マーケティング

Web戦略の立て方とは?マーケティング戦略に欠かせない5つのフレームワークを紹介

Web戦略とは、企業がオンラインで成功を収めるための計画や方針のことです。効果的なWeb戦略を立てるには、目標設定や競合調査、自社の強みと弱みの分析、そして施策の選択と実行が欠かせません。本記事では、効果的なWeb戦略の立て方とその重要性、具体的なフレームワークやツールについて詳しく解説します。

Web戦略とは目標達成に向けたWeb活用プランのこと

Web戦略とは、企業の経営戦略に基づき、マーケティングや営業でどのようにWebを活用するのかを決定する活動のことです。これは単にWebページを作成するだけではなく、自社や競合、市場状況などを分析した上で明確なビジネス目標を設定し、その達成に向けて自社のリソースの最適配分・最適運用を整備する道筋をつけることを意味します。

ここでのリソースには、資金・人材・情報・技術・時間など多種多様なものが含まれるので、戦略を立てるには自社の経営への深い理解と、巨視的な視点が必要です。Web戦略を策定することで、最も費用対効果の高い効率的な手法でビジネス目標を達成しやすくなります。

Web戦術との違い

Web戦略と混同しがちなのがWeb戦術です。Web戦略では、目指すべきビジネス目標そのものを設定するところから始めます。そのため、Web戦略では、大局的な視点からビジネスの目標や方向性を定義していくのが特徴です。これに対して、Web戦術とは戦略を実現するための具体的な手段や手法を指します。

例えば、Web戦略が「新規顧客獲得を目的としたブランド認知度の向上」であるとしましょう。この場合、Web戦術は「ソーシャルメディア広告を活用してターゲット層にアプローチする」などの具体的なアクションが該当します。

戦略がないと、個々の施策(戦術)に整合性が出ず、全体としての効果が薄れかねません。そのため、取り組みの順番としては、戦略を立ててから具体的な戦術を考えるのが基本的な流れです。

グローバル展開にも有効なWeb戦略

グローバルなマーケットを目指す企業にとっては、海外向けのWebページでの戦略的アプローチも欠かせません。今や、Webは地域の壁を超えて情報を届ける最も効果的な手段となっています。

海外向けにWebページを展開する大きな利点は、市場の拡大です。海外向けのWebページの対応言語はやはり、英語が第一候補になります。英語は日本語に比べて10倍以上もの人が使用している世界的な言語です。英語対応のWebページを運用・活用することで、より広範囲のターゲットを獲得できます。もちろん、その他の言語にも順次対応することで、さらにターゲットを広げていくことが可能です。

海外のWebページを展開する際にポイントとなるのが、一貫したブランディングと効率的な管理を心掛けることです。日本向けのWebページと同じ仕組みやデザインを使用することで、ブランドイメージの一貫性を保ちつつ、管理工数を削減できます。ただし、文化や習慣の違いに配慮し、ユーザーエクスペリエンスを最適化するための微調整も忘れずに行いましょう。

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Web戦略が重要視されている理由

近年、企業のマーケティングや経営戦略の中でWeb戦略が特に重要性を増しています。以下では、その理由やWeb戦略の利点について詳しく解説します。

時間や場所を問わず顧客と関係性が築ける

昨今ではスマートフォンなどの普及に伴い、若者から高齢者まで幅広い年齢の方が日常的にWebで情報収集やショッピングを楽しんでいます。企業側から見れば、この状況は非常に大きなビジネスチャンスです。Webを活用することで、実店舗の所在地や営業時間などの地理的・時間的制約にとらわれずに顧客との関係性を築けるようになります。現代のWebマーケティングやデータ分析を活用すれば、ユーザーひとりひとりに個別最適化したアプローチも実現可能です。

効果測定がしやすく課題を見つけやすい

Web戦略のもうひとつの大きな利点は、効果測定の容易さです。マスメディアの利用や折り込みチラシの配布、DMの送付といった従来のマーケティング施策では、宣伝の効果を正確に把握することが難しい部分もありました。しかし、デジタルマーケティングにおいては、Webサイトのアクセス数、閲覧時間、購入者数やクリック率などさまざまな指標をもとに、正確かつ迅速に効果測定できます。これらのデータを、リアルタイムに収集・分析することで、施策の評価や問題の特定、改善策の実施などを迅速に実施可能です。

限られたリソースを効率よく活用できる

競争が激しいビジネス環境の中で、企業は有限のリソースを最大限に活用し、コストや時間を抑えて成果を出していく必要があります。特に中小企業においては、リソース面での制約が大きいため、その必要性はなおさら高いです。施策のコストパフォーマンスを最大限に高めるには、自社にとって重要かつ実現可能な目標を、優先順位をつけて設定し、その目標達成への近道を考えるWeb戦略が欠かせません。先述の通り、Webならば海外の市場にすら容易にアプローチ可能です。

