
AWSを導入したものの、「運用をどのように進めればよいかわからない」「自社で対応すべきか、外注すべきか判断できない」といった悩みを抱えている企業のIT担当者は少なくありません。AWSはクラウドの柔軟性と拡張性を活かせる反面、適切に運用しなければセキュリティリスクやコストの増大につながる可能性もあります。
本記事では、AWS運用の基本概念とAWSが採用する責任共有モデルをもとにユーザー企業がやるべきことを整理します。さらに、自社運用と外注(運用代行)の選び方、体制づくりのポイント、代行サービスの費用相場まで幅広く解説します。
AWS運用とは?責任共有モデルに合わせてやるべきこととは
AWS運用とは、AWSを活用したシステムを安全かつ安定的に維持するための活動全般を指します。具体的には、AWS環境の構築・移行から始まり、日常的な保守・監視、パフォーマンスの最適化、セキュリティ対策、コスト管理、障害発生時の対応まで、多岐にわたる業務が含まれます。
AWS運用において重要な概念のひとつが「責任共有モデル」です。これはAWSとユーザー企業がセキュリティや運用に関する責任範囲をそれぞれ分担するという考え方です。AWSはデータセンターや物理インフラ、ハイパーバイザーなどのクラウド基盤自体のセキュリティに責任を担います。一方でユーザー企業は、OS・ミドルウェアへのパッチ適用、アプリケーションの設定管理、アクセス権限の管理、データの保護などについて自社で対応する必要があります。
この責任範囲を正確に把握せずにAWSを利用していると、パッチ未適用の脆弱性が放置されたり、設定ミスによるセキュリティインシデントが発生したりするリスクがあります。AWS運用を円滑に進めるためには、責任共有モデルを理解したうえで、必要な運用業務を漏れなく実施できる体制づくりが求められます。
AWS運用のベストプラクティス(Well-Architected Framework)
AWSが公式に提供しているベストプラクティス集として「AWS Well-Architected Framework」があります。これは、安全で高性能かつ弾力性があり、効率的なインフラをクラウド上に構築・運用するための指針をまとめたフレームワークです。
このフレームワークは以下の6つの柱で構成されています。
- 運用上の優秀性(Operational Excellence):システムの運用と監視を継続的に改善する能力
- セキュリティ(Security):情報・システム・資産を保護するための能力
- 信頼性(Reliability):障害から回復し、要求に応じてリソースを動的に調整する能力
- パフォーマンス効率(Performance Efficiency):コンピューティングリソースを効率的に使用する能力
- コスト最適化(Cost Optimization):必要なコストを最小化しながらビジネス価値を最大化する能力
- 持続可能性(Sustainability):環境への影響を最小限に抑える能力
Well-Architected Frameworkを活用することで、自社のAWS環境の現状をこれらの柱に照らして評価し、改善すべき領域を明確にすることができます。特にAWS運用を開始する際や、既存の運用体制を見直す際の指針として参照するとよいでしょう。
参照元:AWS Well-Architected Framework
AWS運用は自社運用と外注(運用代行)どちらにすべきか
AWS運用を自社で行うか外注(運用代行)するかは、企業の規模、技術力、AWSの利用状況、予算などによって異なります。どちらが適しているかは一概には言えず、自社の状況に合わせて慎重に検討することが重要です。また、全面的にどちらかを選ぶだけでなく、一部の業務のみを外注するという選択肢もあります。
自社運用が向いている企業
次のような条件を満たす企業は、自社での運用が向いているといえます。
- AWSに関する専門知識を持つ人材が社内に豊富にいる
- AWSの利用規模が大きく、独自要件やカスタマイズが必要なシステムを運用している
- セキュリティやコンプライアンス上の要件が厳格で、外部への情報開示に制約がある
- AWSの最新技術を積極的に取り入れ、社内へのノウハウ蓄積を重視している
こうした企業は、自社でコントロールできる範囲を広く確保しながら、柔軟かつ迅速に運用改善を進めることができます。
外注(運用代行)が向いている企業
一方、以下のような状況にある企業には、外注(運用代行)の活用をおすすめします。
- AWSの運用に必要な知識やスキルを持つ人材が社内に不足している
- 24時間365日の監視体制を自社だけで構築・維持することが難しい
- AWS運用にかかるコスト負担が大きく、効率化を図りたい
