小売業

チェーンストアとは?スーパーマーケットとの違いやチェーンストア理論を解説

今さら聞けないチェーンストアとスーパーマーケットの違い

チェーンストアはどういった経営の形態だろうか」
チェーンストアは本社が直轄し、運営する店舗のことです。

小売店であれば、店舗経営を考えるときにチェーンストアやフランチャイズストアなど、店舗の形態はさまざま存在します。これから小売店で多店舗経営を行いたい方にとっては、チェーンストアやフランチャイズストアの違いなど正確に把握しておく必要があるでしょう。

そこで本記事では、チェーンストアやフランチャイズストアの特徴について説明しつつ、スーパーマーケットとの違いについて説明していきます。
チェーンストアで経営する際のメリット、デメリットを理解し、どういった経営形態をするのか、判断の一助になりますと幸いです。

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チェーンストアとは?チェーンストア理論やメリットを解説

チェーンストアは「全ての店舗を本社が直轄し、運営する店舗」です。直営店やコーポレートチェーンとも呼ばれます。本社はもちろん、展開している店舗も全て自社資本であることが特徴です。チェーンストアは、ディスカウントストアやホームセンター、カー用品店などさまざまな業種で採用されている経営形態です。

例えば、ある人物が起業して店舗を1つ構えたとします。その後、経営が上手く波に乗り、他店舗展開したくなった場合には、自社の負担で店舗を出店し、本社と直接雇用契約を結んだ社員を責任者として据えます。フランチャイズ店との大きな違いはこの点です。

後ほど詳しく紹介しますが、対するフランチャイズ店では、いわゆる店舗の責任者である「店長」は本社の人間ではありません。つまりその店舗で発生した利益の大部分は、本社へは渡りません。

チェーンストア理論とは

チェーンストア理論は本社が戦略や商品開発などを行い、各店舗が本社に従った形で店舗を経営する経営理論です。

チェーンストアは、その名前の通りこの理論に沿って経営されている店舗です。チェーンストア理論にもとづいて展開することで、後述する多くのメリットを得られます。

チェーンストア理論は1960年ごろに日本に伝わったとされています。60年以上経過した現在も用いられており、日本に限らず世界中に浸透している理論です。

★チェーンストア理論について詳しくはこちら:
チェーンストア理論とは?種類や特徴、メリットを紹介

チェーンストアのメリット

チェーンストアにはどのようなメリットがあるのでしょうか。代表的なメリットとしては、以下が挙げられます。

  • 全店舗を統制しやすい
  • 収益を最大化しやすい
  • 状況に応じた戦略、方針の転換がしやすい
  • サービスの品質向上をしやすい
  • 店舗のオペレーションに集中しやすい

本社や本店が全ての店舗を直轄するスタイルのため、統制しやすいことが大きなメリットです。トップの意向を汲んだスタッフが責任者となるため、常に運営状況に目を光らせることができ、直接的な指導も容易です。また、全ての店舗を本社が直接運営しているため、全店舗の収益が組織のものとなります。

複数店舗の展開は、サービス品質にばらつきが生じ、売り上げにも影響する可能性があります。しかし、チェーンストアは本社が制定したマニュアルに沿って経営するため、サービス品質の統一化が可能となり、品質向上につながりやすくなります。

また本社と店舗の業務を切り離すことで、店舗は自店の経営に集中できます。各店舗は店舗オペレーションに集中できることがチェーンストアのメリットです。

こうした経営形態のため、状況に応じた戦略、方針の転換がしやすいのもメリットといえるでしょう。トップから速やかに指示が送られるため、ライバル店の出現やトレンドの変化などに合わせ、柔軟な対応ができます。

