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【2025年最新版】AWSの生成AIまとめ|料金やユースケースもご紹介

【2025年最新版】AWSの生成AIまとめ|料金やユースケースもご紹介

「AWSで生成AIを始めたいけれど、サービスが多すぎてどれを選べば良いか分からない」「具体的な料金やビジネスでの活用事例を知りたい」などのお悩みはありませんか?AWSはAmazon BedrockやSageMakerをはじめ、多岐にわたる生成AIサービスを提供しており、自社の目的に最適なものを選ぶことが成功の鍵となります。

この記事でわかること

  • AWSが提供する主要な生成AIサービスの種類と特徴
  • 各サービスの料金体系と無料での試し方
  • ビジネスにおける具体的な活用事例(ユースケース)
  • 初心者でもわかるAWS生成AIの始め方の3ステップ

本記事では、2025年の最新情報に基づき、AWSの生成AI関連サービスを網羅的に解説し、それぞれの料金やユースケース、始め方までを初心者にも分かりやすく紹介します。結論として、AWSの生成AIは「豊富な基盤モデルからの選択とカスタマイズ性」「エンタープライズレベルの堅牢なセキュリティ」「既存のAWS環境とのシームレスな連携」という強力なメリットがあり、多くのビジネス課題を解決するポテンシャルを秘めています。この記事を読めば、あなたの目的に合ったAWS生成AIサービスを見つけ、すぐに活用を始めることができるでしょう。

AWSの生成AIとは?どんな生成AIがあるの?

AWSの生成AIとは、Amazon Web Services(AWS)が提供する、文章、画像、音声、コードといった新しいコンテンツを生成できるAIサービスの総称です。これらのサービスは、基盤モデル(Foundation Models、FM)と呼ばれる、膨大なデータでトレーニングされた大規模なAIモデルを基盤としています。

AWSは、単一のAIモデルを提供するのではなく、開発者が自社のアプリケーションに最適なモデルを選択し、カスタマイズできる環境を提供することに重点を置いています。これにより、企業は自社のデータを用いてモデルをプライベートに調整し、独自の生成AIアプリケーションを迅速かつ安全に構築できます。AWSの生成AIへのアプローチは、柔軟性と選択肢の広さが大きな特徴と言えるでしょう。

AWSでは、生成AIサービスを大きく3つの階層(スタック)で捉え、開発者からビジネスユーザーまで、あらゆるニーズに応えるためのサービスを提供しています。それぞれの階層について見ていきましょう。

アプリケーション層:すぐに使える生成AI搭載アプリ

最上位のアプリケーション層は、専門的な知識がなくてもすぐに利用できる、生成AIを組み込んだアプリケーション群です。ビジネスの現場における特定の課題を解決するために設計されており、コーディングの自動化や社内情報の検索といった業務を効率化します。

  • Amazon Q: 企業のデータに接続し、質問応答やコンテンツ生成、アクションの実行が可能なビジネス向け生成AIアシスタントです。
  • Amazon CodeWhisperer: コメントや既存のコードから、リアルタイムでコードの提案を行うAIコーディング支援サービスです。

ミドル層:基盤モデルを簡単に利用・構築

中間層は、生成AIアプリケーションを構築・スケールするための最も簡単な方法を提供します。この層の中心となるのが「Amazon Bedrock」で、主要なAI企業の高性能な基盤モデルを単一のAPIで利用できるフルマネージドサービスです。また、機械学習モデルの構築・トレーニング・デプロイを総合的に支援する「Amazon SageMaker」もこの層に含まれ、より専門的な開発にも対応します。

  • Amazon Bedrock: AmazonやAnthropic、Cohere、Meta、Stability AIなどの多様な基盤モデルにAPI経由でアクセスし、自社データでカスタマイズも可能です。
  • Amazon SageMaker: 生成AIモデルを含む、あらゆる機械学習モデルのライフサイクル全体をサポートするプラットフォームです。

インフラストラクチャ層:AIモデルのトレーニングと推論を支える基盤

最下層のインフラストラクチャ層は、生成AIのトレーニング(学習)と推論(実行)に最適化された、高性能かつコスト効率の高いコンピューティング基盤を提供します。NVIDIAのGPUを搭載したインスタンスに加え、AWSが独自に開発したAIチップも利用可能です。

  • AWS Trainium: 高性能な機械学習モデルのトレーニングに特化したカスタムAIチップです。
  • AWS Inferentia: 大規模な機械学習モデルの推論を低コストで実行するために設計されたカスタムAIチップです。

AWSの生成AI関連サービス一覧

AWSが提供する生成AI関連のサービスは多岐にわたります。主要なサービスを以下の表にまとめました。後の章で詳しく解説するサービスもあれば、特定の機能に特化したAIサービスもあります。これらのサービスを組み合わせることで、より高度で複雑なアプリケーションを構築することが可能です。

サービス名 カテゴリ 概要
Amazon Bedrock 基盤モデルプラットフォーム Amazonや主要なAI企業の基盤モデル(FM)をAPIを通じて利用できるフルマネージドサービス。
Amazon SageMaker 機械学習プラットフォーム 機械学習モデルの構築、トレーニング、デプロイをエンドツーエンドで支援。生成AIモデルの開発にも対応。
Amazon Q ビジネス向けAIアシスタント 企業のデータと連携し、業務を効率化する会話型AIアシスタント。
Amazon CodeWhisperer AIコーディング支援 IDE内でリアルタイムにコードを提案し、開発者の生産性を向上させる。
Amazon Titan AWS独自開発の基盤モデル Amazonが開発した基盤モデルファミリー。テキスト生成、埋め込み、画像生成などに対応。Bedrock内で利用可能。
Amazon Lex 会話型AI(チャットボット) 音声やテキストを使用して、アプリケーションに会話型インターフェースを構築するサービス。
Amazon Polly テキスト読み上げ テキストをリアルな音声に変換するサービス。多言語に対応し、自然な発話を実現。
Amazon Transcribe 音声認識 音声をテキストに変換する自動音声認識(ASR)サービス。議事録作成や字幕生成に活用。
Amazon Translate 機械翻訳 高速かつ高品質なニューラル機械翻訳サービス。多言語間のリアルタイム翻訳を実現。
Amazon Comprehend 自然言語処理 テキストからインサイトや関係性を発見する自然言語処理(NLP)サービス。感情分析や固有表現抽出などが可能。

