アプリ開発を行うにも、自社内で開発ができる人員がいなければ一般的にはシステム開発会社に依頼をして進めなければなりません。
しかし、委託をすることによって人件費や期間などのコストだけでなく方向性の齟齬なども起こり得ます。
そこで活用できるのが、Power Appsです。従来の開発ではかかるコストやリスクを最小限に開発を進めることができます。
今回は、そんなPower Appsについて解説していきます。
Power Appsは複雑なコード不要でアプリ作成が可能
PowerAppsとは、マイクロソフトが提供するWeb開発アプリケーションです。
提供は、買い切り型ではなく、Office365などのサブスクリプションサービスの契約が必要となります。
特徴としては、プログラミングができない方でも、アプリ開発ができるということです。
プログラミングのように、ソースコードを作成する必要がありません。
Power Appsで予め容易された視覚的部品を用いて開発を進めるため、非エンジニアでも簡単にアプリを作成することができます。
この開発手法をローコードといい、DX推進において注目を集めています。
Power Appsの利用メリット
PowerAppsを利用するメリットは、非開発者でもお簡単にアプリ開発ができることは前述しました。
では、具体的にアプリ開発に導入する上で、どのようなメリットがあるのか解説していきます。
短期間・低コストでアプリ作成が可能
アプリケーション開発を進める工程では、要件定義・基本設計・開発・テスト・リリースという工程が必要です。
要件定義では、アプリ開発によってどの様な業務の改善や推進が図れるのかを考えた上で要件を決めていきます。
次の設計では、アプリケーションにどの様な機能をもたせるのかをアプリケーションを使用する場面を想定したUIデザインや機能の設計を行います。
そして開発工程では、設計までの段階で決められたデザインや機能をソースコードに落とし込み、実際にコーディングを行っていきます。
アプリケーション開発では、この開発工程が人員や期間が最もかかる工程です。
具体的には、実装したものの他の機能との連携が上手く行かず、バグの修正などで工数を必要とする場合がほとんどでからです。
開発がある程度進んだら、実際の動作の確認や品質担保のためにテストを行います。
ここでも、実際に期待した動作と違うなどで開発と並行して工程が進められます。
それら工程が完了して初めてアプリケーションとしてリリースし、業務アプリとして使用することができるのです。
Power Appsでは、この従来のアプリ開発工程の大部分を占めていた開発とテストの工程を大幅に削減することができます。
ソースコードの必要とせずに視覚的に開発を進めることができるため、手戻りが少なく、システム開発企業に依頼することやエンジニアを人員として必要としないため、期間も人員も最小限で済むメリットがあります。
情報セキュリティの面での利点
アプリ開発では、情報セキュリティ対策が不可欠です。
例えば、近年ではソースコードの流出が問題になっています。
ソースコードの流出により、システムの脆弱性をつかれて外部からのハッキングなどの危険が高まるなど、ソースコードでの開発は一定のリスクが伴います。
そのため、外部委託先などの関係者には、私用PCの持ち込みの禁止やUSBの使用禁止等も含めた強固なセキュリティ遵守として契約書を締結するなど、セキュリティ対策だけでも相当な負担がかかります。
しかし、Power Appsでは、マイクロソフト社が提供するWeb上でのアプリ開発が完結するため、流出という面でのセキュリティには利点があると言えます。
また、顧客データを連携して活用するアプリならなおさら顧客データの管理も取引先などの信用に関わる直結する問題と言えます。
その点、Power Appsでは、セキュリティ保護の観点では厳格に定められています。
例えば、部署やチームや役職ごとにアクセスできる特定のデータの階層を設定できるなど、セキュリティ対策においても視覚的に行えるため、システム開発でありがちなシステム管理保守を必要としません。
ただし、セキュリティ項目について設定していない場合などは、もちろん全権限で重要情報にもアクセスできてしまうため、注意が必要です。
目的に応じて画面サイズを選択できる
アプリ開発では、仕様の変更がつきものです。
実際に検討して使ってみたら変更する必要が生じることもあります。
Power Appsでは、画面サイズをOrientation項目の一覧から選択するだけでアプリの表示サイズを変更することができます。
ソースコードでの開発では、様々なデバイスに対応させるためのレスポンシブ対応をする必要性がありますが、Power Appsではその様な手間も設定メニューバーのみで解決するという利点があります。
