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【初心者向け】Amazon Pollyとは?始め方や5つの活用事例と料金プランを解説

【初心者向け】Amazon Pollyとは?始め方や5つの活用事例と料金プランを解説

Webコンテンツや動画のナレーション、業務用の音声ガイダンスなどを、手軽に高品質な音声で作成したいと思いませんか?そんなニーズに応えるのが、Amazon Web Services (AWS)が提供するテキスト読み上げサービス「Amazon Polly」です。Amazon Pollyを使えば、テキストを入力するだけで、驚くほど人間らしく自然な音声を誰でも簡単に生成できます。

この記事で分かること

  • Amazon Pollyの基本的な機能とできること
  • 初心者でも分かる音声合成の始め方と具体的な手順
  • 無料利用枠を含む料金プランの詳細と料金シミュレーション
  • ビジネスに役立つ5つの具体的な活用事例

本記事では、Amazon Pollyを初めて利用する方に向けて、その概要からアカウント設定、実際の使い方、気になる料金プラン、さらには業務効率化につながる活用事例まで、必要な情報を網羅的に解説します。この記事を最後まで読めば、Amazon Pollyの全体像を理解し、あなたの目的やビジネスに合わせて音声合成機能を活用できるようになるでしょう。

Amazon Pollyとは?

Amazon Pollyは、Amazonが提供するクラウドサービス「AWS(Amazon Web Services)」のAIサービスの一つで、テキストを人間が話しているかのような自然な音声に変換するテキスト読み上げ(TTS: Text-to-Speech)サービスです。高度なディープラーニング技術を活用しており、記事やWebページ、アプリケーション内のテキストなど、あらゆる文章をリアルな音声として生成できます。

多言語に対応し、声の種類も豊富なため、動画のナレーション制作から、コールセンターの自動音声、Webサイトのアクセシビリティ向上まで、幅広い用途で活用されています。開発者はAPIを通じて自社のアプリケーションやサービスに音声機能を簡単に組み込むことが可能です。

高品質な音声を実現する2種類のエンジン

Amazon Pollyには、用途や求める品質に応じて選択できる2種類の音声合成エンジンが用意されています。それぞれの特徴を理解し、最適なエンジンを選ぶことが重要です。

Amazon Pollyのエンジン比較

エンジン 特徴 最適な用途
標準TTS(Text-to-Speech) 基本的なテキスト読み上げ機能を提供するエンジンです。明瞭で自然な音声を生成できますが、ニューラルTTSと比較するとやや機械的な印象を受ける場合があります。 シンプルな音声ガイダンス、通知の読み上げなど、コストを抑えつつ基本的な音声機能が必要な場合。
ニューラルTTS(Neural Text-to-Speech) ディープラーニング技術を駆使し、より人間らしく滑らかで、感情表現も豊かな音声を生成する高性能なエンジンです。標準TTSよりも高品質な音声が求められる場面で真価を発揮します。 動画ナレーション、オーディオブック、eラーニング教材、対話型AIアシスタントなど、ユーザーのエンゲージメントを高めたいコンテンツ。

ニューラルTTSは、標準TTSに比べて料金が高くなりますが、その品質の高さから、近年では多くの場面でニューラルTTSが選択されています。詳しくはAmazon Pollyの料金ページでご確認ください。

Amazon Pollyの主なメリット

Amazon Pollyを導入することで、企業や開発者は以下のような多くのメリットを享受できます。

  • 高品質で自然な音声: ニューラルTTSにより、人間と区別がつきにくいほど自然で聞き取りやすい音声を生成し、ユーザー体験を向上させます。
  • 豊富な言語と声のバリエーション: 多数の言語に対応しており、同じ言語内でも複数の話者(男性・女性など)から声を選択できるため、コンテンツの雰囲気に合わせた音声を作成可能です。
  • 迅速な音声変換: テキストを送信すると、ほぼリアルタイムで音声データが返ってくるため、対話型のアプリケーションにも適しています。
  • コスト効率の良さ: 実際に使用した文字数に応じた従量課金制のため、初期投資を抑えながらスモールスタートが可能です。また、無料利用枠も用意されています。
  • 簡単なカスタマイズ: SSML(音声合成マークアップ言語)を使用することで、発音、声のトーン、話す速さなどを細かく調整できます。

