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日本や世界のDX市場規模・推移や予測から分かるDXの現状と今後の動向

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「DXとよく聞くけど具体的にどういったことか分からない」「多くの企業がDXを進めているなら当社も対応しなければ」
上記のように考えている方も多いのではないでしょうか。

当記事ではDXの概要、DXの市場規模の推移と今後の予測、自社でDXを推進するために必要なポイントを解説しています。具体的な技術や事例も解説しているので、ぜひ参考にして自社のDX推進にお役立てください。

DXとは

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DX(デジタルトランスフォーメーション)とは、デジタル技術によって人類の生活をよりよいものにすることです。経済産業省の「デジタルガバナンス・コード2.0」では、DXを以下の定義としています。
「企業がビジネス環境の激しい変化に対応し、データとデジタル技術を活用して、顧客や社会のニーズを基に、製品やサービス、ビジネスモデルを変革するとともに、業務そのものや、組織、プロセス、企業文化・風土を変革し、競争上の優位性を確立すること」

DXは、一企業が顧客や社会全体に貢献できるデータとデジタル技術のことだということが分かります。企業は営利を目的とした活動をしていますが、活動によって顧客や社会に貢献しなければなりません。よってDXは、よりよい社会の実現となるため、各企業が取り組むべき使命といえるでしょう。

しかし、DXは業界ごとにさまざまなアプローチがあるため、取り組むべき内容は企業ごとに異なります。自社にとって必要なDXは何であるべきか、確認していきましょう。

DXについて詳しくはこちらの記事でも解説しています。参考にしてください。

近年のDX市場規模の推移

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日本国内と世界におけるDX市場規模の推移を確認していきましょう。

日本のDX市場の推移

国際経営開発研究所が2020年に発表したデジタル競争力ランキングによると、日本は63カ国・地域のうち27位でした。順位としては低下傾向であり、香港が5位、韓国が8位などアジアの中でも後れを取っているといえます。世界的に見ると日本のDXの進捗は思わしいものではありません。

しかし、日本国内のDXは着実に進んでおり、DX市場規模も拡大しています。富士キメラ総研のレポートによると、2019年度は国内DX市場規模が7,912億円でした。2020年度は1兆3,821億円と1.74倍に増加しています。近年日本のDX市場規模が増加傾向にある理由の1つが人口の減少です。働き手が不足すると、企業は生産性を維持、向上させるためにDXが不可欠となります。

また2019年度と2020年度の大きな違いは、新型コロナウイルスの流行です。感染拡大を防ぐためのリモートワークや、属人的にならないためのプロセスの見直しなど、働き方を大きく変えたことでDXにも力を入れたということも、DX市場規模拡大の大きな要因となっています。

世界のDX市場の推移

世界のDX市場規模も拡大を続けています。株式会社グローバルインフォメーションの市場調査レポートで、2022年の世界のDX市場規模は5,945億米ドルでした。

拡大を続ける理由は以下の通りです。

  • 新型コロナウイルスの流行
  • AI(人工知能)ブーム
  • 各国の企業がDXへの取り組みとして、新しいサービスの開発や提供と、業務効率化による生産性の向上を目指していること

資本主義の原則の通り、企業同士が生き残りをかけて切磋琢磨(せっさたくま)をし続けています。また、株主への還元に向けて企業努力が必要です。そして新型コロナウイルスの感染が世界中に広がりましたが、企業はそれでも利益を生み出し続けなければなりません。その結果、対策としてリモートワークやハイブリッドワークの導入が進みました。

こうした背景により各国の企業がDXに取り組む意義を理解し、DXに取り組んでいることから、世界のDX市場規模は拡大を続けています。

DX市場規模の予測

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過去から現在にかけて、日本国内と世界のDX市場規模が増加傾向で推移していることが分かりました。それぞれの市場規模が、今後どのように推移していくのかを解説していきましょう。

2030年の日本DX市場規模予測

2020年現在、日本のDX市場規模は世界各国と比較して遅れている状況です。一方で増加傾向であることも分かっています。2030年の日本国内DX市場規模の予測としては、さらに増加傾向が続く可能性が高いでしょう。現状では後れを取っていることから、今後に期待が持てるといえます。

