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Google Cloud Platform導入前に情シスが確認すべきポイント|組織設計・IAM・コスト管理を解説

Google Cloud Platform導入前に情シスが確認すべきポイント|組織設計・IAM・コスト管理を解説

 

Google Cloud Platform(GCP)の導入を検討しているものの、「何から手をつければよいか分からない」と感じていませんか。結論から言うと、GCP導入を成功させる鍵は、使い始める前の組織設計・IAM権限管理・コスト管理体制の3点を先に固めておくことにあります。この記事では、情シス担当者やインフラ担当者が押さえておきたい実務ポイントを解説します。

この記事で分かること

  • Google Cloud Platform(GCP)の基本と名称変更の経緯
  • 導入前に整理すべき組織設計とIAM権限管理の考え方
  • コスト管理を仕組み化するための具体的な方法
  • AWS/Azureからの移行を検討する際のチェックポイント
  • 最初に確認すべきセキュリティ設定

結論:GCP導入検討で情シスが最初に押さえるべき3点

Google Cloud Platform(GCP)は、Googleが提供するクラウドコンピューティングサービスの総称です。BigQueryをはじめとするデータ分析基盤や、機械学習・生成AI関連のサービスに強みがあり、多くの企業がDX推進の基盤として採用しています。

ただし、「とりあえずアカウントを作って触ってみる」という進め方は、後々の運用でつまずく原因になりがちです。情シス担当者が導入前に押さえておくべきポイントは、大きく分けて次の3点です。

  • 組織(Organization)とプロジェクトの階層をどう設計するか
  • IAM(Identity and Access Management)で誰にどこまでの権限を与えるか
  • 利用量に応じて変動するコストをどう可視化・管理するか

この3点を後回しにすると、プロジェクトが乱立して管理不能になったり、想定外の高額請求が発生したりするリスクが高まります。以降で、それぞれの具体的な進め方を解説します。

クラウド3社の特徴を情シス視点で比較

項目 GCP AWS Azure
強み データ分析・機械学習・生成AI サービス数・実績の豊富さ Microsoft製品との連携
IAM設計の特徴 グループ単位・組織ポリシーが柔軟 IAM Identity Center等で統制 Entra IDとの統合が強力
向いている組織 データ活用・AI活用を軸に据える企業 幅広いサービスを組み合わせたい企業 既存のMicrosoft環境がある企業

どのクラウドが優れているという単純な話ではなく、自社の既存システムやIT人材のスキルセットとの相性を踏まえて判断することが重要です。

Google Cloud Platform(GCP)とは?名称変更の経緯を含めて再確認

GCPからGoogle Cloudへの名称変更

Google Cloud Platformは、2022年に「Google Cloud」へと名称が変更されています。ただし実務の現場では、旧名称である「GCP」という略称が今でも広く使われており、社内文書やベンダーとのやり取りでも両方の呼び方が混在するケースが多く見られます。本記事でも、慣例に合わせて「GCP」という表記を使用します。

基本的なサービス構成

GCPは、仮想マシンを提供するIaaS(Infrastructure as a Service)から、開発基盤を提供するPaaS(Platform as a Service)まで、幅広いサービス階層をカバーしています。特にデータ分析基盤のBigQueryや、機械学習・生成AI関連のサービス群には強みがあり、Googleが長年培ってきたデータ処理技術がそのまま活かされています。また、Kubernetesをはじめとするオープンソースプロジェクトへの貢献度が高く、コンテナ技術との親和性も高いことが特徴です。

導入前に整理すべき組織設計とIAM権限管理

GCPの運用を安全かつスケーラブルなものにするためには、利用開始前の「リソース階層」の設計が重要になります。

組織・フォルダ・プロジェクトの階層設計

GCPでは、「組織(Organization)」を頂点に、「フォルダ」「プロジェクト」という階層構造でリソースを管理します。フォルダは、本番環境と検証環境を分ける、事業部門ごとに分けるといった形で、境界線を引くために活用できます。この階層構造を最初に設計しておくことで、部署やプロジェクトが増えた際にも、後から破綻しにくい管理体制を築けます。

具体的には、次のような分け方が実務でよく採用されています。

  • 本番環境用フォルダ/検証・開発環境用フォルダで環境を分離する
  • 事業部門やチームごとにフォルダを分け、予算とアクセス権限を管理しやすくする
  • 規制対象のデータを扱うプロジェクトは専用フォルダに切り出し、コンプライアンス要件に個別対応する