Amazon Pollyでできること

Amazon Pollyは、Amazon Web Services (AWS) が提供するテキスト読み上げ(TTS:Text to Speech)サービスです。入力されたテキストを、まるで人間が話しているかのような自然な音声に変換する機能を持ちます。ディープラーニング技術を活用することで、従来の機械的な音声とは一線を画す、流暢で高品質な音声を生成できるのが大きな特長です。これにより、Webサイトの読み上げ機能から、動画ナレーション、コールセンターの自動音声応答まで、幅広い用途で「声」を使ったアプリケーションやサービスを簡単に構築できます。

テキストから人間のような自然な音声を生成

Amazon Pollyの最も中心的な機能は、テキストデータから人間のように自然でリアルな音声を生成することです。この音声生成には、特性の異なる2種類のエンジンが用意されており、用途に応じて選択できます。

  • ニューラルTTS(NTTS)
    最新のディープラーニング技術を駆使し、極めて高品質で人間らしい、滑らかな発音とイントネーションを持つ音声を生成します。ニュースキャスターのような特定の話し方も可能で、より表現力が求められるコンテンツに適しています。
  • 標準TTS
    連結合成という技術を用いた基本的な音声生成エンジンです。非常に自然な音声ですが、ニューラルTTSと比較すると、より幅広い言語で利用可能というメリットがあります。

さらに、SSML(音声合成マークアップ言語)というXMLベースの言語を使用することで、生成される音声を細かくカスタマイズできます。例えば、特定の単語を強調したり、読み上げる速度や声の高さを変えたり、文と文の間に「間」を入れたりといった調整が可能です。これにより、単調な読み上げではなく、コンテンツの文脈に合わせた表現力豊かな音声を作り出すことができます。

多言語対応でグローバルなコンテンツ制作を支援

Amazon Pollyは、非常に多くの言語と、それぞれの言語における複数の話者(音声)に対応している点も大きな強みです。これにより、世界中の視聴者や利用者に向けたグローバルなコンテンツ制作が容易になります。

例えば、以下のような特徴があります。

  • 日本語はもちろん、英語、中国語、スペイン語、フランス語など、数十の言語をサポートしています。
  • 同じ言語でも、国や地域によるアクセントの違い(例:アメリカ英語とイギリス英語)に対応しています。
  • ほとんどの言語で、男性と女性の両方の音声が提供されており、コンテンツの雰囲気に合わせて選択できます。

具体的な対応言語や音声の種類は、ビジネスやテクノロジーの進化に合わせて継続的に追加されています。最新の情報については、Amazon Pollyの公式サイトで確認することをおすすめします。

Amazon Pollyの言語と音声の種類の概要

項目 説明
対応言語数 数十の言語と方言に対応しており、グローバルなニーズをカバーします。
音声の種類 標準TTSと、より高品質なニューラルTTSから選択可能です。
話者のバリエーション 多くの言語で男女複数の話者が用意されており、コンテンツに最適な声を選べます。

【実践】Amazon Pollyの始め方と基本的な使い方

Amazon Pollyを実際に利用して、テキストから音声を生成するまでの具体的な手順を解説します。AWSの利用が初めての方でも、このガイドに沿って進めれば、迷うことなく基本的な操作をマスターできます。まずはアカウントの準備から始め、実際に音声を合成してダウンロードするまでの一連の流れを体験してみましょう。

AWSアカウントの準備と初期設定

Amazon Pollyを利用するためには、まずAWS(アマゾン ウェブ サービス)のアカウントが必要です。まだお持ちでない場合は、公式サイトから無料で作成できます。登録にはメールアドレス、クレジットカード情報、電話番号などが必要ですが、Amazon Pollyには無料利用枠があるため、すぐに料金が発生するわけではありません。

