IT、建設業、広告業、システムインテグレーターなどのプロジェクトを主軸に展開するサービス企業は、顧客との関係構築についても他業種とは異なるアプローチが必要です。では、プロジェクトサービス企業の顧客管理やCRMシステムの導入はどのように行えばよいのでしょうか?
プロジェクトサービスを提供している企業は、プロジェクトの品質だけではなく、プロジェクト完了後も継続的にお客様のフォローアップをしていく必要があります。例えば、システムインテグレーターでは、システム導入後の保守サポート品質もお客様満足に直結します。保守サポートの品質が良くなければ、他ベンダーへと乗り換えられたり、次期システムの導入では提案の機会すら失うといったことも考えられます。
今回は、プロジェクトサービス企業においてお客様と継続的な関係を構築していくためのポイントとそれらを支えるCRMに必要な機能についてご紹介していきます。
各フェーズでの関係構築のポイント
まずは、プロジェクトサービス企業における各フェーズでの顧客関係構築のポイントをご紹介していきます。
営業活動フェーズ
営業活動フェーズは、お客様からの問合せや日々の営業活動からお客様と最初に接点を持つフェーズとなります。このフェーズのゴールは、受注してプロジェクトをスタートさせることです。プロジェクトをスタートさせるためには、このフェーズでお客様と良好な関係を構築し、プロジェクトを任せてもらえるだけの信頼を得ることが重要です。このフェーズでは、主に営業が中心となってお客様との関係をマネジメントしていきます。
お客様の求めている提案をするために、現状の課題、キーマンの特定、予算額、購入時期、決裁方法などを日々の営業活動によって情報収集していきます。これらの情報をもとにプロジェクトを実際に推進する開発のプロジェクトマネージャーと提案内容を具体化し、見積もりを作成していきます。見積もりを積算するうえで、お客様の予算を意識して見積もりを作成する必要があるため、営業と開発と情報連携をどれだけ密に行えるかがお客様との関係構築のうえでポイントとなります。
お客様の信頼を得るためには、営業と開発がいかに協力し、情報を迅速に連携して、お客様の要望に応えていけるかが重要です。
プロジェクト実行フェーズ
営業フェーズで無事に受注した後、プロジェクトがスタートします。プロジェクトサービス企業にとって、プロジェクトスタート後はお客様と継続的な関係を築いていくために最も重要なフェーズです。このフェーズのゴールは、プロジェクトを計画通りに完了し、お客様の満足のいく成果物を納品することです。このフェーズでは主に、開発のプロジェクトマネージャーがお客様との関係をマネジメントしていきます。
このフェーズで重要なことは、プロジェクトが計画通りに進んでいるか進んでいないかを把握し、プロジェクト遂行を阻害する課題やリスクをできるだけ早くお客様と共有し、対応の方向性について認識を合せていくことです。プロジェクトは、当初計画通りに進むことはまずありえません。進捗、コスト、品質の面で何かしら必ず計画と乖離する部分が発生します。乖離の原因を明らかにし、早期にお客様と共有することで、プロジェクトの問題化を防ぐことにつながります。
問題化するプロジェクトでは、必ずと言っていいほどプロジェクト状況をお客様と正しく共有できておらず、状況が深刻になって初めてお客様に報告されます。お客様側も、早めに対応できていれば追加で予算がとれたり、スケジュールを調整できたりする場合もあります。お客様との迅速な情報共有は、プロジェクトの成功に欠かせません。
プロジェクト完了後のサポートフェーズ
プロジェクトが無事完了し、お客様に無事に引き渡しが終わったら、プロジェクト完了後の保守フェーズとなります。このフェーズのゴールは、サービスを安定的に提供することと、お客様の問合せに対して迅速に対応することです。このフェーズでは、主にサービスマネージャーや営業が中心となってお客様との関係をマネジメントしていきます。
このフェーズで重要なことは、お客様に約束しているサービスレベルを遵守し、サービスを阻害するトラブルを未然に防ぎ、発生した場合に早期に解決することになります。また、サービスに関するお客様の問合せに対して、迅速に回答することも重要です。特にトラブル対応は、その対応方法が不十分であるとお客様に不満をもたれてしまい、最悪の場合別のベンダーに乗り換えられるということもあります。
顧客関係構築を支えるCRM
それでは、プロジェクトサービス企業で求められるCRMの機能について整理していきましょう。
営業活動フェーズ
本フェーズで必要になるのは、SFAといわれる受注までのパイプライン管理、営業日報、お客様の課題、予算など営業案件を管理する機能になります。
特に、プロジェクトサービス企業では、見積もり時に開発にプロジェクトの見積もりを積算してもらう必要があり、その根拠数値として情報を残しておける機能が必要です。提案時にお客様から値下げ要求や見積もりの根拠を求められた際に開発で算出した根拠をもとにお客様と価格交渉していくことになります。
また、営業が収集したお客様が抱える課題や予算は、見積もりにも影響をおよぼすため、それらの情報がリアルタイムで開発と共有する必要があります。このフェーズでは、お客様の求める提案をするために営業と開発との連携が不可欠になり、それらをCRMで情報を一元的に蓄積していくことで迅速に対応が可能になります。
プロジェクト実施フェーズ
プロジェクト実施フェーズでは、プロジェクトの計画を立案し、計画と実績の乖離状況をお客様と共有し、アクションを取っていく必要があるため、予実の乖離状況が把握できる機能が必要です。
予実をしっかり把握するためには、まずはプロジェクトの計画を策定する機能が必要になります。見積もりの段階である程度工数を算出しているものの、それらを実際のプロジェクトとして実行計画に細分化していく必要があります。プロジェクトの計画はプロジェクトをマネジメントしていくうえで、管理のベースラインとなるため数値的な算出根拠をもって立案していかなければなりません。
計画立案の後は、プロジェクトの実績をリアルタイムで把握する仕組みが必要です。特に、プロジェクトメンバーの作業時間はプロジェクトのコストの大部分を占めるため、計画よりもオーバーしていないか、作業に必要な想定よりも時間がかかっているなど、早期にキャッチアップできる仕組みづくりをしなければなりません。
最後に、これらを計画と実績で数値的に比較できる機能により、プロジェクトメンバーやお客様にプロジェクトの状況を数値的な根拠をもって報告することができます。
プロジェクト完了後のサポートフェーズ
サポートフェーズでは、お客様からの問合せ、トラブルについて、サービスレベルを意識した期限管理、問合せのディスパッチ、完了を管理する機能が必要です。また、問合せの履歴を残し、参照できる機能についても、同じ問合せがあった場合の対応や、サービス品質向上のためにとても重要になります。
まとめ
いかがでしたでしょうか?
プロジェクトサービス企業では、扱うサービスが「プロジェクト」という特別なものであるため、社内の関係者(営業、開発)との連携やプロジェクトの状況、問合せの状況を管理するための機能が、CRMシステムに必要になります。
今回は営業、プロジェクト実施、サポートと3つのフェーズに分けて整理してきましたが、1つのお客様で複数のプロジェクトが平行して行われている状況も多く、同時並行で多くのステークホルダーがかかわってくるため、情報が点在しやすく、結果としてお客様との関係構築がうまくいかない場合もあります。
プロジェクトサービス企業に適したCRMシステムを導入し、お客様、プロジェクトの情報を一元管理し、お客様の関係構築に役立ててみてはいかがでしょうか?