AWS

【入門】Amazon SageMakerとは?できること・料金・使い方を初心者向けに徹底解説

【入門】Amazon SageMakerとは?できること・料金・使い方を初心者向けに徹底解説

「機械学習プロジェクトを始めたいが、環境構築やモデル管理が複雑でどこから手をつければいいかわからない」「AI開発の効率をもっと上げたい」といった悩みを抱えていませんか?その解決策となるのが、AWSが提供する統合機械学習サービス「Amazon SageMaker」です。Amazon SageMakerは、データの準備からモデルの構築、トレーニング、デプロイ、管理まで、機械学習のワークフロー全体を効率化するためのあらゆる機能を提供します。これにより、開発者はインフラ管理の負担から解放され、本来注力すべきモデル開発に集中できます。

本記事では、Amazon SageMakerとは何かという基本から、具体的な機能、料金体系、さらには初心者向けの基本的な使い方まで、網羅的に解説します。この記事を最後まで読めば、Amazon SageMakerの全体像を掴み、自社のビジネス課題解決に向けて第一歩を踏み出せるようになるでしょう。

この記事で分かること

  • Amazon SageMakerの基本概念と機械学習開発における役割
  • データの準備からモデルのデプロイまで、SageMakerで実現できること
  • メリット・デメリットと、コストを抑えるための料金体系のポイント
  • 初心者でも安心な、SageMaker Studioを使った基本的な使い方と手順
  • 製造業や金融業など、実際のビジネスにおける具体的な活用事例

結論として、Amazon SageMakerは機械学習開発のハードルを劇的に下げ、データサイエンティストからアプリケーション開発者まで、あらゆるユーザーが迅速にAI/MLの価値をビジネスに活用できるようにする極めて強力なプラットフォームです。

Amazon SageMakerとは 機械学習開発を加速させるAWSの統合サービス

Amazon SageMaker(アマゾン セージメーカー)とは、Amazon Web Services(AWS)が提供する、機械学習(ML)モデルの構築、トレーニング、デプロイを迅速かつ容易にするためのフルマネージド型サービスです。 データサイエンティストや開発者が、機械学習の複雑なワークフローの各ステップを一貫して実行できる、ウェブベースの統合開発環境(IDE)「Amazon SageMaker Studio」を中心に構成されています。

従来、機械学習モデルを開発するには、データの準備から始まり、アルゴリズムの選定、大規模な計算リソースを要するモデルのトレーニング、そして本番環境へのデプロイと、多岐にわたる専門知識と煩雑な作業が必要でした。 Amazon SageMakerは、これらのプロセスを効率化するためのツール群を一つのプラットフォームに集約することで、開発者がインフラの管理に煩わされることなく、モデル開発そのものに集中できる環境を提供します。 これにより、アイデアの着想からビジネス価値の創出までのサイクルを大幅に短縮することが可能になります。

機械学習のプロセスをエンドツーエンドでサポート

Amazon SageMakerの最大の特徴は、機械学習における一連のプロセス、すなわち「データの準備」「モデルの構築とトレーニング」「モデルのデプロイと推論」というワークフロー全体をエンドツーENDで網羅的にサポートしている点です。 これにより、各フェーズで異なるツールを使い分ける必要がなくなり、開発プロセス全体がシームレスに連携します。具体的には、以下の表のように各プロセスに対応した機能が提供されています。

機械学習プロセス 主なAmazon SageMakerの機能・サービス 概要
データの準備 SageMaker Data Wrangler, SageMaker Ground Truthなど データの収集、クレンジング、前処理、ラベリングといった、モデルの品質を左右する重要な準備作業を効率化します。
モデルの構築・トレーニング SageMaker Studio Notebooks, SageMaker Autopilot, SageMaker JumpStartなど Jupyter Notebook環境での柔軟なモデル開発から、コーディング不要の自動モデル生成(AutoML)、事前学習済みモデルの活用まで、幅広いニーズに対応します。
モデルのデプロイ・推論・管理 SageMaker Endpoints, SageMaker Model Monitorなど トレーニング済みのモデルをワンクリックで本番環境にデプロイし、リアルタイム推論やバッチ推論を実現します。 デプロイ後のモデルのパフォーマンス監視も可能です。

このように、SageMakerは機械学習プロジェクトのライフサイクル全体をカバーすることで、MLOps(機械学習の運用)の実現を強力に支援します。

初心者からプロまで対応する幅広い機能群

Amazon SageMakerは、利用者のスキルレベルを問わず、誰もが機械学習の恩恵を受けられるように設計されています。機械学習の専門知識が深くない初心者から、日々高度なモデル開発に取り組むデータサイエンティストや研究者まで、それぞれのニーズに応える多様な機能を提供している点が大きな魅力です。

例えば、プログラミング経験が少ない方や、迅速にモデルのプロトタイプを作成したい場合には、GUIベースの操作でデータの準備ができる「Data Wrangler」や、データセットを指定するだけで自動的に最適なモデルを構築・調整してくれる「SageMaker Autopilot」が非常に有効です。 また、「SageMaker JumpStart」を利用すれば、Amazonの公式ドキュメントで紹介されているような、事前学習済みの基盤モデルや一般的な課題に対応するソリューションを数クリックで試すことができます。

一方で、専門家は「SageMaker Studio Notebooks」というJupyter Notebookベースの環境で、Pythonなどの使い慣れた言語とTensorFlowやPyTorchといった主要なフレームワークを用いて、独自のアルゴリズムを実装し、モデルの細部にわたるまでフルコントロールすることが可能です。 さらに、大規模なデータセットに対応するための分散トレーニングや、ハイパーパラメータの自動最適化など、高度な要求に応える機能も充実しています。このように、SageMakerはユーザーの習熟度に応じて最適なツールを選択できる柔軟性を備えています。

