製造業

製造業において人手不足の理由とは?影響や対策について詳しく解説

製造業において人手不足の理由とは?影響や対策について詳しく解説-1

現在の日本では、さまざまな業界で人手不足といわれています。
今回解説する製造業も例外ではありません。
「ITの発展によって、人の仕事がなくなっていく」この言葉をみなさん聞いたことがあると思います。

人の仕事がなくなるといわれているにも関わらず、なぜ製造業は人手不足なのか、今後の人手不足はどうなっていくのかなどについて、わかりやすくまとめました。
また、企業が取り組むべき対策についても解説しますので、ぜひ最後までご覧ください。

Factory of the Future

製造業では人手不足が深刻化している

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モノづくり大国、技術大国といわれていた日本ですが、現在日本の製造業は人手不足という深刻な問題を抱えています。
まずは、人手不足の現状と将来的な課題について解説していきます。

製造業における人手不足の現状

最初に、製造業における人手不足の現状について解説します。
日本の少子高齢化の影響を受けて、製造業で働く人材の数も年々減少しています。

経済産業省の「製造基盤白書(ものづくり白書)」によると、製造業の若手人材の確保が困難、人材育成時間の不足、指導する側の人材も不足しているといった問題点があることがわかります。

そして製造業における人手不足は、中小企業だけでなく、大企業も直面しているのが現実です。

製造業は将来的に約40万人の人手が不足する見込み 

続いて、製造業の今後の人手不足についてまとめます。
結論を先に述べると、製造業界においては先ほども紹介した高齢化や若年層の離職率の高さ、技能不足の問題などが人手不足を招き、将来的にもこの傾向が続くと予測されています。

それを裏付ける根拠として、パーソル総合研究所の発表によれば、2030年には製造業だけで約38万人から40万人ほどの人手不足になるというデータが出ています。
具体的には、需要が810万人、供給が771万人となっています。

職業別にみても技術的に専門性が高い分野の業界になるほど、後継者問題などで人手不足に陥る可能性が高いとされています。製造業の中でも技術が求められる仕事であるほど影響を受けていると考えられます。

参考:労働市場の未来推計2030

製造業の人手不足はなぜ生じている?4つの要因

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ここまで製造業の人手不足の現状と、将来的に40万人不足するという話をしてきました。
ここからはその製造業における人手不足がなぜ起きているのか、原因を大きく4つに分けて紹介していきます。

【要因1】新型コロナウイルスの影響

製造業の人手不足は、以前から問題視されていましたが、新型コロナウイルスの世界的な流行によって深刻化したといわれています。

半導体不足と同様、新型コロナウイルス感染拡大による工場の休業や減産の影響で生産ラインがとまっているため、その反動で今後生産労働者の需要が高まることが予想されます。
また、新型コロナウイルスの影響で転職をためらう人や、リモートワークを推奨する企業が増えたことで、リモート作業が困難な製造業が転職候補から外れる要因にもなっています。

さらに、外国人労働者の入国制限も影響の1つです。
多くの製造業の企業は外国人労働者を採用しているため、新型コロナウイルス感染拡大の影響による入国制限で外国人労働者の確保が難しくなっています。

【要因2】後継者不足

後継者不足も、製造業において人手不足が生じている大きな要因です。
年功序列、終身雇用といった慣習が崩れつつある中、高い技術を持った人材が育ちにくくなっています。

後継者不足も、製造業において人材不足が生じている大きな原因です。
近年、親族内承継ではなく親の会社を継ぐことよりも子ども自らが働きたい仕事に就くことが一般的になり、後に述べる製造業のマイナスイメージとあわせて後継者不足が深刻化し、結果的に人材不足につながっています。
また年功序列、終身雇用制度の慣習が崩れつつある中、高い技術を持った人材が育ちにくくなっていることも要因の1つです。

さらに製造業の後継者不足の原因は、非正規雇用の増加にあるといわれています。
非正規雇用者については、将来的なキャリアアップの可能性が低いことなどもあり、結果的に後継者が育たない要因となっています。

【要因3】環境が悪いイメージ

製造業に対して3K(きつい、汚い、危険)のイメージを持っている人が多いことも人手不足の原因となっています。

夏場の蒸し暑い工場内での作業で、扇風機やクーラーもほとんど当たらない状態での作業は肉体的、精神的にもかなりきついと感じる人がほとんどです。
工場での作業は、毎年一定数熱中症を訴える人がいる環境が現実に存在しており、人手不足の要因となっています。

労働環境が悪い、汚染や廃棄物の問題があるなど、ネガティブな印象があるということは事実です。
しかし近年では、省エネルギーやCO2削減、クリーンな職場を目指した環境問題に対する取り組みが進んでいます。

【要因4】業務に不満が生じやすく離職につながりやすい

製造業で人手不足になる理由の1つとして、収入、昇給、業務内容などに不満を持つ人が多いことが挙げられます。
製造業を辞める、続けたくない人の多くが次のような理由を挙げています。