AWSが提供する主要な生成AIサービス5選

Amazon Web Services(AWS)は、多岐にわたる生成AIサービスを提供しており、開発者からビジネスユーザーまで幅広いニーズに対応しています。ここでは、その中でも特に中心的役割を担う5つの主要なサービスをピックアップし、それぞれの特徴と料金モデルを詳しく解説します。

①Amazon Bedrock|基盤モデルをAPIで利用

Amazon Bedrockは、Amazon自身やAnthropic、Meta、Mistral AIといった主要なAIスタートアップ企業が提供する高性能な基盤モデル(Foundation Models)を、単一のAPIを通じて利用できるフルマネージドサービスです。 サーバーレスアーキテクチャを採用しているため、インフラの管理を気にすることなく、テキスト生成、要約、画像生成などの機能をアプリケーションに容易に組み込むことができます。

主な特徴は以下の通りです。

  • 多様なモデル選択: 用途に応じて最適な基盤モデルを選択・切り替えが可能です。
  • カスタマイズ性: 自社のデータを活用して、特定の業界用語やタスクに特化したモデルへとプライベートにカスタマイズできます。 この際、入力データがモデルの学習に使用されることはありません。
  • AWSサービスとの連携: Amazon S3などの既存のAWSサービスとシームレスに連携し、安全かつ効率的な開発環境を構築できます。
  • Agents for Amazon Bedrock: APIを動的に呼び出し、予約や注文などの複雑なタスクを自動実行するエージェントを構築できます。

Amazon Bedrockの料金モデル

Amazon Bedrockは、初期費用不要で柔軟な料金体系を提供しています。 主に「オンデマンド」と「プロビジョンドスループット」の2つの料金モデルがあり、利用シーンに応じて選択できます。 詳細はAmazon Bedrockの料金ページで確認できます。

料金モデル 概要 適したユースケース
オンデマンド 処理したテキストのトークン数(入力・出力)や生成した画像の枚数に応じて課金される従量課金制です。 開発初期段階、利用頻度が低い、または予測が難しいアプリケーション。
プロビジョンドスループット 一定期間(1ヶ月または6ヶ月)のコミットメントと引き換えに、特定のモデルの処理能力を確保し、割引価格で利用できるプランです。 大規模で安定したスループットが求められる本番環境のアプリケーション。

②Amazon SageMaker|機械学習モデルを総合的に支援

Amazon SageMakerは、機械学習(ML)モデルの構築、トレーニング、デプロイ、管理を包括的に支援するフルマネージドサービスです。生成AI開発においては、特に「SageMaker JumpStart」機能が強力で、事前学習済みの基盤モデルを数クリックでデプロイし、ファインチューニングを行うことができます。

SageMakerは、データサイエンティストや開発者が生成AIを含むあらゆるMLモデルを効率的に開発・運用するための統合開発環境(IDE)「SageMaker Studio」を提供します。 これにより、データ準備から本番稼働までの一連のワークフローを単一のインターフェースで管理できます。

Amazon SageMakerの料金モデル

Amazon SageMakerの料金は、利用する機能やリソースに応じて複数の要素で構成されます。前払いの義務はなく、使用した分だけ支払う従量課金制が基本です。 詳細はAmazon SageMakerの料金ページで確認できます。

課金対象 概要
MLインスタンス利用料 モデルのトレーニングやホスティング(推論)に使用するコンピューティングインスタンスの利用時間に対して課金されます。
ストレージ利用料 ノートブックインスタンスやトレーニングデータセットの保存に使用するストレージ容量に対して課金されます。
データ処理・転送料 データの処理や、AWS内外へのデータ転送量に応じて課金が発生する場合があります。

③Amazon Q|ビジネス向け生成AIアシスタント

Amazon Qは、企業の業務に特化して設計された生成AI搭載アシスタントサービスです。 社内のドキュメント、データ、エンタープライズシステム(Salesforce, Jiraなど)に接続し、従業員からの質問に対して、それらの情報源に基づいた的確な回答を生成します。 コンテンツの要約や作成、課題解決のサポートなど、幅広い業務を効率化します。

Amazon Qはセキュリティを重視しており、入力されたデータが基盤モデルの学習に使用されることはありません。 用途に応じて、ビジネスユーザー向けの「Amazon Q Business」と、開発者向けの「Amazon Q Developer」の2つの主要なサービスが提供されています。

Amazon Qの料金モデル

Amazon Qの料金は、ユーザーごとの月額サブスクリプションが基本となります。 プランによって利用できる機能や上限が異なります。詳細はAmazon Qの料金ページで確認できます。

プラン名 月額料金(1ユーザーあたり) 主な対象ユーザー
Amazon Q Business Lite $3 USD(※料金は変更される可能性があります) 基本的なチャット機能やコンテンツ生成を利用したいビジネスユーザー。
Amazon Q Business Pro $20 USD(※料金は変更される可能性があります) より高度な機能やカスタマイズ、アプリケーション作成機能「Amazon Q Apps」を利用したいビジネスユーザー。
Amazon Q Developer Free 無料 個人開発者や学習目的のユーザー。
Amazon Q Developer Pro $19 USD(※料金は変更される可能性があります) IDEでの高度なコード生成やトラブルシューティング、チームでの利用を想定したプロの開発者。

④Amazon CodeWhisperer|AIコーディング支援

Amazon CodeWhispererは、開発者のコーディング作業を支援するAIサービスです。 開発者が書いたコメント(自然言語)や既存のコードの文脈を理解し、リアルタイムでコードスニペットから関数全体までを提案します。 Python, Java, JavaScriptなど15以上のプログラミング言語に対応し、VS CodeやJetBrains IDE、AWS Cloud9など多くの開発環境で利用できます。

主な機能として、コード生成の他に、セキュリティの脆弱性を検知して修正案を提示するセキュリティスキャン機能も搭載しており、開発の生産性向上とコード品質の担保に貢献します。

Amazon CodeWhispererの料金モデル

Amazon CodeWhispererには、個人向けの無料プランと、組織向けの有料プランが用意されています。 詳細はAmazon CodeWhispererの料金ページで確認できます。

