
日々のデータ入力や書類処理に時間を奪われていませんか?「Power Automate AI Builder」を使えば、プログラミング知識がなくてもAIを活用し、経理や顧客管理などの業務の大幅な効率化が期待できます。
この記事で分かること
- AI Builderの基本概要と導入メリット
- 請求書処理や名刺登録などの具体的な活用事例
- 利用に必要なライセンス要件と条件
- 実際のフロー作成と設定手順
本記事では、基本機能から実践的な使い方まで網羅的に解説します。AIによる業務効率化の第一歩として、ぜひお役立てください。
Power Automate AI Builderの基本概要と主な機能
業務の自動化を進める中で、AIの力を活用してさらに高度な処理を行いたいと考える企業が増えています。Power Automate AI Builderは、そのようなニーズに応える強力なツールです。ここでは、AI Builderの基本的な概念から、提供されている主な機能、導入のメリットや必要となるライセンス条件について詳しく解説します。
Power Automate AI Builderとは何か
Power Automate AI Builderは、Microsoftが提供するローコードプラットフォーム「Power Platform」に統合されたAI機能です。専門的なプログラミングやデータサイエンスの知識がなくても、Microsoftの公式ドキュメントで説明されているように、ビジネスプロセスにAIを簡単に組み込んで自動化と最適化を図ることができます。
Power Automateのフロー内にAI Builderのアクションを追加することで、文書からのデータ抽出、テキストの分類、画像の物体検出など、これまで人間の判断や手作業が必要だったタスクをAIに任せることが可能になります。既存の業務フローを大幅に変更することなく、直感的な操作でAIを導入できる点が最大の魅力です。
AI Builderで利用できる事前構築済みモデルとカスタムモデルの違い
AI Builderには、用途に合わせてすぐに使える「事前構築済みモデル」と、自社の独自のデータを用いて学習させる「カスタムモデル」の2種類が用意されています。それぞれの特徴と違いを理解し、業務要件に応じて適切なモデルを選択することが重要です。
| モデルの種類 | 特徴 | 主な用途・機能例 | 学習データの準備 |
|---|---|---|---|
| 事前構築済みモデル | Microsoftが事前にトレーニングを済ませているため、設定後すぐに利用可能です。一般的な業務要件をカバーしています。 | 名刺リーダー、領収書の処理、テキストの翻訳、感情分析、キーフレーズ抽出 | 不要 |
| カスタムモデル | 自社の固有のデータ(文書や画像など)を読み込ませてAIをトレーニングし、独自の要件に合わせたモデルを作成します。 | 独自の請求書フォーマットからのデータ抽出、自社製品の画像認識、特定カテゴリへのテキスト分類 | 必要(一定数のサンプルデータ) |
Power Automate AI Builderを導入するメリット
Power Automate AI Builderを業務に導入することで、企業はさまざまな恩恵を受けることができます。主なメリットは以下の通りです。
- 手作業によるデータ入力や分類作業を自動化し、業務時間を大幅に削減できる
- 人間による入力ミスや判断のブレを防ぎ、データ処理の正確性を向上させることができる
- 高度なAI技術をプログラミング不要のローコードで素早く実装できる
- Power AppsやDynamics 365など、他のMicrosoft製品とシームレスに連携できる
特に、紙の書類やPDFで送られてくる非構造化データをデジタルデータに変換する作業において、AI Builderは強力な効果を発揮します。従業員は定型的な事務作業から解放され、より創造的で付加価値の高い業務に注力できるようになります。
導入に必要なライセンスと条件
Power Automate AI Builderを利用するためには、適切なライセンスと環境の準備が必要です。AI Builderは標準機能ではなく、プレミアム機能として位置づけられているため、基本的には追加のライセンス契約が求められます。
- Power Automateのプレミアムライセンス(ユーザーごとのプラン、またはフローごとのプラン)
- AI Builder 容量アドオン(AI機能を利用するためのクレジット)
AI Builderの利用料金は、月間に消費する「サービスクレジット」の量に基づいて計算されます。実行するAIモデルの種類や処理するデータ量(画像の枚数やテキストの文字数など)によって消費されるクレジットが異なるため、導入前に自社の業務でどの程度の処理が発生するかを見積もっておくことが推奨されます。また、環境の構築にはMicrosoft Dataverseデータベースが必要となる点にも留意が必要です。
