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デジタル化とDXの違いを解説 | 正しく理解して活用しよう

デジタル化とDXの違いを解説 | 正しく理解して活用しよう

DXという言葉は頻繁にメディアで見聞きすることがあるかと思います。そのような中で「DX」という言葉が「デジタル化」と同じ文脈で使われることがあるため、デジタル化自体がDXと理解してしまうケースもあるようです。本記事ではDXとデジタル化の違いを明確にし、DXを推進するためのポイントと実際の企業事例について解説します。

デジタル化・DX|大きな違いとは

デジタル化・DX|大きな違いとは

DXとデジタル化という言葉は同じような意味合いで使用されることがあります。しかしながら、両者は求める目的が全く異なる言葉です。ここではDXとデジタル化がどのように違うのかについて焦点を当てます。

デジタル化|業務効率化が目的

デジタル化はデジタル技術の活用を通じてアナログからデジタルへ移行することによって、業務の効率化を図ることを意味します。

アナログで業務の際に必要としていた人手や時間を、デジタル化によって削減し費用や工数を削減できます。例えば、これまで紙で行っていた社内承認フローをクラウドサービスなどブラウザ上で行うことで、紙の消費削減のみならず、いつでもどこでも承認作業が可能となり、工数を削減できるなどがあります。

このように、これまでのアナログ作業をデジタルに置き換えることで、業務の効率化のみならず不必要な費用を削減できることが、デジタル化の効果といえるでしょう。

DX|企業の競争力強化が目的

DXは、デジタル技術を活用し新たなサービスや商品の開発を行うことで付加価値を産み出し、企業としての競争力を高め市場において優位に立つことを目指します。

DXではデジタル技術を活用しますが、それは手段であって目的ではありません。デジタル技術をベースに事業そのものの変革を目指す、より上位概念に位置する考え方です。部分最適化により業務の効率を図る考え方はDXが目指すものではなく、企業の事業内容を変革し長期的なスパンで新しい価値を創出し続けるのがDXのあり方となります。

そのため、DXにおける取り組みが、既存のデジタル化を否定し根本的な仕組みを刷新することも起こりうるでしょう。

DXについては別記事で詳しく解説していますので、併せてご覧ください。

DXの定義とは?重要視される5つの理由や進め方を分かりやすく解説

それぞれの違いとは

DXとデジタル化は両者ともにデジタル技術を活用するという点では共通しています。しかし、両者はデジタル技術に取り組む際の姿勢が異なります。

デジタル化は既存業務をデジタルに置き換え、工数や費用の削減を図ることが主な目的です。その意味において、部分最適化というのがデジタル化の役目といってよいでしょう。一方で、DXはデジタル技術を用いて新規事業の創出や新しい価値を創造するという全体戦略にあたる考え方です。もちろん、DXを実行する上でデジタル化も1つの手段となるので、DXがデジタル化を含む場合もあります。

デジタル化・DX|それぞれのメリットの違いとは

デジタル化・DX|それぞれのメリットの違いとは

前章で解説したようにデジタル化とDXの目的には明確な違いがあります。ここでは、デジタル化とDXにおけるそれぞれのメリットについて解説します。

デジタル化のメリット

デジタル化における大きなメリットは業務の効率化です。デジタル化を通じて、これまで人間が手動で行っていたことがプログラムによって自動処理されたり、アナログ形式で行っていた手続きがデジタルに置き換わることによってプロセスが簡略になる、という変化が起こります。その結果として、これまで必要としていた工数が削減され、労働時間の最適化、労働生産性の向上といった効果を生み出すことができます。

その他に、デジタル化によって業務プロセスがメンバー間において可視化され、不要なコミュニケーションを省略できるというメリットもあります。

DXのメリット

デジタル技術を活用した新しいビジネスモデルやこれまでにない付加価値を創出できる点がDXにおける大きなメリットです。

DXの活用を通じて企業における新しい収益源を開発し、事業の長期的な成長や雇用の維持を図ることも期待できます。日本のような先進国においては、欲しいモノが一通り手に入り不自由なく生活ができることが一定の範囲内で保障されています。その一方で成熟社会となった日本では、DXがこれまでにない新しい顧客体験の創造を行う大きな役割を果たすといえるでしょう。インターネットとデジタル技術が普及した現代では、DXを起点としたさまざまなサービスが提供されています。

デジタル化の例

デジタル化の例

ここではデジタル化の具体例を3つピックアップします。ここに取り上げた例について、読者の中には当たり前と思われる方もいるかもしれませんが、デジタル化が導入される以前はアナログな手段が取られていました。

