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小売業のデータ分析はAIで変わる|DX推進による変革の事例

小売業のデータ分析はAIで変わる|DX推進による変革の事例

消費者のニーズは、その時々の流行や社会状況などによって変化します。小売業では、一定しない消費者のニーズを的確に把握することが重要であり、売り上げを伸ばすためのデータ分析が欠かせません。この記事では、小売業のデータ分析にAIが効果的であることを示し、データ分析にAIを活用する場合のポイントや活用事例などを紹介します。

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小売業でのデータ分析の必要性

データ分析は、企業の売り上げをアップして経営目標を達成するために、業界を問わず利用されている手法であり、小売業でも活用する企業が増えています。

売り上げや経営に関する目標を着実に達成して業績を伸ばすには、常に自社の現状と目標への進捗状況を把握・確認しながら、業務を進めることが大事です。自社が掲げる目標と現状との間にギャップが存在する場合には、なぜギャップが発生しているのか、その原因を突き止めてギャップを埋めなければなりません。データ分析を適切に行えば、売り上げや在庫状況などの将来予測ができるようになり、課題の発見やギャップを埋めるための施策立案、効果測定などに役立ちます。

特に、コロナ禍を経た現在、小売業では販売プロセスを見直す必要に迫られています。消費者が商品やサービスを購入する際に、持続可能性を重視するようになるなど、消費者の志向や需要が流動的になっているので、その変化を見逃さず、機敏な対応が必要です。

また、売り上げを伸ばすには、実店舗だけでなくECサイトやSNSなど、ありとあらゆるチャネルで顧客にアプローチする、オムニチャネル戦略を取ることも欠かせません。このオムニチャネル戦略では、AIの導入を含めてDXを推進し、データ分析を活用することが求められます。

小売業のデータ分析でAIを使用した場合の変革ポイント

小売業でAIによるデータ分析を活用した場合、どのようなメリットが生じるのかについて、四つの観点から解説します。

1. サプライチェーンデザイン

多様化する消費者のニーズに対応し、オムニチャネルに移行して適切な品ぞろえを実現するには、原材料が商品となって消費者に届くまでのサプライチェーンについて、デザインの再考が必要です。その際は、倉庫、メーカー、サプライヤーなどを含むサプライチェーンネットワークを再構築しなければなりません。そこで、AIを活用してデータ分析を行えば、さまざまなことができるようになります。

たとえば、顧客のニーズにマッチした品ぞろえを割り出して、既存の倉庫だけで在庫保有ができるかどうか見極め、追加の倉庫が必要な場合には最適な場所と容量を決められます。また、季節による需要の変化や、プロモーションで需要が急増した場合の対応もできます。さらに、オムニチャネルに対応できるように労働力の配分を最適化して、人員を効率よく配置することも可能です。

2. 需要予測

オムニチャネル戦略で難しい課題となるのが、実店舗やECサイトなど、オムニ全体のどこでどのくらいの需要が発生するかを予測して商品を調達し、最適な場所に最適な量の在庫を置くことです。

需要変動検知について学習したAIで需要予測を行えば、この課題を解決できます。AIを利用すれば、店頭価格や特売価格、さらには天候やイベントなどさまざまな要因から分析を行って、精度のよい需要予測が可能です。AIを用いて正確な需要予測を行うことで、サプライチェーンがより効率的になると期待されます。

3. 需要喚起

消費者の需要を喚起するためには、販売プロモーションやキャンペーンに力を入れなければなりません。しかし、プロモーションやキャンペーンを行うために、多くの工数がかかってしまうというのが、小売業の悩みの種です。

店頭であれば、商品を値下げしたり目立つ場所に陳列したりして顧客にアピールし、チラシを作成して配布するなどのプロモーションに時間と手間をかけることになります。Webであれば、インターネット広告、送料無料キャンペーン、アプリクーポンの発行、SNSキャンペーンなどを用いて、顧客の購買意欲をアップさせるのに多大な労力が必要です。