Amazon SageMakerでできること一覧

Amazon SageMakerは、機械学習のワークフロー全体を網羅する非常に多機能なサービスです。データサイエンティストや開発者は、それぞれのフェーズで最適なツールを選択し、開発プロセスを大幅に加速させることができます。ここでは、SageMakerが提供する主要な機能を「データの準備と前処理」「モデルの構築とトレーニング」「モデルのデプロイと推論」の3つのステップに分けて、具体的に何ができるのかを詳しく見ていきましょう。

データの準備と前処理

機械学習プロジェクトの成功は、元となるデータの品質に大きく依存します。不正確なデータや偏りのあるデータを使用してモデルをトレーニングすると、予測精度が著しく低下する可能性があります。Amazon SageMakerは、この重要でありながら時間のかかるデータ準備プロセスを効率化し、高品質なデータセットを作成するための強力な機能を提供します。

Amazon SageMaker Data Wrangler

Amazon SageMaker Data Wranglerは、データのインポート、クレンジング、探索、特徴量エンジニアリングといった一連のデータ準備作業を、コードをほとんど、あるいはまったく記述することなく実行できるサービスです。単一のビジュアルインターフェイス上で直感的に操作できるため、データ準備にかかる時間を数週間から数分に短縮することが可能です。

  • 多様なデータソースへの接続: Amazon S3、Amazon Redshift、Amazon Athena、Snowflakeなど、40以上の組み込み済みソースから簡単にデータをインポートできます。
  • データ品質の自動分析: データの品質とインサイトを自動的に検証し、潜在的な問題(欠損値、不均衡なデータなど)を特定して修正案を提示します。
  • 豊富な組み込み変換機能: 300を超える組み込みのデータ変換機能を利用して、欠損値の処理、カテゴリカルデータのエンコーディング、特徴量のスケーリングなどを数クリックで実行できます。
  • リアルタイムでのプレビューと検証: 加えた変換処理がデータにどのような影響を与えるかをリアルタイムでプレビューし、意図した通りの前処理が行えているかを確認できます。

作成したデータ準備のワークフローは、SageMakerのトレーニングジョブや推論パイプラインの一部として再利用・自動化することもできます。詳細な機能については、AWS公式のAmazon SageMaker Data Wranglerのページもご参照ください。

Amazon SageMaker Ground Truth

Amazon SageMaker Ground Truthは、機械学習モデルのトレーニングに不可欠な、高品質なラベル付きデータセット(教師データ)を効率的に作成するためのマネージドサービスです。画像、動画、テキスト、3D点群データなど、さまざまなデータタイプに対応したラベリング(アノテーション)作業をサポートします。

Ground Truthの大きな特徴は、ラベリング作業の効率を最大化するための仕組みにあります。

  1. 柔軟なワークフォース選択: ラベリング作業を行う担当者(ワーカー)を、Amazon Mechanical Turkの公開クラウドソース、自社内のプライベートチーム、またはAWS Marketplaceで認定されたサードパーティベンダーから柔軟に選択できます。
  2. 自動データラベリング機能: まず少量のデータセットを手動でラベリングすると、その結果を基にGround Truthがラベリングモデルを学習します。その後、残りの大量のデータに対して自動でラベリングを行い、信頼度が低いと判断されたデータのみを人間にレビューさせることで、コストと時間を最大70%削減することが可能です。
  3. 組み込みのワークフローとインターフェイス: 物体検出のためのバウンディングボックス作成や、セマンティックセグメンテーションなど、一般的なタスク向けのワークフローと直感的なUIが事前に用意されており、迅速にラベリングプロジェクトを開始できます。

機械学習モデルの構築とトレーニング

高品質なトレーニングデータの準備が完了したら、次はいよいよ機械学習モデルの構築とトレーニングのフェーズです。Amazon SageMakerは、初心者からエキスパートまで、あらゆるスキルレベルのユーザーに対応する多様なツールとアプローチを提供しており、アイデアを迅速にモデルへと昇華させることができます。

Amazon SageMaker Studio Notebooks

Amazon SageMaker Studio Notebooksは、広く使われているJupyter Notebookをベースにした、機械学習開発のための初の完全統合開発環境(IDE)です。データの探索からモデルのトレーニング、デバッグ、モニタリングまで、開発ライフサイクルのすべてのステップを単一のインターフェイス内で実行できます。

従来のノートブック環境と比較して、以下のような強力な機能を備えています。

  • コンピューティングリソースの動的変更: コーディングの途中で、CPUインスタンスからGPUインスタンスへといったコンピューティングリソースの切り替えを、作業を中断することなく数クリックで行えます。
  • 簡単な共有機能: ノートブック全体のスナップショットを数秒で作成し、同僚と簡単に共有できます。受け取った側は、すべての依存関係を含めて同じ環境を再現し、すぐに作業を再開できます。
  • AWSサービスとの統合: AWS Step Functionsと連携してノートブック全体を自動化されたワークフローに変換したり、SparkやDaskなどのビッグデータ処理フレームワークとシームレスに連携したりすることが可能です。

Amazon SageMaker Autopilot

Amazon SageMaker Autopilotは、表形式のデータセットを指定するだけで、最適な機械学習モデルを自動的に構築、トレーニング、チューニングしてくれるAutoML機能です。回帰、二項分類、多クラス分類といった一般的な問題に対して、専門知識がなくても高精度なモデルを作成できます。