紙書類をデジタル化する

これまで紙ベースでやり取りしていた業務は、クラウドサービスを通じてインターネット上でのやり取りに置き換えることができます。

例えば、従来の方法ではパートナー会社との契約書は紙ベースの契約書に捺印し郵送していました。しかし、デジタル化においては、契約書はクラウドサービスが提供している電子署名に置き換えることができます。これによって契約時に必要としていた紙の消費や時間、郵送料金を削減できます。

ビジネスチャットを導入する

社内外のコミュニケーションにSlackやLINE Worksのようなビジネスチャットを用いると遠隔地でもリアルタイムで意思疎通ができます。

対面や電話によるコミュニケーションは相手が他の業務で手がふさがっていることもあるため、相手の都合に合わせる必要があるでしょう。一方でビジネスチャットであれば、自分の意思を先に相手に伝え、相手は任意のタイミングで返信ができます。また、ビジネスチャットはチームメンバー全体に即時に情報共有できるというメリットもあります。対面においては、チームメンバー全員に即時に情報共有する機会は会議などに限られてくるでしょう。

オンライン会議システムを導入する

コロナ対応で在宅勤務制度を採用したほとんどの企業は、オンライン会議システムを導入したといえるでしょう。Microsoft TeamsやZoomのようなオンライン会議システムを通じて、インターネット上でビデオ会議することができるようになりました。会社へ行ったり会議参加者がいる場所へおもむいたりすることなく会議ができるため、移動時間を削減し時間を効率的に活用できるメリットがあります。また、海外との会議もオンライン会議システムを通じて行うことができます。

これにより、移動時間と交通費の削減ができるでしょう。

取り組みやすいDXの事例

取り組みやすいDXの事例

ここでは実際に企業で行われたDXの事例について5つピックアップし紹介します。企業によっては既存業務のデジタル化がDXによる新規事業の創出につながったケースもあります。

DX事例 1|株式会社ヒバラコーポレーション

同社は茨城県に本社を構える1967年創業の従業員43名の塗装会社です。先代からの社長業を引き継いだ現社長は、当初は粗利益率が低く大規模な設備投資ができる経営状態ではなかったといいます。

そこで社長は、会社全体を見渡し非効率な業務をデジタル化するところから改革に着手しました。これまで紙ベースで行っていた伝票をスキャナーとプリンターの導入によってデジタルに置き換えました。さらに、塗装業務をデータとして見える化し、業務の効率化、誤発注の防止などを図ることで経営の健全化に結びつけていったのです。

このデジタル化の成功体験をベースに、塗装業のIT化におけるコンサルティング業という新しい事業の創出にも成功しました。小さいデジタル化からDX事業へ導いた1つの成功事例といえます。

出典:『デジタルガバナンス・コード実践の手引き 1.0 DX 取組事例集』(経済産産業省)

DX事例 2|株式会社竹屋旅館

同社は静岡県でホテルを運営している会社です。4代目の現社長が就任した2015年は訪日外国人が前年比約47%も増えた年で観光業が発展した時期でした。しかし、同社は高騰する清掃委託料金などによって経営に問題を抱えていました。

そこで、社長は清掃業務を外注するのではなくデジタル技術を用いた内製化に取り組みました。具体的には、清掃業務に投下している労働量の可視化や清掃に長けている従業員のノウハウの動画での共有などです。これにより、清掃時間の短縮ばかりではなく顧客満足度を改善することにも成功しました。

こうしたノウハウを他社にも伝えホテル経営をサポートするコンサルティング事業を新規で立ち上げるに至りました。

出典:『デジタルガバナンス・コード実践の手引き 1.0 DX 取組事例集』(経済産産業省)

DX事例 3|株式会社太陽都市クリーナー

同社は広島県に拠点を置く産業廃棄物処理を行う会社です。産業廃棄物処理業界は人手不足が問題となっており、同社においても同じ問題を抱えていました。また、作業を行う従業員は日中は業務で外出しており、会社にいる事務員との連携が上手く取れていないという問題がありました。

作業員と事務員との連絡手段は主に電話であったということです。そこで社長はクラウドサービスを導入し、グループチャット、カレンダー、ファイル共有を作業員と事務員が行えるようにしました。これによってコミュニケーションにおける問題が解決し、正確な情報共有が従業員の間で行われるようになりました。結果として、生産性向上や職場の円滑な人間関係構築が実現し、人手不足への対策にもなっています。