IAMのロール設計は「グループ単位」が基本

IAMの権限は、個々のユーザーに直接付与するのではなく、業務内容ごとに作成したGoogleグループに対してロールを割り当てる方法が推奨されています。ユーザーの異動や退職があった場合も、グループのメンバーを入れ替えるだけで済むため、権限管理の手間と設定漏れのリスクを大幅に減らせます。

Google Cloudが公式に推奨する標準的なグループ設計モデル(機能・役割ごとのグループ)は、次のようなものです。

グループ名 担当する役割
gcp-organization-admins 組織の管理者。リソース構造の編成を担当(強力な権限のため少人数に限定)
gcp-network-admins ネットワーク、サブネット、ファイアウォール、VPNなどの管理を担当
gcp-security-admins アクセス管理や組織ポリシーなどのセキュリティポリシー確立を担当
gcp-billing-admins 請求先アカウントの設定と監視を担当
gcp-devops CI/CD、モニタリング、システムプロビジョニングをサポートするパイプラインの管理
gcp-developers アプリケーションの設計、開発、テストを担当

比較的規模の大きい組織では、さらに「監査ログ閲覧者」「機密情報管理者」「特定プロジェクトのDeveloper/Operator」などに役割を細分化してグループを分離することも推奨されています。

また、組織ポリシーを使うことで、たとえ強力な権限(オーナーなど)を持つユーザーであっても、特定の操作を組織全体でシステム的に禁止できます。たとえば、自社ドメイン以外のアカウントへの権限付与を禁止する、サービスアカウントの鍵作成を禁止するといった設定は、多くの企業で導入される組織ポリシーの代表例です。

💡 補足:新規組織では一部のセキュリティポリシーが最初から有効
2024年5月3日以降に新規作成されたGoogle Cloud組織では、以下のセキュリティに関する組織ポリシーがデフォルトで自動的に有効になっています。管理者が手動で設定しなくても、外部アカウントへの権限付与やサービスアカウントキーの作成が最初からブロックされる仕様のため、これを前提とした運用を考慮してください。

  • サービスアカウントキーの作成禁止(iam.disableServiceAccountKeyCreation)
  • サービスアカウントキーのアップロード禁止(iam.disableServiceAccountKeyUpload)
  • デフォルトサービスアカウントへの編集者ロール自動付与の禁止(iam.automaticIamGrantsForDefaultServiceAccounts)
  • ドメイン制限による共有の制限(iam.allowedPolicyMemberDomains)
  • Cloud Storageの均一バケットレベルアクセスの強制(storage.uniformBucketLevelAccess)
既存の組織にはこれらのデフォルト値は自動適用されないため、以前から利用している組織では、現在の設定状況を個別に確認することをおすすめします。

 

他ドメインへの権限付与を許可する場合の注意点

他ドメインのパートナー企業やプロジェクト関係者に、一時的に権限を付与したい場合は、ドメイン制限ポリシー(iam.allowedPolicyMemberDomains)の許可リストに追加設定を行います。この際、example.comのような「ドメイン名」を指定するのは誤りです。正しくは、C0123abcdのような「Google Workspaceの顧客ID(Customer ID)」を指定する必要があります。顧客IDは、Google Workspace管理コンソールの「アカウント設定」、またはgcloud organizations listコマンドの実行結果(DIRECTORY_CUSTOMER_ID列)から確認できます。ドメイン名をそのまま設定してしまうと正しく機能しないため、実務で最も陥りやすい設定ミスの一つとして覚えておいてください。

組織ポリシーが既存リソースに与える影響の例外

組織ポリシーは基本的に「リソースの新規作成時」または「設定変更時」に評価されるため、多くのポリシーは既存の稼働中リソースにすぐには影響しません。ただし、使用するAPIを制限するポリシー「gcp.restrictServiceUsage」だけは例外です。このポリシーを有効にした瞬間、許可リストにないAPI呼び出しは、既存のリソースに対するものであってもすべて即座に拒否されます。稼働中のVMインスタンスの操作すらできなくなるといったトラブルにつながるおそれがあるため、このポリシーを適用する際は、事前にドライラン(監査のみ)モードで影響範囲を確認するなど、特に慎重な運用が必要です。