Autopilotは、単にモデルを生成するだけでなく、プロセスの完全な可視性とコントロールを提供します。データの前処理方法、試行されたアルゴリズム、各モデルの評価指標などをすべて確認できるリーダーボードが生成されます。さらに、最もパフォーマンスの良かったモデルについては、そのモデルを生成したデータ前処理コードとPythonコードを含むノートブックが自動生成されるため、専門家が後からカスタマイズしたり、プロセスの詳細を理解したりすることも容易です。

Amazon SageMaker JumpStart

Amazon SageMaker JumpStartは、機械学習のジャーニーを加速させるためのハブとして機能します。数百もの事前トレーニング済みモデルや、一般的なビジネス課題に対応する構築済みのソリューションにワンクリックでアクセスできます。

例えば、次のようなタスクを迅速に開始できます。

  • 基盤モデルの活用: テキスト生成、要約、画像生成などを行う最先端の基盤モデル(Foundation Model)を探索し、独自のデータでファインチューニングしてデプロイできます。
  • 一般的な問題解決: 需要予測、不正検知、チャーン予測(顧客離反予測)といった一般的なビジネス課題に対応するソリューションテンプレートを利用し、自社のユースケースに合わせてカスタマイズできます。
  • サンプルノートブックの利用: さまざまなアルゴリズムや機能の使い方を学べるサンプルノートブックが豊富に用意されており、実践的な学習をサポートします。

JumpStartを活用することで、ゼロからモデルを構築する時間と労力を大幅に削減し、価値創出までの時間を短縮できます。JumpStartで利用可能なモデルやソリューションについては、AWS公式のAmazon SageMaker JumpStartのページで確認できます。

モデルのデプロイと推論

トレーニングが完了したモデルは、実際にアプリケーションから利用できるように「デプロイ」する必要があります。Amazon SageMakerは、レイテンシー、コスト、スケーラビリティといった様々な要件に合わせて、柔軟なデプロイオプションを提供しており、本番環境へのモデルの展開を簡素化します。

リアルタイム推論とバッチ推論

推論(モデルを使って予測を行うこと)の実行方法には、大きく分けて「リアルタイム推論」と「バッチ推論」の2つの主要なパターンがあります。SageMakerはどちらのシナリオにも最適化された機能を提供しています。

特徴 リアルタイム推論 バッチ推論(バッチ変換)
主なユースケース オンラインでの不正検知、製品レコメンデーション、ダイナミックプライシングなど、即時の応答が求められるアプリケーション。 日次での売上予測、顧客セグメンテーション、大規模な画像データセットへのタグ付けなど、大量のデータを一括処理するタスク。
レイテンシー ミリ秒単位の低レイテンシー。 分から時間単位。即時性は求められない。
エンドポイント 常に稼働している永続的なHTTPSエンドポイント。 ジョブ実行時にコンピューティングリソースを起動し、完了後にシャットダウンする。
コストモデル インスタンスが稼働している時間に対して課金される。 ジョブの実行時間(処理にかかった時間)に対して課金される。

サーバーレス推論

Amazon SageMaker Serverless Inferenceは、トラフィックが断続的であったり、予測が困難なワークロードに最適な新しいデプロイオプションです。トラフィックの量に応じてコンピューティングリソースを自動的に起動、スケール、シャットダウンしてくれるため、インフラストラクチャの管理について一切気にする必要がありません。

このオプションの最大のメリットは、コスト効率の高さにあります。推論リクエストがないアイドル時間には料金が発生せず、実際に処理を実行した時間と処理したデータ量に対してのみ課金されます。これにより、常にインスタンスを起動しておくリアルタイム推論に比べて、トラフィックの少ないアプリケーションのコストを大幅に削減することが可能です。

Amazon SageMakerの主なメリットとデメリット

Amazon SageMakerは、機械学習のプロセスをエンドツーエンドでサポートする強力な統合サービスですが、導入を検討する際にはそのメリットとデメリットを正確に理解しておくことが不可欠です。自社のプロジェクト要件やチームのスキルセットと照らし合わせ、最適な選択を行いましょう。

メリット 開発効率の大幅な向上

Amazon SageMaker最大のメリットは、機械学習ワークフロー全体を単一のプラットフォームで完結させられる点にあります。 これにより、開発プロセスが大幅に効率化され、開発者はモデルの精度向上という本質的な業務に集中できます。

従来、機械学習モデルの開発では、データの準備、モデルの構築、トレーニング、デプロイ、そして本番環境でのモニタリングといった各フェーズで、異なるツールや環境を使い分ける必要がありました。このツールの乱立は、環境構築の複雑化やデータの受け渡しにおける非効率性を生む一因となっていました。

SageMakerは、これらの課題を解決するために設計された統合開発環境(IDE)「SageMaker Studio」を提供しています。 具体的には、以下のような機能群によって開発効率を高めます。

  • データの準備・前処理: SageMaker Data WranglerのようなGUIツールを使い、コーディングを最小限に抑えながらデータのクレンジングや特徴量エンジニアリングを視覚的に実行できます。
  • モデルの構築・トレーニング: 使い慣れたJupyter Notebook環境が提供されるほか、AutoML機能であるSageMaker Autopilotを使えば、データから最適なモデルを自動で生成することも可能です。
  • デプロイと管理: トレーニング済みのモデルは、数クリックで本番環境へデプロイできます。その後のモデルのパフォーマンス監視や再学習のパイプライン構築もSageMaker内で完結します。

