「DX(デジタルトランスフォーメーション)」は今や馴染みのある言葉になりつつありますが、「DX化」と「IT化」「デジタル化」の違いについて詳しく知らない方も多いことでしょう。本記事では、これらの違いを解説するとともに、DX化を進めるメリットや方法、実践にあたっての注意点などをご紹介します。
DX化とは
DXとは「Digital Transformation(デジタルトランスフォーメーション)」の略で、総務省が2021年に公表した「情報通信白書」によれば、以下のように定義付けられています。
「企業が外部エコシステム(顧客、市場)の劇的な変化に対応しつつ、内部エコシステム(組織、文化、従業員)の変革を牽引しながら、第3のプラットフォーム(クラウド、モビリティ、ビッグデータ/アナリティクス、ソーシャル技術)を利用して、新しい製品やサービス、新しいビジネスモデルを通して、ネットとリアルの両面での顧客エクスペリエンスの変革を図ることで価値を創出し、競争上の優位性を確立すること」
引用元:総務省「令和3年版情報通信白書」
DX化とは、つまり「デジタル化を通じたビジネスの変革」ともいえるでしょう。特に近年は、世界的にビッグデータやIoTを活用したDX化が急速に進んでいる状況があります。その流れに乗り遅れないよう、国内でもさまざまな企業がシステム導入や社内での体制づくりといった課題に取り組んでいます。
DX化とIT化・デジタル化との違い
DX化と類似する言葉に「IT化」「デジタル化」がありますが、これらは似て非なるものです。簡単にいえば、DX化は目指すべき「目的」であり、IT化・デジタル化はDX化という目的に至るための「手段」を指します。DX化によってプロセス自体を改善することにつながりますが、IT化・デジタル化は既存プロセスの生産性を上げることと考えるとよいでしょう。
DX化のメリット
では、企業がDX化を進めると、具体的にどのようなメリットがあるのでしょうか。以下では、主なメリットを3つご紹介します。
働き方改革の推進ができる
多様な働き方やワークライフバランスを目指していく働き方改革は、今やあらゆる業界で取り入れられています。DXを推進していくなかで、たとえばRPAといった業務を自動化できるツールを導入・活用すれば、人はルーティン業務から解放され、より創造的で生産性の高い業務に専念できるようになるでしょう。
また、テレワークを導入しやすくなったり、労働時間の短縮化が叶うことで退社後の時間に余裕が生まれ、心身ともに豊かに過ごせたりするメリットもあります。残業時間が減少すれば、私生活や育児、介護などにも時間を割けるようになり、従業員エンゲージメントの向上につながり、ひいては離職防止にも寄与します。
企業競争力が上がり新事業・新サービスの開発につながる
DX化の目的は、デジタル化を通じて競争上の優位性を確立することにあります。そのために、企業は社内でデータ分析・活用により柔軟な意思決定を下せる、データドリブン人材を育成するようになります。
また、データ活用に基づくマーケティングを進めることで、企業競争力の向上も期待できます。DX化によって、これまで見逃してきたデータに目を向けられるようになると、新しい市場や顧客を開拓できたり、斬新なアイデアでサービスを開発したりできるようにもなるのです。
業務の効率化ができる
日々の業務をあらためて見直してみると、紙媒体での情報管理など、アナログ的な方法がまだ使われていることもよくあります。まずは業務をデジタル化していくことが大切です。デジタル化すると、業務を効率的に遂行できるようになり、結果として生産性の向上にもつながっていくからです。
現在アナログ的に行われている業務がある場合、それらをデジタル化することで、手間のかかっていた業務の削減や、作業効率の大幅な向上といった効果が期待できるため、取り組んでいく価値は充分あるといえます。
DX化の推進方法
では、企業がDX化していくためには、どのようなステップを踏んでいけばよいのでしょうか。以下では、その方法について見ていきましょう。
目的を定める