  • 収入が仕事内容の割に合わない
  • 仕事のやりがいがない
  • 柔軟にシフトや休みが組めない
  • 上司や同僚とのコミュニケーションに不満がある
  • 募集時に思っていた仕事内容と異なっている
  • 昇給や評価が妥当ではない、昇給制度が整備されていない。
  • スキルアップ・キャリアアップができない

きつい肉体労働に加えて、残業や夜勤も少なくない製造業では人材不足解消のために、これらを改善していく必要があります。

製造業における人手不足の影響

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製造業の人手不足の主な原因を解説しました。
ここからは、製造業で人手不足になるとどういった影響があるのか、生産面、経営面、労働環境面に分けて紹介していきます。

生産性の低下

製造業の人手不足による影響で考えられることは、生産性の低下です。
人手不足が生じると、製造工程の中で作業が滞り生産ラインの停止や品質低下が生じます。
これにより、製品の納期遅れや欠陥品の増加などが生じ、顧客からの信頼や評価が低下する可能性があります。

機器の部品を製造する企業は、毎月の生産台数が定められている場合が多く、そのノルマを労働日数で割り、日ごとの生産目標も計算しています。
人手不足になると、このノルマ自体を減らさざるを得なくなり、生産性に影響を与えます。

経営への影響

製造業における人手不足は、経営に大きな影響を与えます。
人手不足によって製造ラインが停止し、生産性の低下につながるとお話しました。
その生産性の低下から、納期の遅れや欠陥品の増加、顧客からのクレームなどが発生し経営に悪影響を及ぼします。

人手不足の影響は、採用コストが増加することにもつながり、従業員を引き留めるためのボーナスや賃金の増加も必要です。
人手不足に陥ることで、十分な利益が生まれず、営業や開発にかける予算が減少することにもつながります。

品質低下、生産力低下によって他社との競争力が低下することもあるため、人手不足が経営に与える影響は大きいです。

労働環境への影響

製造業における人手不足は、労働環境にも影響を与えます。
企業経営者の多くは、生産ラインを止めたくないという思いが最優先でしょう。
人手不足が続けば、残業や休日出勤を強いることも考えられます。
こうした作業員の労働負担の増加によって考えられることが、過重労働やストレスの発生です。

これにより作業員の体調不良やミスなどが増加し、労働災害や品質低下、作業員のモチベーション低下や離職率の増加に直結します。
このように、製造業で人手が不足すると、一人1人の負担も大きくなり労働環境がますます悪化することが考えられます。

製造業で実施すべき人手不足に対する対策

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これまで述べてきたように、製造業は人手不足が深刻化しています。
この深刻化した問題を解決するための方法を考えていく必要がありますが、製造業で実施すべき対策として、これからいくつか紹介していきます。
実施できるものがあればぜひ検討してみて下さい。

社会貢献に取り組む

製造業が人手不足を解消するためには、社会貢献活動を行うことが1つの手段となります。
下記のような社会貢献を行うことで、製造業の3Kといったマイナスイメージを取り払うことが、人手不足解消の第一歩となります。

  • 地域貢献活動の推進
    企業が地域貢献活動に積極的に取り組み、地元の学校やNPO団体と協力して、イベントの開催や清掃活動などで、地域との信頼関係を築くことができます。
  • 環境に配慮した取り組み
    企業が環境に配慮した取り組みとして、省エネルギーやCO2排出削減に努めることで、地球環境に貢献できます。
  • 地方創生に向けた取り組み
    地方創生に向けた取り組みとして、地元の特産品を活用した商品開発や、地元人材の積極的な採用で、地域経済の発展に寄与できます。

採用条件の見直しをする

製造業の人手不足を解消するための方法の1つが、採用条件の見直しです。
よくある製造業の採用条件の例を挙げてみましょう。

  • 製造する製品に対して、技術力や専門知識がある方
  • 製造業の経験がある方
  • 機械操作やフォークリフトの資格保有者

見直しの例としては、以下のものが挙げられます。

  • 経験不問の採用を行う
    製造業では、経験者を求めるため、未経験者が採用されにくい傾向があります。
    経験不問の採用を積極的に行い、人材の幅を広げることで人手不足の解消が期待できます。
  • 資格取得支援制度を設ける助成金などを利用して、従業員の資格取得を推進している企業も存在します。
    こうした資格取得支援制度を設けることで、人材不足解消にもつながります。

労働環境の見直しをする

先述したようにマイナスイメージがあるため、その労働環境を改善し、アピールすることで人手不足解消につながります。

最近では、安全対策を徹底している企業が増えていますが、安全面の教育をしっかりと行うことも1つの解決策です。
また安全面だけでなく、従業員のスキルアップ、キャリアアップを目的とした教育も従業員のモチベーションを上げ、離職率低下につながります。
そして、働き方改革としてフレックスタイムの導入、テレワークを始められる体制を考慮することも重要です。

外国人雇用者を採用する

日本の製造業における外国人雇用者の採用率は、近年上昇傾向にあります。しかし、全体的な割合はまだ低く、外国人労働者を積極的に採用する企業も限られています。

その理由として、外国人労働者の採用に対する抵抗感や、外国人労働者を受け入れるための制度や手続きが複雑であることが挙げられます。
また、語学力や文化の違いによるコミュニケーションの困難さや、外国人労働者に対する教育・研修や生活支援の提供など、企業側にも課題があります。