さらに、フルマネージドサービスであるため、サーバーのプロビジョニングや管理、障害対応といったインフラ運用をAWSに任せることができます。 これにより、インフラ管理のコストと時間を大幅に削減できる点も大きなメリットです。

メリット スケーラビリティと柔軟性

機械学習、特にディープラーニングのモデルをトレーニングする際には、膨大な計算リソースが必要となります。Amazon SageMakerは、AWSの巨大なインフラを背景に、プロジェクトの規模に応じて計算リソースを柔軟に拡張(スケールアウト)できる強力なスケーラビリティを備えています。

例えば、プロトタイピング段階では小規模なCPUインスタンスを利用し、本格的なトレーニングに移行する際には、最新の高性能GPUインスタンスを複数台、並列で利用するといった柔軟な対応が可能です。トレーニングジョブが終了すればインスタンスは自動的に停止されるため、リソースを無駄にすることがありません。 この従量課金制は、初期投資を抑えたい場合にも大きな利点となります。

また、モデルをデプロイする際の柔軟性も魅力の一つです。SageMakerでは、ユースケースに応じて最適な推論環境を選択できます。

推論タイプ 特徴 主な用途
リアルタイム推論 常時稼働するエンドポイントを用意し、低レイテンシーでの推論を実現します。 Webサイトのレコメンデーション、金融取引の不正検知など、即時性が求められるアプリケーション。
バッチ推論(バッチ変換) 大量のデータに対して、一度にまとめて推論処理を実行します。 夜間のデータ分析、大量の画像データに対する一括でのタグ付けなど。
サーバーレス推論 トラフィックが断続的または予測不能な場合に適しており、リクエストに応じて自動でコンピューティングリソースを起動・停止します。 使用頻度の低いAPI、チャットボットなど。

このように、Application Auto Scalingと連携してトラフィックに応じてインスタンス数を自動で調整する機能も備わっており、コスト効率とパフォーマンスを両立させることが可能です。

デメリット 学習コストと専門知識の必要性

Amazon SageMakerは非常に多機能で強力なサービスである反面、その機能を最大限に活用するためには、AWSと機械学習の両方に関する一定レベルの知識と経験が求められます。これが、特に初心者にとっては高いハードルとなる可能性があります。

SageMakerを効果的に利用するには、以下のような専門知識が必要になる場面があります。

  1. AWSの基礎知識: SageMakerは、データストレージのAmazon S3、ID管理のIAM、ネットワーク設定のVPCなど、他の多くのAWSサービスと密接に連携します。これらのサービスに関する基本的な理解がなければ、適切な環境構築や権限設定、トラブルシューティングが困難になります。
  2. 機械学習の専門知識: SageMaker AutopilotやCanvasのようなノーコード・ローコード機能も提供されていますが、より高度なモデル開発やカスタマイズ、パフォーマンスチューニングを行うには、機械学習アルゴリズムやハイパーパラメータの役割、モデル評価指標などに関する深い理解が不可欠です。
  3. コスト管理の知識: SageMakerは従量課金制であり、利用した分だけ料金が発生します。 これはメリットである一方、トレーニングジョブや推論エンドポイントのインスタンスを停止し忘れると、意図せず高額な請求が発生するリスクも伴います。各機能がどのインスタンスタイプで、どのくらいの時間稼働しているかを正確に把握し、コストを最適化するための知識と注意が必要です。

これらの学習には相応の時間がかかるため、導入の際にはチームメンバーのスキルセットを評価し、必要に応じてトレーニングの機会を設けるなどの準備が重要になります。AWSが提供する豊富なドキュメントやチュートリアル、各種トレーニングプログラムを活用することが、スムーズな導入の鍵となるでしょう。

Amazon SageMakerの料金体系をわかりやすく解説

Amazon SageMakerは、機械学習の各プロセスで利用した分だけ料金を支払う従量課金制を採用しています。初期費用や最低利用料金は不要ですが、どのサービスでどれくらいの料金が発生するのかを事前に把握しておくことが重要です。この章では、SageMakerの複雑な料金体系を、初心者にも分かりやすく解説します。

オンデマンド料金とSavings Plans

SageMakerの支払い方法には、基本となる「オンデマンド料金」と、長期利用で割引が適用される「Savings Plans」の2種類があります。

オンデマンド料金

オンデマンド料金は、事前の契約やコミットメントなしに、コンピューティングインスタンスやストレージなどのリソースを使用した分だけ秒単位または時間単位で支払う、最も基本的な料金モデルです。 料金は、利用する機能やインスタンスのタイプ、リージョンによって異なります。 主な課金対象となるコンポーネントは以下の通りです。

コンポーネント 課金対象
データの準備 (Data Wranglerなど) インスタンスの利用時間
モデルの構築 (Studio Notebooksなど) コンピューティングインスタンスの利用時間とストレージボリューム
モデルのトレーニング トレーニングジョブに利用したインスタンスの種類と実行時間
モデルのデプロイ (推論) モデルをホストするインスタンスの種類とエンドポイントの稼働時間

例えば、ノートブックインスタンスや推論エンドポイントは、実際にコードを実行したり推論リクエストを処理したりしていない時間でも、インスタンスが起動している限り料金が発生し続けるため注意が必要です。

SageMaker Savings Plans

SageMaker Savings Plansは、1年間または3年間の一定の利用量(USD/時間で計測)をコミットすることで、オンデマンド料金と比較して最大64%もの大幅な割引を受けられる料金モデルです。 継続的にSageMakerを利用する予定があり、ある程度の利用量が見込める場合に最適なプランです。機械学習プロジェクトの進行に合わせてインスタンスファミリーやリージョンを変更した場合でも、割引は自動的に適用されるため、柔軟性を保ちながらコストを削減できます。