富士キメラ総研の2020年度のレポートでは2030年度のDX市場規模の予測として、2020年度の3.8倍である5兆1,957億円と予測されています。同レポートにあるユーザーアンケートでも、各企業がDXに向けて積極的に導入や投資をしている結果となりました。「DX導入の計画を進めている」「DX予算が増加した」など、DXに対して前向きな回答が増えていることが、日本国内のDX市場規模拡大予測につながる要因となっています。レポートでは分野ごとの結果と予測もありますが、各分野で満遍なく拡大となる見込みです。

2030年の世界DX市場規模予測

世界のDX市場規模が増加傾向にあることは先述の通りです。2030年の世界DX市場規模はさらに拡大する予測が強くなっています。パノラマデータインサイトの市場予測では、2030年には1兆8900億米ドルに到達する予測です。2020年が3,347.5億米ドルのため、約5.6倍となる見通しが立っています。

デジタル競争力ランキングで1位を守り続けるアメリカをはじめ、韓国や中国などアジアの国々も順位を上げました。ヨーロッパの国々も上位にランクインしており、世界中の企業がDXへの取り組みを進めていることが分かります。今後も世界中の企業が、分野ごとに切磋琢磨をしていくことが予想されるため、DX市場規模はさらに拡大を続けていくでしょう。

AIやビッグデータなどのデジタル技術も進化を続けており、上昇の加速度はさらに強まることが予測されています。

日本企業のDX市場規模が小さい理由


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日本国内と世界のDX市場規模を、過去から将来的な予測まで解説してきました。日本は世界的に見て、DXがやや遅れている国として位置付けられています。以下では、日本国内のDX市場規模が小さい主な理由を3点解説します。

  • ITリテラシーの不足
  • 経営層のコミット不足
  • 既存のレガシーシステムによる妨げ

ITリテラシーの不足

日本のDX推進が遅れている理由の1つが、ITリテラシーの不足です。
日本国内では多くの企業において、アナログな業務の進め方が依然として多く残ってしまっています。理由としては「ITが苦手だ」と考えている人が多いことです。日本では年齢層が高いほどITの利用率が低くなっており、その理由は「必要ない」「わからない」となっています。加えて日本は少子高齢化が進んでいることでITが苦手な人の割合が多くなってしまっている状況です。ITが苦手な人材が多い状況下で、ITリテラシーが高まる可能性は限りなく低いと言えるでしょう。結果として、多くの企業がITリテラシーを高めることなく、アナログな業務からの脱却が遅くなっている状況です。

上記のように日本はITリテラシーが不足している企業が多いため、DXが進みにくくなっています。

経営層のコミット不足

経営層のコミット不足も、日本のDX市場規模が小さい要因です。経営層がDXに力を入れて取り組む方針を定めなければ、社内のDX推進は思うように進みません。

経営層は事業については精通している一方で、「IT技術はあまり知らない」というケースが少なくありません。経営層のIT技術へのコミットが不足していることで、DX推進を考えるときに「リスクが大きい新しいことをやらなくてもいいのでは」と保守的な考えとなってしまうこともあるでしょう。
DX推進のためにも、経営層によるDXの重要性認知とIT技術の精通が求められます。

既存のレガシーシステムによる妨げ

既存のレガシーシステムを使用し続けることも、日本国内のDX市場規模が小さい要因となっています。

現行のシステムを運用開始から使い続けており、今さらリプレイスするのは難しい、という場合があるのではないでしょうか。リプレイスを決行するにも、多くのリソースを必要とするため、事業に影響を及ぼしてしまうことが懸念されています。解消のためにも、既存システムの刷新と事業継続の両立が必要です。

DXに貢献する技術


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DXを推進していく上で欠かせない、DXに貢献する技術として以下の3点を紹介します。

  • クラウドコンピューティング
  • AI
  • IoT

クラウドコンピューティング

クラウドコンピューティングとは、ネットワークを介してクラウド事業者が提供するリソースを利用するサービスです。利用するリソースによって、インフラであればIaaS(Infrastructure as a Service・アイアース)、サービスであればSaaS(Software as a Service・サース)など呼び方が分かれています。

クラウドコンピューティング利用のメリットは、データセンターやハードウエアの運用が必要ないことです。これにより、サービスやソフトウエアの開発に集中できるようになります。

