SAP NetWeaverは、SAP ERPなどのシステムを統合・連携する基盤プラットフォームです。しかし、バージョン7.5のサポート終了が2027年末に迫り、多くの企業がSAP S/4HANAやSAP BTPへの移行を迫られています。本記事では、NetWeaverの基礎知識からサポート終了のリスク、最適な移行先や手順までを徹底解説します。
この記事で分かること
- SAP NetWeaverの役割と主な機能
- サポート期限が企業システムに与える影響
- SAP S/4HANAやSAP BTPへの移行選択肢
- 移行プロジェクトを進めるための具体的手順
自社のシステム刷新に向けたロードマップを描き、スムーズな移行を実現するための結論がここで分かります。
SAP NetWeaverの基礎知識と役割
SAP NetWeaver(エスエーピー ネットウィーバー)は、SAP社が提供する包括的な統合テクノロジープラットフォームです。SAPシステムの基盤として機能し、企業のビジネスプロセスを支える重要な役割を担っています。
SAP NetWeaverが開発された背景
2000年代初頭、多くの企業では業務ごとに異なるシステムが導入され、データの分断やシステム間の連携不足が大きな課題となっていました。このようなシステムのサイロ化を解消するため、SAP社は異なるシステムやアプリケーションをシームレスに統合し、柔軟なデータ連携を実現するプラットフォームとしてSAP NetWeaverを開発しました。これにより、企業は既存のIT資産を活かしながら、変化の激しいビジネス環境に迅速に対応できるようになりました。
SAPシステムにおけるSAP NetWeaverの立ち位置
SAP NetWeaverは、SAP ERP(SAP ECC)やSAP CRM、SAP SCMといった主要な業務アプリケーションを稼働させるための技術的な土台(ミドルウェア)として位置づけられています。OSやデータベースの違いを吸収し、アプリケーションに対して共通の実行環境を提供することが最大の役割です。
- 業務アプリケーションの実行基盤(ABAPおよびJava環境)の提供
- 異機種混在環境におけるシステム統合とデータ連携の実現
- ユーザーアクセスの統合窓口となるポータル機能の提供
つまり、SAP NetWeaverが存在することで、複雑なIT環境下でもSAPシステムが安定して稼働し、他のシステムとも円滑に連携することが可能となっています。
SAP NetWeaverを構成する主なコンポーネント
SAP NetWeaverは、単一のソフトウェアではなく、特定の機能を持つ複数のコンポーネント群から構成されています。企業の要件に合わせて必要なコンポーネントを選択し、導入することが可能です。代表的なコンポーネントとその役割は以下の通りです。
| コンポーネント名 | 略称 | 主な役割と機能 |
|---|---|---|
| SAP NetWeaver Application Server | AS | SAPアプリケーションの実行環境を提供する中核コンポーネントです。ABAPとJavaの両方のプログラミング言語に対応しています。 |
| SAP NetWeaver Business Warehouse | BW | 社内外の様々なデータを収集・統合し、多角的なデータ分析やレポーティングを行うためのデータウェアハウス機能を提供します。 |
| SAP NetWeaver Process Integration | PI | SAPシステムと非SAPシステム間のデータ連携やメッセージ交換を仲介し、企業内外のビジネスプロセスの統合を実現します。 |
| SAP NetWeaver Enterprise Portal | EP | 複数のシステムやアプリケーションへのアクセスを単一のWebインターフェースに統合し、ユーザーの利便性を向上させます。 |
| SAP NetWeaver Master Data Management | MDM | 企業内に散在する顧客や製品などのマスターデータを一元管理し、データの整合性と品質を保ちます。 |
これらのコンポーネントが相互に連携することで、堅牢かつ拡張性の高いシステム環境が構築されます。SAP NetWeaverの詳細なアーキテクチャや各コンポーネントの技術仕様については、SAP Help PortalのSAP NetWeaver公式ドキュメントでも確認することができます。
SAP NetWeaverの主要な機能とメリット
SAP NetWeaverは、企業のITシステム全体を統合し、効率的かつ安全な運用を実現するための強力なプラットフォームです。単なるミドルウェアにとどまらず、ビジネスプロセスを最適化するための多彩な機能を備えています。ここでは、SAP NetWeaverが提供する主要な機能と、それによって企業が得られる具体的なメリットについて解説します。
