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ERPの海外展開が失敗する原因と対策

ERP(Enterprise Resource Planning:エンタープライズ・リソース・プランニング)をグローバル規模で構築すれば、海外子会社を含めてグループ全体の経営基盤を統合し、グループ経営に必要な情報をリアルタイムに取得する環境が整います。しかし、ERPの海外展開は決して容易ではありません。本稿では、ERPの海外展開が失敗する原因とその対策についてご紹介します。今後ERPの海外展開を検討されている方は、ぜひ参考にしてください。

ERPの海外展開が失敗する原因と対策

ERP導入で失敗する8つの理由と回避策

ERPの海外展開が失敗する原因

まずはERPの海外展開が失敗する原因について、主な原因を以下にご紹介します。

0. そもそも選定したERPが海外対応していない

グローバル展開を目指す企業にとって海外で必要な機能は必要不可欠です。例えば多言語、多通貨は基本ですが、各国ごとの税制対応や法令遵守などグローバル展開しても問題ないERPの選定が必要不可欠です。

1.現地ベンダーが国内ベンダーのように動いてくれない

海外子会社でERP導入プロジェクトを推進していると、納期が遅れたり、コストが膨らんだりするのは日常茶飯事です。というのも、現地ベンダーが国内ベンダーのように動いてくれず、プロジェクトの統制が利かないというのが大きな原因です。

そもそも日本と海外とでは商習慣に決定的な違いがあるため、現地ベンダーにとっての当たり前が日本にとっての非常識であることが少なくありません。現地ベンダーに話をつけても会話がかみ合わず有効な対策が立てられないまま時間ばかりが経過してしまいます。

2.グローバルテンプレートが効果を発揮していない

ERPを海外展開する際に、導入企業にとって共通する業務要件を盛り込んだテンプレートを作成し、これを適用することで海外展開をスムーズにしようというのが一般的な手法です。しかし、実際に実行してみると国ごとにバラバラの要件を作り込んでしまったり、本社企業に要件に引っ張られてテンプレートが重くなったり、海外子会社にとって使いにくくなるケースが少なくありません。

3.プロジェクト・ガバナンスが確立していない

ERPの海外展開はIT部門と業務部門の他に、本社企業と海外子会社の間でプロジェクトの責任と権限による摩擦が発生しやすく、最終的に誰もリーダーシップを発揮できずにプロジェクトが迷走するケースが少なくありません。

さらに、本社企業が定めたスケジュールやタスクが海外子会社の商習慣にマッチせず、日本の常識でプロジェクトを推進して思わぬところで壁に突き当たります。こうしたプロジェクト・ガバナンスが確立されていないと、ERPの海外展開がとん挫する可能性が高まります。

4.ERPの革新的機能を使いきれていない

ERPには従来の基幹システムにはない機能がたくさん盛り込まれています。中にはBI(Business Intelligence:ビジネス・インテリジェンス)やAI(Artificial Intelligence:人工知能)が搭載されているERPや、IoT(Internet of Things:モノのインターネット)との連携を可能にするERPも存在します。それらの機能を十二分に活用できれば、不要なカスタマイズやアドオンを避け、プロジェクト費用とシステムの複雑化を抑制できます。

しかしそのためには、最新の技術情報をキャッチアップする必要があります。英語でないと最新情報が入手できない場合も多いため、導入ベンダーには英語での情報取得に長けた人材が必要です。

5.結局Excelによるデータ共有に頼っている

ERPの海外展開を実施してにもかかわらず、情報共有機能を使いこなせずに結局Excelでのデータ共有を実施しているという企業は少なくありません。それでは本末転倒なので、ERPのトレーニングをしっかりと実施してERPを通じたデータ共有が可能な環境を整えます。

ERPの海外展開に必要な対策

それでは、上記にご紹介したERPの海外展開が失敗する原因を踏まえて、ERPの海外展開に必要な対策をご紹介します。

1.国内ベンダーをワンストップ窓口にする

海外子会社に向けたERPの海外展開を成功させるには、まず国内ベンダーをワンストップ窓口として、英語及び現地語で十分にコミュニケーションが取れることや、導入開始前より海外のキーパーソンとネットワークを築いていることが大切です。

2.標準機能を使い切りカスタマイズやアドオンを避ける

日本企業のERP導入ではカスタマイズやアドオンを前提に進められますが、海外商習慣では極力カスタマイズとアドオンを避けるのが一般ですし、ERPの標準機能に業務プロセスを合わせるのに対して抵抗感も少ないでしょう。そのため、ERPが持つ標準機能を使い切り、カスタマイズやアドオンを極力避けることがERPの海外展開成功に不可欠です。グローバルテンプレートを採用する際は、最大公約数の要件をテンプレート化するノウハウや、グローバルテンプレートの構築及び活用に経験豊富な国内ベンダーを選びましょう。

3.グローバルプロジェクトの経験がある国内ベンダーを選ぶ

プロジェクト・ガバナンスを維持するには、グローバルプロジェクトにおいて経験豊富な国内ベンダーを選択することが大切です。日本の常識でERP導入プロジェクトを進めようとすると様々な場所で壁に突き当たるため、海外子会社の商習慣を考慮しつつ日本企業の強みを生かした導入を目指しましょう。

4.英語での情報取得に長けた組織体制を構築する

ERPの最新情報は英語でしか入手できないケースが少なくありません。そのため、営業での情報取得に長けた組織体制を構築することで、ERPが持つ革新的機能を使いこなすための環境を整えます。さらに、専門分野の分業体制を整えることも大切です。

5.グローバルでのERPトレーニングを怠らない

ERPの海外展開に成功したにもかかわらず、データ共有をExcelに頼ってしまうような事態が起きないようにも、グローバルでERPトレーニングを怠らずに、本社企業と海外子会社がシームレスに連携するための環境を整えましょう。

6.クラウドERPを優先的に検討する

ERPの海外展開に欠かせないのがクラウドERPです。クラウドERPは大規模なシステム環境をブラウザ経由で提供するため、インフラへの投資が不要という点で大きな利点があります。予算の少ない海外子会社で導入するのに最適ですし、本社企業とはインターネットを通じで情報共有が可能になります。さらに、2層ERPの概念を取り入れることで、本社企業と海外子会社の連携性が高まり、グループ全体での情報管理を一元化できます。

ERPの海外展開が失敗するケースが決して少なくありません。本稿でご紹介した対策に加えて、2層ERPの概念を取り入れてみて、ERPの海外展開を成功させましょう!

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