アカウント作成の基本的な流れは以下の通りです。

  1. AWS公式サイトの「AWSアカウントを作成」ボタンをクリックします。
  2. ルートユーザーのEメールアドレスとAWSアカウント名を入力します。
  3. 連絡先情報(個人またはビジネス)、氏名、電話番号、住所などを入力します。
  4. 請求情報としてクレジットカードまたはデビットカードの情報を入力します。
  5. 電話またはSMSによる本人確認を行います。
  6. サポートプランを選択します(個人で試す場合は「ベーシックサポート - 無料」で問題ありません)。

アカウント作成後、セキュリティを強化するために、日常的な作業はルートユーザーではなくIAM(Identity and Access Management)ユーザーで行うことが推奨されています。IAMユーザーを作成し、「AmazonPollyFullAccess」というポリシーをアタッチすることで、そのユーザーがAmazon Pollyの全機能を利用できるようになります。詳細な手順については、AWSの公式ドキュメントも併せてご確認ください。

マネジメントコンソールでの音声合成手順

AWSアカウントにサインインしたら、いよいよAmazon Pollyを使って音声を合成していきます。基本的な操作は、直感的に使えるマネジメントコンソール上で行います。

まず、AWSマネジメントコンソールにログインし、上部の検索バーに「Polly」と入力してください。検索結果に表示される「Amazon Polly」をクリックすると、サービスのダッシュボードに移動します。ここが音声合成の作業を行うメイン画面となります。

テキスト入力と音声の選択

Amazon Pollyのコンソール画面を開くと、「テキスト読み上げ」というタブが表示されます。ここで音声合成の基本的な設定を行います。

  1. エンジンを選択: 「標準」または「ニューラル」から選択します。ニューラルはより自然で人間らしい音声を生成できますが、料金が異なります。まずは高品質なニューラルを試してみるのがおすすめです。
  2. 言語と地域を選択: プルダウンメニューから「日本語」を選択します。
  3. 音声を選択: 使用したい音声を選びます。日本語では、女性と男性、複数の音声が用意されています。
  4. テキストを入力: 「テキストを入力」と書かれたボックスに、音声に変換したい文章を入力します。最大3,000文字まで入力可能です。

設定が完了したら、「音声を聴く」ボタンをクリックしてみてください。入力したテキストが選択した音声で再生され、すぐに合成結果を確認できます。

日本語で利用できる主なニューラル音声には、以下のような種類があります。

音声名 性別 特徴
Kazuha 女性 標準的でクリアなアナウンサー風の音声。
Tomoko 女性 Kazuhaよりも少し落ち着いたトーンの音声。
Takumi 男性 標準的で聞き取りやすい男性の音声。

音声のカスタマイズ(SSMLの使用)

より細かく発音やイントネーション、間の取り方などを調整したい場合は、SSML(音声合成マークアップ言語)を利用します。テキスト入力ボックスの上部にある「SSML」タブをクリックすることで、SSMLモードに切り替えることができます。

SSMLはXMLベースのマークアップ言語で、特定のタグを使ってテキストを囲むことで、音声の様々な要素を制御します。例えば、以下のような調整が可能です。

  • 間(ポーズ)の挿入:  <code><break time="1s"></break></code>のように記述すると、指定した時間だけ間を空けることができます。
  • 発話速度やピッチの変更: <code><prosody pitch="+10%" rate="fast">テキスト</prosody></code>のように、話す速度や声の高さを調整できます。
  • 特定の単語の強調: <code><emphasis level="strong">強調したい単語</emphasis></code>で、その部分を強く発音させます。
  • 読み方の指定: 固有名詞や専門用語の読み方を<code><phoneme alphabet="x-sampa" ph="t o k y o">東京</phoneme></code>のように指定できます。

SSMLを使うことで、ただのテキスト読み上げではない、表現力豊かな音声コンテンツの制作が可能になります。SSMLタグの詳細はAmazon Pollyの公式デベロッパーガイドで確認できます。