異なるシステム間のデータ連携機能
企業内には、SAP ERPをはじめとする基幹システムだけでなく、CRMやSFA、さらには他社が提供する外部クラウドサービスなど、多種多様なシステムが混在しています。SAP NetWeaverは、これらのサイロ化したシステム同士をシームレスに接続し、データ連携を円滑に行う機能を提供します。
特に「SAP Process Integration(SAP PI)」および「SAP Process Orchestration(SAP PO)」と呼ばれるコンポーネントは、異なるフォーマットやプロトコルを持つシステム間のメッセージ変換やルーティングを担います。これにより、複雑なインターフェース開発を最小限に抑え、システム全体の柔軟性と拡張性を高めることが可能です。
| 連携機能のメリット | 具体的な効果 |
|---|---|
| 開発コストの削減 | 標準化されたアダプタを利用することで、個別開発(アドオン)を減らし、開発工数を大幅に削減できます。 |
| リアルタイムな情報共有 | システム間のデータ遅延を防ぎ、経営層から現場まで最新のビジネスデータを共有・活用できます。 |
| ビジネスプロセスの自動化 | 複数システムをまたぐ複雑な業務フローを自動化し、人為的ミスの防止と業務効率化を実現します。 |
ユーザーインターフェースの統合と効率化
複数のシステムを利用する環境では、ユーザーがシステムごとに異なる画面にログインし、操作方法を覚えなければならないという課題が生じます。SAP NetWeaverは、「SAP Enterprise Portal」を通じて、これらの散在する情報やアプリケーションを一つの統合されたインターフェースに集約します。
ポータル画面を通じて、ユーザーは自分の役割や権限に応じたパーソナライズされた情報に一元的にアクセスできるようになります。また、ウェブブラウザベースで操作できるため、端末や場所を問わず業務を遂行できる点も大きなメリットです。直感的な操作性は、システム導入時のユーザートレーニングにかかる時間やコストの削減にも直結します。
強固なセキュリティと権限管理
企業システムの統合が進むにつれて、情報漏洩や不正アクセスを防ぐためのセキュリティ対策はより一層重要になります。SAP NetWeaverは、包括的なセキュリティ機能と一元的なID管理機能を提供し、企業のコンプライアンス遵守を強力に支援します。
- シングルサインオン(SSO)の実現:一度の認証で連携するすべてのシステムにアクセス可能になり、ユーザーの利便性向上とパスワード管理の負担を軽減します。
- 一元的な権限管理:ユーザーの役職や所属部署に応じたきめ細やかなアクセス制御を中央で集中管理できます。
- 監査ログとモニタリング:システムの利用状況やデータの変更履歴を正確に記録し、不正な操作を迅速に検知します。
このように、SAP NetWeaverはデータの連携、操作性の向上、そして安全性の確保という3つの柱で、企業のIT基盤を強固に支えます。詳細な技術仕様やコンポーネントの構成については、SAP Help PortalのSAP NetWeaverドキュメントなどの公式情報も参考にしながら、自社の要件に合わせた活用方法を検討することが重要です。
SAP NetWeaverのサポート期限と2025年問題
SAP NetWeaverを運用する企業にとって、サポート期限の把握と対応は急務です。いわゆる「2025年問題」として注目されていましたが、現在は方針が変更されています。ここでは、サポート終了時期やそれに伴うリスク、延長サポートの条件について解説します。
SAP NetWeaver 7.5のメインストリームサポート終了時期
SAP社は当初、SAP ERP製品のメインストリームサポートを2025年末に終了すると発表しており、これが「2025年問題」と呼ばれていました。しかし、2020年2月の発表により、SAP Business Suite 7の保守期限延長に連動する形で、SAP NetWeaver 7.5のメインストリームサポートは2027年末まで延長されました。
この延長により、企業はシステム移行や次世代プラットフォーム(SAP S/4HANAなど)へのロードマップを策定するための猶予期間を得ることができました。ただし、利用している製品やバージョンによって保守期限が異なる場合があるため、自社のシステム環境を正確に把握しておくことが重要です。
サポート終了が企業システムに与える影響とリスク
メインストリームサポートが終了した状態でシステムを稼働させ続けると、企業にとってさまざまなリスクが生じます。主な影響は以下の通りです。
