数多くの企業でテレワークの導入が進んでいます。新たな働き方としてさまざまなメリットがある一方で、コミュニケーション不足に陥ることが問題視されています。
本記事では、テレワークにおけるコミュニケーション不足の原因と、それらを解消する具体的な方法について解説します。
テレワークではコミュニケーションは難しいのか
テレワークという働き方が定着しましたが、対面のような自然なコミュニケーションが難しいと感じる人が多いようです。テレワークでは、対面のように直接会話ができないため、意思疎通のミスや情報の伝達不足が起こりやすくなります。
メールのやり取りだけでは、表情や声のトーンといった感情が伝わりにくいため、相手の意図を誤解することが増えます。しかし、ビデオ会議やチャットツールの活用により、これらの課題はある程度解消できます。
さらに、定期的なミーティングや業務報告のルールを設定することで、コミュニケーションの質を保つことが可能です。テレワークにおいても、工夫次第で効果的なコミュニケーションを実現することは十分に可能です。
テレワークはコミュニケーション不足に陥りやすい|4つの課題
オフィス勤務と比較して、なぜテレワークではコミュニケーション不足に陥りやすいのでしょうか。ここではテレワークにおけるコミュニケーションの4つの課題を解説します。
必要なときにしか会話をしなくなる
オフィスにいるときには、会議や打ち合わせのような情報を共有できる場もありますし、何気ない雑談による業務関連事項の擦り合わせなど、コミュニケーションが自然に生じます。これらのやり取りは、業務のスムーズな進行に非常に役立っています。
しかし、テレワークになると従業員同士が顔を合わせて話す機会が激減します。些細なことを確認したり、アイデアを出し合ったりするためにも、いちいち何かしらのツールを介して連絡を取らなければなりません。そこで、つい後回しになり、コミュニケーションの頻度が低くなってしまうのです。
また、テレワークにより従業員の勤務時間が異なる場合には、コミュニケーションを取るにも逐一時間を確認しないといけないため、オフィスのように気軽な連絡はしづらくなってしまいます。これもコミュニケーション不足を招く要因といえるでしょう。
相手の状況が見えにくい
テレワークでは、従業員それぞれのライフスタイルに合わせて業務を進めていきます。そのため、相手が今忙しいのか、連絡を取ってもよいのかの判断が難しく、連絡自体を遠慮してしまいがちになります。
相手の状況が見えないことに加えて、テキストメインのコミュニケーションでは相手の表情や感情を推し量ることが難しくなります。認識の食い違いや意思疎通ができていないことに気付かず、それらが業務の成果に直接影響してしまう危険性もあるでしょう。
遠隔で仕事することには、自分自身の業務に集中でき、時間にとらわれず働けるなどの利点があります。その反面、企業全体として見たときに、他の従業員が置かれている状況の把握は困難となります。コミュニケーションが滞れば、チームワーク力の低下も招きかねません。
タイムラグが発生しやすい
従業員がオフィス勤務とテレワーク勤務に分かれている場合、勤務時間が異なることがあります。それにより、対面であればすぐに確認できるような事柄でもメールやチャットなどのツールを介してやり取りしなければならず、返信までにタイムラグが生じるケースもあります。
返信がないと進められない内容であれば、待つ時間に業務が滞ってしまいます。仕事の効率性や生産性を上げるためには、このような無駄な時間を極力排除しなければなりません。
テレワークによる柔軟な働き方によって、個々の業務効率化やタイムマネジメントという観点からは従来以上の成果が期待できるでしょう。しかしオフィス勤務にはないタイムラグなどの問題をそのままにすると、他の従業員にしわ寄せが来てしまいかねません。
コミュニケーションツールの使い方を十分に把握できていない
テレワークの普及に伴い、さまざまなコミュニケーションツールが利用されていますが、その多様さゆえに、使い方を十分に把握できていない人も多いでしょう。
チャットツールやビデオ会議ソフト、プロジェクト管理アプリなどコミュニケーションツールの種類は豊富です。それぞれの機能や使い方を理解せずに使うと、情報の共有や伝達がうまくいかず、結果としてコミュニケーションが不十分となるリスクが高まります。各ツールの操作方法や機能を覚える必要があり、ITに詳しくない人にとっては大きなハードルとなるでしょう。
また、ツールの設定ミスや適切な使い分けができないことにより、重要な情報が見逃されたり、誤った内容が伝達されたりすることもあります。
テレワーク時のコミュニケーション不足を解消するメリット