Web戦略の立て方を6ステップで解説

実際にWeb戦略を立てるときには、ひとつずつステップを踏むことが近道です。ここでは、効果的なWeb戦略の立て方を6つのステップに分けて解説します。

ステップ1. 目標を決定する

各種施策の方向性や成功の定義を明確にするために、まずはWebで何を実現したいのかビジネス上のゴールを設定することが必要です。具体的には、「売り上げの向上」「ブランド認知度の拡大」「新規顧客の開拓」などが考えられます。

また、このゴールは、最終的な目標(KGI)と、中間目標(KPI)の両面で考えることが重要です。KGIやKPIは、抽象的ではなく、具体的な数字や期間を用いて明確化します。例えば「3ヵ月後に月間訪問者数を前月比で10%増加させる」、「今年度中にオンラインからの売上を20%増加させる」などです。

こうすることで、目標を達成できたか否か達成状況を客観的に判断できるようになります。各種の具体的な施策は、「この目標を達成するには何が必要か/現状で何が不足しているのか」と逆算して考えることが重要です。

ステップ2. ターゲットを決定する

ゴールを決定したら、次にそのゴール達成のためにアプローチすべき顧客層を特定します。どのような顧客層を想定すべきか具体的に考える際に役立つのが、「ペルソナ」や「カスタマージャーニー」を設定することです。

ペルソナとは簡単に言うと、ターゲットにすべき典型的な顧客がどのような特性を持っているのか具体的に肉付けした人物像です。ペルソナには、年齢、性別、職業、趣味、ライフスタイルなど、必要に応じてさまざまな特性を付与します。カスタマージャーニーとは、ブランドや商品を認知してから購入に至るまでの顧客行動や顧客心理を時系列的に可視化したものです。

ペルソナやカスタマージャーニーを設定することで、自社がターゲットとする顧客を詳細に定義し、どのようなメッセージやコンテンツが、どのタイミングでその顧客層に響くのかを見極めやすくなります。例えばWebマーケティングの一環としてSEOに取り組むならば、どのような事情を抱えたユーザーがキーワード検索をしているのか、検索語句に対応した顕在的・潜在的ニーズの両面を考察することは欠かせません。

ステップ3.競合調査を行う

競合調査は、ビジネスの成功を実現する上で不可欠なステップです。市場における自社の位置を正確に知ることで、戦略を適切に策定し、差別化を図るためのアクションを明確にできます。

競合の戦略や取り組みを知ることにより、新しい市場の機会を見つけるヒントを得ることも可能です。競合調査を通じて、市場のトレンドやニーズの変動、そして潜在的なビジネスの機会を的確に捉えられるようになります。詳しくは後述しますが、競合調査には「PEST分析」などのフレームワークを活用するのがおすすめです。

ステップ4.自社の現状を分析する

競合調査と同時に重要になるのが、自社の現状を内部分析することです。内部分析を行うことで、自社の強みや弱み、顧客に提供できる価値、リソースの最適な活用方法などを把握できます。

これにより自社が直面している課題を明確にし、より具体的かつ実践的な施策の策定が可能です。内部分析を行う際には、4P分析やSWOT分析などが役立ちます。これらのフレームワークについては次の章で解説します。

ステップ5.施策を考える

これまでのステップで収集・分析した情報をもとに、具体的な施策を考えます。Webマーケティングの手法は非常に多種多様です。どの課題にどのようなアプローチが有効か検討し、最適な施策を検討しましょう。以下に、課題別の主な施策例をまとめたのでご参考にしてください。

Web戦略の主な課題と施策例

課題

施策

サイトの訪問者数が少ない

SEO、Web広告、SNS運用など

コンバージョン率が低い

LPO、EFOABテスト、リターゲティング広告など

サイトの平均滞在時間が短い

コンテンツの改善、動画の挿入、内部リンクの活用など

リピーターが少ない

メルマガやSNSの配信、ロイヤルティプログラムの導入など

ステップ6.施策の優先順位を考える

全ての施策を同時に実施することはリソースや時間の制約から難しい面があります。したがって、最も効果が期待できる、または最も急を要する施策から優先順位をつけて順番に取り組むことが大切です。例えば、製造業がWebマーケティングで自社の強みをアピールしたいなら、「製品ページ」に力を入れ、製品情報の提供などに特化したアプローチをすることが考えられます。

ヒロセ電機の事例では、自社で「有効な情報源は何か」といった内容のアンケート調査を実施し、その結果をもとにWebサイトでの製品情報提供に力を入れることを決定しました。2016年4月にはWebページをリニューアルし、1年でアクセス数が約4倍に急増するといった成果を得ています。

参照元:ヒロセ電機がSAP C/4HANAで挑むグローバルデジタルマーケティングの変革

Web戦略の5つのフレームワーク

Web戦略を策定する際には、さまざまなフレームワークが利用されています。これらのフレームワークは、企業が現在の状況を正確に把握し、未来の方向性を定める手助けとなります。以下に、Web戦略策定に役立つ5つのフレームワークを解説します。