まず、DX化によってどのような姿になりたいのか、何のためにDX化するのかといった、自社の戦略やビジョンなどを明確化・共有します。そのためには、経営層などトップ層にもDX化について理解してもらうことが不可欠です。
体制を整える
DX化は企業の上層部だけで取り組むものでなく、全社一丸となって進めなければ効果は限定的になってしまいます。そのため目的を定めたら、社内での体制づくりをしていく必要があります。たとえば、DX推進を主導するプロジェクトチームを結成することも一案です。また、スキル習得・人材育成のための仕組みや人事評価制度など、DXをスムーズに進めていくための体制を整えていくことで、効果も目に見えやすくなるでしょう。
現状の把握、分析から優先順位を決める
次に、既存システムの状況やワークフロー、データの分散具合などを把握し、自社における課題を認識することが大切です。もし各システムとの連携に問題がなければ、必ずしもシステム環境を刷新する必要はないかもしれません。全社横断的なデータ集約・分析ができるかどうかなどをチェックし、どこから着手すべきか優先順位を付けていきましょう。
デジタル化し、評価・改善を行う
現在アナログで行っている作業のうち、デジタル化が可能なものにはITシステムを導入し、業務効率化を図っていきます。RPAやAIなどの技術を活用して、定型作業の自動化を検討するのも手です。ただし、一度に広範囲にシステムを導入しては、コスト面や管理・運用面などで問題が発生する可能性もあるため、なるべくスモールスタートで導入し、様子を見ながら導入範囲を広げていくのがおすすめです。
個々の業務のデジタル化が進めば、次は組織全体の業務フローでデジタル化が可能なところを探し、既存のビジネスを改善・高度化していくとよいでしょう。
DX化を進める際の注意点
DX化を進めるにあたっては、いくつか押さえておくべき注意点もあります。以下のポイントを念頭に置き、計画的に取り組みを進めましょう。
デジタル化がゴールにならないようにする
DX化を進める際は目的設定が重要ですが、取り組みの最後までぶれずに目的を意識し続けることが前提条件となります。たとえばDXは、デジタル化によって業務プロセスやビジネスモデルを大きく変革し、自社の生産性を高め、利益を最大化することが本来の目的であるはずです。そのため、デジタル化という手段が目的と化してしまわないように、前述したDXの推進方法に沿って目的や必要性を常に考え、取り組むようにしましょう。
全社的な取り組みが必要
先述の通り、経営層や一部の部署だけがDX化に取り組んだとしても、大した成果は期待できません。つまり、経営者から現場の従業員に至るまで、会社で働く全員がDXの必要性に理解を示し、一丸となって取り組む必要があります。
会社全体の課題や改善点を見つける方法としては、各部署それぞれがまず現状分析を行い、その結果を集約・共有することが挙げられます。どの段階でも組織の団結力があればDXはスムーズに進んでいきますが、共通の指標をもつことで、効果測定や進捗確認なども滞りなく行っていけるでしょう。
改善しながら取り組みを続ける
DXの取り組みは、一度実践すれば終わりというものではありません。目まぐるしく変化する市場や技術、消費者の価値観を常にリサーチし、自社の立ち位置がどうあるべきか、どういう企業になりたいのかを常に考え、改善していくことが大切です。
単なる業務のデジタル化で満足するのではなく、新しいビジネスモデルを創出したり、社会に影響を与えられるレベルまで変革したりすることが、DXの本来的な目的であるはずです。課題に対して目的を見失わず、PDCAサイクルに沿って改善を繰り返すことで、次のDXにもつながっていくでしょう。
まとめ
DX化を進めるうえでは、ITシステムなどを有効活用し、全社一丸となって取り組んでいくことが重要です。「Microsoft 365」であれば、企業規模に応じたDX化が図れるため、企業変革を強力にサポートしてくれるでしょう。自社のDX化を加速させるためにも、ぜひ導入をご検討ください。