ロボットプラットフォームと都市OS、建物OS、SNS、各ロボットなどがシームレスに連携できるサービスモデルを構築していくことが重要です。なお、都市OSとは、物流や交通をはじめとする都市機能を成立させるためのシステム基盤で、サービス間の連携や多種多様な都市データの提供を行う仲介者としての役割を果たします。

ガイドライン

サービスロボットを街全体で効果的に機能させるためには、建物や都市の設計がロボットの特性を考慮したものになるようにガイドラインを整備することが重要です。たとえば、「建物の通路幅をロボットのサイズを念頭に置いたものにする」「道路の勾配がロボットの登坂性能を超えないようにする」ことなどが挙げられます。

リスクアセスメント

屋内外問わず多くのロボットが動き回る街をつくっていく中で重要なのが、ロボット同士の衝突を避けるためのリスクアセスメントです。現状では複数のロボットが同じエリアで稼働している実例は少ないので、安全性や効率性に対する配慮が不十分なところがあります。そのため、ロボット同士の動線が干渉しないようにするなど、衝突のリスクを回避するような仕組みの充実が必要となります。

まとめ

少子高齢化がより深刻化する未来の日本社会においては、ロボットの活用がさまざまな社会問題の解決のために非常に重要になってきます。人間の暮らしにロボットが寄り添っている未来は、そう遠くはありません。より快適な未来の実現には、ロボットと共存するためのシステムやルールの整備が鍵となります。

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