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財務会計の課題克服によるガバナンス強化! 効率化の方法と事例

企業の財務会計部門は、書類ベースの業務が中心で、属人化してしまいがちなどといった課題があります。本記事では、こうした課題を抱えている企業の経営陣および経理・財務部門担当者向けに、解決方法やマイクロソフト社のERPツールの導入で課題解決に成功した企業の事例を紹介しています。

財務会計の課題克服によるガバナンス強化! 効率化の方法と事例

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財務会計の抱える課題

企業の財務会計部門が抱える課題といえば、まず思い浮かぶのがいまだに紙ベースの業務が中心になっていることです。日本ならではの押印文化もあり、デジタル化が進んでいない企業は数多くあります。デジタル化が進んでいないということは、日々の財務会計業務は手作業で行われることになります。定型作業であっても手作業であれば、人的なミスが起きやすくなります。ミスの訂正などの非効率な作業が増え、無駄なコストも発生します。

さらに、財務会計には専門的な知識必要とされる作業も多く、属人化しがちなことも課題のひとつです。マニュアルの作成や作業手順の教育、情報共有体制の整備といったことに十分な時間を割くことができなければ、財務会計業務は属人化の弊害から脱却することはできません。

財務会計を効率化する方法

財務会計業務が抱える課題を解決し、効率化する方法として、ペーパーレス化、財務会計システムの導入、ERPの導入が考えられます。

ペーパーレス化

財務会計を効率化する第一の方法はペーパーレス化の推進です。財務会計業務で扱う国税関係の帳簿、決算関係の書類、取引関係の書類をすべて紙ベースのものから電子データへと切り替えます。データを電子ファイル化することにより、帳簿・書類の分類や指定場所への保管といった作業が不要になるだけでなく、管理がしやすくなり、必要な帳簿・書類も検索ですぐに見つけ出せるようになります。さらにペーパーレス化によって紙を使う必要がなくなり、帳簿・書類の保管場所も不要になるため、コスト削減やオフィスの有効活用にもつながります。さらに帳簿・書類を電子ファイル化することで、情報漏えいやデータ劣化のリスクが大幅に軽減されます。

国も企業のペーパーレス化を後押しする法整備を進めています。2022年1月に施行された改正電子帳簿保存法では、帳簿・書類を電子保存する際の要件が大幅に緩和されました。税務署長の事前承認制度が廃止されたり、タイムスタンプ要件が緩和されたりと、電子帳簿保存のハードルが下げられ、導入を検討する企業の増加が期待されています。あわせて従来は認められていた電子取引の書面出力保存が廃止され、電子データでの保存が義務化されました。

財務会計帳簿・書類の電子データ化=ペーパーレス化は逆行のできない、大きな潮流となっており、財務会計業務の効率化にも寄与します。

財務会計システムの導入

効率化の第二の方法は財務会計システムの導入です。導入することにより、毎日行っている伝票の起票作業が効率的になったり、会計処理業務を継続して行っているうちに自動的に財務諸表ができあがったりと、さまざまなメリットが得られます。外部システムと連携することで、例えば銀行口座の入出金明細を取り込んだりすることも可能です。また、誤ったデータ入力で計算が合わないような場合、システムが警告を出してくれるため、入力ミスもすぐに修正できます。こうした人的ミスが削減されることは大きなメリットです。

財務会計システムはパソコンにインストールして使用するタイプのほか、クラウドサービスとしても提供されており、自社に適したものを選択できます。クラウドの財務会計システムであれば、関連する法律が改正された場合でも、システム側で自動的に対応してくれるため、企業側で修正を行わなくてよいのもメリットのひとつです。

ERPの導入

昨今、多くの企業から注目を集めている「ERP(Enterprise Resource Planning:企業資源計画)」の導入も財務会計を効率化する方法として考慮すべき案のひとつです。ERPを活用すれば、社内で分散しているデータを一元的に管理でき、通常の会計システムだけでは対応しきれないようなデータ収集が可能になります。例えば会計業務、人事業務、生産業務、物流業務、販売業務といった、企業経営に欠かせない基幹業務のデータを一元管理することにより、データの転記や変換などの非効率的な作業を排除できます。さらにERPでは、複雑な処理などはシステムが自動的に行ってくれるため、業務を標準化できることも大きなメリットです。特定の担当者のみが操作できるのではなく、関係する従業員であれば誰でも対応できるようになるため、業務の属人化を防ぐことができます。

財務会計の効率化に役立つ Microsoft Dynamics 365とは?