Power Automate AI Builderの代表的な活用事例
Power Automate AI Builderを導入することで、これまで手作業で行っていたデータ入力や分析などの定型業務を大幅に効率化できます。ここでは、実際のビジネスシーンでよく利用される代表的な活用事例を4つ紹介します。
請求書やレシートのデータ抽出による経理業務の自動化
経理部門において、紙やPDFで届く請求書やレシートの処理は非常に手間のかかる業務です。AI Builderの「ドキュメント処理(OCR)」モデルを活用すれば、スキャンした画像やPDFから必要なテキストデータを高精度で自動抽出することが可能になります。
例えば、取引先からメールで送られてきた請求書のPDFファイルをPower Automateが自動で検知し、AI Builderが「会社名」「請求金額」「日付」などの項目を読み取ります。その後、読み取ったデータをSharePointのリストやExcel、Dataverseなどのデータベースへ自動的に転記するフローを構築できます。
経理業務自動化のメリット
- 手入力による人的ミスの削減
- 月末月初に集中しやすい経理担当者の業務負荷軽減
- 紙の書類のペーパーレス化と検索性の向上
名刺リーダーを活用した顧客情報の自動登録
営業活動で獲得した名刺の管理も、AI Builderの「名刺リーダー」モデルを使うことで劇的に効率化されます。スマートフォンで撮影した名刺の画像から、氏名、役職、会社名、電話番号、メールアドレスなどの連絡先情報をAIが瞬時に読み取ります。
Power Appsで作成した社内アプリと連携させれば、外出先から名刺を撮影するだけでDynamics 365などのCRM(顧客関係管理)システムにデータが即座に登録されます。これにより、営業担当者は帰社後に名刺情報を手入力する手間が省け、顧客への迅速なフォローアップに注力できるようになります。
名刺リーダーで抽出可能な主な項目
| 抽出項目 | 内容の例 |
|---|---|
| 氏名・役職 | 山田 太郎、営業部長 |
| 企業情報 | 株式会社〇〇、部署名 |
| 連絡先 | 電話番号、FAX番号、メールアドレス |
| 所在地 | 郵便番号、都道府県、市区町村、番地 |
顧客からの問い合わせメールの感情分析と自動振り分け
カスタマーサポート部門では、日々寄せられる大量の問い合わせメールやアンケート結果の処理が課題となります。AI Builderの「感情分析」モデルを組み込むことで、テキストの内容が肯定的か、否定的か、あるいは中立かをAIが自動で判定します。
この機能を活用し、例えば「否定的」と判定されたクレームの可能性が高いメールを受信した際、優先度を「高」に設定してMicrosoft Teamsのサポートチームのチャネルへ即座に通知する仕組みを構築できます。Power Automate での感情分析モデルの使用により、顧客の不満に対して迅速かつ適切な対応をとることが可能になり、顧客満足度の向上につながります。
テキスト翻訳モデルを用いた多言語対応の効率化
グローバルに事業を展開している企業や、海外の取引先とやり取りが多い企業において、言語の壁は業務スピードを低下させる要因の一つです。AI Builderの「テキスト翻訳」モデルを利用すると、受信した外国語のメールやドキュメントをリアルタイムで日本語に翻訳することができます。
海外拠点から送られてくる英語の日報や問い合わせ内容を、Power Automateが自動で翻訳し、関係者にメールで共有するフローを作成できます。翻訳作業にかかる時間とコストを削減し、社内の円滑なコミュニケーションを実現します。
テキスト翻訳モデルを活用したフロー作成手順の例
- 特定の共有メールボックスに外国語のメールが届くのをトリガーにする
- AI Builderのテキスト翻訳アクションで、本文を日本語に翻訳する
- 翻訳されたテキストを含めたメッセージをTeamsのチャネルに自動投稿する
Power Automate AI Builderの設定方法と使い方
Power AutomateでAI Builderを活用することで、業務プロセスに高度なAI機能を簡単に組み込むことができます。ここでは、導入に向けたライセンスの準備から、実際のフロー作成、カスタムモデルの構築、そして運用時の注意点までを具体的に解説します。
AI Builderを利用するためのライセンス要件と事前準備
AI Builderを利用開始する前に、適切なライセンス環境とシステム要件が整っているかを確認する必要があります。AI Builderはプレミアム機能として提供されているため、標準のMicrosoft 365ライセンスだけでは利用できない場合があります。
AI Builderを利用するには、対象となる有償ライセンス(Power Automate Premium等)に付属するクレジットを使用するか、必要に応じて「AI Builder キャパシティ アドオン」でクレジットを追加割り当てすることで利用可能になります。