チェーンストアのデメリット

チェーンストアのデメリットを見ていきましょう。

  • 新規出店のコストが高くなりやすい
  • 資金繰りの問題によりスピーディな出店が難しい
  • 規模が大きい場合、本社の負担が大きい

新規出店時にコストが高くなりやすい点はデメリットです。人材採用や、土地の取得、店舗の設置などあらゆる費用を自社資本で賄うため、どうしてもコストが高くなります。資本力の低い企業や、起業したばかりで資金調達ができない組織では、資金繰りの悪化を招く恐れもあります。

この資金繰りの問題によりスピーディな出店も難しい傾向にあります。出店が遅れると、進出を予定していた土地をライバル企業が先に押さえてしまうケースも想定されます。

また、全店舗のマネジメントを本社で行う必要があるため、グループの規模が巨大であればあるほど、本社にかかる負担は大きくなるでしょう。運営に関する権限の多くは本社が握っているため、店舗の責任者には裁量がほとんどありません。必然的にマネジメントを本社スタッフが担当するため、担当者への負担や手間の増加が考えられます。

チェーンストアの仕組み

チェーンストアの仕組み

チェーンストアの仕組みは以下に分けられます。

  • 本部
  • 店舗

チェーンストアを経営する本部は、各店舗の中央管理業務を行う機関です。中央管理業務の例として以下があります。

  • 店舗の運営方針の決定
  • 商品仕入れの基準制定
  • マーケティング戦略の策定
  • スタッフ教育法の整備
  • 設備や管理システムの開発

上記を本部が定めることで、各店舗は沿う形で店舗の経営に集中できます。一方で、店舗は店を経営する機関であり、顧客に接することで利益を上げることがメインの業務です。

例として、店舗が集めた売り上げや、発注のデータを本部が収集します。本部は全店舗のデータを集約して分析にあたる必要があります。分析を店舗のみで行うと分析するための母数が少ないことや、そもそも分析に時間をかけられないといった問題点が出てくるでしょう。

チェーンストアの仕組みで経営することで、本部と店舗がそれぞれの業務に集中し、成果をあげやすくなります。

チェーンストアには3つの種類がある

チェーンストアには3つの種類がある

チェーンストアは展開方法によって呼び方を分けることが可能です。チェーンストアには以下3つの種類(展開パターン)があります。

  • ローカルチェーン
  • リージョナルチェーン
  • ナショナルチェーン

ローカルチェーン|1つの地域に11店舗以上展開

ローカルチェーンは1つの地域に11店舗以上を展開するチェーンストアの展開パターンです。

ローカルチェーンは、後述する2つのパターンと比較すると規模が小さいです。しかし、地域密着型であるために、地域でのブランド力向上や特性に特化したサービスを提供しやすいメリットがあります。また規模が小さいため、経営コストが低く済むことや、意思決定の柔軟性を確保しやすいこともメリットです。

ローカルチェーンは地域に愛され、地域住民との信頼関係を築きやすいチェーンストアの展開パターンといえます。

リージョナルチェーン|2つ以上の地域に店舗を展開

リージョナルチェーンは2つ以上の地域に店舗を展開するチェーンストアの展開パターンです。

ローカルチェーンと比較するとより広範囲であるため、地域ごとに合わせたマーケティング戦略を策定できます。共通する部分もあれば、地域に即した部分もあるため、効率的なマーケティングが可能です。リージョナルチェーンはローカルチェーンよりも規模が大きいことが一般的です。規模の分、売り上げが大きくなりやすいメリットがあります。

ローカルチェーンとして1つの地域での立場が確立したら、次の地域に展開しリージョナルチェーンとして展開するのがよいでしょう。

ナショナルチェーン|2つ以上のリージョナルチェーンを全国に展開

ナショナルチェーンは2つ以上のリージョナルチェーンを全国的に展開する展開パターンです。

ナショナルチェーンの場合、全国的な展開をしているため国内最大級レベルのチェーンストアとなります。また信頼している顧客が多く、ブランド力も高まっているでしょう。そこから新たな顧客の獲得も期待できます。

一方でデメリットはコストです。規模が大きい分、必要なコストも大きくなります。安定した経営体制を築けるように、地域ごと、店舗ごとの統率が取れていることが望ましいです。

