小売業

EC市場規模と今後の方向性について

近年、Eコマースの市場は拡大を続けています。この記事では、そもそもEコマースとは何かといった基本を振り返った上で、最新の統計をもとにEコマースの市場規模について紹介します。あわせて、Eコマース市場が今後どのように変化していくか、その動向についても紹介しています。

EC市場規模と今後の方向性について

「Eコマース」とは何か

Eコマースとは「Electronic Commerce」を略した言葉で、日本語では「電子商取引」と訳します。Eコマースは、「EC」とさらに短くして表記されることも多いです。

「電子商取引」を具体的に説明すると、ネットショップやネット通販サイトなど、インターネットをはじめとしたネットワーク経由で行われる契約・決済などの取引全般を指す総称です。Eコマースはさらに企業同士の電子商取引を指す「B to B(Business to Business)」、企業が個人に対して商品やサービスを販売する「B to C(Business to Consumer)」、個人同士での電子商取引を指す「C to C(Customer to Customer)」に分類されます。

なお日常的に「Eコマース」という言葉が使われる場合、上記3つのなかでも「B to C」を指すことが多いです。

「EC化率」とは

EC化率とは、「全ての商取引のうち、どのくらいがEコマース(EC)によって行われているか」を表す割合のことです。Eコマースの市場は年々拡大しており、企業にとっても無視できないほど大きくなっています。

では、日本国内のEコマースの市場規模はどの程度なのでしょうか。次の項で詳しく紹介します。

日本国内のEコマース(EC)市場規模

国内のEコマース市場全体の動向をみると、堅調にその規模を拡大し続けています。B to C・C to C・B to Bそれぞれ個別の市場規模の推移・動向はどうなっているでしょうか。以下、1つずつみていきましょう。

B to Cの市場規模について

経済産業省がまとめた調査結果によると、2018年の日本国内のB to C市場におけるEC化率は6.22%(前年比0.43%増)で、市場規模は17 兆 9,845億円(前年16 兆5,054 億円、前年比8.96%増)に及ぶとのことです。(EC化率は物販分野を対象に算出)

次に市場規模の構成比率をみると、物販系分野が9 兆2,992億円で最も大きく、サービス系分野の6 兆6,471 億円、デジタル系分野の2 兆382 億円と続きます。

また昨今のEコマース市場では、スマートフォンを扱った取引が拡大しています。たとえば2018年の物販分野における9兆2,992億円の市場規模のうち、スマートフォンによる取引は3兆6,552億円でスマートフォン比率は39.3%でした。全体の約4割が、スマートフォンを経由した取引となっています。

CtoCの市場規模について

経済産業省がまとめた調査結果によると、フリマアプリを使った2018年の日本国内におけるC to Cの市場規模は6,392億円で、前年(2017年)の4,835億円と比較すると3割以上の増加、2016年の3,052億円と比較すると実に2倍以上の増加となっています。この数値をみても、フリマアプリの市場規模は急激に拡大していることがわかります。

一方、同データを基にネットオークションを使った2018年の日本国内における市場規模(C to C・B to C・B to Bを含む推計値)をみると10,133億円で、フリマアプリの約1.6倍となっています。一方で2017年の市場規模は10,038億円、2016年は9,987億円となっており、フリマアプリの急激な伸びと比べると微増にとどまっています。

B to Bの市場規模について

B to C・C to Cと同じく経済産業省のまとめた調査結果によれば、2018年のB to B市場規模は344兆2,300億円で前年の318兆1,610億円と比較して8.1%増となっています。次にB to B市場のなかでも2017年と比較してより市場規模を拡大した業種は上位から「卸売」「輸送用機械」「繊維・日用品・化学」、「電気・情報関連機器」となっており、「その他」の業種を除いたB to B市場における2018年のEC率は30.2%(前年の0.8%増)とのことです。

越境ECの市場規模は?

越境ECとは、Eコマースのなかでも海外の売主・買主との間で行われる取引を指します。近年はEコマースの市場拡大に伴い、海外との取引も増えています。

経済産業省がまとめた調査結果によれば、2018年において日本とEコマースによる取引が最も多いのはアメリカで、Eコマース経由でのアメリカからの総購入額は2,504億円にまで達しています。一方、アメリカの次にEコマース経由の取引が多いのは中国で、2018年のEコマースでの総購入額は261億円となっています。

一方、2018年におけるEコマース経由での日本からの総購入額は、アメリカは8,238億円、中国は1兆5,345億円となっています。

Eコマースの種類と特徴

Eコマースの種類は、その取引形態によって「自社サイト型」と「ショッピングモール型」に分類されます。以下、それぞれの種類の特徴について1つずつ解説します。

自社サイト型の特徴について

自社サイト型とは、その名前の通り自社サイトにてEコマースを行う種類を指します。サイトの運営や管理を全て自社で行うことから、自社のオリジナリティを出しやすいことやプロモーションやキャンペーンを自由に行えることなどが、自社サイト型のメリットです。

一方でサーバーの運用・セキュリティ対策はもちろんのこと、決済システムの手配やメールや問い合わせフォームなどの連絡手段の準備、さらに集客などを全て自社で行う必要がある点がデメリットとして挙げられます。そのため「ショッピングモール型」と比較すると、敷居が高いと感じるかもしれません。自社サイト型であると、システムの構築などでEコマースを開始するまでの準備に時間もかかります。