出典:『デジタルガバナンス・コード実践の手引き 1.0 DX 取組事例集』(経済産産業省)

DX事例 4|サンコー株式会社

同社は香川県に本社を構えるねじや精密機械を販売する会社です。同社では2017年に、営業部門が実際にどれくらい営業に時間を投下しているかを社内調査しました。その結果明らかになったことが、雑務に労働時間が奪われ、収益につながる営業活動の時間をうまく確保できていなかったということです。

そのため、同社はプロジェクトを立ち上げ、情報システム部門のみならず営業部門や役員も参加し意見交換しながらシステム導入を進めました。その成果、「倉庫管理システム」と呼ばれる新しいシステムを導入し、10万種類以上もある同社の製品を必要な量を必要なタイミングで顧客に販売できるようになりました。

出典:『デジタルガバナンス・コード実践の手引き 1.0 DX 取組事例集』(経済産産業省)

DX事例 5|東洋電装株式会社

同社は広島県に拠点を置く制御盤を製造する会社です。同社では「大量ロットでの生産により高い生産性を実現する大企業」に、中小企業としてどのように対抗するかを課題と考えていました。

そこで社長は工程の標準化のためのプロジェクトを立ち上げました。行ったのは、制御盤の製造工程の分析です。製造工程を細かく分類し、各工程を動画で撮影した結果、ロボットや自動化できる工程、誰でもできる工程、熟練した技術者ができる工程に分類できることがわかりました。これにより、小ロットでも大量ロットでも同じクオリティと低コストで生産できる体制を構築できました。

出典:『デジタルガバナンス・コード実践の手引き 1.0 DX 取組事例集』(経済産産業省)

DXを推進するためのポイント

DXを推進するためのポイント

ここからは、DXを推進し各従業員の業務に浸透させるためのポイントを4つピックアップします。前述のDX事例においても、これらのポイントがしっかりと押さえられています。

会社が一丸となって取り組む

DXを導入する際には、従来から行われていた暗黙のルールや決まり事から見直していくことがあります。こうしたケースでは、従来のやり方に慣れている従業員から反発を受けたり理解してもらうのに苦労したりすることもあるかもしれません。

そのようなことが発生しないようにするには、DXは会社として成長するための手段であることを従業員に理解してもらうことが重要です。そのためには、各従業員と密なコミュニケーションを図り、新しいデジタルツールを導入する際に丁寧に説明することや定期的なフォローアップも必要となります。

業務の棚卸

DXをいきなり全ての業務に導入するのではなく、日々行っている業務の身近なところからデジタル化を進めていくという方法があります。

この方法を取ることによって、デジタル化がいかにして業務を効率的にしてくれるかを感じられるようになります。そのためには、現在行っている業務をリスト化し、どの業務がデジタル化によって効率的にできるかの検討が必要です。部署によっては、そもそもどの業務をデジタル化できるのかを検討することも難しい状況かもしれません。そのような場合には、現在抱えている業務の中で特に負担が大きいものをリスト化し、社内のITチームへ相談してみるのもよいでしょう。

DX人材の確保

DXの推進にはITシステムに関する知識や経験が一定のレベルで必要となります。しかし、ITシステムに詳しい人材がどの企業も不足しているのが実情です。

社内でそのようなDX人材がいない場合には、新しくDX人材を採用したり、外部のシステムベンダーやコンサルティング会社と協業してDXをプロジェクトとして進める方法があります。特にシステムベンダーやコンサルティング会社とプロジェクトを進める場合は予算がそれなりにかかるケースがありますので、DX推進という1つの目標を会社が一丸となって十分に理解し推進していく必要があるでしょう。

リスキリングの導入

リスキリングとは、新しいスキルを習得することでスキルアップし自分の業務に活かしたり新しい業務へ取り組んだりすることを意味します。DXを推進する上で新しいDX人材を採用することも1つの方法ですが、従業員のリスキリングを図りDXを社内に浸透させるという取り組みも重要です。

導入には、リスキリングを専門的に行っている第三者機関のプログラムを導入する例もあります。このような機関では、専門的な知識を持った講師がオンライン授業を行うこともあり、従業員の仕事に支障がでないよう配慮されています。

まとめ

これまでの解説を通じて、DXとデジタル化が目指す目的がそれぞれ異なることが理解できたと思います。既存業務のデジタル化が出発点となりそれを契機としてDXによる新規事業を創出した好事例も出ています。既存業務に問題を抱えている場合は、一度その業務内容の棚卸を行い見つめ直してはいかがでしょうか。

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