無料利用枠でAmazon SageMakerを試す

AWSには「無料利用枠」が用意されており、Amazon SageMakerもその対象となっています。 これからSageMakerを学びたい方や、新しい機能を試したい方にとって非常に有用な制度です。無料利用枠は、AWSアカウントを作成してから最初の2ヶ月間など、サービスごとに期間や上限が定められています。

以下は、無料利用枠の対象となる主なSageMakerの機能と月々の上限です(内容は変更される可能性があるため、利用前にAmazon SageMaker の料金ページで最新情報をご確認ください)。

サービス 月々の無料利用枠
SageMaker Studio Notebooks ml.t3.mediumインスタンスで250時間
SageMaker Data Wrangler ml.m5.4xlargeインスタンスで100時間
モデルのトレーニング ml.m4.xlargeまたはml.m5.xlargeインスタンスで50時間
リアルタイム推論 ml.t2.mediumまたはml.t3.mediumインスタンスで125時間

重要な注意点として、この無料利用枠で定められた上限を超過した分については、自動的にオンデマンド料金が請求されます。 利用状況はAWSの請求ダッシュボードで常に確認するようにしましょう。

料金を抑えるためのポイント

SageMakerは強力なサービスですが、使い方によってはコストが想定以上にかさむ可能性があります。ここでは、料金を賢く抑えるための具体的なポイントをいくつか紹介します。

  • 不要なリソースをこまめに停止する
    最も簡単で効果的なコスト削減策です。特に、ノートブックインスタンスや推論エンドポイントは、使用していない時間も起動しているだけで課金対象となります。作業が終了したら必ず停止または削除する習慣をつけましょう。
  • 適切なインスタンスタイプを選択する
    タスクの要件に対してオーバースペックなインスタンスを選択すると、無駄なコストが発生します。 データの前処理、モデルのトレーニング、推論など、それぞれの目的に応じてCPU、GPU、メモリのバランスが取れた最適なインスタンスを選択することが重要です。
  • スポットインスタンスをトレーニングに活用する
    緊急性の低い大規模なモデルトレーニングには、「マネージドスポットトレーニング」の利用が非常に有効です。 これは、AWSの余剰コンピューティング能力をオンデマンド料金の最大90%割引で利用できる仕組みです。処理が中断される可能性はありますが、SageMakerがチェックポイントから自動で再開してくれるため、コストを劇的に削減できます。
  • 推論ワークロードを最適化する
    トラフィックのパターンに応じて、リアルタイム推論、サーバーレス推論、非同期推論、バッチ変換といった複数の推論オプションを使い分けることで、コストを最適化できます。 例えば、トラフィックが断続的で予測不能な場合は、リクエストがあったときだけ課金されるサーバーレス推論が適しています。
  • AWS Cost Explorerでコストを監視する
    AWSが提供する「Cost Explorer」を利用して、SageMakerの利用料金を定期的に監視・分析しましょう。どのコンポーネントでコストが発生しているかを可視化することで、具体的な削減策を立てやすくなります。

初心者向け Amazon SageMakerの基本的な使い方

この章では、実際にAmazon SageMakerを使い始めるための基本的な手順を、初心者の方にも分かりやすく4つのステップに分けて解説します。専門的な知識がなくても、この手順に沿って進めることで、機械学習モデル開発の第一歩を踏み出すことができます。

ステップ1 AWSアカウントの作成と設定

Amazon SageMakerを利用するには、まず土台となるAWS(Amazon Web Services)のアカウントが必要です。すでにお持ちの方は、このステップを読み飛ばしていただいて問題ありません。

AWSアカウントは、AWSの公式サイトから作成できます。 画面の指示に従い、必要な情報を入力していきましょう。アカウント作成には以下の情報が必要となるため、事前に準備しておくとスムーズです。

項目 説明
メールアドレス AWSからの通知を受け取るためのアドレスです。
パスワード AWSアカウントにサインインするためのパスワードです。
クレジットカード情報 本人確認と、無料利用枠を超えた分の料金支払いに使用します。
電話番号 SMSまたは音声通話による本人確認に使用します。

アカウント作成後、セキュリティを強化するためにIAM(Identity and Access Management)ユーザーを作成することを強く推奨します。 ルートアカウント(作成したばかりのアカウント)は全ての権限を持つため、誤操作のリスクがあります。日常的な作業は、権限を制限したIAMユーザーで行うのがベストプラクティスです。IAMユーザーには「AmazonSageMakerFullAccess」ポリシーをアタッチすることで、SageMakerの全機能を利用できるようになります。

ステップ2 Amazon SageMaker Studioの起動

AWSアカウントの準備ができたら、次に機械学習の統合開発環境(IDE)である「Amazon SageMaker Studio」を起動します。SageMaker Studioは、データの準備からモデルの構築、トレーニング、デプロイまで、機械学習の全プロセスを単一のWebベースのインターフェースで実行できる非常に強力なツールです。

SageMaker Studioを起動する手順は以下の通りです。

  1. AWSマネジメントコンソールにサインインします。
  2. 画面上部の検索バーに「SageMaker」と入力し、Amazon SageMakerのサービスページに移動します。
  3. 左側のナビゲーションパネルから「Studio」を選択します。
  4. 初めて利用する場合は、SageMakerドメインのセットアップが必要です。「クイックスタート」を選択し、実行ロールを作成してドメインを設定します。
  5. セットアップが完了すると、ユーザー名が表示されます。そのユーザーの横にある「Studio を起動」ボタンをクリックします。