様々なデータと連携が可能
Power Appsは、マイクロソフト社が提供するアプリ開発ツールというだけあって、マイクロソフトツールとのデータ連携も可能です。
その機能がテーブルを使用した「コネクタ」です。
コネクタは、様々なソフトウェアで使用されており、そのすべてとデータ連携が可能です。
具体的には、Salesforce、Office 365、Twitter、Dropbox、Google サービスなど多岐に渡ります。
一般的には、外部とのデータ連携には、連携先から承認を得ないと開発を行うことができません。
そのため、その工数や不承認となるリスクも回避できます。
Power Appsで知っておきたい関数
Power Appsでは、ExcelやAccessのように関数が使用できます。
この関数によってアプリ開発を補助し、円滑にすすめることができます。
では、Power Appsでアプリ開発を行う上で知っておきたい関数について以下に紹介していきます。
フォームの項目が表示されない場合
Power Appsでアプリ開発をする上で必ず行うのが、プレビューです。
実際にアプリを使うときのどの様な見え方になるのかを都度確認しながら進めることができます。
しかし、プレビュー状態では、開発画面で配置されている項目や入力バーなど、どの項目を実行して表示させるのかを指定しなければなりません。
Power Appsのフォームには、「新規」と「編集」というモード概念あります。
このプレビューで表示するためには、プロパティの規定モード項目を「新規」に設定しましょう。
しかし、毎回切り替えるのは面倒でしょう。
そこで、画面遷移時に表示されるように、フォーム項目にNowForm関数を使用することで新規モードとして表示されることになります。
データを登録したい場合
例えば、顧客情報フォームに情報の入力を行った際など、その情報を登録する必要があります。
その際に使用されるのが、SubmitForm関数でデータ保存のための関数です。
このSubmitForm関数は、登録ボタンなどのデータを登録するためのトリガーに対して指定する必要があります。
If関数の扱い方
Excel関数でおなじみのif関数は、Power Appsでも使用できます。
機能としては、Excelなどと同じで、ある条件下で特定の値を表示するというもの。
主に使用する場面としては、項目の表示制御はもちろん、遷移の制御にも活用できます。
あいまい検索機能を実装したい場合
データ検索機能を実装する際には、指定した検索内容を含むデータを検索したい場合もあります。
あいまい検索といい、Power Appsでは、Filter関数・Search関数・LookUp関数を使用します。
この三種の違いとしては、検索結果の取得方法と取得情報の差です。
Filter 関数では、指定した条件に一致した全レコードを取得してきます。
複数条件で検索したい場合は、AND検索となるため、注意が必要です。
Search関数は、データを文字列で検索することができ、文字列条件に該当するレコードを取得します。
LookUp関数は、条件一致した最初のレコードのみを取得するため、検索機能として実装するには不向きと言えます。
データ一覧の最初、最後のデータを取得したい場合
データ一覧の最初のデータを取得する場合はFirst関数を使用します。
構文は、「First(テーブル名)」として記載します。
きちんと取得したレコードかどうかを確認したい場合は、登録しているレコード数も引数として返す関数である「FirstN(テーブル名)」として記載します。
一方、登録された最後のデータを取得したい場合は、Last関数を使用します。
その際の構文は「Last(テーブル名)」とし、レコード番号も取得したい場合は、「LastN(テーブル名)」として記載します。
検索機能を実装したい場合
検索機能を実装したい場合は、HintTextプロパティを活用します。
HintTextプロパティは、テキスト入力をコントロールする機能です。
入力欄が空の場合は、予め指定した文字列をグレーアウトした状態で設定されています。
そのため、検索する際にどんな値を入力すればよいかが、わかるため検索機能として活用するためには便利な機能と言えます。
まとめ
以上、PowerAppsについての概要やメリット、代表的な関数を含めた解説でした。
Web開発では、人的にも時間的にも開発コストがかかることはもちろん、リリースし運用していく中での保守性等によるコストも考えなければなりません。
その点、PowerAppsでは、視覚的かつ直感的に開発できることや必ずしもエンジニアを必要としない環境で開発を進めることができるため、より柔軟なアプリ開発を行うことができます。