- セキュリティリスクの増大:新たな脆弱性が発見されてもセキュリティパッチが提供されず、サイバー攻撃の標的になりやすくなります。
- 法改正・コンプライアンスへの対応不可:税制変更や法改正に伴うシステムのアップデートが提供されなくなるため、コンプライアンス違反のリスクが高まります。
- 障害時の業務停止リスク:システムに不具合が発生した際、SAP公式のサポートを受けられず、復旧に時間がかかり業務が長期間停止する恐れがあります。
延長サポートの条件と追加費用
2027年末のメインストリームサポート終了後も、システム移行が間に合わない企業向けに、2030年末までオプションとして「延長保守(Extended Maintenance)」が提供されます。延長保守を利用するための条件と費用は以下の通りです。
| 項目 | 詳細 |
|---|---|
| 対象期間 | 2028年1月1日から2030年12月31日まで |
| 追加費用 | 保守費用の基礎に対して2%の追加費用(プレミアム)が発生 |
| サポート内容 | メインストリームサポートと同等のサービス(セキュリティ更新や法改正対応など) |
なお、延長保守を契約しない場合はCustomer-Specific Maintenance(CSM)へと移行します。CSMでは既知の不具合に対する解決策の提供など、非常に限定的なサポートしか受けられなくなるため注意が必要です。追加費用を支払って延長保守を受けるか、2027年までに移行を完了させるか、早急な判断が求められます。
SAP NetWeaverからの主な移行先と選択肢
SAP NetWeaverのサポート終了が迫る中、企業は将来のビジネス要件を見据えたシステム移行を検討する必要があります。主な移行先としては、次世代ERPへの移行や、クラウドプラットフォームの活用、そしてそれらを組み合わせたハイブリッド運用が挙げられます。ここでは、それぞれの選択肢の詳細とメリットについて解説します。
SAP S/4HANAへの移行によるシステム刷新
SAP NetWeaverを基盤とする従来のSAP ERPを利用している企業にとって、次世代ERPであるSAP S/4HANAを標準的な移行先として採用してシステムを刷新することが最も一般的なアプローチです。インメモリデータベースを前提に設計されたSAP S/4HANAは、圧倒的なデータ処理速度とリアルタイムな分析能力を備えており、企業のデジタルトランスフォーメーションを強力に推進します。
システムを刷新する際の移行手法には、主に以下の3つのアプローチが存在します。
- グリーンフィールド(新規導入):既存のシステムや業務プロセスをゼロベースで見直し、新規に構築する手法です。業務の標準化を推進しやすいメリットがあります。
- ブラウンフィールド(システムコンバージョン):既存のデータやアドオンプログラムをそのまま新しい環境へ移行する手法です。導入期間やコストを抑えやすいのが特徴です。
- ブルーフィールド(選択的データ移行):上記2つの中間的な手法で、必要なデータや機能だけを選択して移行します。
近年では、インフラの運用負荷を軽減するために、クラウド版のサービスを活用してシステム刷新を図る企業も増加傾向にあります。
クラウドプラットフォームSAP BTPへの機能移行
SAP NetWeaver上で稼働していた独自のアドオン開発や外部システムとの連携機能については、既存のアドオン資産をSAP BTPへ移行してERP本体のクリーンコアを実現することが強く推奨されています。
従来のシステムでは、ERP本体に直接アドオンを追加していたため、バージョンアップ時の影響調査や改修に多大なコストがかかっていました。SAP BTPを用いてERPの外部で拡張開発を行う「サイドバイサイド拡張」を採用することで、ERP本体を標準に近い状態で保つことが可能になります。
クラウドプラットフォームへの移行により得られる主な効果は以下の通りです。
| 効果・メリット | 詳細 |
|---|---|
| 開発・拡張の柔軟性向上 | 最新のクラウドネイティブな技術や多様なプログラミング言語を利用して、迅速にアプリケーションを開発できます。 |
| シームレスなデータ連携 | SAPシステムだけでなく、サードパーティ製のシステムやクラウドサービスとのデータ統合が容易になります。 |
| 運用保守コストの最適化 | フルマネージド型の環境を利用することで、インフラの維持管理にかかる工数を大幅に削減できます。 |
オンプレミスとクラウドのハイブリッド運用
すべてのシステムを一度にクラウドや最新のERPへ移行することが難しい場合、既存資産を活かしつつ段階的にクラウドへ移行するハイブリッド運用を選択するのも有効な手段です。特に、セキュリティ要件が極めて厳しいデータや、工場などの拠点でミリ秒単位の応答速度が求められるシステムについては、引き続きオンプレミス環境に残すという判断がなされることがあります。