財務会計の効率化を検討しているのであれば、さまざまなアプリケーションがクラウド上でパッケージ化された「Microsoft Dynamics 365」の導入がおすすめです。Microsoft Dynamics 365は、ERPとCRM(Customer Relationship Management:顧客関係管理)とが統合され、社内データの一元管理だけでなく、顧客の情報や行動履歴、顧客との関係性を管理することも可能です。財務会計業務を自動化できるツールも含まれており、人的リソースを最適化できるメリットもあります。

ERPやCRMについては、以下の記事が参考になります。

ERPとCRMの違いは何? 両者を連携すべき理由とは

Microsoft Dynamics 365で財務会計業務を効率化した事例

Microsoft Dynamics 365を導入し、財務会計業務の効率化を図った株式会社神戸製鉄所をモデルケースに、導入のきっかけ、経緯、効果を紹介します。

導入のきっかけ

大手鉄鋼メーカーである株式会社神戸製鉄所は、世界中の取引先からの要望を受け、海外での事業拡大を進めてきました。しかし、海外拠点が増えるにつれ、グループ企業の会計業務処理が複雑になったり、海外との精度差が顕在化したりして、会計業務遂行上のリスクが問題視されていました。

そこで同社では、グループ全体の経営を根幹から支える財務会計業務のガバナンス強化や、決済精度の向上、事業の効率化を図るためにプロジェクトを発足させました。本プロジェクトの特徴は、2020年までにグループ共通の会計基準、会計業務プロセス、会計システム・コード体系の3点を定めた「グループ経理業務標準セット」を作成したことです。国内外グループ企業の会計業務を標準化することにより、山積する課題を解決しようという目論見です。

導入の経緯

財務会計機能の標準セットは、まず国内のグループ企業から展開し、海外のグループ企業へも順次拡大していきました。プロジェクトで使うシステムには、財務と運用向けの強力なERPソフトウェアパッケージ「Microsoft Dynamics AX」などを採用しました。

海外の事情を考慮したカスタマイズも行っています。例えば、先行導入した中国のグループ企業の場合、日本で構築された財務会計機能の標準テンプレートをベースに、現地での会計に必要な機能などを盛り込んだ「中国神鋼標準テンプレート」を開発するなど、さまざまな工夫を凝らしています。

現地の会計業務で必要か、既存の環境で代替できるか、ガバナンス維持のために必須かなどの観点から、アドオン機能の開発を検討したことも大きなポイントです。プロジェクトの開始時点で中国にも多くの会計システムが存在していたものの、導入実績や操作性などが総合的に評価され、Microsoft Dynamics AXなどを採用することが決まりました。

導入の効果

財務会計システムとしてMicrosoft Dynamics AXなどを導入した結果、承認フローが追加されたことで不正のリスクが低減し、ガバナンスが強化されました。さらに、グループ企業の会計業務が標準化されたことで運用が効率化されたり、ヒューマンエラーを防いで会計精度が向上したりと、さまざまなメリットが生まれています。

まとめ

企業の財務会計部門では書類ベースの業務が多いため、ミスが発生しやすく、属人的になりがちですが、ペーパーレス化や財務会計システム、ERPなどを導入することで、こうした課題を解消できます。Microsoft Dynamics AXなどのERPを活用して、グループ企業の会計システムを標準化し、業務を効率化できた株式会社神戸製鉄所のような事例もあります。

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