監査ログの有効化

誰が、いつ、どのリソースに対してどのような操作を行ったかを追跡できるよう、監査ログ(Cloud Audit Logs)を有効にしておくことも欠かせません。特にデータアクセス監査ログは、初期状態では一部無効になっている項目があるため、運用開始前に必要な範囲を確認し、有効化しておくことをおすすめします。

ランディングゾーンにおけるネットワーク設計

組織・フォルダの階層設計と並行して、GCPを安全に使い始めるための「土台(ランディングゾーン)」づくりでは、ネットワーク設計も欠かせない要素です。Google CloudのCloud Architecture Centerでは、次の4つの実装オプションが定義されており、自社のガバナンスレベルや外部接続要件、セキュリティ機器の有無などに応じて選定することが推奨されています。

  • 各環境の共有VPCネットワーク:開発・本番などの環境ごとに、ホストプロジェクトからサブネットを共有するシンプルな設計。中央集権的な管理がしやすい
  • 一元管理されたアプライアンスを使用するハブアンドスポークトポロジ:サードパーティ製ファイアウォールなどの仮想ネットワークアプライアンスを介してトラフィックを統合制御する、セキュリティ要件が厳しい組織向けの設計
  • アプライアンスを使用しないハブアンドスポークトポロジ:専用アプライアンスを使わず、ハブVPCを通じてスポークを接続する、柔軟性とコスト効率を重視した設計
  • Private Service Connect(PSC)を使用するコンシューマープロデューサーモデル:VPC間の直接ピアリングを行わず、PSCエンドポイント経由でサービスを公開する、特に機密性の高いサービス向けの設計

組織設計・IAM設計だけでなく、このネットワーク設計もあわせて導入初期に決めておくことで、後からの手戻りを防ぎやすくなります。

コスト管理を最初から仕組み化する

GCPは従量課金制のため、リソース管理を怠ると想定外の請求につながるリスクがあります。コスト管理は、導入後ではなく導入前から仕組みとして組み込んでおくことが重要です。

予算アラートの設定

Cloud Billingの予算機能を使えば、月間の想定コストに対してあらかじめしきい値を設定し、一定割合を超えた時点でアラートを受け取れます。プロジェクトやフォルダ単位で予算を分けて設定しておくと、どの部門・プロジェクトでコストが膨らんでいるかを早期に把握できます。

割引制度の活用

継続的に稼働させるワークロードについては、利用状況に応じた割引制度を活用することで、コストを抑えられる場合があります。対象となるサービスや割引率は変更されることがあるため、自社が利用しているリソースがどの割引の対象になっているか、Google Cloudの公式ドキュメントや請求画面で定期的に確認することをおすすめします。

タグ・ラベルによるコスト按分

プロジェクトやリソースに部門名・用途などのラベルを付けておくと、請求データをラベル単位で集計・分析できるようになります。全社で複数部門がGCPを利用する場合、この仕組みを整えておくことで、部門別のコスト按分や予算管理がしやすくなります。

AWS/Azureからの移行を検討する際のチェックポイント

すでにAWSやMicrosoft Azureを利用している企業がGCPの導入を検討する場合、単純な機能比較だけでなく、次のような観点を確認しておくことが重要です。

  • 移行対象のワークロードが、GCPのどのサービスに置き換わるのか(Compute Engine、GKEなど)
  • 既存のIAM・ID基盤(Active Directory等)とGCPのIDをどう連携させるか
  • すべてを移行するのではなく、一部のワークロードだけをGCPに移す「マルチクラウド運用」も選択肢に入れるか

特にデータ分析・AI関連のワークロードについては、GCPのBigQueryや生成AI関連サービスとの親和性を理由に、部分的な移行やマルチクラウド構成を選ぶ企業も少なくありません。全面移行を急ぐのではなく、自社のワークロード特性に合わせて移行範囲を見極めることが重要です。

セキュリティ設定で最初に確認すべき項目

GCPには、Googleが自社サービスで培ったセキュリティ技術がそのまま活かされていますが、初期設定のままで安全性が完結するわけではありません。導入初期に確認しておきたい項目は次の通りです。

  • Cloud Storageのバケットが意図せず「全公開」設定になっていないか
  • 外部IPアドレスを持つリソースが、意図せず作成できる状態になっていないか
  • Security Command Centerなどのセキュリティ監視サービスを有効化しているか

これらの設定は、組織ポリシーとして一元管理することで、個別プロジェクトでの設定漏れを防止できます。前述の通り、新規組織であれば一部はデフォルトで有効になっていますが、既存組織で運用している場合は、現状の設定を必ず個別に確認してください。