プラン名 月額料金(1ユーザーあたり) 主な特徴
Individual Tier(個人利用) 無料 AWS Builder IDでサインイン。コード提案、参照トラッキング、月50回までのセキュリティスキャンが含まれます。
Professional Tier(プロフェッショナル) $19 USD(※料金は変更される可能性があります) IAM Identity Centerによる組織的な管理が可能。月500回までのセキュリティスキャン、ポリシー管理機能などが追加されます。

⑤Amazon Titan

Amazon Titanは、AWSが20年以上にわたるAmazonの経験を基に自社開発した基盤モデル(FMs)のファミリーです。 これらのモデルは、Amazon Bedrockを通じてのみ利用可能で、汎用的なテキスト生成、要約、質問応答、埋め込み(Embeddings)、画像生成など、多様なユースケースをサポートするために設計されています。

主なモデルには以下のような種類があります。

  • Titan Text G1 - Express: 迅速な応答が求められるタスクに適した大規模言語モデル。
  • Titan Multimodal Embeddings G1: テキストと画像をベクトル表現に変換し、高精度な検索を実現。
  • Titan Image Generator G1: テキストプロンプトから高品質な画像を生成したり、既存の画像を編集したりできます。 生成された画像には電子透かしが埋め込まれ、AIによる生成物であることを識別できます。

Amazon Titanの料金モデル

Amazon Titanモデル自体に個別の料金は設定されていません。これらのモデルはAmazon Bedrockの一部として提供されるため、料金はAmazon Bedrockの利用料金に含まれます。したがって、Bedrockのオンデマンドプランやプロビジョンドスループットプランの料金体系に準じて、処理したトークン数や生成した画像数に応じて課金されます。

その他のAWSの生成AI関連サービス6選

AWSには、Amazon BedrockやAmazon SageMakerといった主要な生成AIサービス以外にも、AIアプリケーションの開発を加速させる多様なサービスが存在します。これらのサービスは、単体で利用するだけでなく、生成AIと組み合わせることで、より高度でユーザーフレンド-リーなアプリケーションを構築する上で重要な役割を果たします。ここでは、生成AIとの連携で特に役立つ6つのAWSサービスをご紹介します。

①Amazon Lex

Amazon Lexは、音声やテキストを用いてアプリケーションに対話型インターフェースを構築するためのフルマネージドサービスです。 チャットボットや音声アシスタントを迅速に開発でき、Amazon Alexaと同じ深層学習技術(自動音声認識:ASR、自然言語理解:NLU)を活用しているため、ユーザーの発話の意図を正確に解析できます。 生成AIモデルと連携させることで、FAQ応答だけでなく、より複雑で文脈に応じた自然な対話が可能なAIエージェントを構築できます。

Amazon Lexの料金モデル

Amazon Lexは、初期費用や最低料金なしの従量課金制です。 課金対象は、ボットが処理した音声リクエストまたはテキストリクエストの数に基づきます。 また、AWSの無料利用枠も用意されており、最初の1年間は毎月最大10,000回のテキストリクエストと5,000回の音声リクエストを無料で処理できます。

リクエストタイプ 料金(米国東部バージニア北部リージョン)
音声リクエスト $0.004 / リクエスト1回
テキストリクエスト $0.00075 / リクエスト1回

②Amazon Polly

Amazon Pollyは、テキストを人間のような自然な音声に変換するテキスト読み上げ(TTS)サービスです。 ディープラーニング技術を用いており、標準的な音声に加えて、より高品質で表現力豊かなニューラル音声や、人間のような感情や会話スタイルを持つ生成AIベースの音声も提供しています。 生成AIが作成したブログ記事やニュースレポートを音声コンテンツとして配信したり、アプリケーションの応答を音声で返したりする際に活用できます。

Amazon Pollyの料金モデル

Amazon Pollyの料金は、音声に変換したテキストの文字数に基づく従量課金制です。 無料利用枠もあり、初めて利用するユーザーは最初の12ヶ月間、毎月一定数の文字まで無料で利用できます。

音声タイプ 料金(無料利用枠超過後)
標準音声 4.80 USD / 100万文字
ジェネレーティブ音声 30 USD / 100万文字

③Amazon Transcribe

Amazon Transcribeは、音声をテキストに変換する自動音声認識(ASR)サービスです。 機械学習モデルを活用し、高精度な文字起こしを実現します。 リアルタイムでの音声認識と、保存された音声ファイルのバッチ処理の両方に対応しています。 話者分離やカスタム語彙登録などの機能も備えており、会議の議事録作成、コールセンターの通話分析、動画コンテンツの字幕生成など、幅広い用途で利用できます。 生成AIと組み合わせることで、文字起こししたテキストの要約や分析を自動化できます。

Amazon Transcribeの料金モデル

Amazon Transcribeは、処理した音声の秒数に応じた従量課金制です。 毎月60分までの無料利用枠が12ヶ月間提供されます。 料金は利用量に応じて段階的に安くなるティア制が採用されています。

利用量(月間) 料金 / 分(米国東部バージニア北部)
最初の250,000分 0.0300 USD
次の750,000分 0.0186 USD

④AWS Lambda

AWS Lambdaは、サーバーのプロビジョニングや管理をすることなくコードを実行できるサーバーレスコンピューティングサービスです。 ファイルのアップロードやAPI呼び出しといったイベントをトリガーとして、自動的にプログラムを実行します。 生成AIサービスとの連携において中心的な役割を果たし、例えばAmazon Bedrockで生成されたコンテンツをデータベースに保存したり、他のAWSサービスに渡したりといった一連の処理フローを自動化するのに非常に有効です。

AWS Lambdaの料金モデル

AWS Lambdaの料金は、関数の実行リクエスト数と、コードの実行時間(コンピューティング時間)に基づいて計算されます。 コンピューティング時間は、関数に割り当てられたメモリ量と実行時間(ミリ秒単位)を掛け合わせたGB秒で測定されます。 毎月100万件のリクエストと40万GB秒のコンピューティング時間が無料利用枠として提供されます。

課金項目 料金(x86アーキテクチャ、米国東部バージニア北部)
リクエスト 0.20 USD / 100万リクエスト
コンピューティング時間 0.0000166667 USD / GB秒

