Microsoft PowerAppsはマイクロソフトが提供するビジネスアプリケーション作成ツールです。PowerPointのような直感的な操作とExcelのような関数入力により、業務に欠かせないアプリケーションの作成を簡単にすることで業務効率化に貢献します。
PowerAppsはDynamics 365を補完するツール(カスタマイズするツール)としても活用されています。クラウド型ERP(Enterprise Resource Planning)のDynamics 365で提供されているのは、ERPソリューション、CRMソリューション、Mixed Realityソリューション、AIソリューションという大きく分けて4つのソリューションカテゴリーです。
本稿では、そのPowerAppsのライセンスと価格について紹介します。
Power Appsの概要やメリットについては、下記の記事で解説しています。ぜひ本記事と併せてご覧ください。「PowerApps」入門編!機能一覧や使い方を画像付きで徹底解説
PowerAppsのライセンスと価格
PowerAppsが提供するライセンスには、「Power Apps per app」と「Power Apps per user」の2種類があります。Power Apps per appプランは、特定のアプリを利用するユーザーごとにライセンスを割り当てるのに向いています。Power Apps per userは、実行するアプリの数に関係なく、1ユーザーごとに1件のライセンスを割り当てたいビジネスに最適です。また、用途に合わせてライセンスを組み合わせて使うことも可能です。
では、この2つのライセンスには、どのような違いがあるのでしょうか。以下の表に、各プランの価格と異なる機能についてまとめました。
PowerAppsプランの比較 |
Power Apps per app(ユーザー単位/アプリ単位) |
Power Apps per user (ユーザー単位) |
1ユーザーあたりの月額料金 |
1,090円 |
4,350円 |
アプリの作成・実行・共有 |
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キャンバスとモデル駆動型アプリの作成 |
無制限 |
無制限 |
キャンバスアプリの実行 |
2アプリ |
無制限 |
モデル駆動型アプリの実行 |
2アプリ |
無制限 |
カスタムポータルへのアクセス |
1カスタムポータル |
無制限 |
データへの接続 |
||
標準コネクタを使用したデータへの接続 |
〇 |
〇 |
プレミアム コネクタを使用したデータへの接続 |
〇 |
〇 |
オンプレミスゲートウェイを使用した、オンプレミスデータへのアクセス |
〇 |
〇 |
カスタムコネクタを使用したデータへの接続 |
〇 |
〇 |
データの保存および管理 |
||
Dataverseの利用 |
〇 |
〇 |
カスタムテーブルの作成とアクセス |
〇 |
〇 |
Dynamics 365の制限付きテーブルへのアクセス |
読み取り専用 |
読み取り専用 |
Dataversデータベースキャパシティ(テナント レベルでプール) |
5GB |
10GB |
Dataversファイル容量(テナント レベルでプール) |
20GB |
20GB |
フローの実行 |
||
自動化/インスタント/スケジュール済みのフロー |
アプリのコンテキスト内 |
アプリのコンテキスト内 |
ビジネス プロセス フロー |
アプリのコンテキスト内 |
アプリのコンテキスト内 |
AIの組み込み |
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AI Builder キャパシティ アドオン |
有償 |
有償 |
PowerAppsを他のサービスから利用するには?
PowerAppsを利用する方法は、ライセンスを購入して契約するだけではありません。Office 365やMicrosoft 365、Dynamics 365の一部のプランから利用できる場合があります。その対象となるプランは下記の通りです。
PowerAppsが使用できるMicrosoft 365・Office 365プラン
- Office 365 E1/E3/E5/F3(旧: Office 365 F1)
- Microsoft 365 Business Basic(旧: Office 365 Business Essentials)
- Microsoft 365 Business Standard(旧: Office 365 Business)
- Microsoft 365 Business Premium(旧:Microsoft 365 Business)
- Microsoft 365 F3(旧: Microsoft 365 F1)/E3/E5
- Office 365 A1 for Faculty/for Students
- Office 365 A1 Plus for Faculty/ for Students
- Office 365 A3 for Faculty/for Student Use Benefit
- Office 365 A5 for Faculty/for Students/for Student Use Benefit
PowerAppsが使用できるDynamics 365プラン
- Dynamics 365 Sales Enterprise/Professional
- Dynamics 365 Customer Service Enterprise/Professional
- Dynamics 365 Field Service/Project Operations/Team
Members/Finance/Supply Chain Management/Commerce/Human Resources/Operations–Activity - Dynamics 365 Business Central/Central Team Members
Dataverse(旧称:Common Data Service)について
Power Appsの per appプランとper userプランの比較表を見ても分かるように、そこまで大きな機能の違いはありません。では、なぜここまで価格に大きな差があるのでしょうか。それは“Dataverse”サービスの有無に関係しているのです。
PowerAppsではビジネスアプリケーションの開発をノンプログラミングで容易に行えます。ただし、アプリごとのデータ連携については別の話です。各アプリでデータを連携して活用するためには、データベースの構築が必要不可欠です。専門性が高くなるとでチームの負担が増え、開発プロジェクトが大きな課題を抱えてしまう原因にもなりかねません。
“Dataverse”の場合、特別なデータベースを構築しなくても、そこにデータを蓄積するだけで利用できます。つまり、シンプルな作業だけでさまざまなアプリがそのデータを相互に活用できるのです。
PowerAppsで作成したアプリをはじめ、格納されているさまざまなデータをPower BI(セルフサービス型BI)・Microsoft Power Automate(タスク自動化ツール)・Office 365・Dynamics 365からのアクセスで、データ変換なしで利用できる環境が整います。
作成したアプリケーションを連携し、業務の効率性を一気に高めるためには、“Dataverse”の役割は非常に重要なものとなるでしょう。だからこそ、“Dataverse”の有無が価格に大きく関わってくるのです。
関連記事:マイクロソフトのCommon Data Service (CDS)とは? だれでもデータを活用できる世界を目指す
PowerAppsを導入する際は、プランごとの違いを明確に理解した上で、自社にとって最適なプランを選択しましょう。