MP3形式での音声ダウンロード方法

合成した音声に問題がなければ、MP3ファイルとしてダウンロードしましょう。テキスト入力ボックスの下にある「音声を合成」ボタンをクリックします。すると、合成タスクが作成され、完了すると音声ファイルをダウンロードできるようになります。

また、コンソール画面の右側にある「ダウンロード」ボタンからも直接MP3ファイルをダウンロードすることが可能です。この機能を使えば、作成した音声をナレーション素材として動画編集ソフトに取り込んだり、オーディオブックのファイルとして保存したりと、様々な用途に活用できます。

大量のテキストを一度に処理したい場合や、定期的に音声ファイルを生成する必要がある場合は、合成した音声をAmazon S3(ストレージサービス)に直接保存する設定も可能です。これにより、手動でのダウンロード作業を省略し、効率的に音声ファイルを管理できます。

気になるAmazon Pollyの料金プラン

Amazon Pollyは、実際に使用した分だけ料金を支払う従量課金制を採用しています。初期費用や最低料金は不要で、音声に変換したテキストの文字数に基づいて料金が計算されるため、小規模な利用から大規模なプロジェクトまで、コストを最適化しながら活用することが可能です。さらに、初めて利用する方向けに無料利用枠も用意されています。

無料利用枠の内容と期間

Amazon Pollyを初めて利用する場合、AWSにサインアップしてから最初の12ヶ月間、お得な無料利用枠が適用されます。この期間中は、一定の文字数まで無料で音声を生成できるため、本格的な導入前に機能を十分にテストしたり、個人で学習用途に利用したりするのに最適です。

  • 標準TTS(テキスト読み上げ)音声: 毎月500万文字まで無料
  • ニューラルTTS(テキスト読み上げ)音声: 毎月100万文字まで無料

無料利用枠を超えるまでは一切料金が発生しないため、気軽にAmazon Pollyの高品質な音声を体験できます。

標準TTSとニューラルTTSの料金比較

無料利用枠を超過した分については、100万文字あたりの単価で料金が計算されます。Amazon Pollyには、基本的な音声合成を行う「標準TTS」と、ディープラーニングを活用して人間のように自然で滑らかな音声を生成する「ニューラルTTS」の2種類があり、それぞれ料金が異なります。

ニューラルTTSは、より高品質な音声を提供する分、標準TTSよりも料金が高く設定されています。具体的な料金は以下の通りです。

音声の種類 100万文字あたりの料金(東京リージョンの場合)
標準TTS (Standard) $4.00 USD
ニューラルTTS (Neural) $16.00 USD

※最新の正確な料金については、Amazon Polly の料金ページをご確認ください。

具体的な料金シミュレーション

実際にどれくらいのコストがかかるのか、具体的な利用シーンを想定してシミュレーションしてみましょう。

【ケース1】Webサイトの記事(5,000文字)をニューラル音声で読み上げる場合

5,000文字は無料利用枠(月間100万文字)の範囲内なので、料金は無料です。

【ケース2】毎月25本の動画ナレーション(各2,000文字)をニューラル音声で制作する場合

月間の合計文字数は 2,000文字 × 25本 = 50,000文字です。これも無料利用枠の範囲内であるため、料金は無料となります。

【ケース3】コールセンターの自動音声ガイダンスで、月に120万文字をニューラル音声で利用する場合

無料利用枠の100万文字を超えた20万文字が課金対象となります。

計算式: (200,000文字 ÷ 1,000,000文字) × $16.00 = $3.20

この場合の月額料金は約$3.20となります(別途、AWSのデータ転送料金などがかかる場合があります)。

このように、Amazon Pollyは個人利用や小規模なビジネスであれば、無料利用枠の範囲内で十分に活用できる可能性があります。大規模な利用においても、高品質な音声を非常に低コストで利用できるのが大きな魅力です。

業務効率化を実現するAmazon Pollyの活用事例5選

Amazon Pollyは、テキストを人間のように自然な音声へ変換するサービスです。その高品質な音声合成技術は、様々なビジネスシーンで応用され、業務の効率化や新たな顧客体験の創出に貢献しています。ここでは、具体的な5つの活用事例を紹介し、Amazon Pollyがいかにしてビジネス課題を解決するのかを解説します。