初回起動時には少し時間がかかる場合がありますが、しばらく待つとJupyterLabベースの使い慣れたインターフェースがブラウザに表示されます。これで、機械学習プロジェクトを開始する準備が整いました。

ステップ3 ノートブックインスタンスの作成と実行

SageMaker Studioが起動したら、データ分析やモデル開発のコードを記述・実行するための「ノートブック」環境を準備します。これは、一般的にデータサイエンティストによく使われるJupyter Notebookと同様の環境です。

SageMaker Studio内では、従来の「ノートブックインスタンス」を別途作成する手間なく、数クリックでコーディング環境を起動できます。

  1. SageMaker Studioのランチャー(ホーム画面)から、「ノートブック」セクションの「ノートブックを作成」をクリックします。
  2. 使用するイメージとカーネルを選択します。通常はデフォルトの「Data Science 3.0」イメージと「Python 3」カーネルで問題ありません。
  3. インスタンスタイプを選択します。簡単な分析や学習であれば、無料利用枠の対象となる「ml.t3.medium」などの小さなインスタンスで十分です。
  4. 「作成」をクリックすると、新しいタブでノートブックが開きます。

ノートブックが開いたら、セルにPythonコードを入力して実行してみましょう。例えば、簡単な計算やライブラリのインポートなどを試して、環境が正しく動作することを確認できます。

ステップ4 モデルのトレーニングとデプロイ

いよいよ、SageMakerの中核機能であるモデルのトレーニングとデプロイを行います。ここでは、ノートブックからSageMakerの機能を利用して、一連のプロセスを実行する基本的な流れを解説します。

モデルのトレーニング

モデルをトレーニングするには、まず学習用のデータをAmazon S3(Simple Storage Service)というAWSのストレージサービスにアップロードする必要があります。S3は高い耐久性とスケーラビリティを誇り、大量のデータを安全に保管できます。

データの準備ができたら、ノートブック上でSageMaker Python SDKを使用してトレーニングジョブを開始します。SageMakerには、XGBoostやLightGBMといった一般的な機械学習アルゴリズムが組み込みで用意されており、数行のコードで簡単にトレーニングを実行できます。

トレーニングジョブは、ノートブックを実行しているインスタンスとは別の、指定したコンピューティングインスタンス上で実行されます。そのため、大規模なデータセットや複雑なモデルのトレーニング中でも、ノートブックで他の作業を続けることができます。

モデルのデプロイ

トレーニングが完了すると、学習済みのモデル(モデルアーティファクト)がS3に保存されます。このモデルを実際に予測に使えるようにするため、「デプロイ」という作業を行います。

SageMakerでは、トレーニング済みのモデルから推論リクエストを受け付けるためのHTTPSエンドポイントを簡単に作成できます。これもノートブックから数行のコードを実行するだけで完了します。

デプロイが完了すると、アプリケーションや他のAWSサービスからこのエンドポイントにデータを送信し、リアルタイムで予測結果を受け取ることが可能になります。わずか数行のコードで、トレーニングから本番環境へのデプロイまでを一気通貫で実行できるのが、Amazon SageMakerの最大の強みの一つです。

Amazon SageMakerの活用事例

Amazon SageMakerは、その高い柔軟性とスケーラビリティから、業界を問わずさまざまなビジネス課題の解決に活用されています。機械学習モデルの開発からデプロイ、運用までを一つのプラットフォームで完結できるため、多くの企業がイノベーションを加速させています。ここでは、代表的な3つの業界における具体的な活用事例をご紹介します。

製造業における予知保全

製造業の現場では、生産ラインの設備が突然故障することによるダウンタイム(稼働停止時間)の発生が大きな課題です。予知保全は、IoTセンサーなどから収集されるデータを機械学習モデルで分析し、故障の兆候を事前に検知して計画的なメンテナンスを可能にする取り組みです。Amazon SageMakerは、この予知保全システムの構築において中心的な役割を果たします。

例えば、工場内の様々な機器に取り付けられたセンサーから得られる振動、温度、圧力などの時系列データを収集します。収集された膨大なデータは、SageMaker Data Wranglerを用いてノイズ除去や特徴量エンジニアリングといった前処理が施されます。その後、SageMaker Studio NotebooksやSageMaker Autopilotを活用して、正常時と異常時のデータパターンを学習した故障予測モデルを構築。完成したモデルはSageMakerのエンドポイントとしてデプロイされ、リアルタイムで稼働データストリームを監視し、故障の予兆を検知するとアラートを発報します。これにより、突発的な設備停止を未然に防ぎ、生産性の向上とメンテナンスコストの削減を両立させることが可能になります。実際に、あるIoTプラットフォーム企業では、商業向けの製造業者が機器の故障を予測し、事前に対策を講じるための洞察を得るためにSageMakerが活用されています。

  • 課題:設備の突発的な故障による生産ラインの停止、それに伴う機会損失と高いメンテナンスコスト。
  • SageMakerの活用:センサーデータの収集・前処理、故障予測モデルのトレーニング、リアルタイムでの異常検知。
  • 導入効果:ダウンタイムの削減、メンテナンス業務の効率化、部品交換の最適化によるコスト削減。

金融業界における不正検知

クレジットカードの不正利用や不正なオンライン取引は、金融機関にとって深刻な問題です。Amazon SageMakerは、膨大な取引データの中から不正なパターンをリアルタイムで検出する高度なシステム構築を支援します。