1つのリージョナルチェーンとして立場が確立したら、新たな展開をしていくことで、ナショナルチェーンになります。

チェーンストアの経営形態

チェーンストアの経営形態

チェーンストアの経営形態として以下のパターンがあります。

  • CC(コーポレートチェーン)
  • FC(フランチャイズチェーン)
  • VC(ボランタリーチェーン)

CC(コーポレートチェーン)

CC(コーポレートチェーン)は、本部となる企業が直接資金を投入して各店舗を経営する形態です。レギュラーチェーン、直営店と呼ばれることもあります。

コーポレートチェーンの場合は、本部と店舗が同じ企業です。業務マニュアルや方針を本部が決め、店舗はそれに沿う形で運営されます。

コーポレートチェーンでは、各店舗の売上が全て企業の利益となることがメリットです。しかし、デメリットとして本部の資金繰りが苦しくなると、各店舗も同様に苦しくなってしまうことが挙げられます。

FC(フランチャイズチェーン)

FC(フランチャイズチェーン)も、さまざまなジャンルの業界で採用されている運営手法の1つです。本部である事業者(フランチャイザー)が加盟店を募集し、加盟した人や法人(フランチャイジー)は本部の看板や知名度を活用して店舗の経営ができます。

コーポレートチェーンの場合、人や店舗、設備も全て自社資本で賄いますが、フランチャイズストアはその点が大きく異なります。

フランチャイズチェーンでは、加盟した事業者と本部に雇用関係はなく、あくまで加盟契約により成り立つ関係性です。すなわち、加盟店の従業員は本部企業の社員ではありません。加盟店は本部の看板を使用できる権利を得られる他、ノウハウも使用できますが、対価としてロイヤリティを支払う必要があります。ロイヤリティの額は、各企業によって異なりますが一般的に毎月の売上に応じて3~5%が一般的です。

VC(ボランタリーチェーン)

VC(ボランタリーチェーン)は独立している各店舗が1つにまとまり、一緒に経営する形態です。

独立している店舗(個人店)の場合、基本的にチェーン店としてのメリットを受けられません。例えば、大量発注による割引や、業務のヘルプの出し合いなどがあります。しかし、ボランタリーチェーンとして経営することで、個人店でもこれらのメリットを受けながら運営できます。

VCの特徴に、各店舗が1つにまとまって本部を構成することが挙げられます。この特徴により、各店舗と本部の力関係がフラットになり、店舗の経営は店舗責任者に委ねられるのです。

チェーンストアの例

チェーンストアの例

チェーンストアとして経営することで多くのメリットが得られるため、多くの企業がチェーンストア理論にもとづいて運営しています。当項ではチェーンストアの例を紹介します。

  • 展開パターン
    • ローカルチェーン
      • ツルヤ(長野県)
    • リージョナルチェーン
      • コノミヤ(大阪府)
    • ナショナルチェーン
      • セブンイレブン
  • 経営形態
    • CC(コーポレートチェーン)
      • イオン、ユニクロ
    • FC(フランチャイズチェーン)
      • セブンイレブン、ファミリーマート
    • VC(ボランタリーチェーン)
      • Kマート

フランチャイズチェーンはスピーディな店舗展開が可能なため、短期間で店舗数を拡大できるメリットがあります。自社で土地や物件探し、資金調達などをしなくて済むため、加盟してくれる事業者さえ見つければ短期間で事業の規模拡大が可能です。(本部が物件探しを行うケースもあります)

また、コーポレートチェーンは設備から人にいたるまで全て自社の資本で賄うのが基本でした。しかし、フランチャイズチェーンでは出店に伴う費用のほとんどを、加盟店が賄います。本部が資金調達のサポートを行うケースは多いですが、あくまで出店に伴う費用は加盟店が負担します。