事例1 コンテンツ制作(動画ナレーション・ポッドキャスト)

YouTubeなどの動画プラットフォームやポッドキャスト市場の拡大に伴い、音声コンテンツの需要は高まり続けています。しかし、ナレーションの制作には専門のナレーターやスタジオの手配が必要で、コストと時間がかかる点が課題でした。特に、修正や多言語展開を行う際の負担は大きなものになります。

Amazon Pollyを活用すれば、テキストを入力するだけで、いつでも手軽に高品質なナレーションを生成できます。これにより、以下のようなメリットが生まれます。

  • コスト削減: ナレーターやスタジオの費用を大幅に削減できます。
  • 制作スピードの向上: テキスト修正だけで簡単に音声の変更が可能になり、リテイクの手間がなくなります。
  • グローバル展開の容易化: 多くの言語に対応しているため、コンテンツの多言語化を低コストかつ迅速に実現できます。

実際に、企業の製品紹介動画や個人のコンテンツクリエイターによる情報発信など、幅広いシーンでAmazon Pollyが活用されています。

事例2 教育(eラーニング・教材読み上げ)

教育分野では、eラーニングの普及により、多様な学習スタイルへの対応が求められています。しかし、音声付きのデジタル教材を制作するには、ナレーション収録と同様にコストや手間がかかるという課題がありました。

Amazon Pollyを導入することで、テキストベースの教材を簡単に音声化し、学習者が「耳で聞く」学習を選択できるようになります。これにより、学習体験は大きく向上します。

  • アクセシビリティの向上: 視覚に障がいのある学生や、文字を読むのが苦手な学生でも、音声を通じて学習内容を理解しやすくなります。
  • 学習効率の向上: 通勤・通学中などの「ながら学習」が可能になり、学習機会が増加します。
  • 教材作成の効率化: 教員やコンテンツ制作者が、専門的な機材なしで手軽に音声教材を作成できます。

世界的な言語学習プラットフォームであるDuolingoでは、Amazon Pollyを活用して正確な発音を提供し、学習効果を高めています。

事例3 コールセンター(音声ガイダンス・IVR)

コールセンターやコンタクトセンターにおける自動音声応答(IVR)は、顧客対応の効率化に不可欠です。しかし、従来の機械的な音声ガイダンスは顧客に冷たい印象を与えがちで、顧客満足度の低下につながる懸念がありました。

Amazon Pollyのニューラル音声(NTTS)を利用すれば、人間のように自然で滑らかな音声ガイダンスを構築できます。クラウド型コンタクトセンターサービスであるAmazon Connectと連携させることで、より高度なIVRシステムを容易に実現可能です。

  • 顧客体験(CX)の向上: 自然で聞き取りやすい音声により、顧客のストレスを軽減し、ブランドイメージを向上させます。
  • 運用の柔軟性と迅速化: キャンペーン情報や緊急のお知らせなど、ガイダンス内容の変更をテキスト修正だけでリアルタイムに反映できます。
  • コスト削減: 音声ガイダンスの収録を外部業者に委託する必要がなくなり、運用コストを削減できます。

事例4 アクセシビリティ(Webサイトの音声読み上げ)

Webサイトのアクセシビリティは、高齢者や視覚に障がいを持つ方々を含め、すべてのユーザーにとって重要な要素です。Webサイトの情報を音声で提供することは、アクセシビリティを向上させる有効な手段の一つです。

Amazon PollyをWebサイトに組み込むことで、ニュース記事やブログなどのテキストコンテンツを音声で読み上げる機能を実装できます。これにより、より多くのユーザーが情報にアクセスしやすくなります。

  • 利用者の拡大: 視覚的な情報取得が困難なユーザーにも、Webサイトのコンテンツを届けることができます。
  • ユーザーエクスペリエンスの向上: スマートフォンでWebサイトを閲覧中に、他の作業をしながら「ながら聞き」するなど、ユーザーの利用シーンが広がります。
  • 企業の社会的責任(CSR): すべての人が利用しやすいWebサイトを提供することで、企業の社会的評価を高めることにも繋がります。

