小売業

今さら聞けないチェーン店とフランチャイズ店の違い

日本の小売業・飲食業は、米国より伝わったチェーンストア理論によって大きく発展してきました。厳密には、1960年代に渥美俊一という経営コンサルタントが当時の日本の小売業界の未来を案じて、米国でチェーンストア理論を学んだことが始まりです。彼が日本で開校した「ペガサスクラブ」と呼ばれるチェーンストア理論勉強機関には、当時の小売業界における名だたる経営者が参加し、米小売業発展の仕組みについて学んだといいます。

そして現在では、チェーン店(レギュラーチェーン)・フランチャイズ店(フランチャイズチェーン)を至るとこで見かけます。皆さんはこの2つのチェーンの違いについて、明確に説明できますか? 本記事では知っているようで意外と知らないチェーン店とフランチャイズ店の違いについて解説します。

今さら聞けないチェーン店とフランチャイズ店の違い

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チェーン店とフランチャイズ店の違い

チェーン店

街中で見かけるスーパーマーケット、ドラッグストア、飲食店、コンビニエンスストアの中には同じブランドを掲げている店舗をよく見かけます。こうした店舗は個人経営ではなく、本社が存在してそこから派遣された正社員とパート・アルバイトによって店舗ごとに組織が構成され、経営しています。こうした同一ブランドで多店舗経営している店舗のことをチェーン店と呼びます。「本社直営の店舗」なのがチェーン店の特徴です。

フランチャイズ店

一方、フランチャイズ店とは「本社企業とフランチャイズ契約によって運営されている加盟店」のことを指します。日本ではコンビニエンスストアの9割以上がフランチャイズ店であり、他にもたくさんの業種で取り入れられている多店舗経営の形態です。加盟店は資本的に独立しているものの、本社企業の監督のもと経営されるため契約金やロイヤリティを支払う必要があります。フランチャイズ店で働く人も本社従業員ではなく、店舗経営者とそれを取り巻く従業員・パート・アルバイトで構成されています。

チェーン店のメリット

チェーン店とフランチャイズ店の違いを知ったところで、それぞれの多店舗経営形態がどのようなメリットを持つのか説明します。まずはチェーン店経営のメリットから。

本部統制が効かせてブランド価値の統一が図れる

チェーン店の基本は、本部企業によって各店舗の「標準化」が実施されていることです。店舗経営のノウハウ、店舗の組織構成、店内レイアウト、提供商品、応対サービス、従業員教育、パート・アルバイト教育といった店舗経営に関わるすべての要素が標準化されており、全店舗で画一的な経営が実施されます。

それにより、本部統制が強く働いて「ブランド価値の統一」が図れます。チェーン店を利用する消費者の多くは「同じ商品、同じ味、同じサービス」を期待して店舗を訪れます。従って、売上維持・向上のために欠かせないのがどの店舗においても画一的なブランド価値を発揮することです。消費者が安心して購入できる商品、購入できるサービスを提供することがとても大切です。これはつまり、店舗ごとの差を無くして意外性を排除するという意味でもあります。

また、直営店であることから店舗責任者と本部とでコミュニケーションが取りやすく、現場の情報交換が活発になります。店舗ごとの横のつながりも生まれるので、責任者同士が店舗経営において有用な情報を共有することで、質の高いサービス提供にも繋がるでしょう。

フランチャイズ店のメリット

フランチャイズ店もチェーンストア経営の一種なので、本部統制を効かせることができます。ただしチェーン店ほどではありませんし、店舗ごとの責任者は独立しているため、多少ながらその店舗の特色というのが出てきます。もちろん契約に縛られるケースが多々あります。では、フランチャイズ店のメリットとは何でしょうか?

本社企業の店舗経営ノウハウをもとに迅速な事業展開が可能になる

まず、本社企業側のメリットから説明しますと、チェーン店に比べて非常にスピーディに事業展開ができるというのが大きなメリットです。チェーン店の場合、新店舗を開店するためには周辺調査や物件確保、店舗責任者や従業員の教育、設備工事などオープンまでに手間とコストが多くかかります。そのため、事業拡大に相当の費用と時間を要します。

一方、フランチャイズ店は本社企業の店舗経営ノウハウをフランチャイズ契約オーナーに共有し、資本は加盟店側が持つことで事業展開を行います。そのためチェーン店ほどの時間と費用をかけなくても迅速に事業拡大でき、全国に同一ブランド店舗を展開できるのが強みです。

加盟店側のメリットとしては、大企業のブランドネームを利用して経営基盤を早々に安定させられること、本部企業より経営ノウハウが伝達されるため一定の収益が期待できることです。そのため経営未経験者でも店舗経営に取り組むことができ、起業の幅が広がります。

チェーン店とフランチャイズ店、共通のメリット

同じチェーンストア経営でも経営手法や事業展開に違いのあるチェーン店とフランチャイズ店ですが、共通のメリットもあります。それが「仕入れの集中化」です。どの小売業・飲食業でも仕入が必要であり、仕入価格によって商品の販売価格は変動します。できることなら、質の高い商品を安く提供して、多店舗よりも多くのお客様に利用してもらいたいところです。

しかし、店舗ごとに仕入れる商品点数の絶対量は限られています。そのため仕入先との価格交渉が難しく、商品を安く仕入れることができません。そこで本部企業への仕入集中化(集中購買)を行います。本来ならば店舗ごとに行われる仕入業務を本部企業が一元的に実施することで、仕入れる商品点数の絶対量を大幅に増やせます。そうすれば仕入先との価格交渉を有利に進めて、質の高い商品をより安く仕入れることができます。

商品の仕入価格が下がれば、販売価格を安くすることができますし販売利益も向上します。これがチェーン店とフランチャイズ店が持つ共通のメリットです。

ボランタリー店とは?

チェーンストア経営には、実はチェーン店とフランチャイズ店だけではありません。もう1つ、「ボランタリー店(ボランタリーチェーン)」と呼ばれる経営形態が存在します。これは、それぞれが独立した店舗が互いに手を結び、1つの組織となってチェーンストア経営を展開していくことです。

チェーンストア経営のメリットは仕入集中化による仕入価格の低減ですが、個人経営等の店舗では原則としてそれが不可能です。ただし、ボランタリーチェーンという形で独立した店舗がチェーンストア組織を作り、商品の仕入れなどを共同化し、経営ノウハウを共有することで大口取引による仕入価格低減や、経営効率化が望めます。ボランタリー店と本部組織は上下関係ではなく対等な立場にあります。

ただし、ボランタリー店は仕入集中化や経営ノウハウ共有などのメリットがある反面、本部統制があまり効かないことで経営リスクが高いというデメリットもあります。

まとめ

いかがでしょうか?今後、多店舗経営展開を検討している場合、チェーン店とフランチャイズ店、いずれかの方法で事業拡大を図っていくことになると思います。その際は、それぞれのメリットとデメリットに着目し、自社ビジネスにとって何が最適かを見極めながら事業展開の方法を選びましょう。

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