ハイブリッド運用の一般的な構成例は以下の通りです。
- 基幹となる財務や人事などのバックオフィス業務はクラウド上の最新環境へ移行する。
- 製造現場の実行システムや特定の機密データを扱うシステムはオンプレミスで稼働させる。
- 両者のシステム間連携やデータ統合、新たなフロントエンド開発はクラウドプラットフォーム上で一元的に管理する。
このように適材適所でシステムを配置することで、既存のIT資産を有効活用しながら、段階的かつ安全にクラウドシフトを進めることが可能です。企業ごとの予算やリソース、ビジネスの成長戦略に合わせて、最適なロードマップを描くことが重要になります。
SAP NetWeaverの移行プロジェクトを進める手順
SAP NetWeaverのサポート終了を見据えた移行プロジェクトは、企業にとって単なるシステムリプレイスではなく、業務プロセス全体を見直すデジタルトランスフォーメーション(DX)の重要な契機となります。プロジェクトの規模が大きく、関連するシステムやステークホルダーも多岐にわたるため、行き当たりばったりの進行は大きなリスクを伴います。ここでは、移行プロジェクトを安全かつスムーズに進めるための具体的な手順を3つのステップに分けて解説します。
現状のシステム環境と課題の棚卸し
移行プロジェクトの第一歩は、現在稼働しているSAPシステム全体のアセスメント(事前評価)を実施し、現状の構成や課題を正確に把握することです。長年運用されてきたSAP NetWeaver環境には、ブラックボックス化したアドオンプログラムや、複雑に絡み合った外部システムとのインターフェースが多数存在しているケースが少なくありません。
現状の棚卸しは、主に以下のステップで進めます。
- 既存システムの構成確認:サーバー台数、OS、データベースの種類やバージョンを特定する。
- アドオンプログラムの分析:使用頻度の低いアドオンを洗い出し、標準機能への移行(Fit to Standard)が可能か評価する。
- データ量の可視化:蓄積されたデータ量を確認し、移行前にアーカイブや削除すべきデータを分類する。
この段階で精度の高いアセスメントを行うことが、後続のスケジュールやコストの見積もり精度に直結します。不要なプログラムやデータを削減することで、移行にかかる時間と費用を大幅に抑えることが可能です。
移行先の選定とロードマップの策定
現状の棚卸しが完了したら、次に自社の業務要件や将来のビジネス戦略に合わせた最適な移行先と移行方式を決定することが求められます。SAP S/4HANAへの移行や、SAP BTP(Business Technology Platform)を活用したクラウドネイティブな環境への刷新など、企業の目指す姿によって選択肢は異なります。
特にSAP S/4HANAへの移行においては、主に3つの移行アプローチ(移行方式)が存在します。それぞれの特徴を理解し、自社に最適な方式を選択して中長期的なロードマップを策定します。
| 移行方式(アプローチ) | 概要 | 主なメリット |
|---|---|---|
| グリーンフィールド(新規導入) | 既存システムを破棄し、SAP S/4HANAをゼロから新規構築する方式。 | 過去の不要なアドオンを一掃し、業務プロセスの標準化(Fit to Standard)を実現しやすい。 |
| ブラウンフィールド(システムコンバージョン) | 既存のSAP ERP環境のデータやアドオンをそのままSAP S/4HANAへ変換・移行する方式。 | 業務への影響を最小限に抑えられ、移行期間とコストを比較的低く抑えることができる。 |
| ブルーフィールド(選択的データ移行) | 新規構築した環境に対し、既存システムから必要なデータや設定のみを選択して移行する方式。 | 過去の資産を活かしつつ、システム構造の刷新と業務改善を両立できる。 |
ロードマップの策定においては、要件定義からPoC(概念実証)、本番移行、そして移行後の運用保守体制の構築までを含めた包括的な計画を立てることが重要です。
信頼できるSAPパートナー企業の選び方
SAP NetWeaverからの移行は高度な専門知識を要するため、自社単独での完結は困難です。そのため、移行プロジェクトの成功を左右する最も重要なプロセスが、共にプロジェクトを推進するベンダー(SAPパートナー企業)の選定です。
ベンダーを選定する際は、単にコストの安さだけで判断するのではなく、SAPパートナーエコシステムに参画している認定パートナーの中から、以下の基準を満たす企業を慎重に見極める必要があります。
- 同業種・同規模でのSAP S/4HANA移行やSAP BTP導入の豊富な実績があるか