⑤Amazon Translate

Amazon Translateは、ニューラル機械翻訳技術を利用して、高速かつ高品質なテキスト翻訳を提供するサービスです。リアルタイム翻訳とバッチ翻訳の両方に対応しており、75以上の言語間で自然で正確な翻訳を実現します。 生成AIが作成したコンテンツを多言語に展開したり、海外からの問い合わせを日本語に翻訳して社内チャットボットに入力したりするなど、グローバルなコミュニケーションをサポートします。

Amazon Translateの料金モデル

Amazon Translateは、翻訳したテキストの文字数に基づく従量課金制です。 AWS無料利用枠の一部として、サインアップから12ヶ月間、毎月200万文字まで無料で利用できます。

翻訳タイプ 料金(無料利用枠超過後)
標準テキスト翻訳 15.00 USD / 100万文字

⑥Amazon Comprehend

Amazon Comprehendは、テキストデータからインサイトや関係性を自動で抽出する自然言語処理(NLP)サービスです。 機械学習の専門知識がなくても、テキスト内のエンティティ(人名、地名など)、キーフレーズ、感情、言語などを特定できます。 生成AIへの入力テキストを事前に分析して精度を高めたり、生成された文章の内容を分析して不適切な表現を検出したりするなど、テキストデータの深い理解を支援します。

Amazon Comprehendの料金モデル

Amazon Comprehendの料金は、主に処理したテキストの文字数に基づいて課金されます。 100文字を1ユニットとして計算し、リクエストごとに最低3ユニット(300文字)分の料金が発生します。 機能ごとに異なる料金設定がされており、カスタムモデルのトレーニングには別途時間単位での課金が発生します。

機能 料金(米国東部バージニア北部)
エンティティ認識、感情分析など 0.0005 USD / ユニット
カスタムモデルのトレーニング 3.00 USD / 時間
カスタムモデル管理 0.50 USD / 月

無料利用枠でAWS生成AIを試す方法

AWSは、多くのサービスで無料利用枠を提供しており、これらを活用することでコストをかけずに生成AIの強力な機能を試すことが可能です。 無料利用枠は、個人の学習や企業での導入検討、新しいアイデアの検証など、様々な目的に役立ちます。 ただし、利用できるサービスや期間、上限などがそれぞれ異なるため、内容を正確に把握しておくことが重要です。

AWS無料利用枠の主要な種類

AWSの無料利用枠は、主に以下の3つのカテゴリに分類されます。 利用したい生成AIサービスがどのカテゴリに含まれるかを確認しましょう。

  • 12ヶ月間無料: AWSアカウントを新規作成してから12ヶ月間、特定のサービスを毎月の上限まで無料で利用できます。 Amazon EC2やAmazon S3など、AWSの基本的なサービスが多く含まれます。
  • 常に無料: AWSの全てのお客様が、サービスの無料利用枠の上限まで無期限で利用できるプランです。 AWS LambdaやAmazon DynamoDBなどがこのカテゴリに該当します。
  • トライアル: 特定のサービスを有効化してから、短期間(例: 30日間や2ヶ月間)無料で試せるプランです。 期間終了後は自動的に通常の従量課金制に移行します。

主要な生成AIサービスの無料利用枠

生成AIに関連する主要なAWSサービスにも、無料利用枠が用意されています。以下に代表的なサービスとその無料枠の内容をまとめました。(2025年10月時点の情報であり、最新の詳細は公式サイトをご確認ください)

サービス名 無料利用枠の内容(一部) 期間・種類
Amazon Bedrock 特定の基盤モデル(例: Titan Text Lite)について、一定時間または一定リクエスト数の推論が無料。画像生成モデルも一定枚数まで無料になる場合があります。 トライアル
Amazon SageMaker 利用開始から最初の2ヶ月間、SageMaker Studioの利用や特定のインスタンスタイプでのモデル構築・トレーニングに月々の無料枠が適用されます。 トライアル
Amazon CodeWhisperer 個人での利用は、コードの提案やセキュリティスキャンなどの基本機能が無料で無制限に利用可能です。 常に無料(個人利用)
Amazon Q Developer 開発者向けのAmazon Qには、月間のユーザー数に応じた無料枠が設定されている場合があります。 常に無料(条件あり)
Amazon Lex 最初の1年間、毎月10,000件のテキストリクエストと5,000件の音声リクエストを処理できます。 12ヶ月間無料
Amazon Polly 最初の1年間、毎月500万文字までの標準音声を無料で変換できます。 12ヶ月間無料

無料利用枠を始めるための具体的なステップ

AWSの無料利用枠を使って生成AIを試し始める手順は簡単です。以下のステップに沿って進めましょう。

ステップ1: AWSアカウントの作成

まずはじめに、AWSの公式サイトから無料アカウントを作成する必要があります。 登録にはクレジットカード情報が必要ですが、無料利用枠の範囲内での利用であれば料金は発生しません。

ステップ2: 利用したいサービスの有効化

AWSマネジメントコンソールにログインし、利用したい生成AIサービス(例: Amazon Bedrock)のページに移動します。サービスによっては、利用開始にあたりモデルへのアクセスをリクエストし、有効化する手順が必要になる場合があります。

ステップ3: 予算アラートの設定(推奨)

無料利用枠を超えた意図しない課金を防ぐために、「AWS Budgets」を利用して予算アラートを設定することを強く推奨します。 設定した予算のしきい値に近づくとメールで通知を受け取ることができるため、安心して利用状況を管理できます。

無料利用枠を利用する際の注意点

AWSの無料利用枠を最大限に活用するためには、いくつかの注意点を理解しておくことが大切です。

  • 上限を超えると課金される: 無料利用枠で定められた期間や利用量の上限を超えると、自動的に標準の従量課金制に移行します。
  • 利用状況の定期的な確認: AWSマネジメントコンソールの請求ダッシュボードで、現在の利用量や料金をこまめに確認する習慣をつけましょう。
  • 対象リージョン: サービスによっては、無料利用枠が適用されるAWSリージョン(地域)が限定されている場合があります。利用を開始する前に確認が必要です。
  • アカウント作成日が起算点: 「12ヶ月間無料」の期間は、サービスを使い始めた日ではなく、AWSアカウントを作成した日からカウントが始まります。
  • 最新情報の確認: 無料利用枠の内容は変更される可能性があるため、必ずAWS 無料利用枠の公式サイトで最新の情報を確認してください。