金融機関では、日々発生する膨大な量の決済トランザクションデータ(利用額、場所、時間、頻度など)を分析し、個々のユーザーの通常の利用パターンを学習したモデルを構築します。新しい取引が発生すると、そのデータがリアルタイムでSageMakerに送られ、学習済みモデルが瞬時に不正スコアを算出。スコアが一定のしきい値を超えた場合、取引を一時的にブロックしたり、セキュリティチームに警告を送ったりするなどのアクションを自動的に実行します。これにより、不正利用による被害を最小限に抑え、顧客の資産を保護することができます。また、SageMakerの柔軟な環境は、日々巧妙化する不正手口に対応するため、継続的に新しいデータを取り込んでモデルを再学習させ、精度を維持・向上させるサイクルを効率的に回すことを可能にします。

Amazon SageMakerによる不正検知システムの概要
プロセス 概要 活用されるSageMakerの機能
データ準備 過去の正常・不正取引データを収集し、モデルが学習しやすいように加工する。 SageMaker Data Wrangler, SageMaker Feature Store
モデル構築・学習 不正パターンを識別するための機械学習モデル(異常検知モデルなど)を構築し、準備したデータで学習させる。 SageMaker Studio Notebooks, SageMaker Autopilot
デプロイと推論 学習済みモデルをデプロイし、リアルタイムで発生する取引データを分析して不正かどうかを判定する。 SageMaker Real-Time Inference

小売業における需要予測

小売業においては、欠品による販売機会の損失や、過剰在庫によるコスト増加が経営上の重要な課題です。Amazon SageMakerを活用することで、精度の高い需要予測を行い、在庫管理を最適化することが可能になります。

過去の販売実績(POSデータ)に加え、天候、カレンダー情報(祝日や休日)、販促キャンペーン、SNSのトレンドといった多様なデータを統合的に分析します。SageMakerを用いることで、これらの複雑な要因が売上にどう影響するかを学習した時系列予測モデルを構築できます。例えば、レシピ動画サービスの「クラシル」を運営するdely株式会社では、ユーザーに適切なコンテンツを適切なタイミングで提供するためにSageMakerを活用し、機械学習モデルを90日で本番稼働させました。 このようにして構築されたモデルは、店舗別・商品別に将来の需要を高い精度で予測し、最適な発注量を自動的に算出します。これにより、小売業者は顧客満足度を向上させると同時に、キャッシュフローを改善することができます。

また、コスメショッピングアプリ「NOIN」では、SageMakerを利用して商品レコメンデーション機能を開発し、ユーザーのクリック率を10%向上させるという成果を上げています。 これは需要予測と密接に関連する技術であり、顧客一人ひとりのニーズを予測して最適な商品を提案するパーソナライゼーションにもSageMakerが強力なツールであることがわかります。

Amazon SageMakerに関するよくある質問(FAQ)

この章では、Amazon SageMakerに関して多くの方が抱く疑問について、Q&A形式で詳しく解説します。サービスの利用を検討している方や、学習を始めたばかりの方がつまずきやすいポイントをまとめました。

Amazon SageMakerは完全に無料で使用できますか?

いいえ、Amazon SageMakerは完全に無料ではありませんが、AWSの無料利用枠を利用して一定期間・一定量まで無料で試すことが可能です。 初めてSageMakerのリソースを作成した月から最大2ヶ月間、特定のサービス(SageMaker Studio、Data Wrangler、推論エンドポイントなど)が無料利用枠の対象となります。

例えば、ノートブックインスタンスの種類や利用時間、ストレージ容量など、サービスごとに無料枠の上限が定められています。この無料利用枠を超える、または対象外のサービスを利用した場合は、Amazon SageMaker の料金ページに記載されている従量課金制に基づき料金が発生します。 継続的な利用でコストを最適化したい場合は、コンピューティング使用量に対して割引が適用される「SageMaker Savings Plans」の利用も検討すると良いでしょう。

プログラミング知識がなくてもAmazon SageMakerは使えますか?

はい、プログラミング知識がなくても利用できる機能があります。Amazon SageMakerは、初心者から専門家まで幅広いユーザー層を対象としており、コーディング不要で機械学習モデルを構築できるツールを提供しています。

代表的なノーコード・ローコードツールには以下のようなものがあります。

  • Amazon SageMaker Canvas: ビジネスアナリストなど、コーディング経験のないユーザーでも、視覚的なインターフェースを通じてデータの準備からモデル構築、予測までを行えるツールです。
  • Amazon SageMaker Data Wrangler: データの選択、クレンジング、探索、可視化といった前処理を、GUI操作で効率的に実行できます。
  • Amazon SageMaker Autopilot: データセットをアップロードするだけで、最適なモデルを自動的に構築・チューニングしてくれる機能です。

これらのツールを活用することで、プログラミングを行うことなく機械学習のワークフローを体験できます。 ただし、より複雑なモデルのカスタマイズや、特定のアルゴリズムを深く理解して利用する場合には、Pythonなどのプログラミング知識が必要となります。

Amazon SageMakerとGoogleのVertex AIの違いは何ですか?