テレワーク時におけるコミュニケーション不足を解消することには、多くのメリットがあります。
まず、情報の伝達が円滑になり、業務の効率が向上します。コミュニケーションがスムーズであれば、チームメンバー間での誤解や無駄な手戻りが減り、生産性の向上が可能です。
また、適切なコミュニケーションにより、社員同士の信頼関係が深まり、協力体制が強化されることも期待できます。トラブル発生の際には迅速に共有され、早期に対応策を講じることが可能です。
このように、コミュニケーションの改善は、社員のストレスを軽減し、仕事に対するモチベーションを高める効果もあります。テレワークにおいてコミュニケーション不足を解消することは、企業の持続的な成長を支える重要な要素となります。
テレワーク時のコミュニケーション不足を解消する5つの工夫・具体例
ここまで、コミュニケーション不足に陥る原因について述べてきました。しかし、テレワークにおけるこれらの課題は工夫次第で改善可能です。ここでは5つの対策について具体的に解説します。
定例会議を増やす
意図的に顔を合わせる機会をつくるため、Web会議ツールなどを用いて定例会議を増やしましょう。この場合、互いの状況が気軽に聞き出せるような、フラットな情報共有の場とすることが重要です。雑談交じりの話し合いをするのもいいでしょう。またテレワーク勤務の従業員が参加しやすいように毎週、午後の決まった時間に集うなど、定例化に結びつく工夫をしていく必要があります。定例会議が定着すればそれぞれが会議時に聞きたいことをピックアップしておいたり、後回しになっていたやり取りを行ったりする場として活用でき、円滑なコミュニケーションが生まれるでしょう。
チャットツールをフル活用する
仕事で使用するオフィスメールは、堅苦しい形式ばったものが主です。テレワークでは、メールよりも肩の力を抜いて気軽にやり取りできるチャットツールをフル活用するとよいでしょう。テレワーク時に、いつでも好きなように使えるよう設定しておけば、オフィス勤務と同じように話しかけやすく(連絡しやすく)なります。また従業員同士の絵文字や顔文字の使用もある程度許容しておけば、感情を伝える際の助けになります。メールとチャットの使用目的を棲み分けておくことで、コミュニケーションはチャットで行うという意識の醸成にも役立ちます。
大きめのリアクションやポジティブな発言を意識する
前述の定例会議やオンラインで行う会議では、通常よりも豊かな表情を心がけたり、リアクションを大きめに行ったりするよう意識しておくことも大切です。オンライン上では自分が思っている以上に、表情やリアクションが伝わりにくいからです。テレワークでのコミュニケーションに関しては、やり取りが発生する機会を増やすことも大切ですが、その前提として相手にきちんと伝わるよう発信することも重要です。テレビ会議では大きめのリアクションを心がけ、また電話会議ではこまめに相づちを打つなど、自分の反応を相手に伝えられるように工夫しましょう。
加えて、テレワークではポジティブな発言をすることも重要です。顔を合わせていない分、発言の意図が正しく伝わらずネガティブに受け取られてしまう恐れもあります。そうならないように、言い方や発言内容には注意しなければなりません。
情報共有を心がける
タスク管理が可能なツールを活用して、1日の業務スケジュールやタスクの進捗状況などを積極的に共有することも、コミュニケーションの増加に寄与します。お互いの業務やスケジュールが把握できていれば、質問や疑問もより投げかけやすくなるためです。
また、作業手順の確認や資料の修正作業など共同で行う必要がある業務では、これらのツールを用いて画面共有をすれば簡単に情報共有ができ、共通認識も持ちやすくなります。テレワークに適したツールは、パソコンだけでなくスマートフォンやタブレットに対応しているものが多く、それらの画面を共有できるものもいろいろとあります。手軽に使用できるツールを選ぶことも、コミュニケーションを活発化させるために重要なポイントです。
出社日をつくる
1つの方法ではなく、さまざまなツールと接触機会を利用することにより、テレワークにおけるコミュニケーション不足は相当程度まで解消できます。しかしそれでもまだ足りない場合には、週に1度など適切な頻度で出社日を設けるのも手です。
業務内容によっては直接やり取りをしなければ情報共有できないものもありますし、従業員によってはツールを介したコミュニケーションが苦手な人もいるでしょう。そういったテレワークではカバーできない点に対し、対面で話せる時間をきちんと設定しておくことで、より確実な情報共有もでき、互いの信頼関係の維持にもつながります。
テレワークのコミュニケーションを活性化させた事例
テレワーク環境でコミュニケーションを活性化させる方法として、定期的なオンラインミーティングの導入や、チャットツールの活用などが挙げられます。