- 最新のSAPソリューションに関する専門資格を持ったコンサルタントやエンジニアが多数在籍しているか
- アセスメントから要件定義、移行作業、稼働後の運用保守まで一気通貫でサポートできる体制があるか
- 自社のビジネス課題を深く理解し、業務改善に向けたプロアクティブな提案を行ってくれるか
複数のパートナー企業に提案依頼書(RFP)を提示し、コンペティション形式で提案内容やプロジェクトマネジメントの遂行能力を比較検討することをおすすめします。自社と伴走し、中長期的なビジネスの成長を支援してくれる信頼できるパートナーを見つけることが、プロジェクトを成功に導く最大の鍵となります。
SAP NetWeaverに関するよくある質問
SAP NetWeaverの読み方を教えてください
SAP NetWeaverの読み方は「エスエイピー ネットウィーバー」です。SAP製品全般に共通することですが、SAPを「サップ」と読むのは正式な呼称ではなく、アルファベットをそのまま「エスエイピー」と発音するのが正しい読み方となります。
SAP NetWeaverとSAP ERPの違いは何ですか
SAP NetWeaverとSAP ERPは、システム全体における役割が明確に異なります。一言で表すと、SAP NetWeaverはシステムを動かすための「土台(プラットフォーム)」であり、SAP ERPはその土台の上で動く「業務アプリケーション」です。
それぞれの役割の違いを分かりやすく整理すると、以下のようになります。
| 製品名 | 役割と位置づけ | 具体的な機能の例 |
|---|---|---|
| SAP NetWeaver | 統合アプリケーションプラットフォーム(ミドルウェア) | システム間連携、ユーザー認証、開発環境の提供など |
| SAP ERP | 統合基幹業務システム(アプリケーション) | 財務会計、販売管理、人事管理、生産管理など |
このように、SAP ERPが実際の業務プロセスを処理するのに対し、SAP NetWeaverはデータベースとの接続や他システムとの連携など、裏側の技術的な基盤を支えています。
SAP NetWeaver 7.5のサポートはいつまでですか
現在広く利用されているSAP NetWeaver 7.5のメインストリームサポートは、2027年末に終了する予定です。これは、SAP ERP 6.0をはじめとするSAP Business Suite 7のサポート期限と同期する形で設定されています。
ただし、2027年末までに新しいシステム環境への移行が間に合わない企業に向けて、追加費用を支払うことで利用できる延長サポート(延長保守)も用意されています。延長サポートを適用した場合、最終的なサポート期限は2030年末までとなります。サポート終了後はセキュリティ更新プログラムなどが提供されなくなるため、早めに次世代システムへの移行計画を立てることが重要です。
SAP NetWeaverからSAP BTPへの移行は必須ですか
結論から言うと、SAP NetWeaverからSAP BTP(Business Technology Platform)への移行はシステム上「必須」ではありません。しかし、SAP社は今後のデジタルトランスフォーメーションを推進する上で、クラウドベースの次世代プラットフォームであるSAP BTPへの移行を強く推奨しています。
SAP BTPへ移行することで、以下のようなメリットが得られます。
- 最新のクラウドテクノロジー(AIや機械学習など)を容易に活用できる
- オンプレミス環境の運用・保守にかかる人的リソースやコストを削減できる
- SAP S/4HANAのコア部分に手を加えない「クリーンコア」な拡張開発が実現できる
将来的なシステムの柔軟性や拡張性を考慮すると、多くの企業にとってSAP BTPへの移行は非常に有力な選択肢となります。
SAP NetWeaverの保守費用を削減する方法はありますか
SAP NetWeaverを含むSAPシステムの保守費用を削減するためには、いくつかのアプローチが考えられます。自社のシステム環境や将来のロードマップに合わせて、最適な方法を検討することが大切です。
- 第三者保守サービスの活用:SAP公式のサポートではなく、独立した専門ベンダーが提供する第三者保守サービスを利用することで、年間保守費用を大幅に削減できる場合があります。
- クラウドインフラ(IaaS)への移行:オンプレミスの物理サーバーで運用している場合、AWSやMicrosoft Azureなどのパブリッククラウド環境へシステムを移行(リホスト)することで、ハードウェアの維持管理コストを削減できます。
- 不要なアドオンの削減:システム内に蓄積された利用頻度の低いアドオンプログラムを棚卸しして廃棄することで、保守・テストにかかる工数と費用を圧縮します。