クラウドコンピューティングの利用率は企業間でも伸びており、今後も利用の拡大が予測されています。まさにDX推進に欠かせないサービスです。

クラウドコンピューティングについて詳しくはこちらの記事で解説していますので参考にしてください。

AI

AIもDXに欠かせない技術となっています。大量のデータから学習したAIが、数字や文章はもちろん、画像や音声データの分析を行い、人間が行う仕事を肩代わりすることで業務の自動化を実現可能です。

例として、医療分野では画像認識をAIが行い、悪性腫瘍の判別を行うなど実用化が進んでいます。また物流分野でも需要の予測や、不良品の検知など多くの業務にAIが活用されるようになりました。少子高齢化が進む日本は特に、DXによる業務の自動化が欠かせません。AIはDXに大きく貢献する技術といえます。

IoT

IoTは、センサーをモノに取り付けて、情報収集やデバイス制御を行う技術です。IoTが集めたデータは、AIによる分析で、自動でデータ収集と分析も可能となります。

例えば、IoTデバイスを橋にセットして川の水位を測ることができます。従来は川に氾濫の危険がある場合、職員が見て確認していました。IoTデバイスの利用で水位のデータは一定時間ごとに送られてくるため、危険な水位となった場合、いち早く避難につなげることが可能です。

このように、IoTデバイスの活用で人間にとって危険な作業を行わせることも可能となりました。DX推進に向けて、さらに多くのIoTデバイスを用意し、データ分析や制御に用いることで、業務効率化につなげる必要があります。

DX市場規模拡大に後れを取らない自社でのDX推進ポイント

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DX市場規模はますますの拡大が予測されています。後れを取らないために自社でできるDX推進ポイントを5つ紹介します。

  • 古いシステムからの脱却/ツールの導入
  • DX専門人材の確保と育成
  • 企業全体のDXリテラシー向上
  • 同業他社におけるDXの取り組み事例を参考にする
  • 身近なDXから取り入れる

レガシーシステムからの脱却/ツールの導入

DXを推進していくためには、レガシーシステムからの脱却と最新ツールの導入が欠かせません。レガシーシステムの運用継続によって思うようにDXが進まなくなってしまうためです。思い切ってレガシーシステムから最新システムへの移行を決行しましょう。

第一に導入すべきなのは、ビジネスツールです。DX推進の目的は、本業による利益増加と社会への貢献です。ビジネスツールを利用することで本業以外に必要な業務を効率化し、本業に必要な時間を捻出することが可能です。ビジネスツール導入によって社内基盤を整えた後から、部署ごとにレガシーシステムの脱却、最新ツールへの移行を進めていくとよいでしょう。

DX専門人材の確保と育成

DXを推進するために、DX専門人材の確保と育成を行う必要があります。先述の通り、DX推進のために最新ツールを導入することは大切です。しかしながら、社内のDXを先導する人材や組織がなければ、DX推進は思うように進められません。DX推進の進捗が思わしくないと、DX推進の目的達成までにかかる時間が長くなってしまいます。外部からDX専門人材を確保する、社内でDX専門人材の育成を実施することで、DX推進の進捗が思わしいものとなるでしょう。

基本的に、専門人材の育成のみでDXを推進できると費用は少なくすみます。しかしDX推進が遅れている会社は、DX専門人材が不在かつ、育成のノウハウもないことが考えられます。よって費用を投じてでも、DXに精通している人材を外部から確保することが望ましいです。

企業全体のDXリテラシー向上

DX推進のためには企業全体のDXリテラシー向上が欠かせません。DX推進をDX専門チームや経営層が取り組もうとしても、現場の理解がなければDXによる目的を達成できないためです。

例えば、DXに向けて導入した最新ツールでも現場の社員が使いこなせなければ目的を達成することはありません。また「そのシステム運用は外部ベンダーに任せているからわれわれには分からない」と丸投げしている企業もあります。そうした姿勢では、自社としてのDXリテラシーが向上することはありません。仮に1システムの導入、運用に成功できても別のシステムとの連携が図れずに、業務効率が落ちてしまうことも考えられます。DX専門チーム、経営層、現場の社員と企業全体でDXリテラシーを向上させることが、DX推進には大切です。