| 必要なライセンス・要件 | 詳細説明 |
|---|---|
| Power Automate プレミアムライセンス | ユーザー単位、またはフロー単位でプレミアムコネクタを利用できるライセンスが必要です。 |
| AI Builder キャパシティアドオン | AIモデルの実行には「クレジット」を消費します。環境に対して必要なクレジットを購入し、割り当てる必要があります。 |
| Dataverse データベース | カスタムモデルのトレーニングデータや設定を保存するため、対象の環境にMicrosoft Dataverseが構築されている必要があります。 |
事前準備として、Power Platform管理センターにアクセスし、対象の環境に対してAI Builderのクレジットが正しく割り当てられているかを確認しましょう。詳細なライセンスガイドや最新のクレジット消費量については、Microsoft公式のAI Builderライセンス管理ドキュメントを参照してください。
事前構築済みモデルを使ったフローの作成手順
Microsoftが提供する事前構築済みモデルを使用すれば、データを用意してトレーニングする手間を省き、すぐにAI機能をフローに組み込むことができます。名刺読み取りや請求書のデータ抽出などがこれに該当します。
- Power Automateの左側ナビゲーションメニューから「AI Builder」を展開し、「AI モデル」を選択します。
- 利用したい事前構築済みモデル(例:「請求書から情報を抽出する」)をクリックします。
- 「フローで使用する」を選択すると、自動的にクラウドフローの作成画面に遷移します。
- トリガー(例:「新しいメールが届いたとき」など)を設定し、AI Builderのアクションに処理対象のファイル(添付ファイルなど)を渡すよう設定します。
- AIが抽出したデータを後続のアクション(SharePointリストへの項目追加や、Excelへの行追加など)にマッピングして保存します。
この手順により、プログラミングの知識がなくても直感的なUI操作のみで高度な自動化フローを完成させることができます。
カスタムモデルのトレーニングと公開方法
自社独自のフォーマットを持つ帳票や、特定の製品画像の分類などを行いたい場合は、カスタムモデルを作成します。カスタムモデルの構築は、データの準備、タグ付け、トレーニング、公開の4つのステップで進行します。
1. トレーニングデータの準備とアップロード
モデルに学習させるためのサンプルデータを収集します。例えば、独自のドキュメント処理モデルを作成する場合、最低でも5つ以上の同じレイアウトのドキュメント(PDFや画像)を用意し、AI Builderの画面からアップロードします。
2. データのタグ付け(ラベリング)
アップロードしたドキュメントを開き、抽出したい情報(日付、金額、会社名など)をマウスでドラッグして選択し、それぞれにフィールド名を割り当てます。AIが正確に情報を認識できるよう、すべてのサンプルデータに対して一貫したタグ付けを行うことが重要です。
3. モデルのトレーニング
タグ付けが完了したら「トレーニング」ボタンをクリックします。バックグラウンドでAIが学習を開始し、数分から数十分程度で完了します。トレーニング完了後には、モデルの精度(パフォーマンススコア)が表示されるため、実運用に耐えうるかを確認します。
4. モデルの公開とフローへの組み込み
精度に問題がなければ「公開」を選択します。公開されたカスタムモデルは、事前構築済みモデルと同様にPower Automateのフロー内からアクションとして呼び出すことができるようになります。
Power Automate AI Builder導入時の注意点とエラー対処法
AI Builderを安定して運用するためには、いくつかの注意点を把握しておく必要があります。特に、クレジットの消費とデータの品質には気を配る必要があります。
- クレジット消費の監視:AIモデルを実行するたびにクレジットが消費されます。上限に達するとフローが停止してしまうため、Power Platform管理センターで定期的に消費状況をモニタリングしてください。
- 入力データの品質確保:読み取る画像やPDFの解像度が低かったり、文字が潰れていたりすると、AIの抽出精度が著しく低下します。スキャン時の解像度を上げるなど、入力データの品質を担保するルールを設けてください。
- 非対応言語やフォーマットの確認:使用するモデルによっては、日本語に完全対応していない場合や、特定のファイル形式(パスワード付きPDFなど)が読み込めない場合があります。
