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自律化はなぜ重要なのか?自動化との違いや事例を紹介

AIやIoT技術などの発展に象徴されるようにICT技術の急速な発展が進む中、昨今では「自動化」のさらにその先を行く概念「自律化」が注目されています。本記事では、ITにおける自律化とは何を意味しており、なぜ重要なのかという点や、自動化との違いについて具体的な事例も交えながら解説します。

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第四次産業革命で進む「自律化」自律化とは?

まずはITにおける自律化の意味を簡単に定義すると共に、第四次産業革命などの背景と絡めて、なぜ現代において自律化が重要視されるのかを解説していきます。

そもそもITにおける自律化とは?

ITにおける自律化とは、簡単に言うとあらかじめ目標を設定しておくだけで、コンピューターがその達成のために自動で学習し動いていくことを意味します。その過程で人間が介入する必要がありません。変化するさまざまな状況においても、コンピューターは自ら自己自身を調整し、問題解決に取り組むのです。自律化はとりわけAI(人工知能)の領域と深く関連するテーマと言えます。英語では、「Autonomy(自律)」あるいは「Autonomous(自律化)」という言葉が使われます。

第四次産業革命(インダストリー4.0)とは

このITの自律化というテーマは、第四次産業革命(インダストリー4.0)とも深く関係しています。インダストリー4.0とは、ドイツが産官学共同でその実現を目指している国家的プロジェクトです。まず、第三次までの産業革命について説明します。それぞれ次のように特徴づけられます。

第一次産業革命:蒸気機関の発明による軽工業の機械化(18世紀後半~)
第二次産業革命:電力の導入による重工業の発展と大量生産社会の到来(19世紀後半~)
第三次産業革命:インターネットやコンピューターによる自動化(20世紀後半~)

そして、これらに続く第四次産業革命の特徴が、「IoTやAIによる自律化」です。ドイツは第四次産業革命に相当する概念にあたるインダストリー4.0に対して、そのコンセプトを「スマートファクトリー」、つまり「考える工場」としています。スマートファクトリーにおいて、コンピューターや生産設備は互いにネットワークで繋がって通信し、最終的には人間の関与なしに一切の製造プロセスを遂行できるようになります。ここで大きな役割と担うのが、モノにインターネットの接続機能を持たせ、機器間のネットワークを築くIoT技術です。

AIはこのIoTネットワークを介して多くのデータを収集して機械学習を進め、その結果、生産プロセスの全体最適化が実現されます。スマートファクトリーに象徴されるように、ドイツでは特に製造業に焦点を当ててインダストリー4.0を考えていますが、AIによって自律的に制御されたシステムは、工場に限らず企業のビジネスプロセス全体を効率化し、私たちの生活をより豊かにしていくものと期待されています。

自律化が重要視されている理由

第四次産業革命などにおいて自律化戦略が重要視されている理由としては、次のような理由が挙げられます。

  • ITインフラが複雑化している
  • システムの運用管理にかかるコストが増加している
  • システムの柔軟性が求められている
  • ITスキルの高い人材確保が難航している

企業活動におけるICTへの依存度が高まるのとは裏腹に、ITスキルの高いIT人材は世界的に不足しており、企業はその確保に難航しています。限られた貴重な人材も、複雑なシステム管理に追われ、日々のメンテナンスやセキュリティリスクに備えるだけで手一杯という企業も多く存在することでしょう。つまり、いまや巨大化したITインフラを人間によって管理・運用し続けることが難しくなってきているのです。

そこで重要になってくるのがコンピューターの自律化です。AIやIoT技術等の活用を通してシステムそのものが自らを管理・制御できるようになれば、上記のような課題は一挙に軽減され、企業は限られたIT人材をより創造的な仕事に集中させられるというメリットを獲得できます。

自動化と自律化の違い

自律化と混同されがちな概念として自動化(Automation)が挙げられます。この二つの概念の違いはどこにあるのでしょうか。以下では、それぞれの特性と違いを解説します。

自動化とは?

自動化とは、あらかじめ人間によってプログラミングされたロボットが人間の介入なく動くことを意味します。基本的には、単純な反復作業や決まったルールのもと動くことを得意としているのが自動化の特徴です。その反面、自動化の段階に留まるシステムは、想定外のエラーやトラブルが発生した場合は対応が難しく、システム自体をストップさせるなどの硬直的な対処しか自身ではできません。

表面的には自律的に動いているように見える自動化システムですが、実際には事前に命令されたプログラムに従っているに過ぎないのです。自動化の段階でもたしかに業務の効率性などは向上しますが、それでも人間による監視・管理は欠かせません。

自動化との大きな違いは「自分で学習できること」

上記のように、プログラムで命令された通りにしか動けない自動化に対して、自律化の場合は「自分で学習して動ける」という点に大きな違いがあります。現在のAIはディープラーニングという機械学習の方法によって自ら高度に物事を学習できるようになっており、一部の分野でその能力は人間を超えるまでになっています。

機械学習の特性として、参考となるデータが多ければ多いほど学習精度が高まる点が挙げられます。IoT技術の発展によって、現代ではリアルタイムに膨大なデータ(ビッグデータ)を取得することが容易になりました。自ら学ぶことを可能にする機能が加わることによって、自律化されたAIシステムは長く稼働すればするほど最適化されます。たとえエラーやトラブルが起こっても、人間のようにその場で自ら適切な対処法を判断して実行できるようになるのです。

自律化の例

ITの自律化は多くの分野で研究が進んでいます。以下では、今後活用が期待される代表的な例を紹介します。

AIによる自動運転

自律化の第一の例はAIによる自動車などの自動運転システムです。自動運転とは、従来はドライバーが行ってきた運転操作をシステムが代替することを意味します。自動運転においては、乗り物に搭載されたカメラやレーダーなどを使ってシステムが周囲の状況をリアルタイムに認識し、事故などがないように走行します。このような自己制御機能を備えた自動運転システムは、名前にこそ「自動」という言葉を冠していますが、自律的と言うにふさわしいシステムです。

製造業のIoT化

自律化の効果が期待されている分野としては、製造業も欠かせません。先に触れたように、第三次産業革命では「自動化」がメインでしたが、第四次産業革命ではIoTを活用した「自律化」こそテーマになると言われています。インダストリー4.0を象徴するスマートファクトリーにおいても、あらかじめ目標を設定することで自律的に判断し、品質向上やコスト削減、事故の回避など、製造プロセスの最適化を進めていけるシステムを想定しています。

農業の自律化

後継者不足が喫緊の課題となっている農業においてもITの自律化技術の効果が期待されています。農業における自律化システムの活用例としては、AIに収穫に適した作物の画像データを機械学習させることで、収穫時期の判断を収穫用ロボットに自律的にさせるというものがあります。日本政府はこうした最新のテクノロジーを駆使して、2040年までに農林水産業を高度にシステム化することを構想しており、「スマート農業」の実現を推進しています。

まとめ

AIやIoTの活用を通して自律化されたシステムは、自ら学び、考え、様々な課題に対処できます。Microsoft Azureでは自律的システムを支える高度なAIサービスが提供されています。ビジネスのスマート化を進める際には、ぜひ導入をご検討ください。

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