AWS生成AIのユースケースと具体的な活用事例

AWSが提供する生成AIサービスは、ビジネスの様々なシーンで活用され、業務効率化や新たな価値創造に貢献しています。具体的なユースケースを知ることで、自社での導入イメージをより明確にすることができるでしょう。ここでは、代表的な4つの活用事例を、具体的なサービスと共にご紹介します。

コンテンツ生成 ブログ記事やマーケティングコピー

日々大量のコンテンツ制作が求められるマーケティング分野において、AWSの生成AIは強力なアシスタントとなります。Amazon Bedrockを通じて、Anthropic社のClaudeやAmazon Titanといった高性能な基盤モデルを利用することで、ブログ記事の草案、広告のキャッチコピー、SNS投稿、メールマガジンの文面などを短時間で大量に生成することが可能です。

例えば、「20代女性向けの新しいスキンケア製品」に関するブログ記事を作成したい場合、ターゲット層、製品の特長、 desired a tone of voice (親しみやすく、専門的になど) といった情報をプロンプトとして入力するだけで、複数の記事案が瞬時に提案されます。これにより、コンテンツ制作者はゼロから文章を考える負担から解放され、より創造的な編集や校正作業に集中できるようになります。結果として、コンテンツ制作のリードタイム短縮と品質の安定化、そして新たなアイデアの創出につながります。

社内向けチャットボットの開発

「経費精算の方法は?」「新しいPCの申請手順は?」といった社内からの頻繁な問い合わせ対応に、多くの時間と人手が割かれている企業は少なくありません。Amazon Q BusinessやAmazon Bedrockを活用することで、社内規定、業務マニュアル、過去の問い合わせ履歴といった独自のデータを学習させた、高精度な社内向けチャットボットを構築できます。

このチャットボットは、RAG(Retrieval-Augmented Generation / 検索拡張生成)という技術を用いることで、社内ナレッジベースから関連情報を検索し、それに基づいて正確な回答を生成します。 これにより、従業員は24時間365日いつでも必要な情報を自己解決できるようになり、問い合わせ対応部署の業務負荷を大幅に削減できます。 また、ナレッジの属人化を防ぎ、組織全体での情報共有を促進する効果も期待できます。

画像生成とデザイン業務の効率化

Webサイトのバナー広告、製品カタログの挿絵、プレゼンテーション資料の図版など、ビジネスにおける画像コンテンツの需要は尽きません。Amazon Bedrockで利用できるAmazon Titan Image GeneratorやStability AI社のStable Diffusionなどの画像生成モデルを使えば、テキストによる指示(プロンプト)だけで、高品質でユニークな画像を生成できます。

「未来都市を背景に、青いエコカーが走っているイラスト」といった具体的なイメージをテキストで入力するだけで、複数のデザイン案を瞬時に得ることが可能です。これにより、ストックフォトサービスでは見つからない特定のイメージを創出したり、デザインの初期段階におけるアイデア出しを加速させたりすることができます。デザイナーは生成された画像をベースに最終的な仕上げを行うことで、制作プロセス全体を大幅に効率化できます。

議事録の要約と翻訳

会議後の議事録作成は、多くのビジネスパーソンにとって時間のかかる作業です。AWSの複数のサービスを組み合わせることで、このプロセスを劇的に自動化・効率化できます。

まず、会議の音声データをAmazon Transcribeでテキスト化します。 次に、そのテキストデータをAmazon Bedrockに連携し、大規模言語モデル(LLM)を用いて要点、決定事項、タスク(ToDo)を自動で抽出・要約させます。 さらに、グローバルなチームで会議内容を共有する必要がある場合は、Amazon Translateを使って要約された議事録を瞬時に多言語へ翻訳することも可能です。

この一連のプロセスを自動化することで、議事録作成にかかる工数を90%以上削減した事例もあり、従業員はより付加価値の高い業務に集中できるようになります。

プロセス 活用する主なAWSサービス 主な機能
音声のテキスト化 Amazon Transcribe 高精度な音声認識技術により、会議の音声データを自動で文字起こしします。
テキストの要約 Amazon Bedrock 文字起こしされた長文テキストから、AIが重要なポイントを抽出し、簡潔な要約を生成します。
多言語への翻訳 Amazon Translate 生成された要約を、指定した言語へ自然で正確に翻訳します。

【初心者でもわかる】AWSの生成AIの始め方|3つのステップ

AWSの生成AIサービスは、専門的な知識がない初心者の方でも直感的に利用を開始できるよう設計されています。特に「Amazon Bedrock」のようなサービスを利用すれば、多様な生成AIモデルをAPI経由で手軽に試すことが可能です。 この章では、AWSのアカウント作成から、実際に生成AIモデルを使ってアプリケーション開発を始めるまでの具体的な手順を3つのステップに分けて、初心者にもわかりやすく解説します。

ステップ1 AWSアカウントの作成

AWSの生成AIサービスを利用するためには、まずAWSアカウントが必要です。アカウントの作成自体は無料で、画面の指示に従うだけで10分程度で完了します。 ただし、無料利用枠を超えてサービスを利用した場合の支払い情報を登録するために、クレジットカードが必要となる点にご注意ください。

アカウント作成に必要なものは以下の通りです。

  • メールアドレス(過去にAWSアカウントで利用していないもの)
  • クレジットカードまたはデビットカード
  • 電話番号(本人確認のためSMSまたは音声通話で利用)

アカウント作成の具体的な手順は以下の通りです。

  1. AWSサインアップページへのアクセス: まず、AWSの公式サイトにアクセスし、「AWSアカウントを作成」ボタンをクリックします。
  2. ルートユーザー情報の入力: 画面の指示に従い、メールアドレス、AWSアカウント名、ルートユーザーのパスワードを入力します。
  3. 連絡先情報の入力: 個人利用かビジネス利用かを選択し、氏名、住所、電話番号などの連絡先情報を入力します。
  4. 請求情報の入力: クレジットカードまたはデビットカードの情報を入力します。
  5. 本人確認: SMS(ショートメッセージ)または音声通話による本人確認を行います。画面に表示されるコードを入力して認証を完了させます。
  6. サポートプランの選択: サポートプランを選択します。特別な理由がなければ、追加料金のかからない「ベーシックサポート(無料)」を選択すれば問題ありません。
  7. 作成完了: 登録が完了すると、AWSマネジメントコンソールへサインインできるようになります。