日本の少子高齢化といった現実を受け入れ、外国人雇用者の受け入れを増やす体制づくりも今後、企業の検討すべきポイントです。

シニア人材を採用する 

65歳で定年を迎えたシニア人材の採用を行うことも人手不足解消の1つの手段です。
しかし、これは一時しのぎ的な解決策でしかないことは理解しておく必要があります。

シニア人材は、豊富な経験や知識を持ち、貴重な技能を持っていることが多く、シニア人材の採用は企業にとって大きなメリットをもたらすことが期待されています。

その一方で、シニア人材の採用には、採用条件や労働条件の見直しが必要となる場合があります。
健康面や労働時間などの制約がある場合を考慮しなければなりません。
シニア人材を採用しつつ、新たな世代の人材の確保が効果的です。

外注を活用する

製造業において、人手不足を解消する方法の1つに外注の活用があります。
外注を活用する事例は、生産設備のメンテナンス、検査業務のアウトソーシング、部品加工のアウトソーシングなどです。
外注の活用で、製造業者は専任スタッフの確保が難しい場合でも、生産設備の点検や修理、品質管理、部品加工を行うことができます。

特に、部品加工は専門的な技術や機器が必要であるため、アウトソーシングによりコスト削減ができます。
製造業の企業は外注の活用で、生産ラインを止めることなく生産性を維持しつつ、品質管理や製造に集中できるでしょう。

デジタル技術を導入する

製造業において人手不足を解消するための1つの取り組みとして、業務のデジタル化が挙げられます。

例えば、製造業で利用される機器をクラウド化し機械をリモート環境で制御、管理可能にするシステムを開発すれば、企業のほとんどの機械の制御が行えるだけでなく、メンテナンス時期も管理してくれるため大幅な人員削減につながります。

他にもデジタル化によって、生産ラインの効率化や作業効率の向上など、生産性の向上も期待できます。

製造業が行った人手不足対策の成功事例

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最後に人手不足対策の成功事例を3つ紹介します。
いずれも、業務システムのデジタル化や採用条件の見直しで利益を伸ばしていますのでぜひ参考にしてください。

事例1.エヌ・エス・エス株式会社

まずはじめに紹介する事例は、エヌ・エス・エス株式会社です。
新潟県小千谷市にあるエヌ・エス・エス株式会社は、早期離職の減少と多品種少量生産において高精度で高品質な生産を実現するためにIoTを導入しました。

NCデータを一元管理し、加工機の測定データと結びつけて分析することで最適な工具やツールを選択し、生産性を向上させ、加工機の稼働率43%アップ、営業利益4,000万円アップという成果を上げました。

多品種少量生産における人手不足を解決する手段としてIoTを活用することは、今後ますます重要な取り組みとなっていくでしょう。

参考:中小企業・小規模事業者の人手不足対応事例集

事例2.コクネ制作株式会社

続いて紹介する事例は、コクネ制作株式会社のAIカメラ導入事例です。
コクネ制作株式会社は、低予算で作業状況をリアルタイムで把握する仕組みを構築するため、大塚商会のAI画像認識カメラを導入しています。
これにより、正確な作業状況の見える化が実現し生産性向上を実現しました。

さらに、経済産業省のIT導入補助金を活用し、生産管理システムとして株式会社テクノアのTECKS-BKを導入し勤怠・給与管理システム、グループウェア、名刺管理システム、テレワークなどを導入することで業務効率を向上させました。
これにより、従業員一人当たりの売上高は3億7,300万円/人となり、173%増を達成しています。

参考:大塚商会/デジタル活用事例集

事例3.高木綱業株式会社

高木綱業株式会社は、高度な技術を有する中核人材の不足を感じていました。
シニア人材の積極的雇用と不必要な時間外労働の削減・休みやすい風土づくりに取り組むことで中核人手不足を解消しています。

60歳で定年を迎えた後も、再雇用契約を結ぶことで本人が希望する限り働き続けることが可能になっています。
雇用するだけでなく、シニア人材が長く働ける環境を整え健康面にも配慮し、柔軟な働き方や有給休暇の取得を推奨する職場づくりを行ったことも成功の要因です。

柔軟な働き方として、週3日勤務、時短勤務などを従業員が選択できる仕組みづくりが行われています。

参考:ミラサポplus

まとめ

ここまで解説してきた通り、高齢化や若年層の流出、新型コロナウイルス感染拡大などが原因で製造業における人手不足は深刻化しています。
人手不足は、生産ラインの停止や納期の遅延など企業にとって大きな影響を与えていることも事実です。

このため、企業は人手不足を補うために、IT技術の導入として自動化やロボット導入、AI技術などにより、作業の自動化や業務の効率化を図る取り組みが重要となります。
2030年に約40万人の人手不足予想がIT技術の導入などの対策でどうなるのか、これからに注目していきましょう。

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