さらに、フランチャイズチェーンは店舗毎の運営も大部分は加盟した事業者に任せられるため、本部の負担を大幅に軽減することが可能です。本部の定めた方針に則った運営が求められますが、加盟店には裁量を与えてあるため、集客や利益拡大の手法について本部が頭を悩ませることが少ないでしょう。

フランチャイズストアのデメリット

フランチャイズチェーンのデメリットを紹介しましょう。

  • 全体の統制をしにくくなる
  • 本部にはロイヤリティのみしか入らない

フランチャイズチェーンのデメリットとしては全体の統制をしにくくなることが挙げられるでしょう。店舗の運営権は加盟店にあるため、実態が不透明になる傾向もあります。加盟店が本部の意向に沿わないコンセプトを掲げて営業するといったことすら考えられます。

収益面では、コーポレートチェーンは全店舗の売上を本部の収益とできますが、フランチャイズでは、本部に入る利益はロイヤリティだけです。店舗の売上や収益は、あくまで加盟店のものです。

そのため、店舗毎の売上から得られる利益の割合はコーポレートチェーンよりも少なくなります。当然、店舗数が同じであればコーポレートチェーンの方が収益は最大化できます。しかし、前述の通りコーポレートチェーン方式で店舗数を増やすのは困難です。

こうした理由により、店舗数を優先するフランチャイズチェーンと、店舗毎の収益を優先するコーポーレートチェーンのどちらが優れているかを一概に判断することはできないのです。

また、フランチャイズチェーンは加盟店が何らかのトラブルを起こすと、全体のブランドイメージに影響をおよぼす恐れがあります。例えば、加盟店のオーナーや従業員が不祥事を起こした場合、グループ全体のブランドイメージが低下し、本部の信用失墜にもなりかねません。

特に昨今はSNSを使ってアルバイト店員などが不適切な言動をしたり、動画をアップロードしたりすることで問題になる事例も多く発生しています。このようなSNS上の情報は、伝わる速度も速いため注意が必要です。

チェーンストアとフランチャイズストア・スーパーマーケットの違い

チェーンストアとフランチャイズストア・スーパーマーケットの違い

よくある疑問として「チェーンストア、フランチャイズストア、スーパーマーケットはどのように違うのか」があります。

フランチャイズストアはチェーンストアの1つの経営形態です。

チェーンストアとスーパーマーケットはそもそもジャンルが異なります。チェーンストアは経営形態、理論の呼び方であるのに対し、スーパーマーケットは小売店の業態の一種です。

スーパーマーケットは扱う商品によってさまざまな種類があります。例として、多くの方が思い浮かべる食品スーパーマーケットの定義は以下のとおりです。

  • 取扱商品の70%以上が食料品
  • 売り場面積が250平方メートル以上
  • セルフサービス方式で展開されている

参考:経済産業省「業態別の特徴 」より
スーパーマーケットをチェーンストアとして展開する企業も多くあります。スーパーマーケットとチェーンストアは別ジャンルの定義だと考えておきましょう。

つまりスーパーマーケットであっても多店舗展開するのであれば、チェーンストア・フランチャイズのどちらも選択できます。そのためまずは、ここで解説したように、チェーンストアとフランチャイズ、それぞれの特徴をきちんと把握し、自社の目指すところを明確にすることが大切です。その上で、事業拡大の方向性を考えれば成功へ近づくでしょう。

まとめ

チェーンストアには以下の展開パターンがあります。

  • ローカルチェーン
  • リージョナルチェーン
  • ナショナルチェーン

またチェーンストアの経営形態は以下の種類があります。

  • CC(コーポレートチェーン)
  • FC(フランチャイズチェーン)
  • VC(ボランタリーチェーン)

コーポレートチェーンは本社が直接各店舗の運営を行い、フランチャイズチェーンは契約を交わした加盟店に店舗運営を任せる店舗運営方式です。スーパーマーケットの多店舗展開を考えているのであれば、まずそれぞれの特徴を理解しましょう。

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