衣食住は人にとって欠かせないもの。だからこそ、それを中心に据えたビジネスは無くならない。この不動産業界等に従事しているとこうした言葉をよく耳にします。しかし、果たして本当にそうでしょうか?
アパレル業界を例に挙げてみましょう。バブル期からバブル崩壊直後にかけてのファッショントレンドは“ブランド志向”であり、学生であっても1着 数万円もするようなジャケットを着るのは当たり前、スーツ1着10万円は普通という時代でした。
それが現在ではZARAやH&Mといった海外のファストファッションブランドが市場を牽引し、ファッションセンターしまむらで安価かつ高品質なアイテムを探す「しまパト」という言葉が流行するほどで、市場は大きく激変しています。
そうした変動の中で明確なコンセプトを持っていなかったブランドや、時代の流れに対応できなかったブランドは淘汰されてきました。
実はこのような現象は、衣食住と大きく関わる不動産業界でも同じことが言えます。本稿では、不動産業界の現状を見据えた上で、よくある営業課題やそれを解決するための手段についてご紹介します。
不動産業界の現状
国土交通省が発表した2018年8月の新設住宅着工戸数は8万1,860戸となり、前年同月比で1.6%増加、3ヵ月連続の増加となっています。さらに首都圏の居住用賃貸物件の成約数は2017年12月気にて前年同月6ヵ月連続増加となり、不動産業界は堅調という見方をしている人も多いかと思います。しかし、これには首都圏と郊外で大きな温度差があるようです。
少子高齢化に伴って労働人口が徐々に減少し、都心での求人倍率が増えていることで企業や商業施設が集中する都市部に移動する人が増えています。それにともなった郊外では人口減少が深刻化し、空き家率が増えているというのです。
野村総合研究所が発表した調査データを参照してみると、新設住宅着工戸数は2016年が97万戸だったのに対し2020年には74万戸、2030年には55万戸と徐々に減少していく見込みです。それに伴って空家率も増加していき、このことから必ずしも不動産業界が堅調とは言えないのではないでしょうか。
2019年10月1日より施行される予定の消費税率増税(8%→10%)直前をピークに、新設住宅着工戸数は劇的に減少していき、住宅購入数も減っていくという予想が大方の見方です。確かに人がいる以上、衣食住ビジネスは無くならないものの状況は刻一刻と変化しています。
このようなことから不動産業界においても淘汰が始まろうとしており、業務全体の効率化や可視化が急務であることは間違い無いでしょう。
それでは不動産業界における課題とはなんでしょうか。以降で解説いたします。
不動産業界の営業課題
不動産業界には、業界特有の営業課題があります。
これは不動産を扱う企業だからこその問題であり、それを解決しないことには企業として成長したり、時代の流れに対応することは難しいでしょう。では、その営業課題とは何でしょうか?
1. 同じお客様に複数の営業担当者が訪問してしまう
お客様情報というのは基本的に営業担当者ごとに管理されています。Excel等で管理しているところもあるでしょうが、場合によっては営業担当者ごとに手帳に手書きメモで管理している、というケースもあるかもしれません。そうした場合に起こる問題が「同じお客様に複数の営業担当者が訪問してしまう」ことです。もしくは属人化しすぎていて「担当が退職した時になんの引き継ぎも無い」という状況になることです。
たとえばあるお客様と複数回のコミュニケーションを経て良好な信頼関係を築きつつある担当者Aがいたとして、担当者Bがそんな状況も知らず同じお客様にアプローチをかけたとします。お客様からすれば「Aさんのところの会社は情報管理ができていないのか?」と不信感を抱きますね。1度の行き違いならまだしも、続けざまに担当者Cが同じように訪問すれば決定的ダメージです。担当者Aがせっかく築いた信頼関係も、回復するのは難しいでしょう。
上記の例は大袈裟にしても営業担当者間でお客様情報を共有できていない環境では、こうした問題が日常茶飯事で起こっています。お客様の心象に悪影響を与えるばかりか 営業効率 の悪さが 生産性 を低下してしまいます。
2. 「売」営業と「買」営業で物件情報・顧客情報が共有出来ていない
これも適切な情報共有がされていない場合に起こる問題。不動産業界では「売る」と「買う」という2つの視点から物件情報とお客様情報を扱います。これが適切に共有されていないと、前述のような問題をさらに助長してしまう結果になるでしょう。
3. 商談情報がデータ化されておらず、上司や営業所内で共有されていない
商談内容は基本的に営業担当者ごとに管理されています。営業担当者としても自分の案件情報を公開したくはないので、わざわざ営業部内や社内で共有するような行動はしないはずです。しかし、これが営業担当者各人と部全体の生産性を低下させていることに気付いている人は多くありません。
商談内容が共有されていないということは、組織的に営業に取り組むことが不可能ということです。上司から適切なアドバイスを受けることはもちろん、同僚からのフォローを受けることもできません。
さらに企業としては案件情報を組織の資産として管理することができず、情報活用が進まないという問題があります。これは、その会社のベストプラクティスが無いことを意味し営業レベルが不均一になってしまい非効率な活動を行う企業になってしまいます。
4. 日報や報告書作成に時間を取られ、お客様との対面時間を確保出来ていない
営業担当者にとってのコアタイム(利益に直結する業務の時間)とは、お客様とコミュニケーションを取っている時間です。コミュニケーションの質と量が営業実績に反映されることは多くのデータが証明していることであり、優れた営業担当者ほどお客様とのコミュニケーションの時間に重点を置きます。
しかし、日報作成や報告書作成、バックオフィス業務といった事務作業に時間が取られやすい環境にあると、せっかくのコアタイムを失ってしまいます。
5. 購入者・入居者へのアフターサービスの充実化が進む一方で、営業担当者とサービス部門の情報連携が出来ていない
商品は「販売して終わり」の時代ではなく、その後のアフターサービスの充実が 顧客満足度 の向上に繋がり、ひいては企業の利益に繋がります。不動産業界とて例外ではありません。しかし、営業担当者とサービス担当者でのお客様情報共有ができていないことで、お客様ごとに最適化されたアフターサービスが提供できていないことは多々あります。
営業課題を解決するためには?
不動産業界によくある営業課題を解決するためには SFA ( 営業支援 システム)の導入が有効です。しかし、従来のSFAは案件管理が中心であり、物件情報という異なる軸を合わせた情報管理ができないため、不動産業界に適用するには非常に難しいカスタマイズや構築が必要でした。
これが ERP / CRM /SFAなどの機能をクラウドで提供する“ Microsoft Dynamics 365 ”によって解決することができます。具体的には不動産業界に強いSCSKが提供するDynamics 365用の不動産テンプレートによって解決可能になります。
「 CRMとSFAの違いを解説! 」の記事で詳しく調べてみましょう!
このテンプレートを用いれば不動産業界にてお客様情報と物件情報という2軸管理ができるだけでなく、「売と買」「貸と借」というさらに異なる契約内容であらゆる情報を管理することが可能です。
SCSKが提供する不動産業界に特化したテンプレートを用いることで追加開発コストや開発期間を大幅に短縮しつつ、不動産業界にマッチしたDynamics 365を構築し、様々な営業課題を解決できます。そうすれば機会損失の防止や顧客満足度を向上を行え、営業利益をの最大化することで不動産事業の成長を後押ししてくれるのです。
不動産業界特有の営業課題に悩まされているのならば、この機会にDynamics 365ならびにSCSKのテンプレートをご検討ください。