より詳細な手順については、AWS アカウント作成の流れの公式ドキュメントも併せてご確認ください。

ステップ2 利用したいモデルへのアクセス有効化

AWSアカウントを作成したら、次に生成AIモデルを利用するための設定を行います。ここでは、多様な基盤モデル(Foundation Model)をAPIで利用できる「Amazon Bedrock」を例に説明します。

Amazon Bedrockでは、セキュリティの観点から、デフォルトではほとんどの基盤モデルへのアクセスが許可されていません。 そのため、利用したいモデルを個別に選択し、アクセスを有効化するリクエストを行う必要があります。

モデルアクセスの有効化手順は以下の通りです。

  1. AWSマネジメントコンソールにサインイン: 作成したAWSアカウントでマネジメントコンソールにログインします。
  2. Amazon Bedrockのページへ移動: サービス検索窓で「Bedrock」と入力し、Amazon Bedrockのサービスページを開きます。
  3. 「モデルアクセス」を選択: 左側のナビゲーションメニューから「モデルアクセス」をクリックします。
  4. モデルアクセスの管理: 右上にある「モデルアクセスを管理」ボタンをクリックします。利用可能なモデルの一覧が表示されます。
  5. 利用したいモデルを選択: Anthropic社の「Claude」やAmazon社の「Titan」など、利用したいモデルのチェックボックスをオンにします。
  6. 変更を保存: 画面下部の「変更を保存」をクリックしてリクエストを送信します。
  7. アクセスの確認: 「モデルアクセス」のページに戻り、リクエストしたモデルの「アクセスステータス」が「アクセスが付与されました」に変われば、そのモデルを利用する準備は完了です。

【重要】
AWSは、2025年9月29日以降、この手動でのモデルアクセス有効化作業を不要にし、すべての基盤モデルが自動的に有効化されるようになると発表しています。 ただし、Anthropic社のClaudeモデルなど、一部のモデルでは初回利用時にユースケースの提出が別途必要になる場合があります。 今後は、IAMポリシーやSCP(サービスコントロールポリシー)によるアクセス制御がより重要になります。

ステップ3 APIやSDKを使ってアプリケーションを開発

利用したいモデルへのアクセスが有効になったら、いよいよ生成AIを活用したアプリケーションの開発に進みます。開発方法は、プログラミングの知識レベルに応じて複数の選択肢があります。

プログラミング不要で試す方法:プレイグラウンド

まずはコーディングなしで手軽に生成AIの性能を試したいという方には、Amazon Bedrockのコンソール内にある「プレイグラウンド」がおすすめです。 プレイグラウンドでは、チャット形式での対話、文章生成、画像生成などを画面上から直感的に実行でき、プロンプト(指示文)に対するモデルの応答をすぐに確認できます。

本格的なアプリケーションを開発する方法:AWS SDK

自身のアプリケーションやシステムに生成AI機能を組み込む場合は、AWS SDK(Software Development Kit)を利用します。SDKは、さまざまなプログラミング言語からAWSのサービスを簡単に操作するためのライブラリやツール群です。

特にPython用のSDKである「Boto3」は、機械学習やAI開発の分野で広く利用されており、豊富なドキュメントやサンプルコードが公開されています。

SDKを利用した開発の基本的な流れは以下の通りです。

  1. IAMユーザーの準備と権限設定: アプリケーションからAWSサービスへ安全にアクセスするために、IAM(Identity and Access Management)で専用のユーザーやロールを作成し、「AmazonBedrockFullAccess」などの適切な権限ポリシーをアタッチします。
  2. AWS SDKのインストール: 利用するプログラミング言語に合わせてSDKを開発環境にインストールします。例えばPythonの場合は、以下のコマンドでBoto3をインストールします。
    pip install boto3
  3. コーディング: SDKを使って、Amazon BedrockのAPIを呼び出すコードを記述します。例えば、Boto3を使ってテキスト生成モデルを呼び出す場合、クライアントを初期化し、invoke_model関数を実行してプロンプトを送信します。

AWSでは、主要なプログラミング言語向けにSDKを提供しています。以下に代表的なものをまとめました。

プログラミング言語 AWS SDK
Python AWS SDK for Python (Boto3)
JavaScript/TypeScript AWS SDK for JavaScript
Java AWS SDK for Java
Go AWS SDK for Go
.NET (C#) AWS SDK for .NET
Ruby AWS SDK for Ruby

これらのSDKを活用することで、Webアプリケーション、業務システム、データ分析パイプラインなど、既存の環境にシームレスに高度な生成AI機能を統合することが可能になります。詳細な利用方法については、AWS SDK for Python (Boto3) の公式ドキュメントなどをご参照ください。

【他社サービスとの比較】AWS生成AIの強み3つ

AWSの生成AIサービスが多くの企業から選ばれるのには、明確な理由があります。Microsoft AzureやGoogle Cloud Platform (GCP)といった他の主要クラウドサービスと比較した際に、AWSが持つ独自の強みはビジネスの競争力を大きく左右します。ここでは、AWS生成AIが持つ3つの強みを掘り下げて解説します。

①豊富なモデル選択肢とカスタマイズ性

AWS生成AIの最大の強みは、その圧倒的なモデルの選択肢の多さです。 中核サービスであるAmazon Bedrockでは、自社開発の高性能モデル「Amazon Titan」ファミリーに加え、Anthropic社の「Claude」、Meta社の「Llama」、Stability AI社の「Stable Diffusion」など、業界をリードする多様なサードパーティ製の基盤モデル(FM)を単一のAPIで利用できます。 これにより、企業は特定のユースケースやコスト、性能要件に最も合致したモデルを自由に選択し、テストすることが可能です。

この「マルチモデル対応」は、特定ベンダーのモデルにロックインされるリスクを回避し、将来にわたって最適なモデルを柔軟に選択し続けられるという大きなメリットをもたらします。 例えば、クリエイティブなテキスト生成にはClaude、コストを抑えたいタスクにはLlama、高品質な画像生成にはStable Diffusionといった使い分けが、すべてAWSのプラットフォーム上で完結します。