事例5 パブリックセクター(公共アナウンス・防災情報)

駅や空港、商業施設での案内放送や、自治体からの防災情報など、公共の場でのアナウンスは、迅速かつ正確に多くの人々へ情報を伝える必要があります。特に緊急時には、多言語での対応が不可欠です。

Amazon Pollyは、テキスト情報から即座に多言語の音声アナウンスを生成できるため、公共分野での活用が進んでいます。例えば、エフエム和歌山では、AIアナウンサーとしてAmazon Pollyを活用し、災害時の緊急放送などに役立てています。

  • 緊急情報の迅速な伝達: 災害発生時に、テキストを入力するだけで、避難情報などを即座に放送できます。
  • 多言語対応によるインバウンド対策: 訪日外国人や在留外国人に対しても、必要な情報を音声で正確に伝えることができます。
  • 運用の効率化: 予めアナウンスを収録しておく必要がなく、状況に応じて柔軟にアナウンス内容を変更できます。

岩手県陸前高田市では、災害時の情報伝達・安否確認システムにAWSを活用し、住民への一斉架電に役立てています。

Amazon Pollyの主要機能と特徴

Amazon Pollyは、単にテキストを音声に変換するだけのサービスではありません。人間のように自然で表現力豊かな音声を生成し、細かくカスタマイズするための高度な機能を備えています。これらの機能を活用することで、動画のナレーションからコールセンターの自動音声応答まで、幅広い用途でユーザー体験を向上させることが可能です。本章では、Amazon Pollyの中核をなす3つの主要機能「ニューラルTTS」「SSML」「レキシコン」について、その特徴と役割を詳しく解説します。

自然な発話を実現するニューラルTTS

Amazon Pollyが生成する音声が非常に自然である理由は、ニューラルTTS(Neural Text-to-Speech)という最先端の技術にあります。これは、人間の脳の神経回路網を模したニューラルネットワークを活用し、テキストから音声を生成するエンジンです。

従来の標準的なTTS(連結合成)が、録音された音声の断片をつなぎ合わせていたのに対し、ニューラルTTSはゼロから音声波形を生成します。これにより、イントネーションやリズム、間の取り方などが極めて人間に近い、滑らかで高品質な音声の生成が可能になりました。特に、ニュースキャスターのような特定の話し方を再現するスタイルも提供されており、より専門的なコンテンツ制作にも対応できます。

標準TTSとニューラルTTSの比較

項目 標準TTS (Standard TTS) ニューラルTTS (Neural TTS)
生成方式 連結合成(録音された音声の断片を繋ぎ合わせる) ディープラーニング(ニューラルネットワークで音声波形を生成)
音声の品質 比較的明瞭だが、機械的な印象を受けることがある 非常に自然で滑らか。人間らしいイントネーションを再現
向いている用途 シンプルな音声ガイダンス、通知など ナレーション、eラーNING、オーディオブックなど、表現力が求められるコンテンツ

発音やイントネーションを調整するSSML

SSML(Speech Synthesis Markup Language)は、テキストの読み上げ方を細かく制御するためのマークアップ言語です。W3Cによって標準化されており、Amazon Pollyもこの仕様に準拠しています。テキスト内にSSMLタグを埋め込むことで、音声合成エンジンに対して具体的な指示を与えることができます。

例えば、「間」の取り方、話す速度、声のトーン(高さ・低さ)、音量などを自由に調整できます。これにより、単調な読み上げではなく、強調したい部分をゆっくり話したり、重要な部分で少し間を置いたりといった、人間が話すような抑揚のある音声を作成することが可能です。SSMLを使いこなすことで、コンテンツの表現力が格段に向上します。