導入後によくあるつまずきポイント

実際の導入現場では、次のような点でつまずくケースが多く見られます。

  • 検証用に作成したプロジェクトが放置され、誰が管理しているか分からなくなる
  • 部門ごとに個別でGCPを契約してしまい、全社的なガバナンスが効かなくなる
  • IAM権限を「とりあえず強い権限」で付与してしまい、後から棚卸しが困難になる

これらは、いずれも導入初期の組織設計とルール整備によって予防できるものです。情シス部門が主導して、プロジェクト作成の申請フローや、権限付与の承認プロセスをあらかじめ決めておくことをおすすめします。

導入ステップ(無料トライアルの活用)

初めてGCPを触る場合は、次のようなステップで進めると導入のハードルを下げられます。

  1. Google Cloudコンソールでアカウントを作成する
  2. 90日間・300ドル相当の無料トライアルクレジットを使い、基本機能を検証する
  3. 本格導入前に、組織・フォルダ構成とIAMの設計方針を固める
  4. 予算アラートと組織ポリシーを設定してから、本番プロジェクトを作成する

いきなり本番環境を作るのではなく、まず検証環境で組織設計やIAM設計の方針を固めてから展開することで、後戻りの少ない導入が可能になります。

よくある質問(FAQ)

Google Cloud PlatformとGoogle Cloudは同じものですか?

はい、同じサービスです。2022年に「Google Cloud Platform」から「Google Cloud」へ名称が変更されましたが、実務では「GCP」という略称が引き続き広く使われています。

IAMの権限は誰にどう割り当てるのが基本ですか?

個々のユーザーに直接権限を付与するのではなく、業務内容ごとに作成したグループに対してロールを割り当てる方法が推奨されています。異動や退職の際も、グループのメンバー入れ替えだけで対応できます。

他社のパートナー企業に一時的な権限を付与したい場合、どう設定すればいいですか?

ドメイン制限ポリシー(iam.allowedPolicyMemberDomains)の許可リストに追加しますが、指定するのは「ドメイン名」ではなく「Google Workspaceの顧客ID」です。ドメイン名を設定すると正しく機能しないため注意してください。

コストが想定以上に膨らまないか心配です。どう対策すればいいですか?

Cloud Billingの予算アラート機能で、あらかじめしきい値を設定しておくことが基本です。加えて、プロジェクトやリソースにラベルを付けて、部門・用途別にコストを可視化しておくと、早期に異常なコスト増加を検知しやすくなります。

AWSやAzureからGCPへの移行は、全面的に行うべきですか?

必ずしも全面移行が必要というわけではありません。データ分析やAI関連のワークロードだけをGCPに移す、といった部分的な移行やマルチクラウド運用も現実的な選択肢です。自社のワークロード特性に合わせて判断してください。

無料トライアルではどこまで検証できますか?

90日間・300ドル相当のクレジットを使って、Compute EngineやCloud Storageなど基本的なサービスを試すことができます。本格導入前に、組織設計やIAM設計の検証環境として活用するのがおすすめです。

組織設計とコスト管理を仕組み化してから使い始めよう

Google Cloud Platform(GCP)の導入を成功させるためには、機能の豊富さだけに目を向けるのではなく、利用開始前に組織・IAM・コスト管理の設計を固めておくことが欠かせません。

  • GCPは2022年にGoogle Cloudへ名称変更されたが、実務では引き続き「GCP」の略称が広く使われている
  • 組織・フォルダ・プロジェクトの階層設計とIAMのグループ単位での権限管理が、安全な運用の土台になる
  • 新規組織では一部のセキュリティ組織ポリシーがデフォルトで有効になっているため、既存組織では現状の設定確認を忘れずに行う
  • ドメイン制限設定は「ドメイン名」ではなく「Workspace顧客ID」を指定する点に注意する
  • ネットワーク設計(共有VPC・ハブアンドスポーク・PSCなど)も、組織・IAM設計とあわせて導入初期に固めておく
  • 予算アラートやラベルによるコスト可視化を、導入前から仕組みとして組み込んでおく
  • AWS/Azureからの移行は全面移行にこだわらず、マルチクラウド運用も選択肢に入れて判断する

まずは無料トライアルを活用し、検証環境で組織設計とIAMの方針を固めるところから始めてみましょう。

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