- セキュリティやコンプライアンスに関する専門知識を持つ人材がいない
また、自社運用でよくある失敗として、気づかないうちにコストが膨らむ、セキュリティ設定が漏れる、人材不足でアラートへの対応が追いつかないといったケースが挙げられます。こうした失敗を避けるためにも、専門家による運用代行や、伴走型支援サービスの活用は有効な手段です。
自社でAWS運用する場合の必須ツールと体制づくり
自社でAWS運用を行う場合は、適切なツールと体制を整えることが不可欠です。
まず、AWSが提供するネイティブサービスを活用した監視体制の構築が推奨されます。
- Amazon CloudWatch:リソースのパフォーマンス監視・アラート設定
- AWS Config:AWSリソースの設定変更履歴の記録・コンプライアンス確認
- AWS CloudTrail:APIコールのログ記録・セキュリティ監査
セキュリティ対策としては、IAM(Identity and Access Management)を適切に設定し、各ユーザーやサービスに最小権限を付与することが基本です。また、セキュリティグループやネットワークACLの設定も定期的に見直すことが重要です。
また、運用の効率化には自動化の導入が有効です。Amazon CloudWatch、AWS Systems Manager、AWS Lambdaなどのネイティブサービスを組み合わせることで、監視・設定変更・バックアップ・障害対応を手作業からスクリプトやトリガーベースの自動実行に移行できます。Cloud Automatorのような運用自動化ツールも組み合わせることで、さらに幅広い自動化が実現します。
自社運用では24時間365日の監視体制が求められるケースもあり、そのための人員配置やシフト管理、標準化された手順書の整備も重要です。また、自社で運用する場合でも、専門家による伴走支援を活用しながら体制を構築していくことで、運用品質をより高めることができます。
AWS運用を外注する場合の代行サービスの選び方
AWS運用代行サービスを選ぶ際には、以下の観点から複数のベンダーを比較検討することをおすすめします。
- サービス提供範囲:監視のみ対応か、障害対応や設定変更まで含むかを確認する
- 実績と技術力:AWSパートナー認定の取得状況や、担当技術者の資格保有状況、類似業種・規模の企業への支援実績を確認する
- セキュリティ・コンプライアンス対応:ISMSなどの認証取得状況や、セキュリティインシデント対応の実績を確認する
- サポート体制:障害発生時の対応フローや連絡体制、対応時間(営業時間内のみか24時間対応か)を確認する
- 料金体系:初期費用・月額費用の内訳が明確かを確認する
また、契約前にベンダーの技術者との面談の機会を設けたり、具体的な事例の紹介を依頼したりすることで、技術力や提案力を見極めることができます。単に料金が安いだけでなく、自社の課題をともに解決しようとする姿勢があるかどうかも重要な判断基準になります。
AWS運用代行サービスの費用相場
AWS運用代行サービスの費用は、対応範囲やサービスレベルによって大きく異なります。一般的な目安としては以下のとおりです。
- 監視・アラート対応が中心のプラン:月額2〜5万円
- 24時間365日の運用・保守・障害対応を含むフルマネージドプラン:月額10〜40万円
ただし、上記の金額はあくまでも目安であり、実際の費用は対応するAWSリソースの規模やトラフィック量、監視対象のサービス数、障害発生時の対応時間帯などによって変動します。初期費用が発生するケースもあるため、契約前に料金体系の詳細を必ず確認しておきましょう。
まとめ
AWS運用では、責任共有モデルを正しく理解したうえで、セキュリティ対策・コスト管理・監視・障害対応など多岐にわたる業務を継続的に実施することが求められます。自社運用と外注(運用代行)のどちらが適しているかは、企業の規模や技術力、予算などによって異なるため、自社の状況を正確に把握したうえで判断することが重要です。
自社運用を選択する場合は、Amazon CloudWatchをはじめとするAWSネイティブツールや自動化の仕組みを活用し、安定した監視体制を構築することが第一歩となります。外注(運用代行)を検討する場合は、提供範囲・実績・サポート体制・料金などを総合的に比較し、信頼できるパートナーを選ぶことが重要です。
さらに、AWS運用の専門家による伴走型支援サービス「クラウドシェルパ」を活用することで、自社での内製化を進めながらも、運用品質を高く維持できる体制の構築が可能です。AWS運用に課題を感じている企業は、伴走型支援サービスの活用を検討されてみてはいかがでしょうか。