他社サービスと比較すると、その違いは明確です。

クラウドプラットフォーム 主要な生成AIサービス モデル選択の柔軟性
AWS Amazon Bedrock 非常に高い。自社モデル(Titan)に加え、Anthropic、Meta、Stability AIなど多数のサードパーティモデルを選択可能。
Microsoft Azure Azure OpenAI Service OpenAIのモデル(GPTシリーズなど)が中心。最新のOpenAIモデルを迅速に利用できる強みがあるが、選択肢は限定的。
Google Cloud Vertex AI 自社開発のGeminiファミリーが中心。Model Gardenを通じてオープンソースモデルも提供するが、Bedrockほどの多様性はない。

さらに、AWSはこれらのモデルを自社データで安全にカスタマイズする機能も提供しています。ファインチューニングやRAG(Retrieval Augmented Generation:検索拡張生成)といった手法を用いることで、専門知識がなくてもモデルの精度を向上させ、自社のビジネスに特化した応答を生成させることが可能です。

②AWSの堅牢なセキュリティとガバナンス

生成AIをビジネスで活用する上で、セキュリティとデータプライバシーは最も重要な懸念事項の一つです。AWSはこの点において、長年のクラウド事業で培ってきたエンタープライズレベルのセキュリティとガバナンス機能を生成AIサービスにも適用しており、他社に対する大きな強みとなっています。

特に重要なのは、Amazon Bedrockなどのサービスでは、顧客が入力したデータやカスタマイズに使用したデータが、基盤モデルのトレーニングに利用されることはない、と明確に約束されている点です。これにより、機密情報や個人情報を含むデータを安心して扱うことができます。

具体的なセキュリティ機能としては、以下のようなものが挙げられます。

  • データ暗号化: 保管時および転送中のデータはすべて暗号化されます。
  • プライベート接続: AWS PrivateLinkを利用することで、インターネットを経由せず、セキュアなプライベートネットワーク経由でサービスにアクセスできます。
  • アクセス制御: AWS Identity and Access Management (IAM) を使用して、誰がどのモデルやデータにアクセスできるかをきめ細かく制御できます。
  • コンプライアンス: GDPR、HIPAA、PCI DSSなど、数多くの国際的なコンプライアンス基準に対応しています。

これらの機能は、金融、医療、公共機関といった特に高いセキュリティ要件が求められる業界でも、AWSの生成AIが選ばれる理由となっています。 既存のAWS環境で構築したセキュリティポリシーや監査の仕組みを、生成AIワークロードにもそのまま適用できる点も、運用負荷を軽減する上で大きなメリットです。

③既存のAWS環境とのシームレスな連携

多くの企業が既にデータストレージ、データベース、コンピューティング基盤としてAWSを利用しています。AWS生成AIの強みは、これらの既存の豊富なAWSサービス群と極めてスムーズに連携できる点にあります。 これにより、企業はこれまでに蓄積してきたデータ資産を最大限に活用し、生成AIを自社のワークフローへ迅速に組み込むことが可能です。

例えば、以下のような連携が考えられます。

  • データ連携: Amazon S3に保存された大量のドキュメントをデータソースとして、Amazon BedrockのRAG機能を使い、社内情報に詳しいQ&Aチャットボットを構築する。
  • サーバーレス連携: Amazon S3へのファイルアップロードをトリガーにAWS Lambdaを起動し、Amazon Bedrockでテキストを要約、その結果をAmazon DynamoDBに保存するといった一連の処理を自動化する。
  • 分析基盤連携: Amazon Redshiftなどのデータウェアハウスに蓄積されたビジネスデータを活用し、Amazon SageMakerで需要予測モデルを構築・チューニングする。

このように、データ準備からモデルの実行、アプリケーションへの組み込み、そして運用監視(Amazon CloudWatchなど)まで、すべてのプロセスをAWSのエコシステム内で完結させることができます。 これにより、開発の複雑さが軽減され、市場投入までの時間を短縮できるだけでなく、運用の一貫性と効率性も大幅に向上します。

AWSの生成AIに関するよくある質問(FAQ)

この章では、AWSの生成AIサービスに関して多く寄せられる質問とその回答をまとめました。サービス選定や導入検討の参考にしてください。

Q1 AWS生成AIと他のAIサービスの違いは何ですか

AWSの生成AIサービスは、Google CloudのVertex AIやMicrosoftのAzure OpenAI Serviceといった他のクラウドプラットフォームが提供するサービスと比較して、いくつかの特徴的な違いがあります。主な違いは、利用できる基盤モデルの多様性、既存のAWSサービスとの統合性、そしてエンタープライズ向けの堅牢なセキュリティとガバナンスにあります。

AWSは、Amazon自身が開発した「Titan」モデルに加え、Anthropic社の「Claude」、Meta社の「Llama」、Stability AI社の「Stable Diffusion」など、複数の主要なAI開発企業が提供する高性能な基盤モデルを、単一のAPI(Amazon Bedrock)を通じて利用できる「モデルの選択肢の広さ」を強みとしています。 これにより、特定のモデルにロックインされることなく、用途やコストに応じて最適なモデルを柔軟に選択・切り替えすることが可能です。

また、多くの企業が既に利用しているS3(ストレージ)やLambda(サーバーレスコンピューティング)といった100を超えるAWSサービス群とシームレスに連携できる点も大きなメリットです。 これにより、既存のデータ基盤やアプリケーションに、生成AI機能を迅速かつ安全に組み込むことができます。

Q2 Amazon Bedrockで利用できるモデルは何ですか

Amazon Bedrockでは、2025年時点でテキスト生成、チャット、画像生成、埋め込みなど、多様なタスクに対応する最先端の基盤モデル(FM)を利用できます。 主要なモデル提供元と代表的なモデルは以下の通りです。

モデル提供元 代表的な基盤モデル 主な特徴
Amazon Titan Text, Titan Embeddings, Titan Multimodal AWSが開発。テキスト生成、要約、ベクトル化、マルチモーダル検索など幅広い用途に対応。
Anthropic Claude 3.5 Sonnet, Claude 3 Opus, Claude 3 Haiku 高性能な対話能力と長文のコンテキスト処理に定評があり、特に日本語性能が高いと評価されています。
Meta Llama 3.1 オープンソースで開発されている高性能な大規模言語モデル。汎用性が高く、様々なタスクで利用可能です。
Cohere Command R+, Embed エンタープライズ向けに特化しており、RAG(検索拡張生成)や多言語対応に強みを持ちます。
Mistral AI Mistral Large, Mistral 7B オープンなモデルと商用モデルを提供。効率性とパフォーマンスのバランスに優れています。
AI21 Labs Jurassic-2 多言語対応の大規模言語モデルで、特にスペイン語やフランス語などの言語に強いとされています。
Stability AI Stable Diffusion XL 高品質な画像生成モデルとして広く知られており、テキストからリアルな画像を生成できます。