斬新な取り組みや工夫を参考に、コミュニケーションの質を上げましょう。
人材紹介業A社
まずは、コロナの流行に伴い、全社員を対象にテレワークを導入した企業の事例です。この企業では、毎朝全社員が朝礼に参加するコミュニケーションの活性化の取り組みを行っています。
テレワークを実施することで以下のような効果を感じています。
- 地方都市に住む学生の採用が決定
- 女性の活躍推進
- ワークライフバランスの確立
- 社員デスクスペースの削減
情報通信業A社
続いて、若手社員と出社希望者を除く社員のテレワークを実施している企業の事例です。以下の方法でコミュニケーションの活性化を図っています。
- リモート会議はカメラをONにする
- 毎月全社員会議を実施
- ビデオ会議で15分間のブレークタイムを実施
オフライン時に比べて、迅速にミーティングが開催できており、企業利益もテレワーク導入後に増加するなど効果を実感しています。
情報通信業N社
コロナを機にテレワークを実施し、現在も約7割の社員がテレワークを行う企業の事例を紹介します。
- 休憩を兼ねたオープンスペースをオンライン上で開催
- 交流の機会を増加させるため「感謝をカードで伝える」仕組みを導入
上記の取り組みを行うこの企業では、在宅勤務用に机や椅子をレンタルできるサービスも提供しており、テレワークの推進に力を入れています。
サービス業T社
最後に、正社員だけでなくアルバイトや派遣社員も対象にテレワークを導入している企業の事例です。この企業は、テレワークを実施する社員に、環境整備手当を支給するなどサポートが充実しています。
- 若手社員のオンライン会、勉強会を開催
- 全ての会議をオンライン化
- 懇親会もオンラインで開催
上記の取り組みによって、コミュニケーションの活性化を図っています。
テレワーク時のコミュニケーションに活用できるツール3選
テレワークにおいて効果的なコミュニケーションを図るために活用できるツールを3つ紹介します。それぞれのツールは、部署内の情報共有をはじめ、社内全体の連携を円滑にするために役立ちます。
Microsoft 365
Microsoft 365は、テレワークにおけるコミュニケーションと生産性向上に欠かせないツールです。OutlookやTeamsは、メールやチャット、ビデオ会議を一元化し、社内外での連絡を円滑にします。Teamsでは、リアルタイムでの情報共有が可能で、ファイルの共同編集やプロジェクト管理も容易です。
Word、Excel、PowerPointなどのアプリケーションもクラウド上で利用でき、どこからでもアクセス可能なため、作業の効率化が図れます。さらに、OneDriveを使用することで、ファイルの保存や共有が簡単に行え、セキュリティも強化されています。Microsoft 365は、テレワーク環境での生産性と連携力を高める理想的なツールです。
Slack
Slackは、テレワークにおけるコミュニケーションツールとして、多くの企業で採用されています。チャンネルベースでのメッセージ管理が可能で、プロジェクトごとやグループごとに分けて会話を整理できます。
Slackは他のアプリケーションとも連携が可能で、Google DriveやTrelloとの統合により、ファイルの共有やタスク管理がスムーズに行えます。リアルタイムでのコミュニケーションが可能であるため、メールのやり取りよりも迅速に情報を共有でき、問題解決が迅速に行えます。
ビデオ通話や音声通話も可能で、メンバー間の距離を感じさせないコミュニケーションが実現します。Slackは、テレワーク時の効率的なコミュニケーション手段として非常に有用です。
Google Drive
Google Driveは、テレワークでのファイル共有と共同作業をサポートするツールです。Googleドキュメント、スプレッドシート、スライドを使って、複数のユーザーが同時に文書を編集できるため、リアルタイムでのレビューや修正が可能です。
ファイル管理は非常にシンプルで、フォルダを共有するだけでチーム全員が最新の情報にアクセスできます。さらに、Google Meetと連携することで、オンライン会議中にDrive内の資料を共有しながらの進行も可能です。Google Driveは、簡単に利用できる画面配置と優れた共有機能で、テレワーク時の効率的な情報共有を実現します。
まとめ
相手の姿や状況が見えないテレワークで十分なコミュニケーションを確保するには、オフィス勤務と違った方法で連絡や相談ができるように工夫を凝らす必要があります。テレワーク用のツールも上手に活用しながら、従業員同士で意思疎通が図れるように、自社に合った対策を講じていきましょう。