ただし、第三者保守への切り替えなどは将来的なSAP S/4HANAへのバージョンアップ権に影響を与える可能性があるため、目先のコスト削減だけでなく中長期的なIT戦略を踏まえて慎重に判断する必要があります。
SAP NetWeaverの読み方を教えてください
SAP NetWeaverの正しい読み方は、「エスエーピー ネットウィーバー」です。
IT業界や実際の開発現場においては、SAPシステム全般を指して「サップ」と呼称するケースも少なくありません。しかし、ドイツのSAP本社および日本法人であるSAPジャパンの公式な見解としては、アルファベットを一文字ずつ発音する「エスエーピー」が正式な読み方とされています。そのため、公式な会議や顧客とのビジネスの場においては「エスエーピー ネットウィーバー」と発音するのが適切です。
| 単語 | 公式の正しい読み方 | 現場での俗称(非公式) |
|---|---|---|
| SAP | エスエーピー | サップ |
| NetWeaver | ネットウィーバー | - |
また、「NetWeaver」という名称には、企業内に点在するさまざまな業務システムやアプリケーション、データを「ネットワーク(Net)上で織り合わせる(Weave)」という意味が込められています。この名称の由来や語源を知っておくと、SAP NetWeaverがシステム統合プラットフォームとして果たす役割や、データ連携のハブとしての機能をイメージしやすくなるでしょう。
SAP NetWeaverとSAP ERPの違いは何ですか
SAPシステムを導入・運用する上で、SAP NetWeaverとSAP ERPの違いを正確に把握することは非常に重要です。両者は密接に関わり合って動作していますが、システム全体における役割や目的が明確に異なります。
それぞれの役割と関係性
結論から言うと、SAP ERPは業務アプリケーションであり、SAP NetWeaverはそのアプリケーションを動かすためのシステム基盤(プラットフォーム)です。
SAP ERP(Enterprise Resource Planning)は、財務会計、販売管理、生産管理、人事管理など、企業の基幹業務を統合的に管理し、業務効率化を図るためのソフトウェアです。現場の担当者や経営層が直接画面を操作し、日々のデータを入力・参照するのは主にこのERPの領域となります。
一方、SAP NetWeaverは、SAP ERPをはじめとする様々なSAPアプリケーションを安定して稼働させるための土台となるミドルウェアです。データベースとの通信、ユーザーの権限管理、外部システムとのデータ連携など、目に見えない裏側でシステム全体を支える役割を担っています。
比較表で見る主な違い
SAP NetWeaverとSAP ERPの違いを、目的や主な利用者などの観点から整理しました。
| 比較項目 | SAP NetWeaver | SAP ERP |
|---|---|---|
| 主な役割 | システムを稼働させるための基盤(プラットフォーム・ミドルウェア) | 企業の基幹業務を統合管理する業務アプリケーション |
| 主な利用者 | システム管理者、IT部門、開発エンジニア | 各業務部門の担当者、経営層(エンドユーザー) |
| 提供する機能 | システム連携、データベース接続、ユーザー認証、開発環境(ABAP/Java)など | 財務会計(FI)、管理会計(CO)、販売管理(SD)、在庫購買管理(MM)など |
| 身近な例え | 自動車のエンジン、シャーシ、制御システム | 自動車のボディ、ハンドル、座席(ドライバーが直接触れる部分) |
システム構築における依存関係
従来のSAP環境(SAP ECC 6.0など)において、SAP ERPを導入し運用するためには、土台となるSAP NetWeaverの存在が不可欠です。具体的な依存関係は以下のようになります。
- SAP NetWeaverがサーバーインフラやデータベースとの橋渡しを行う
- SAP ERPはSAP NetWeaver上で各種業務ロジックを実行する
- 企業独自のアドオン開発や外部システム連携も、SAP NetWeaverの機能を利用して実装される
このように、両者は基盤とアプリケーションという強固な補完関係にあり、セットで機能することで、企業の複雑かつ大規模な業務プロセスを安全に支えています。
SAP NetWeaver 7.5のサポートはいつまでですか
SAP NetWeaver 7.5のサポート期限は、基幹システムの運用計画を立てる上で多くの企業が注視している重要なマイルストーンです。結論として、メインストリームサポートは2027年12月31日まで提供されます。
サポートフェーズごとの具体的な期限