上記以外にも新しいモデルが随時追加されており、利用者は常に最新のテクノロジーを選択することが可能です。 利用可能なモデルの最新情報については、AWSの公式ドキュメントをご確認ください。

Q3 プログラミング知識がなくてもAWS生成AIは使えますか

はい、プログラミング知識がなくても利用できるサービスがあります。AWSは、エンジニアや開発者だけでなく、ビジネスユーザーや企画担当者など、より幅広い層が生成AIを活用できるよう、ノーコードまたはローコードで利用可能なサービスを提供しています。

代表的なサービスが、ビジネス向けAIアシスタントの「Amazon Q Business」です。 このサービスを使えば、社内ドキュメントやデータソースと連携させ、専門的な知識に関する質問に答えたり、レポートを要約したりするチャットボットを、プログラミングなしで構築できます。

また、「PartyRock」というサービスでは、直感的なUIを通じてプロンプトを入力するだけで、テキスト生成や画像生成などの機能を持つ小規模なアプリケーションを楽しみながら作成できます。 これは、生成AIで何ができるかを試すのに最適なプレイグラウンドです。

ただし、Amazon BedrockのAPIを直接利用して自社のアプリケーションにAI機能を組み込む場合や、Amazon SageMakerでモデルのファインチューニングを詳細に行う場合など、より高度で専門的なカスタマイズを行う際には、Pythonなどのプログラミング知識が必要となります。

Q4 AWS生成AIのセキュリティは安全ですか

はい、AWSは生成AIサービスにおいても、エンタープライズレベルの高いセキュリティ基準を適用しており、安全に利用するための多層的な仕組みを提供しています。

まず、Amazon Bedrockなどのサービスでは、「お客様のデータが基盤モデルのトレーニングに使用されることはない」と明確にポリシーで定められています。 ユーザーが入力したプロンプトや生成されたデータは、サービス提供元が自社のモデル改善のために利用することはありません。

技術的な対策としては、以下のようなAWSの標準的なセキュリティ機能と連携して、データを保護します。

  • データの暗号化: AWS KMS(Key Management Service)を利用して、保管時および転送中のデータを暗号化できます。
  • ネットワーク分離: AWS PrivateLinkを利用することで、インターネットを経由せず、セキュアなプライベートネットワーク内でサービスにアクセスできます。
  • アクセス制御: AWS IAM(Identity and Access Management)を使って、ユーザーやロールごとに、どのモデルやAPIにアクセスできるかをきめ細かく制御できます。

これらの機能により、機密情報や個人データを含むワークロードでも、コンプライアンス要件を満たしながら安全に生成AIを活用することが可能です。 詳しくは、AWSの生成AIセキュリティに関するページでご確認いただけます。

Q5 日本語に対応しているAWS生成AIサービスはありますか

はい、多くのAWS生成AIサービスが日本語に対応しており、その精度も日々向上しています。

特にAmazon Bedrockで利用できるモデルの中では、Anthropic社のClaude 3ファミリー(Opus, Sonnet, Haiku)やCohere社のCommand R+などが、高い日本語性能を持つと評価されています。 これらのモデルは、自然な日本語での対話、長文の読解・要約、複雑な指示の理解に優れています。

各サービスの日本語対応状況は以下の通りです。

サービス名 日本語対応状況
Amazon Bedrock 対応済み。Claude 3、Command R+、Mistral Large 2など、多くのモデルが日本語をサポートしています。
Amazon Q 対応済み。ビジネスチャットや開発者支援機能で日本語を利用できますが、一部機能はまだ準備中の場合があります。
Amazon CodeWhisperer 対応済み。コメントに日本語で指示を書くことで、Python、Java、JavaScriptなどのコードを生成できます。
Amazon Lex 対応済み。日本語での対話型チャットボットを構築できます。
Amazon Polly 対応済み。高品質な日本語のテキスト読み上げが可能です。
Amazon Transcribe 対応済み。日本語の音声ファイルを高精度でテキストに変換します。
Amazon Translate 対応済み。日本語と多言語間の機械翻訳が可能です。
Amazon Comprehend 対応済み。日本語テキストからエンティティ抽出、感情分析などを行えます。

このように、テキスト生成から音声、翻訳まで、幅広い用途で日本語の生成AIを活用できる環境が整っています。

まとめ

本記事では、AWSが提供する多岐にわたる生成AIサービスについて、主要なサービスの詳細から料金体系、具体的なユースケース、そして初心者でも始められるステップまでを網羅的に解説しました。AWSの生成AIは、単一のツールではなく、ビジネスのあらゆる課題に対応可能なサービス群であることがお分かりいただけたかと思います。

この記事の重要なポイントを以下にまとめます。

  • 多様なサービスラインナップ:基盤モデルをAPIで手軽に利用できる「Amazon Bedrock」、ビジネス特化型アシスタント「Amazon Q」、AIコーディング支援「Amazon CodeWhisperer」など、用途に応じて最適なサービスを選択できます。
  • 豊富なモデル選択肢とカスタマイズ性:Amazon Bedrockでは、自社開発のTitanだけでなく、Anthropic社のClaudeやMeta社のLlamaなど、最先端の基盤モデルを自社のデータでファインチューニングして利用可能です。
  • 高いセキュリティと既存環境との連携:AWSが長年培ってきた堅牢なセキュリティ基盤上で生成AIを利用でき、既存のAWS環境とシームレスに連携させることで、開発を加速させることができます。
  • 手軽な導入ステップ:AWSアカウントを作成し、利用したいモデルへのアクセスを有効化するだけで、すぐに生成AIの活用を始められます。無料利用枠も用意されているため、低リスクで試すことが可能です。

AWSの生成AIは、企業のデジタルトランスフォーメーションを強力に推進する可能性を秘めています。コンテンツ生成の自動化、社内業務の効率化、新たな顧客体験の創出など、その活用方法は無限大です。まずは無料利用枠を活用して、AWSの生成AIがもたらす革新的なパワーを実際に体験することから始めてみてはいかがでしょうか。

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