SSMLで制御できる主な要素には、以下のようなものがあります。

  • 一時停止 (break): 指定した時間だけ読み上げを中断させます。
  • 話速・ピッチ・音量 (prosody): 話す速度、声の高さ、音量を調整します。
  • 発音 (phoneme): 発音記号を使って、単語の正確な発音を指定します。
  • 強調 (emphasis): 特定の単語やフレーズを強調して読み上げさせます。
  • 品詞の指定 (w): 同じ綴りでも品詞によって発音が異なる単語(例: "read")を正しく発音させます。

より詳細なタグや使い方については、AWSの公式ドキュメント「サポートされている SSML タグ」をご参照ください。

独自の用語を正しく発音させるレキシコン

レキシコン(Pronunciation Lexicon)は、特定の単語やフレーズの発音をカスタマイズするための、いわば「発音辞書」です。業界の専門用語、社内の製品名、固有名詞など、Amazon Pollyがデフォルトでは正しく読み上げられない可能性がある単語に対して、ユーザーが独自に発音を定義し、登録しておくことができます

例えば、「AWS」を「アマゾンウェブサービス」と読ませたい場合や、人名を意図した通りに発音させたい場合に非常に有効です。レキシコンファイル(PLS形式)を作成し、Amazon Pollyにアップロードしておくだけで、音声合成時にその定義が自動的に適用されます。

この機能により、ブランドイメージを損なうことなく、正確な情報伝達が求められるビジネスシーンでも安心してAmazon Pollyを活用することが可能です。レキシコンはリージョンごとに管理され、複数のレキシコンを適用することもできます。

Amazon Pollyに関するよくある質問

Amazon Pollyの導入を検討する際に、多くの方が抱く疑問について解説します。サービス選定の参考にしてください。

Amazon Pollyで生成した音声は商用利用できますか

はい、Amazon Pollyで生成した音声は商用利用が可能です。作成された音声の権利はユーザーに帰属するため、企業のプロモーションビデオ、Eラーニング教材、電話の自動音声応答(IVR)、アプリケーションのナレーションなど、収益を得る目的のコンテンツにも安心して利用できます。

ただし、利用にあたってはAWSのサービス利用規約を遵守する必要があります。例えば、第三者の著作権を侵害するようなテキストを音声化するなど、法律や規約に違反するコンテンツの作成は認められていません。利用を開始する前に、一度AWS サービス規約に目を通しておくことをお勧めします。

Amazon Pollyは日本語に対応していますか どんな声がありますか

はい、Amazon Pollyは日本語に完全対応しています。自然で流暢な日本語の音声を生成することが可能です。日本語で利用できる音声(ボイス)には、男性と女性の声が複数用意されており、それぞれに人間のような自然なイントネーションが特徴の「ニューラル音声(Neural)」と、明瞭で聞き取りやすい「標準音声(Standard)」があります。

2025年現在、主に以下の日本語音声が提供されています。

名前 性別 エンジン
Kazuha 女性 ニューラル
Tomoko 女性 ニューラル
Mizuki 女性 標準
Takumi 男性 ニューラル / 標準

特にニューラル音声の「Kazuha」と「Tomoko」は、従来の音声合成とは一線を画す、非常に人間らしい自然な発話を実現しています。用途やコンテンツの雰囲気に合わせて最適な音声を選択できます。

Amazon Pollyの無料利用枠でどれくらい使えますか

Amazon Pollyには、AWSにサインアップしてから最初の12ヶ月間利用できる無料利用枠が設けられています。これにより、本格的な導入前にサービスの品質や機能を十分にテストすることが可能です。無料利用枠の内容は、音声の種類(エンジン)によって異なります。

音声エンジン 無料利用枠(月間) 備考
標準音声 (Standard) 500万文字 AWSアカウント作成後12ヶ月間
ニューラル音声 (Neural) 100万文字 AWSアカウント作成後12ヶ月間

例えば、標準音声を使えば、毎月約23日間、24時間音声を生成し続けることができるほどのボリュームです。無料利用枠を超えるリクエストがあった場合は、超えた分だけ通常の従量課金が発生します。