1.SWOT分析

SWOT分析とは、自社の成功の鍵となる内部要因と外部要因を、プラスの要因とマイナスの要因に整理して分析するフレームワークです。具体的には、自社が持つ「強み(Strengths)」と「弱み(Weaknesses)」に加え、市場や業界の動向などに由来する「機会(Opportunities)」と「脅威(Threats)」から分析します。4つの要素から自社を俯瞰的に分析することで、事業の改善点やリスクを洗い出すことが可能です。

2.4P分析

4P分析とは、マーケティング活動の基盤となる4つの要素、「製品(Product)」「価格(Price)」「プロモーション(Promotion)」「場所(Place)」を対象としたフレームワークです。企業はこれら4つの観点からマーケティング方法を考えることで、顧客に向けてより魅力的な提案を検討できます。

3.4C分析

4C分析は、顧客視点からマーケティング方法を考えるフレームワークです。4つのCは顧客にとっての「価値(Customer value)」「コスト(Customer Cost)」「便利さ(Convenience)」「コミュニケーション(Communication)」を意味します。企業視点で行う4P分析に対し、4C分析は顧客視点で分析するため、顧客のニーズをより深く理解した上でマーケティング戦略を策定できます。

4.PEST分析

PEST分析は、企業を取り巻く外部環境を分析するためのフレームワークです。PESTとは、「政治的(Political)」「経済的(Economic)」「社会的(Society)」「技術的(Technological)」要因の4つを意味します。自社ではコントロールできないマクロ環境を分析することで、企業に影響を与える外的なリスクや変化を的確に把握し、それに対応した戦略を策定することが可能です。

5.PPM分析

PPM分析(Product Portfolio Management分析)とは、事業への資源配分や投資戦略の方向性を考えるためのフレームワークです。市場成長率と市場占有率を軸に、「花形」「金のなる木」「負け犬」「問題児」の4グループに分類し、事業の将来性と自社が注力すべき分野を明確化します。特に多角的に事業を展開する企業にとって有用な手法です。

Web戦略を立てる際の注意点

効果的なWeb戦略を立てる際には、留意しておくべきいくつかの要点や課題が存在します。

効果が出るまでに時間がかかる

Webマーケティングの手法の中には、効果が出るまでに一定の時間が必要なものも存在します。Web広告などは実施してから比較的早く効果が出る一方で、SEOなどのコンテンツマーケティングやSNSでのフォロワー獲得などの戦略は、効果が現れるまでに数ヵ月以上の長い時間を要することが少なくありません。そうした施策は長期的な取り組みが必要となるので、短期的な結果ばかりを求めるのではなく、中長期的なビジョンをもって取り組むことが重要です。

運用や分析にノウハウが必要になる

Web戦略の各手法には、その特性や特長に合わせた運用方法や分析の手法が求められます。例えば、広告の場合は入札戦略やターゲティング、クリエイティブの最適化などが考慮される一方、SNSではターゲット層に合わせたコンテンツ制作や投稿のタイミング、ユーザーとのコミュニケーションが重要です。専門家や経験者の意見を取り入れる、または自社の従業員に専門的な知識やスキルを身につけてもらうなどして、効果的な運用を目指す必要があります。

どこまでサイトを統合するか検討する

Webサイトの運用において、どのようにサイトを統合するかというのは非常に重要な点です。特に国やブランド、関連会社ごとに異なるWebサイトを持っている場合、それらをひとつに統合することでさまざまなメリットが生まれます。例えばWebサイトを統合することで、情報の一元管理が可能となり、ユーザーが求める情報を一か所で簡単に提供可能です。これらは業務効率やSEOなどの観点から大きなメリットがあります。

一方で、異なる性質のWebサイトを無理に統合すると、コンセプトが散漫になるデメリットもあります。システム障害などのリスク分散ができなくなるのも無視できません。そのため、Webサイトの統合は、メリット・デメリットの両面を考えた上で実施するのが重要です。

例えば製造業の場合、製品情報を一元的に管理することは非常に重要です。PIM(商品情報管理)システムと連携したり、同一基盤で多言語対応をしたりすることで、スムーズに運用管理を行えます。これは、グローバルに展開している企業や多数の製品を扱う企業にとっては特に大きなメリットです。

こうした施策を実施する際に役立つのが、顧客管理システム「SAP CXソリューション」です。完全クラウド対応のサービスで、顧客データをひとつのプラットフォームで一元管理できます。在庫管理や生産管理などを行えるERPツールと連携できるので、顧客の注文情報や製品の在庫情報などをリアルタイムで確認し、適切な対応が可能です。これにより、Webでの顧客サービスの質を向上させられます。

関連記事:SAPの50 年にわたる業界の専門知識に基づくCX と CRM のテクノロジー

まとめ

Web戦略を立てることは、現代のビジネスにおいて必要不可欠な取り組みです。Web戦略をグローバルに展開することで、時間や場所にとらわれず、広く効率的に顧客へアプローチできます。Web戦略を立てる際には、ゴールの明確化をはじめ、ターゲットの設定、社内外の現状分析、優先順位をつけた施策の策定などが必要です。この際には、紹介したフレームワークやITツールの活用が役立ちます。本記事を参考に、ぜひ効果的なWeb戦略を立ててください。
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