同業他社におけるDXの取り組み事例を参考にする

DXを自社で進めるために、すでにDXに取り組んでいる同業他社の事例を参考にしましょう。

DX推進といっても、何をすればいいのか分からない場合も多いのではないでしょうか。そこで同業他社を参考にすべき理由は2つあります。

1つ目の理由は、取り入れやすいことです。同業他社であれば業務内容が似ていることもあるでしょう。全く同じ方法にする必要はありませんが、全く違う業種の事例よりも参考にしやすく、自社で効果を上げられる可能性が高いです。DX用のツール導入の際に経営層へのアピールをすることを考えても、同業他社がやっていることであれば納得度が高くなるのではないでしょうか。

同業他社を参考にすべき理由の2つ目は、目標を立てやすいことです。「同業他社が20%稼働削減しているなら、うちは30%稼働削減を目指そう」と比較軸が明確になります。業界内での切磋琢磨があれば、業界全体の製品やサービスが向上し、社会にとっても大きな利益をもたらすことになるでしょう。

身近なDXから取り入れる

DX推進を継続していくために、まずは身近なDXから取り入れてみてください。先述した最新ツールの導入や同業他社の事例を参考にすることは大切ですが、スタートアップ時点で大掛かりな変革への取り組みは、最初の効果がなかなか現れないため、企業の組織であってもモチベーションを保ちにくいものです。効果が現れる前に断念してしまっては、元も子もありません。ツールを導入後に身近なDXを取り入れてみることで、小さくても効果を実感できます。徐々に効果を大きくしていけばよい、と長期的な目線で考えていきましょう。

身近なDXの例としては以下の通りです。

  • 書類の保管にクラウドストレージを利用する
  • Web会議ツールを使い、会議をオンラインで実施する
  • チャットボットを導入して、カスタマー対応を自動化する
  • キャッシュレス用の機器を導入し、会計記録を自動化する

上記のような小さな効果を実感することで、DX推進へのモチベーションを組織として高めていくことがDX推進のポイントです。

国内企業のDX施策の成功事例

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国内企業のDX施策の成功事例を3つ紹介します。以下の3企業です。

  • 鹿児島銀行
  • JTB
  • ファミリーマート

鹿児島銀行

鹿児島銀行は「地域社会のデジタル化をリードする企業グループ」となるべく、DX推進に取り組んでいます。デジタル戦略グランドデザインという10年戦略を策定し、取り組みを続けている企業です。

具体的な取り組みとしては、鹿児島銀行の口座を持つユーザーが利用できるキャッシュレスアプリ「Payどん」の開発や、キャッシュレス決済専用の商業施設「よかど鹿児島」の開業です。DX推進によって顧客が金融機関を利用する利便性を高めたとともに、自社のブランド強化につなげることにも成功しています。
参考:鹿児島銀行

JTB

旅行会社のJTBは、ワンストップソリューションでの観光DXサービスの提供を開始しました。ジョルダン、ジョルテとの共同によるDX推進です。

従来は旅行の予約時に、宿泊先はもちろん、移動手段や観光の予約、決済を顧客がそれぞれのプラットフォームで行う必要がありました。3社のDX推進への取り組みであるLINKED CITYは、顧客がワンストップで予約や決済を行えるサービスです。LINKED CITYによって顧客の利便性が高まったことで、地域の収益増加や活性化に貢献できると考えています。

参考:トラベルボイス

ファミリーマート

大手コンビニエンスストアであるファミリーマートはDX推進の取り組みとして、さまざまなサービスを提供しています。例えば無人決済店舗です。生産人口の減少や感染症による非接触の需要が高まったことから、無人決済店舗のサービスを開始しました。無人決済店舗は、顧客にとっての利便性向上や企業にとっての人件費削減に貢献が可能です。

このようにデジタル技術を最大限に利用し、企業にとっての持続可能な成長を実現し、顧客のニーズに応えていくことを目指しています。

参考:ファミリーマート

まとめ

日本や世界のDX市場規模・推移や予測から分かるDXの現状と今後の動向-9

DXの市場規模は世界はもちろん、日本国内でも拡大を続けています。自社がDX市場規模拡大の流れに遅れないためには、解説したDX推進のポイントを参考にできるところから進めていくことが大切です。日本は世界各国と比較してDX市場規模が小さく、DX推進に踏み切れていない企業も多いため、自社がDXを推進していくことで大きなチャンスを手にすることにもつながることでしょう。

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