エラーが発生した場合は、Power Automateの実行履歴から該当のフローを開き、AI Builderアクションの入出力データを確認します。多くの場合、ファイルサイズが制限を超えている、またはサポートされていない形式のファイルを渡していることが原因です。エラーの詳細な仕様については、AI Builderのトラブルシューティングを確認し、適切な例外処理(エラーハンドリング)をフローに組み込むことを推奨します。
Power Automate AI Builderは無料で使えますか
Power Automate AI Builderを完全な無料で使い続けることはできません。ただし、本格的な導入の前に機能を試すことができる無料トライアル期間が用意されています。
- 完全無料で継続利用することはできない
- 30日間の無料トライアルで機能を試用可能
- 本格導入には有償ライセンスとAI Builderクレジットが必要
30日間の無料トライアルを活用する
AI Builderには、30日間の無料トライアル版が提供されています。この期間中は、AIモデルの構築やトレーニング、事前構築済みモデルの利用など、プレミアム機能を含むほとんどの機能を無料で試すことが可能です。自社の業務課題を解決できるかどうか、まずはこのトライアル期間を利用して検証することをおすすめします。
有償ライセンスとAI Builderクレジットの仕組み
無料トライアル終了後にAI Builderを継続して利用する場合は、有償ライセンスの購入が必要です。AI Builderの課金体系は、月額固定のライセンスに加えてAI Builderクレジットという独自の仕組みを採用しています。
AI Builderクレジットとは
AI Builderクレジットとは、AIモデルの実行やトレーニングなどの処理を行う際に消費される単位です。利用するモデルの種類(テキスト認識、感情分析、オブジェクト検出など)や処理するデータ量に応じて、消費されるクレジット数が異なります。
主なライセンスと料金体系
AI Builderを利用するための主なライセンスには、Power Automateのプレミアムライセンスに一定のクレジットが付属するものと、必要に応じてクレジットを追加購入するアドオンがあります。
| ライセンス・アドオンの種類 | 概要とクレジットの扱い |
|---|---|
| Power Automate Premium | ユーザー単位のライセンスです。毎月一定のAI Builderクレジットが自動的に付与されます。 |
| AI Builder キャパシティ アドオン | テナント全体で共有できるクレジットを追加購入するプランです。1ユニット(100万クレジット)単位で購入可能です。 |
最新の料金プランや各モデルごとの正確なクレジット消費量については、Microsoftの公式ドキュメントを必ず確認してください。
AI Builderを利用するためにプログラミングの知識は必要ですか
結論から申し上げますと、Power Automate AI Builderを利用するために高度なプログラミングの知識は必要ありません。
AI Builderは、Microsoftが提供するローコードプラットフォームであるPower Platformの一部として設計されています。そのため、PythonやC#などの専門的なコーディングスキルを持たないビジネスユーザー(市民開発者)であっても、直感的なマウス操作と画面の指示に従うだけで、AIモデルを構築して業務プロセスに組み込むことが可能です。
従来のAI開発とAI Builderの違い
プログラミングを用いてゼロからAIを開発する場合と、AI Builderを利用する場合では、求められるスキルや開発プロセスが大きく異なります。それぞれの違いを以下の表に整理しました。
| 比較項目 | 従来のAI開発 | Power Automate AI Builder |
|---|---|---|
| 必要な知識 | プログラミング言語、機械学習の専門知識、高度な数学的知識 | 業務フローの理解、Power Automateの基本操作 |
| モデルの構築方法 | アルゴリズムの選定とコードの記述によるスクラッチ開発 | 画面上のウィザードに従ったデータアップロードとタグ付け |
| 導入までのスピード | 要件定義から実装、テストまで数ヶ月単位の期間が必要 | 事前構築済みモデルであれば即日、カスタムモデルでも数日で実装可能 |
プログラミング知識の代わりに求められるスキル
コードを書く技術は不要ですが、AI Builderを業務で効果的に活用するためには、システム的な思考や業務の整理能力が求められます。具体的には以下のようなスキルや知識が役立ちます。
- 自動化したい業務プロセスやルールの正確な理解と可視化
- AIモデルに学習させるための適切なサンプルの準備と選定
- Power Automateにおけるトリガーやアクションといったフロー構築の基本概念
AI Builderには、あらかじめ学習が完了している「事前構築済みモデル」が多数用意されており、これらを利用する場合は学習データの準備すら不要です。詳細なモデルの種類やできることについては、MicrosoftのAI Builder公式ドキュメントを参照することで、どのような業務を自動化できるかのヒントを得ることができます。