生成した音声をMP3ファイルとして保存できますか

はい、生成した音声はMP3形式のファイルとして簡単に保存できます。AWSマネジメントコンソール上でテキストを入力し、音声を生成した後、「ダウンロード」ボタンをクリックするだけでMP3ファイルがダウンロードされます。

MP3以外にも、以下の主要な音声ファイル形式に対応しており、用途に応じて最適なフォーマットを選択できます。

  • OGG (Vorbis): Webでのストリーミング再生に適したオープンソースのフォーマットです。
  • PCM: 非圧縮の音声データで、電話システム(IVR)など高い音質が求められる場面で利用されます。

これらの音声ファイルは追加料金なしで保存・再配信できるため、一度生成した音声を様々なメディアで繰り返し利用することが可能です。

Amazon Pollyと他の音声合成サービスとの違いは何ですか

Amazon Pollyは多くの優れた音声合成サービスの一つですが、他サービスと比較した場合、特に以下の点で強みがあります。

  • AWSエコシステムとの高い親和性
    最大の強みは、他のAWSサービスとの連携が非常にスムーズな点です。例えば、サーバーレスコンピューティングの「AWS Lambda」と組み合わせることで、テキストがアップロードされたら自動で音声ファイルを生成して「Amazon S3」に保存するといったワークフローを簡単に構築できます。クラウド型コンタクトセンターの「Amazon Connect」では、Pollyが標準の音声合成エンジンとして採用されています。
  • コストパフォーマンスと明確な料金体系
    従量課金制で、処理した文字数に基づいて料金が計算されるため、スモールスタートが可能です。generousな無料利用枠も用意されており、開発やテスト段階でのコストを抑えることができます。
  • 高品質なニューラル音声
    ディープラーニング技術を活用したニューラルTTS(テキスト読み上げ)エンジンにより、人間が話しているかのような極めて自然で表現力豊かな音声を生成できます。これは、ナレーションやオーディオブックなど、リスナーのエンゲージメントが重要なコンテンツにおいて大きな利点となります。

一方で、Google Cloud Text-to-Speechは対応言語の多さ、Microsoft Azure Cognitive Services Speech Servicesは音声の感情表現の豊かさなどにそれぞれ特徴があります。どのサービスが最適かは、プロジェクトの要件(必要な言語、求める音声品質、既存のシステム環境など)によって異なりますので、それぞれの無料利用枠などを活用して比較検討することをお勧めします。

まとめ

本記事では、AWSが提供するテキスト読み上げサービス「Amazon Polly」について、その概要から具体的な始め方、料金プラン、そして業務を効率化する5つの活用事例までを網羅的に解説しました。Amazon Pollyが、いかに手軽に、そして高品質な音声を生成できるサービスであるかをご理解いただけたのではないでしょうか。

この記事の重要なポイントを以下にまとめます。

  • 簡単な操作で高品質な音声を生成:Amazon Pollyは、テキストを入力するだけで、人間が話しているかのような自然で滑らかな音声を生成できるクラウドサービスです。
  • 初心者でも安心のスタート:AWSアカウントがあれば、直感的なマネジメントコンソールからすぐに利用を開始できます。豊富な無料利用枠が用意されているため、コストを気にせず気軽に試すことが可能です。
  • 多彩なカスタマイズ機能:ニューラルTTSによる表現力豊かな音声や、SSMLを使った読み方・間・イントネーションの細かな調整、レキシコンによる専門用語の登録など、高度なカスタマイズにも対応しています。
  • 幅広いビジネス活用:動画のナレーションやeラーニング教材の作成、コールセンターの自動音声応答、Webサイトのアクセシビリティ向上など、アイデア次第で様々なシーンでの活用が期待できます。生成した音声は商用利用も可能です。

音声コンテンツの需要が高まる現代において、Amazon Pollyはコンテンツの価値を高め、新たなユーザー体験を創出するための強力なツールとなります。まずは無料利用枠を活用して、その驚くほど自然な音声品質をご自身で体験してみてください。この記事を参考に、あなたのビジネスやプロジェクトに「声」の力を加えてみましょう。

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