AIを活用すれば、プロモーションを行うタイミングや期間を変更した場合の影響に加え、送料を無料にした場合の影響なども事前に確認できるようになります。また、価格設定や商品の見せ方などを変えたらどうなるかなど、多様なパターンを試してデータを集め、それを分析することで、店舗やオンラインでの販売にどのような影響が出るかを検証可能です。さらに検証によって、顧客満足度を低下させない在庫の割り出しなども行えます。

4. 在庫の適正化

上記のようにAIを利用してサプライチェーンデザイン、需要予測、需要喚起を行った場合でも、現場で在庫切れが発生したり、間違った場所で商品が保管されたりといった問題が起こる可能性をゼロにはできません。在庫状況にこのような問題が実際に生じると、店舗間で保管している商品の移動が必要になるなど、余計なコストが発生します。

そこで、AIを活用してリスク分析を行えば、事前にどのような問題が起こり得るかを把握して対策を講じ、在庫を適正化することが可能です。たとえば、分析結果から問題が起こり得るポイントを見つけ出し、問題が起きそうになったらアラートと回避に必要な指示が出るようにしておけば、問題の発生を最小限に抑えられます。

また、現実空間からリアルタイムで情報を収集して仮想空間に送信し、仮想空間にコピーを再現させるデジタルツインを利用し、AIが導き出した回答と実際のリスクを評価することで、意思決定の迅速化を図ることが可能です。

小売業のデータ分析にAIを活用した事例

ここからは、AIを利用したデータ分析の活用事例のなかでも、特に注目に値するものを三つ厳選して紹介します。

事例1:在庫の適正化

最初に紹介するのは、アメリカのクイックサービスレストランチェーンで在庫の適正化を行った事例です。

このチェーンでは、天気や地域のイベント情報などをデータ分析の要素として活用し、受発注・在庫管理時の最小単位であるSKU(Stock keeping Unit)についての予測を、AIで毎日生成しました。データサイエンティストが開発した強力な機械学習アルゴリズムのおかげで、店舗ごとに地域の特徴を踏まえて最適化された品ぞろえの予測精度向上に成功しています。

また、店舗から行う在庫補填依頼が自動化され、店舗内の在庫保管用スペースも最適化されたため、店舗従業員は在庫計画に工数を割かずに済み、顧客対応に専念できるようになりました。さらに、在庫の賞味期限なども考慮して在庫を適正化しているので、賞味期限切れによる廃棄減にもつながっています。

事例2:デジタルツインの構築

次に紹介するのは、アメリカの大規模食料品小売業者でデジタルツインを構築した事例です。この小売業者の規模は、店舗数4,700以上、DC(物流センター)数110、卸売業者数10,000以上を誇ります。

構築したのは、原材料の発送地から商品の消費地までを網羅した、エンドツーエンドのサプライチェーンを対象とするデジタルツインです。デジタルツインを構築すると、現実世界をコピーした仮想空間上でさまざまな検証ができるようになります。

たとえば、在庫容量、輸送力、労働力がフローとしてヒートマップで可視化できるようになったため、キャパシティオーバーが発生した場合には一目瞭然です。また、プランナーはデジタルツインによって得られたフィードバックをもとに、自信をもってコスト削減などを行えるようになりました。

事例3:サプライチェーン・コントロール・タワーの構築

最後に紹介するのは、店舗数1,600、収益は140億ドルという中規模小売業者が、サプライチェーン・コントロールタワーを構築した事例です。

サプライチェーン上でキャパシティオーバーなどの異常を即座に発見し、費用対効果の高い方法で軌道修正するには、全体像が見えなければなりません。そこで構築したのが、商品の仕入れから店頭への陳列、オムニチャネル需要など全てを俯瞰で管理できるシステムとしてのコントロールタワーです。

コントロールタワーを構築したことで、アラート機能や異常値に対する最善の回答を得られるようになり、在庫の最適化や補充プランの見直しなどが行えるようになりました。また、商品が陳列棚に適切な数量で並び、欠品していない状態であるOSA(On Shelf Availability)の向上にも成功しています。

まとめ

消費者の需要が変化していくなかで小売業が生き残るには、AIを活用したデータ分析が欠かせません。AIを活用したデータ分析による変革では、サプライチェーンデザイン、需要予測、需要喚起、在庫の適正化という観点で大きなメリットが得られます。

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