業務の課題を解決するための論理的な思考力があれば、プログラミング未経験者でも十分にAIの恩恵を受けることができるのが、Power Automate AI Builderの最大の魅力です。
Power Automate AI Builderで読み取れる日本語の精度はどのくらいですか
Power Automate AI Builderのテキスト認識(OCR)やドキュメント処理モデルにおける日本語の読み取り精度は、近年大幅に向上しており、実務で十分に活用できるレベルに達しています。AI Builderの裏側では、Microsoftの強力なAIサービスであるAzure AI Document Intelligenceの技術が利用されており、日本語特有の漢字、ひらがな、カタカナ、アルファベットが混在した文章であっても高精度にデータ抽出を行うことが可能です。
活字(印刷文字)と手書き文字の精度比較
日本語の読み取り精度は、対象となる文字が活字(PC等で作成・印刷された文字)であるか、手書き文字であるかによって大きく異なります。一般的なビジネス文書におけるそれぞれの精度傾向は以下の通りです。
| 文字の種類 | 読み取り精度の傾向 | 実用性と特徴 |
|---|---|---|
| 活字(印刷文字) | 非常に高い | 請求書、レシート、PDFの電子文書など、標準的なフォントで印字されたテキストはほぼ正確に読み取ることが可能です。業務の自動化に直結する高い信頼性を持ちます。 |
| 手書き文字 | 中〜高(文字の丁寧さに依存) | 楷書体で丁寧に書かれた文字であれば高い精度で認識しますが、崩し字や極端な癖字、かすれ、行の歪みがある場合は誤認識が発生しやすくなります。 |
日本語の読み取り精度を低下させる要因と対策
AI Builderは高精度なOCRエンジンを搭載していますが、入力される画像やドキュメントの状態によっては精度が落ちる場合があります。データ抽出の自動化をスムーズに進めるためには、精度低下の要因を理解し、適切な対策を講じることが重要です。
- 解像度が極端に低い、またはカメラのピントがぼけている画像を使用しない
- 文字の上に印鑑が重なっていたり、背景に複雑な模様や濃い網掛けがあるドキュメントを避ける
- 手書き文字を読み取る場合は、指定の枠内に丁寧に記入するよう社内・社外の運用ルールを設ける
- 標準の事前構築済みモデルで精度が不十分な場合は、自社の独自帳票に合わせてカスタムモデルを利用する
特に、日本の商習慣でよく見られる「文字への押印」や「FAX特有のノイズ・かすれ」は、AIが文字の輪郭を正確に捉える妨げとなることが多いです。そのため、AI Builderを導入する際は、読み取りやすい帳票フォーマットへの見直しを併せて検討することで、業務効率化の効果を最大限に引き出すことができます。
AI Builderのカスタムモデルの学習にはどのくらいのデータが必要ですか
Power AutomateのAI Builderでカスタムモデルを作成する際、モデルの種類によって必要となるトレーニングデータの最小要件が異なります。実業務で活用できる精度の高いAIモデルを構築するためには、最低限の要件を満たすだけでなく、可能な限り多くの高品質なデータを用意することが推奨されます。
モデル別の必要データ数と推奨事項
カスタムモデルのトレーニングに必要なデータの目安を以下の表にまとめました。作成したいAIモデルの用途に応じて、適切なサンプル数を用意してください。
| カスタムモデルの種類 | 必要最小データ数 | 推奨されるデータ数とポイント |
|---|---|---|
| ドキュメント処理 | 同じレイアウトのドキュメント5件 | 異なるレイアウトやフォーマットが存在する場合は、各コレクション(レイアウト)ごとに5件以上用意します。 |
| 画像分類 | 各タグ(クラス)につき15枚の画像 | 認識精度を高めるためには、各タグごとに50枚以上の画像を用意することが推奨されます。 |
| 物体検出 | 各オブジェクトにつき15枚の画像 | 検出対象のサイズや角度、背景を変えた画像を50枚以上用意すると精度が大きく向上します。 |
| テキスト分類(カテゴリ分類) | 各カテゴリにつき10件のテキストデータ | 実際の業務で入力される多様な表現や言い回しを含むテキストを数十件以上用意します。 |
| エンティティ抽出 | 最低10件のサンプルデータ | 抽出したい特定の単語やフレーズ(製品名や顧客番号など)が明確にわかる文章を多数用意します。 |
| 予測モデル | 最低50行の履歴データ | 過去の傾向を正確に学習させるため、1,000行以上のデータを準備することが理想的です。 |
学習データを準備する際の重要なポイント
