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CSR経営について必要な理由から課題やポイントまで解説

今日の消費者や投資家は、企業が自社の経済的利益を追求するだけでなく、社会的責任(CSR)を果たすことを求めています。そこで本記事では、CSR経営の概要や、必要とされる背景、課題、CSRの国際規格である「ISO26000」の内容などについて分かりやすく解説します。

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CSRとは

CSRとは”Corporate Social Responsibility”の略語で、日本語では「企業の社会的責任」と訳されます。簡単に言うとCSRとは、事業活動やステークホルダーとの関わりの中で、企業に要求される責任を指す概念です。たとえば、環境に配慮した生産体制の構築、健康的な労働環境や公正な労働条件の整備、地域社会への貢献、株主への適正な情報開示、汚職防止などの法令遵守といった施策は、いずれも企業に期待されるCSRの一例です。近年では、環境・社会・ガバナンスの3要素に配慮した経営手法「ESG経営」に取り組む企業が増えていますが、こうした取り組みもCSRとの関連のもとで捉えられます。

サステナビリティとの違い

CSRと関係した概念として、サステナビリティ(持続可能性)が挙げられます。サステナビリティとは、自然環境や組織・個人などが歪みのない健全なあり方で存続していける可能性を示す概念です。

ビジネスにおいては、自社の利益のみを追求するのではなく、環境や社会、従業員との関係などにも配慮して事業を行うことが、結果的に企業のサステナビリティを高めることにつながると考えられます。サステナビリティに配慮した経営を行うことは、企業に求められるCSRのひとつであると同時に、CSRを意識した経営を行うことが、自社のサステナビリティを高めることにもつながります。

CSRとサステナビリティとの違いは、CSRが企業にフォーカスした概念である一方、サステナビリティは自然環境の保全をはじめとする広範な領域で使用される概念であることが挙げられます。

CSR経営が必要な理由

CSR経営は、企業が従業員と良好な関係を築き、モチベーションやエンゲージメントを高めるための一助となります。逆に、従業員の働きやすさや安全性などを考慮しない企業は、従業員の不満を高め、離職率が高くなり、ブラック企業として社会的信用も低下する恐れがあります。また、CSR意識の低い企業は、汚職や内部不正などの腐敗が進みやすくなる可能性があるため、そうしたリスク軽減のためにもCSR経営は重要です。

また、CSRは企業のブランドイメージにとっても重要です。昨今の消費者や投資家は、環境問題や企業の不祥事などに敏感です。SNSが普及した現在、CSRを顧みない企業は短期間で悪い評判が広がってしまいます。逆に環境にやさしい製品づくりなど、CSRに配慮したビジネスを行っている企業に対して多くの消費者は好意的なので、CSR経営はブランドイメージの向上につながります。つまり、CSR経営は単なる社会貢献活動ではなく、企業の経営戦略上も重要な取り組みです。

CSR経営の参考となる国際規格

いざCSR経営に取り組もうとしても、どのような部分に着目し、どういった取り組みを行うべきか、不明な点があるかもしれません。その際に参考になるのが、「ISO26000」という国際規格です。以下では、ISO26000の概要について紹介します。

「ISO26000」とは

ISO26000は、国際標準化機構(ISO)が2010年に発表したCSRに関する国際規格です。ISO26000の目的は、CSRとは何かを明確にし、組織がCSRの原則を実践的な行動に移せるように支援することです。ISO26000は、国籍や事業規模・事業内容、あるいは企業であるかどうかに関わらず、あらゆる組織に共通するCSRの標準規格として、国際的なコンセンサスとなっています。ただし、ISO26000は他のISO規格とは異なり、強制力を持たない任意の推奨ガイダンスです。

ISO26000の主な内容

ISO26000では、CSRに関する7つの原則および7つの中核主題が示されています。それぞれの内容は以下の通りです。

ISO26000の7原則

  1.  説明責任:組織の活動が与える影響を説明する
  2. 透明性:組織の活動の透明性を保つ
  3. 倫理的行動 :倫理観に基づいて行動する
  4. 利害関係者の利益の尊重:ステークホルダーの要求に配慮する
  5. 法の支配の尊重:各国の法令を遵守する
  6. 国際行動規範の尊重 :法律だけでなく、国際的な行動規範も尊重する
  7. 人権の尊重:普遍的な人権に配慮する

ISO26000の7つの中核主題

  1. 組織統治
  2. 人権
  3. 労働慣行
  4. 環境
  5. 公正な事業慣行
  6. 消費者課題
  7. コミュニティへの参加と発展

これらはあくまでCSRのエッセンスを抽出したものであり、ISO26000ではそれぞれの中核主題に対してさらに具体的かつ詳細な課題が提示されています。たとえば、中核課題の「3. 労働慣行」においては、「労働は商品ではない」という理念のもとで、労働者が平等な労働機械を確保し、安全かつ健康的に働けるように就労環境や雇用条件を整備することなどを求めています。これらに照らせば、たとえば障がい者や高齢者などの社会的弱者の雇用機会促進、女性管理職率の向上、長時間労働の是正やテレワークの導入などによるワークライフバランスの改善などが、労働慣行に対応したCSR施策として考えられるでしょう。

CSR経営の課題

CSR経営を進めていく上では、いくつかの課題があります。たとえば、CSR経営において環境保護や地域社会への貢献などに取り組む際には、一定のコストが必要になります。たとえば製造業においてエネルギー効率の高い(環境負荷の低い)生産設備を導入するには、高額な初期投資がかかるでしょう。CSR活動が短期的な利益や直接的な利益に結び付くことは少ないため、こうしたコストをすぐに回収するのは難しい部分があります。

また、CSR活動を行う人材が不足しがちなことも懸念点のひとつです。従来の業務もこなしながら環境保護活動などのCSR活動を行うとなれば、従業員の負担が増大してしまい、仕事へのモチベーションの低下などを招く可能性があります。したがって、CSR経営に取り組む際には、必要に応じて人材の追加確保を検討しましょう。

CSR経営のポイント

CSR経営を成功させるには、以下のようなポイントが重要になります。

ニーズの把握

CSR経営を行う際には、社会や自社において、どのようなニーズがあるかを把握することが重要です。ニーズが正確に把握できていなければ独りよがりな施策になってしまったり、せっかく実施しても注目されなかったりする可能性があります。したがって、施策の検討段階においてニーズの調査と把握をした上で、自社がどのように動くか検討することが成功のためには欠かせません。

自社に関連した取り組みの検討

CSR活動を行う際は、自社と関連した取り組みから優先的に行うことが重要です。たとえば、食品会社であったら、フードロス問題の改善に取り組んだり、オーガニック食品を積極的に採用したりするなどです。自社の事業と関連性の高い事柄であれば、スムーズに施策を検討・実施しやすいですし、自社の事業のイメージアップにもつなげやすくなります。

対外的なPRの実施

CSR経営をブランドイメージの向上などに活かすためには、取り組みを世間にPRすることが重要です。自社のホームページ内やレポートなどで活動記録を公開するとともに、公式ブログやSNSなど幅広い媒体や方法を使って積極的に情報発信していきましょう。

まとめ

「企業の社会的責任」を意味するCSRは、環境保護などの社会貢献に関わると同時に、自社の企業イメージの向上など経営戦略上も重要となる概念です。CSR経営を成功させるには、社会のニーズを把握し、自社の事業と関連性の高い施策を検討するのがポイントです。本記事を参考に、ぜひ取り組んでみてください。

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