SAP社は、SAP NetWeaver 7.5を含む主要なシステムのサポートに関して、段階的なフェーズを設けています。それぞれのサポートの種類と具体的な期限は以下の表の通りです。
| サポートの種類 | 期限 | 条件・備考 |
|---|---|---|
| メインストリームサポート | 2027年末まで | 通常の保守契約の範囲内で提供される標準的なフルサポート |
| 延長サポート(Extended Support) | 2030年末まで | 通常の保守費用に加えて追加費用を支払うことで適用 |
| カスタマスペシフィックメンテナンス | 2028年以降 | 延長サポートを契約しない場合に自動移行する限定的サポート |
当初、これらのサポート期限は2025年末と設定されており、いわゆる「2025年問題」として広く知られていました。しかし、ユーザー企業のシステム移行状況を考慮し、SAP社の公式発表によってメインストリームサポートの期限が2027年末まで延長されることになりました。
延長サポートを利用しない場合の注意点
2027年末のメインストリームサポート終了後、延長サポートを契約せずに「カスタマスペシフィックメンテナンス」のフェーズへ移行した場合、システムの運用保守において以下のような制限が生じます。
- 法改正や税制変更に伴う新規のアップデートプログラムの提供停止
- 新しいテクノロジーやOS、データベースのバージョンアップへの対応終了
- 未知の不具合に対する新たな修正パッチの提供停止
これらの制限により、セキュリティリスクの増大や業務への支障が生じる可能性が高まります。したがって、企業は2027年末までに次世代システムへの移行を完了させるか、延長サポートの契約を締結するかの決断を下す必要があります。
SAP NetWeaverからSAP BTPへの移行は必須ですか
結論から申し上げますと、SAP NetWeaverからSAP BTP(Business Technology Platform)への移行は、直ちに必須というわけではありません。しかし、SAP社がクラウドファースト戦略を推進している現在、中長期的な視点で見ると移行が強く推奨されるのが実情です。
SAP BTPへの移行が推奨される理由
SAP NetWeaver上で稼働していたアドオン開発やシステム連携機能(SAP PI/POなど)は、今後のSAP S/4HANA環境においてはSAP BTP上に移行する「クリーンコア(Clean Core)」のアプローチが主流となっています。クリーンコアを維持することで、システム改修の負担を減らし、最新のアップデートをスムーズに取り入れることが可能になります。
- コアシステム(SAP S/4HANA)のバージョンアップが容易になる
- 最新のクラウドテクノロジーやAI機能を迅速に活用できる
- インフラの保守・運用コストの最適化が図れる
オンプレミス維持とSAP BTP移行の比較
現在のSAP NetWeaver環境をオンプレミスで維持し続ける場合と、クラウドプラットフォームであるSAP BTPへ移行する場合の主な違いを比較します。
| 比較項目 | オンプレミス維持(SAP NetWeaver) | SAP BTPへの移行 |
|---|---|---|
| システムの拡張性 | ハードウェアの制約を受けやすく、拡張に時間とコストがかかる | クラウドベースのため、必要に応じて柔軟かつ迅速にリソースを拡張できる |
| 保守・運用負荷 | 自社でサーバーの維持管理やセキュリティ対策を行う必要がある | インフラ管理はベンダー側が行うため、運用担当者の負担が大幅に軽減される |
| 最新機能の利用 | 新しい技術の導入が難しく、システムが陳腐化するリスクがある | AIや機械学習などの最新機能が継続的に提供される |
移行のタイミングと判断基準
SAP NetWeaverからSAP BTPへの移行時期については、自社の基幹システムの刷新スケジュールと合わせて検討するのが一般的です。特に、既存のSAP ERPからSAP S/4HANAへ移行するタイミングは、これまでのシステム連携や独自のアドオンプログラムを見直す絶好の機会となります。
また、現在利用しているSAP NetWeaverのコンポーネント(例えばSAP Process Integrationなど)の老朽化が進んでいる場合は、SAP Business Technology Platformが提供する「SAP Integration Suite」などの後継となるクラウドサービスへの移行を優先的に計画していく必要があります。自社のビジネス要件やIT戦略に照らし合わせ、段階的な移行ロードマップを描くことが成功の鍵となります。
SAP NetWeaverの保守費用を削減する方法はありますか
