2018年9月、経済産業省から発表された『D X(デジタルトランスフォーメーションレポート)~IT システム「2025 年の崖」の克服と DX の本格的な展開~』が今なお話題です。企業はデジタル技術に関係する諸問題が集中する「2025年の崖」に備えて様々な取り組みを行っており、デジタルビジネス時代に勝者となるべき、新技術の導入やIT人材の拡充を図っています。
そうした取り組みを「DX(デジタルトランスフォーメーションレポート)」と呼び、デジタル技術を活用して新しい製品・サービス・ビジネスモデルの開発を実現すると共に、既存業務プロセスの再構築や柔軟性の高いビジネスを手にすることが可能です。
本資料に明記はされていないものの、DXと同時に欠かせないのが「デジタルマーケティング」です。ネット上に存在する様々なネットワークから得られる情報を駆使して、ネットとリアルを繋ぐ新しいマーケティング活動を指します。そのために活用されるITが「MA(マーケティングオートメーション)ツール」と呼ばれる製品です。
本記事では、新しく導入したMAツールを既存のCRM(カスタマーリレーションシップマネジメント:顧客管理システム)と連携することで、何が起こるのか?について解説します。
MAツールとは何か?
1990年代後半から普及が始まったCRMは、今や顧客情報を一元的に管理するためのシステムとして多くの企業に根付いています。中小企業においてもExcelシートで顧客情報を管理することの課題を強く認識し、顧客管理のための基盤をCRMに移行するケースがどんどん増えています。
では、CRMと連携させるMAツールとは何でしょうか?MAツールに関する明確な定義がないため市場では多種多様な製品が流通していますが、ここでは「デジタルデータ・リアルデータを取り込みマーケティング活動の一部を自動化するためのIT」と定義して話を進めていきます。
事実、MAツールの多くは従来のマーケティング活動のうち、定型業務や高速なデータ処理を必要とする作業を自動化するものです。たとえば、Webサイト上における見込み客の行動をIPアドレス単位で追跡して、各見込み客がどのような情報に興味を持っているかを可視化します。さらに、資料請求・問い合わせ・メールマガジン登録などのコンバージョンに応じて見込み客の行動を評価し、案件化および契約の確立が高い見込み客を抽出するような機能も備わっています。
この他、MAツールとして一般的に必要だと言われている機能を以下に紹介します。
- Webサイトの閲覧、メール閲覧、資料ダウンロード、資料請求、問い合わせ、セミナーやイベントへの参加など見込み客を複数のチャネル(接触点)での行動を追跡し、可視化する
- フォームやランディングページといったデジタルマーケティングに欠かせない要素を、ノンコードで作成できマーケティング担当者がPDCAサイクルを拘束かできる
- 見込み客の行動に合わせて属性情報やステータスの変更、育成シナリオの変更などが自動的に行える
- 見込み客ごとの興味や関心を判別するために、ユーザーが設定した評価基準によって見込み客の行動をスコアリングする
- スコアリングの結果から契約確度の高い見込み客を自動的に検出して、セールスのタイミングを明確にして営業部門と連携する
MAツールとCRMの連携メリット
MAツールの中にはCRMとの連携を前提にしている製品があれば、そうでない製品もあります。いずれのMAツールを活用するにしても、CRMと連携することで様々なメリットが得られることは確かです。では、MAツールとCRMの連携によって得られるメリットとは何でしょうか?
1. 優良顧客の抽出にCRMを使用し、MAツールに情報を受け渡せる
MAツールとCRMの連携メリットとしてよく挙げられるのが「優良顧客の抽出」です。CRMには顧客の基本情報や当方との取引情報が記録されており、それらの情報を統合分析することで優良顧客の定義を作り、その定義をもとにデジタルマーケティングへ取り組むことで将来優良顧客になり得る見込み客を効率的に発掘できます。
2. 営業部門とのマーケティング連携を強化できる
営業部門が利用するCRMと連携することで、マーケティング部門と営業部門における連携を強化できます。昨今では営業とマーケティングの機能を区別する企業が増えていますが、互いの連携が思うように進まないことで様々な課題が残されています。その課題を解消するために、MAツールとCRMの連携が両部門を繋げる橋になります。
3. スコアリング機能の精度を上げてより確度の高い見込み客を抽出する
MAツールが備えているスコアリング機能で何よりも大切なのが「評価制度」です。この精度を高めるためには、MAツールを持続的に運用して常に改善に取り組み、評価基準を見直す必要があります。その際にCRMがあるとそこに記録されている顧客情報から適切な評価基準を作り、制度の高いスコアリング機能を早期実現できます。
4. 見込み客 ⇒ 顧客へと変わっていく過程全体を自動的に管理できる
CRMにはセミナーやイベントへ参加した情報や、顧客の名刺情報などを大量に記録できます。MAツールではそれらの情報をもとにデジタルマーケティングの一部を自動化し、さらにそこから得られたデータを蓄積します。そうしてMAツールとCRMが連携することで、見込み客が顧客へと変わっていく過程全体を自動的に記録し、効率的なマーケティングプロセスや営業プロセスの構築に有効です。
5. ホットリードを営業に渡す
MAツールにはナーチャリング の機能が搭載されています。ナーチャリング は営業活動に必要なアクションをMAツールに実装します。例えば事例の紹介やデモのご案内などをメールにて知らせて興味を喚起させるような取り組みです。ある程度、お客様が自社製品やサービスに興味を頂いた段階で営業が日々確認しているCRMにデータを受け渡せば角度の高い顧客フォローが実現できるようになります。
MAツールとCRMを連携させる際に注意すべき課題
連携することで色々とメリットの多いMAツールとCRMですが、連携させる際の注意点がいくつかあります。最初に注意すべきは、「MAツールとCRMの親和性」です。どちらも市場で多くの製品が流通していますので、組み合わせによって双方の機能を上手く活用できないケースがあります。そのため、親和性の高いMAツールとCMRを見極めてから導入する製品を選定することが大きな課題です。その際は、マイクロソフトが提供するDynamics 365などMAツールとCRMが事前連携されている製品もチェックしておきましょう。
また、MAツールとCRMというシステム面の連携だけにとらわれるのではなく、マーケティング部門と営業部門という部門間連携についても考えなおすことが大切です。システムは連携されているけれど両部門の連携はいまいちというケースが少なくないため、MAツールとCRMの連携メリットを最大限に高めるためには、両部門の密接な連携が欠かせません。
こうした注意点を意識しながらMAツールとCRMの連携を目指すことで、双方の利点を最大限に生かしたデジタルマーケティング環境や、顧客管理環境が完成します。既存のマーケティング戦略に限界を感じた際は、ぜひMAツールとCRMの連携に取り組んでみてください。