Amazon SageMakerとGoogle CloudのVertex AIは、どちらも機械学習開発の全プロセスをサポートする強力な統合プラットフォームですが、いくつかの違いがあります。 主な違いを以下の表にまとめました。

項目 Amazon SageMaker (AWS) Vertex AI (Google Cloud)
エコシステム Amazon S3、Redshift、Lambdaなど、他のAWSサービスとのシームレスな連携が強みです。 BigQuery、Google Cloud Storage、AutoMLなど、Google Cloudの強力なデータ分析・AIサービスとの親和性が高いです。
アーキテクチャ 機能ごとにサービスが細分化されており、利用者がインフラを意識しながら柔軟に組み合わせることが可能です。 Vertex AIという単一のブランドでサービスが統合されており、インフラをあまり意識せずに利用できる抽象化された設計になっています。
主な特徴 Jupyterベースの開発環境が中核にあり、開発者の自由度が高いです。MLOps機能も充実しています。 強力なAutoML機能群が特徴で、GUIベースでのモデル開発がしやすい設計になっています。
ターゲットユーザー インフラレベルでの細かい設定やカスタマイズを求める開発者やデータサイエンティストに適しています。 迅速なモデル開発や、GoogleのAI技術を手軽に活用したい開発者やビジネスユーザーに適しています。

どちらのプラットフォームを選択するかは、既存のクラウド環境、チームの技術スキル、プロジェクトの要件などによって異なります。SageMakerは自由度とカスタマイズ性に優れる一方、Vertex AIは使いやすさとGoogleのAI技術との連携に強みがあると言えるでしょう。

Amazon SageMakerの学習におすすめの方法はありますか?

Amazon SageMakerを効果的に学習するためには、公式リソースの活用から実践的なチュートリアルまで、様々な方法があります。自身のレベルに合わせて、以下の方法を組み合わせることをお勧めします。

  1. AWS公式ドキュメントとチュートリアル:
    最も信頼性が高く、基本的な情報から最新情報まで網羅されています。AWSの公式「開始方法」ページには、初心者向けのステップバイステップガイドが用意されており、まずはここから始めるのが良いでしょう。
  2. AWS Skill Builder / Coursera:
    AWSが提供する公式のデジタルコースや、Courseraなどのオンライン学習プラットフォームには、SageMakerに特化した講座が多数存在します。動画とハンズオンラボを通じて、体系的に知識を深めることができます。
  3. AWS Workshops:
    AWSが公開しているワークショップリポジトリです。特定のテーマに沿った実践的な課題を通じて、SageMakerの具体的な使い方を学ぶことができます。
  4. 技術ブログやコミュニティ:
    AWS公式ブログや、DevelopersIO、Qiitaなどの技術ブログには、開発者による具体的な実装例やトラブルシューティングの情報が豊富に掲載されています。また、JAWS-UG(AWS User Group - Japan)のようなユーザーコミュニティに参加し、情報交換を行うのも有効です。

Amazon SageMakerで生成AIモデルを扱うことはできますか?

はい、Amazon SageMakerで生成AIモデルを扱うことは可能です。特に「Amazon SageMaker JumpStart」という機能を利用することで、最先端の基盤モデル(Foundation Models)へ簡単にアクセスし、デプロイやファインチューニングを行うことができます。

SageMaker JumpStartでは、Meta社のLlamaシリーズやMistral AI社のモデル、Stability AI社の画像生成モデルなど、主要なオープンソースモデルやサードパーティのプロプライエタリモデルを数クリックで利用開始できます。 これにより、開発者は複雑な環境構築を行うことなく、コンテンツ作成、要約、質疑応答といった生成AIアプリケーションの開発に集中することが可能です。

また、AWSのもう一つの生成AIサービスである「Amazon Bedrock」がAPI経由でモデルを利用するフルマネージドサービスであるのに対し、SageMakerはモデルのホスティング環境をより細かく制御したり、独自のデータでファインチューニングしたりするなど、より柔軟で高度なカスタマイズを行いたい場合に適しています。

まとめ

本記事では、AWSが提供する機械学習の統合プラットフォーム「Amazon SageMaker」について、その概要から具体的な機能、料金体系、基本的な使い方、そして活用事例までを初心者向けに網羅的に解説しました。この記事を通して、Amazon SageMakerが単なるツールではなく、機械学習プロジェクトの全工程を効率化し、加速させるための強力なエコシステムであることがご理解いただけたかと思います。

最後に、本記事の重要なポイントをまとめます。

  • 機械学習の全工程をエンドツーエンドでサポート:データの準備・前処理から、モデルの構築・トレーニング、そしてデプロイ・推論まで、一連のワークフローを単一のプラットフォームでシームレスに実行できます。
  • 初心者から専門家まで対応する豊富な機能:コーディングを最小限に抑える「SageMaker Autopilot」や「Data Wrangler」から、柔軟な開発が可能な「SageMaker Studio Notebooks」まで、あらゆるスキルレベルのユーザーに対応します。
  • 開発効率とスケーラビリティの向上:面倒なインフラ管理や環境構築の手間をAWSに任せることで、開発者はモデル開発という本質的な作業に集中できます。これにより、開発サイクルが大幅に短縮され、ビジネスの成長に合わせて柔軟に拡張することが可能です。
  • コスト管理のしやすさ:利用した分だけ支払う従量課金制が基本であり、無料利用枠も用意されています。これにより、小規模な実験から大規模な本番運用まで、コストを最適化しながら機械学習に取り組むことができます。

Amazon SageMakerは、機械学習の導入・活用における技術的なハードルを大きく引き下げ、ビジネスにおけるデータ活用の可能性を無限に広げるサービスです。この記事をきっかけに、まずは無料利用枠を使ってAmazon SageMaker Studioを起動し、その第一歩を踏み出してみてはいかがでしょうか。実際に触れてみることで、あなたのアイデアを形にするための強力な武器となることを実感できるはずです。

  • fb-button
  • line-button
  • linkedin-button

無料メルマガ

CONTACT

Digital Intelligenceチャンネルへのお問い合わせはこちら

TOP