ショッピングサイト型の特徴について

楽天市場やAmazonなどのショッピングモール上に出店するタイプです。ショッピングサイト型はモール自体の知名度があるため、集客力がある点がメリットとしてあげられます。モールが行うキャンペーンなどでさらなる集客も期待できます。モールの種類によっては、商品の配送等の業務もモール側に任せることが可能です。

またショッピングサイト型であれば、自社サイト型と違ってサーバー運用・セキュリティ対策などに気を遣う必要がありません。決済システムや連絡手段などもモールがはじめから用意しておいてくれています。一方で利用手数料がかかることや、モール側のルールに縛られて自社サイト型と比較するとオリジナリティを出しにくい点などがデメリットとしてあげられます。ショッピングサイトそのものに集客力があっても、自社の店舗の訪問してくれなければ売上につながらず、集客面の工夫も必要です。

Eコマースにおけるメリット

Eコマースにはどんなメリットがあるのでしょうか。売り手側・買い手側、それぞれの視点で考えてみましょう。

売り手側のメリット

まず実店舗と比べた場合における、売り手側のメリットを考えてみましょう。

第一に、日本全国さらには世界中の顧客と取引が可能になる点が挙げられます。実店舗であれば、来客する顧客の住んでいる地域はある程度固定されてしまいます。

次に実店舗の維持やカタログの印刷代などのコストがかからない点も、売り手側からみたECサイトのメリットです。実店舗を運用する場合、賃料をはじめ水道光熱費などのコストがかかるため、一定の資金力が必要となります。

第三にEコマースでは、誰がどの商品を購入したかといったデータが全て集約されるため、その情報を活かしたプロモーションが行える点が、メリットとして挙げられます。

買い手側のメリット

買い手側のメリットは、「いつでも、どこからでも、どこの商品でも買えること」にあります。たとえば東京にいながら、北海道にあるお店の海の幸を夜中の2時に買うことが、Eコマースなら可能です。

また、仮に遠くにあるお店でも、わざわざ足を運ぶ必要がないのもメリットといえます。夏の暑い日でも空調が効いた自宅の部屋から、快適にショッピングを楽しめるわけです。

その他、数多くのサイトの中から商品を見つけることができるため、最も安く販売している店舗から購入できること、膨大な商品のなかからマニアックな商品・珍しい商品を探し出しやすいこともメリットとして挙げられます。

Eコマース市場の今後の方向性について

Eコマースの市場は日進月歩で発展を続けています。その変化に乗り遅れないためにも、市場の分析を怠らず、トレンドは把握しておきたいところでしょう。この項では、現在のEコマース市場で注目したいトレンドを紹介します。

パーソナライゼーションで差別化をはかる

今や消費者は、オンラインショップ・通販サイトなどで「この商品をどこで買うのが安いか」を簡単に調べることが可能です。ショップ間・サイト間の価格競争は今後も続くと推測されます。

そうしたなかで、各ショップ・サイトは価格以外にも強みを持たないと差別化できません。そこでユーザーの年齢や性別、職業などの会員情報や購入履歴などから顧客のニーズを予測し適切な商品のレコメンドをしたり、最近購入した商品と関連性の高い商品をサイト内に表示させたりといった、顧客一人一人にあった対応、つまり「パーソナライゼーション」が注目されています。

オムニチャンネル化でシナジーを生み出す

オムニチャネルとは、実店舗をはじめECサイトやSNSといった複数のチャネルをシームレスに連携させて顧客と接点を持つ考え方です。タッチポイントが増え、顧客の情報の質も上がりますが、これらチャネルで得られる顧客の情報を一元的に管理し、顧客のニーズにマッチしたサービスを多角的に提供することによって満足度を高めることができます。

D to C(D2C)でメーカーが活路を見出す

D to C(D2C)とは「Direct to Consumer」を略した言葉で、メーカーが第三者を経由せず、消費者(Consumer)に対して直接(Direct)商品を販売するモデルのことです。

メーカーからみると、Amazonや楽天と言った成熟した巨大な市場で自社商品を販売できるのは魅力です。しかし、その一方で自社製品が膨大な商品群のなかで埋もれてしまう可能性も否定できません。そこでメーカーが、自社サイトで独自のマーケティングにより自社商品を販売するD to Cの事例が増えています。

モバイルコマース化がアジアEC市場のトレンド

アジア諸国を中心として、モバイルコマース化が顕著となっています。モバイルコマースとは、スマートフォンをはじめとしたモバイル端末による電子商取引のことです。

経済産業省がまとめた調査結果によると、世界のモバイルコマース市場におけるアジア太平洋地域での売上は全体の77%(中国だけで69%)にのぼるということです。モバイルコマース化は、今後も拡大を続けていくと予測されます。

まとめ

ECコマースの市場規模は拡大を続けている上に、EC化率についても上昇を続けています。そのなかでEコマースのトレンドも変化を続けています。ECコマースで成功するために、パーソナライゼーションで差別化を図ったり、オムニチャネル化でさまざまなチャネル間でシナジーを創出したりすることが重要です。

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