中小企業、スタートアップなどの小規模組織でもERP導入は進んでいます。特にクラウド型ERP市場は2015年度に前年比13.2%と2桁台の成長率を見せ、市場価値の上昇を表しています。
ERP導入が活発化する背景には、製品のコモディティ化やクラウド型ERPの充実などいくつかの要因が絡まり、現在のERP市場を形成しています。しかしその反面、ERP導入に失敗している企業が増加していることをご存知でしょうか?「ERP=経営課題を解決できる」という安易な固定概念により、正しいERP導入ができていない企業が多く存在するのです。
ERPを導入する目的は何か?なぜERPが必要なのか?を知ることは、ERP導入検討を行っている企業がまず知るべき事項ではないでしょうか。
今回はこの点に着目し、下記6つのERP導入理由について解説していきます。
ERP導入が必要な6つの理由
理由1.ビジネスにおけるデータ活用が急務となっている
ビッグデータ活用による経営戦略を掲げている企業が多いかと思います。2014年頃から活発化したビッグデータ活用は、今や企業規模を問わず将来的なビジネス社会で生き残るために不可欠な要素と言われるほどに成長しました。
そして、ビッグデータ活用において最初に越えるべき課題は、如何に効率的なデータ収集を行い、BIツールなど分析ソリューションに取り込むか。すなわち基本的なデータ分析基盤を作ることにあります。
その答えの一つがERP導入です。
ERPを導入することで、これまで各部署に散在していた業務システムは一手に集約され、一元的な管理が可能になります。つまり各業務システムから生成されるデータも統合されるので、データ収集に多大な時間を消費する必要なく、迅速にデータ分析環境を整えることが可能となるのです。
さらにERPにBIツールが統合されていれば、データ収取から分析までのタイムロスを限りなくゼロにし、リアルタイムなデータ活用を行えるようになります。
理由2.全社的な業務最適化が多くの課題を解決する
組織の各部署がそれぞれに抱える課題の多くは、一つの戦略によって解決することができます。それが「全社的な業務最適化」です。
つまり、相互連携の取れた業務システムにより、他部署のデータを素早く参照するような横断的な環境と、各業務システムがデータ連携することで業務を省略し、全社的に業務を最適化できるようになります。
しかし、ERPなしにこの最適化を行うことは現実的に難しく、やはりERPのような統合的ソリューションの導入が重要になります。
理由3.内部統制によるコンプライアンス対応の重要性が高まっている
総合エネルギービジネスとIT取引を行っていた米国の大手企業エンロン社による、巨額の不正取引や不正経理による粉飾決算が明るみに出たことで、経営破たんに至ったエンロン事件はまだ記憶に新しいのではないかと思います。
この事件をきっかけに翌年から多くの米国企業の不正経営が発覚し、米国企業全体のコーポレートガバナンスが揺らいだことでSOX(サーベンスオクスリー)法が制定されました。
SOX法がコーポレートガバナンスを維持するために内部統制が体系的に明示され、不祥事に対する処罰を明文化したものです。2006年には米SOX方に習って日本ではJ-SOX法が制定されました。
以降、内部統制によるコンプライアンス対応はすべての企業にとって急務となっています。
ERPは連携の取れた統合的なシステム環境を構築するだけでなく、各システムのポリシー設定や操作ログの取得を、単一のインターフェースで行うことができます。これにより、企業の情報システム部門はガバナンスを維持するための環境を手に入れるも同然です。
理由4.意思決定を迅速化し競合他社の先を行く
ビッグデータ活用が進むことで、企業は「データドリブン(データを軸にした)な経営」を実践していくことが可能です。
常にデータを軸にした経営判断を下していくことで、経営戦略は間違いなく加速します。意思決定の迅速化は、競合他社から一歩抜きんでてビジネスを展開していくために重要な要素です。
理由5.サポート体制を強化し顧客満足度を向上する
商談管理、顧客管理、在庫管理、フィールドサービス、クレーム対応、これらの要素を統合することで今までにない顧客サポート環境を構築できることは確実です。
例えば販売情報が在庫情報へ即座に反映されるようなシステム環境であれば、営業部署は在庫管理データを信頼性の高いデータとして参照し、顧客へのレスポンス速度を早まることができます。
また、蓄積された顧客情報をもとにフィールドサービスやクレーム対応を最適化すれば、企業に対する信頼性や顧客満足度は間違いなく向上していきます。こうした環境を整えるためにも、やはりERPによる統合的なシステム環境構築が欠かせません。
理由6.一元的な運用管理でITコストを削減する
企業が保有するITソリューションはここ数年で一気に肥大化、複雑化しました。経営者がITに対して抱く不安は、年々増加していくITコストが中心になっているのではないかと思います。
そんな不安に反して企業のIT環境は今後も複雑なものになっていくでしょう。クラウドや仮想化技術の進歩により、多くの経営課題を解決できるようになった反面、ITの肥大化や複雑化が加速したのです。
ITコストの多くを占めているのが、IT運用に関わる人件費です。データバックアップ、アップデート対応、システムメンテナンス、データ収集、etc、情報システムが日々遂行すべき業務は山積み状態になっています。
さらに複数の業務システムから形成される複雑な環境では、情報システムの手が全く追い付いていない状況です。
そこでIT環境を一元的に管理できるERPを導入することで、運用負荷とITコストを大幅に削減することが可能です。特にクラウド型ERPならばシステム運用の大部分をベンダーに一任することができるため、運用負荷を確実に軽減しITコストの削減の狙えます。
まとめ
ERPを導入する理由は企業によって様々なので、今回初回した導入理由に限定されない場合もあります。一つ言えることは、ERP導入に成功した企業のすべてが「明確な導入理由」をもって導入プロジェクトに取り組んだということです。
「トレンドだから」「競合他社も導入しているから」といった何となくの理由では、100%導入が失敗します。そして、どんな企業でもERP導入のニーズは少なからず抱えているものです。
重要なのは如何にそのニーズを顕在化できるかどうかであり、まずはERP導入に先走るのではなく、ニーズの顕在化に注力していただければと思います。また、ERP導入パートナーは企業のERPニーズの顕在化も助けるために存在しているので、ぜひ一度ご相談ください。