単にデータの数を揃えるだけでなく、AIが正しくパターンを認識できるようにデータの質を高めることが重要です。トレーニングデータを用意する際は、以下のポイントを意識してください。
- 実際の業務環境で発生するデータ(ノイズや手書き文字を含むものなど)を含める
- 画像モデルの場合は、明るさや背景、撮影角度が異なるバリエーションを意図的に用意する
- ドキュメント処理では、スキャン時の傾きや解像度の違いも考慮してサンプルを選ぶ
詳細なデータ要件や学習のベストプラクティスについては、MicrosoftのAI Builder公式ドキュメントを確認することで、より具体的なトレーニング方法を把握できます。モデルの公開後は実際のデータでテストを行い、認識精度が低い場合はサンプルを追加して再トレーニングを行うというサイクルを回すことが運用成功の鍵となります。
Power Automate AI Builderで抽出したデータはどこに保存できますか
Power Automate AI Builderで抽出したデータは、Power Automateが対応している数百種類以上のコネクタを利用することで、社内の業務要件に合わせた様々な場所に保存することができます。Power Automateの標準機能を活用してフローを構築するため、読み取ったデータの転記や蓄積を完全に自動化することが可能です。
Microsoft 365エコシステム内の主な保存先
AI BuilderはMicrosoftのサービスであるため、同じMicrosoft 365環境内のデータベースやクラウドストレージと非常に相性が良く、シームレスに連携できます。代表的な保存先として、以下のようなサービスが業務でよく利用されます。
- SharePoint Onlineのカスタムリストやドキュメントライブラリ
- Dataverse(Power Platformの標準リレーショナルデータベース)
- Excel Online(OneDrive for BusinessやSharePoint上に保存されたファイル)
- SQL Serverなどのリレーショナルデータベース
外部システムやサードパーティ製アプリへの連携保存
Microsoft製品以外の外部サービスであっても、コネクタが用意されていれば抽出したデータを直接保存・登録することができます。APIを独自に開発することなく、社内で既に運用している既存のSaaS製品へデータを直接連携できることが大きな強みです。
- SalesforceやDynamics 365などのCRM(顧客管理システム)
- kintoneやAsanaなどの業務改善・タスク管理プラットフォーム
- Google Workspace(GoogleスプレッドシートやGoogleドライブ)
保存先の比較と選び方
抽出したデータの用途や扱うデータ量によって、最適な保存先は異なります。以下の表を参考に、自社の運用ルールやセキュリティ要件に合った保存先を選択してください。
| 保存先 | 特徴 | 適した用途 |
|---|---|---|
|
SharePoint リスト |
手軽に作成でき、Microsoft 365ユーザーなら追加費用なしで利用しやすい | 部署内での簡易的なデータ共有、問い合わせ履歴の管理 |
| Dataverse | 高度なセキュリティとリレーション管理が可能で、Power Appsとの連携に最適 | 全社規模の基幹データ管理、複雑な業務アプリのバックエンド |
| Excel Online | 使い慣れた表計算形式でデータを扱えるため、現場担当者の学習コストが低い | 小規模なデータ集計、一時的なデータの書き出し |
| 外部SaaS(kintoneなど) | すでに社内で運用しているシステムへ直接データを流し込める | 既存の業務フローや他部署とのシステム統合 |
このように、Power Automate AI Builderで読み取ったテキストや数値などの情報は、用途に応じて柔軟に保存先を指定できます。データの保存先を適切に設計することで、後続のデータ分析や業務アプリケーションでの活用がさらにスムーズになります。
まとめ
この記事では、Power Automate AI Builderの基本概要から活用事例、設定方法までを解説しました。AI Builderを導入することで、専門的なプログラミング知識がなくても、日常の業務プロセスにAIを簡単に組み込むことができます。
今回の重要なポイントは以下の通りです。
- ノーコードでAIを活用でき、事前構築済みモデルとカスタムモデルを用途に応じて使い分けられる
- 請求書のデータ抽出や名刺の自動登録など、手作業の多い定型業務を大幅に効率化できる
- 利用にはプレミアムライセンス等が必要だが、得られる業務時間削減のメリットは非常に大きい
AI Builderは、企業の業務効率化を加速させる強力なツールです。まずは事前構築済みモデルを使った簡単なフロー作成から、ぜひ実際の業務でAIの力を体験してみてください。