SAP NetWeaverのサポート期限が迫る中、システムの維持にかかる保守費用の増加は多くの企業にとって深刻な課題となっています。特に「2025年問題」や「2027年問題」を背景に、現行システムの延長保守によるコスト増を懸念する声は少なくありません。ここでは、SAP NetWeaverの保守費用を効果的に削減するための具体的なアプローチを解説します。
第三者保守(サードパーティサポート)の活用
保守費用を大幅に削減する最も直接的な方法として、第三者保守(サードパーティサポート)の導入が挙げられます。これは、SAP公式の保守サポートに代わって、専門の独立系ベンダーがシステムの保守を提供するサービスです。
第三者保守を利用するメリット
第三者保守を活用することで、以下のようなメリットが期待できます。
- SAP公式サポートと比較して、年間保守費用を半額程度に削減できる
- アドオン(独自開発機能)やカスタマイズ部分も追加費用なしでサポート対象となることが多い
- 強制的なバージョンアップやシステム移行を回避し、現行システムを長く使い続けられる
代表的なベンダーである日本リミニストリートは、SAP ECC 6.0およびSAP S/4HANAの全バージョンに対するサポートを2040年まで延長すると発表しており、高額な移行コストをかけずに既存のSAP NetWeaver環境を維持する選択肢として注目されています。
ライセンスの最適化と棚卸し
保守費用は保有しているライセンス数や種類に比例して発生するため、ライセンス最適化を行うこともコスト削減に直結します。長年運用しているシステムでは、退職者や異動者のアカウントがそのまま残っていたり、実際の業務内容に見合わない高額なライセンスが付与されていたりするケースが散見されます。
ライセンス最適化の具体的なステップ
- 現状のユーザーアカウントと実際のシステム利用状況を可視化する
- 長期間ログインしていない休眠アカウントを特定し、ライセンスを無効化または削除する
- ユーザーの実際の業務範囲に合わせて、より安価なライセンスタイプへのダウングレードを検討する
手作業での棚卸しが困難な場合は、専用のソフトウェア資産管理(SAM)ツールやライセンス最適化ソリューションを導入することで、間接アクセスを含めた正確な利用状況の把握とコスト削減が可能になります。
インフラ環境のクラウド移行(リフト&シフト)
SAP NetWeaverをオンプレミス環境で運用している場合、ハードウェアの老朽化に伴う保守費用やデータセンターの維持費が大きな負担となります。このインフラ関連の保守費用を削減するためには、システムをそのままクラウド環境へ移行する「リフト&シフト」が有効です。
AWSやMicrosoft Azure、Google Cloudなどのパブリッククラウドへ移行することで、ハードウェアの保守費用をゼロにできるだけでなく、リソースの柔軟な拡張や縮小が可能になり、過剰なインフラ投資を抑えることができます。また、クラウドベンダーが提供するライセンス持ち込みオプションや、CPUコア数に応じたライセンスの最適化設定を活用することで、ソフトウェア側の保守費用削減にも寄与します。
保守費用削減アプローチの比較
各削減アプローチの特徴を以下の表にまとめました。自社のシステム状況や将来のITロードマップに合わせて、最適な手法を組み合わせることが重要です。
| 削減アプローチ | 主な効果・メリット | 注意点・デメリット |
|---|---|---|
| 第三者保守の導入 | ソフトウェアの年間保守費用を大幅に削減可能。現行システムの延命に最適。 | SAP公式の最新パッチやアップデートプログラムの提供は受けられなくなる。 |
| ライセンス最適化 | 不要なライセンスの解約やダウングレードにより、無駄な保守費用を直接的にカットできる。 | 利用状況の正確な把握と定期的な棚卸し作業に社内工数がかかる。 |
| クラウド移行(リフト&シフト) | ハードウェア保守費用やデータセンター維持費を削減。インフラの柔軟性が向上する。 | クラウド環境への移行プロジェクト自体に初期費用と期間がかかる。 |
まとめ
本記事では、SAP NetWeaverの基礎知識からサポート期限、移行先までを解説しました。この記事で学んだ重要なポイントは以下の通りです。
- SAP NetWeaverはシステム連携やUI統合を支えるSAPの中核基盤
- バージョン7.5の標準サポートは2027年末に終了するため対応が急務
- 主な移行先としてSAP S/4HANAやクラウド基盤のSAP BTPが有力
- 移行成功の鍵は、現状の棚卸しと綿密なロードマップの策定にある
サポート終了によるリスクを回避し、システムを最適化するために、まずは自社環境の現状把握から始めてみましょう。移行に不安がある場合は、信頼できるSAPパートナー企業へお気軽にご相談ください。










