
AWSの生成AIは、業務効率化から知識継承まで幅広い課題を解決し、企業の競争力を向上させるのに大いに役立ちます。本記事では、小売・製造・化学などさまざまな業界で成果を上げた5社の事例とともに、導入を成功へ導くためのポイントをわかりやすく解説します。
AWSの生成AIソリューション活用事例
企業が競争力を高めるうえで、生成AIの活用がますます注目されています。AWSが提供する生成AIは、業種や規模を問わず、さまざまな業務課題の解決に有効です。ここでは、AWSの生成AIを導入した企業の活用事例を紹介します。
【小売業】株式会社大丸松坂屋百貨店
株式会社大丸松坂屋百貨店は、Amazon Connect(クラウド型コンタクトセンターサービス)と生成AIを組み合わせ、コンタクトセンターの通話内容を自動で要約する仕組みを導入しました。これにより、これまでオペレーターが手作業で行っていた後処理業務が大幅に削減され、作業負荷が軽くなっています。AIが通話内容を高い精度で整理するため、担当者の経験値に左右されない均一な記録が残せるようになり、管理部門も顧客の声を迅速かつ正確に把握できるようになりました。
繁忙期には、1件あたり約10秒の処理短縮を達成しました。繁忙期における受電数が月間約1万件であることを踏まえると、月換算では約28時間の業務時間削減です。また、こうした業務効率化は、単なる時間短縮にとどまらず、応答率の向上という顧客満足度に直結する成果にも結びつきました。同社の取り組みは、AIを活用した次世代型コンタクトセンター運営の好例です。
【電気機器】三菱電機エンジニアリング株式会社
三菱電機エンジニアリング株式会社では、Amazon Bedrock(生成AI基盤サービス)を中核に据えたRAG(検索拡張生成)システムを3ヵ月で構築し、これまで部門ごとに散在していた設計資料や技術ノウハウを横断的に検索できる環境を整えました。AWSの閉域ネットワーク環境でデータを扱うことで、外部への情報漏洩リスクを抑えつつ、社内独自のドキュメントをもとにした高精度な回答生成を実現しています。
短期間で構築したシステムでしたが、資料検索に費やしていた時間は大幅に削減され、業務効率は目に見えて向上しました。熟練技術者が培ってきたノウハウを若手へ自然に共有できる仕組みが確立されたことで、技術伝承の基盤としても効果を発揮しています。生成AIを活用したナレッジ活用の先進的な取り組みとして、今後の展開にも期待が高まっています。
【ソフトウェア・通信】株式会社東日本計算センター
株式会社東日本計算センターは、Amazon BedrockとAmazon Kendra(企業向け検索サービス)を組み合わせたRAG構成を活用し、オンプレミス環境に散在していた社内文書を高速に検索・要約できるアプリケーションを、わずか3ヵ月という短期間で開発しました。
経営層を対象としたPoC(概念実証)を実施したのも特徴的です。経営トップ自らが生成AIの有効性を直接確認することで、将来の事業展開に向けた判断材料や技術的知見を得ることができました。
加えて、Amazon Auroraを用いたベクトル検索の導入も検討しており、検索精度の向上やアプリケーション全体の機能強化に向けた取り組みを進めています。これらの取り組みで得た知見を基盤として、クラウド移行と生成AIアプリを組み合わせた外販モデルの構築にも挑戦しており、新たなビジネス創出に向けた活動が本格的に動き始めています。
【化学】ZACROS株式会社
ZACROS株式会社では、Amazon BedrockとGenerative AI Use Cases (以下GenU:AWSが公開する生成AIのオープンソースサンプルアプリケーション)を活用し、全社員が安全に利用できる生成AI基盤を低コストで構築しています。従来のSaaS型サービスでは、全社展開に伴う費用が大きな負担となっていましたが、オープンソースのGenUを採用することでその課題を解消しました。
また、サーバーワークスの支援により、RAGの展開に必要なGoogle Workspaceとの連携を通じて、アクセス権制御の仕組みを実装しています。さらに、UI(ユーザーインターフェイス)の改善や利用効果を可視化する独自機能も追加し、使いやすさと統制を両立させています。
これらの取り組みにより、利便性とガバナンスを兼ね備えたAI環境を短期間で整備することができました。導入から4ヵ月の集計で、1人あたり年間25日分の業務時間削減に相当する効果が確認され、ユーザーの98%が高く評価しています。生成AIの活用によって、社内のITリテラシー向上と業務効率化が着実に進んでいます。
【化学】CHEMIPAZ株式会社
CHEMIPAZ株式会社は、Amazon Bedrockを活用してRAG基盤を構築し、研究所に蓄積された専門知識の継承と社内規程検索の効率化を実現しました。これにより、ベテラン研究員のノウハウを検索可能な形で保存することができました。また、総務部では利用者の約7割が、問い合わせ対応の負荷が減ったと回答するなど、業務改善の効果が明確に表れています。
さらに、Microsoft Entra ID(旧Azure AD)とAmazon Cognito(ユーザー認証・ID管理サービス)を組み合わせた権限管理や、AWS DataSync(大容量データの自動転送サービス)によるデータ移行を導入しました。これにより、化学メーカー特有の機密情報の保護や大容量データの管理の課題を解決しました。
加えて、サーバーワークスの「RAG運用支援」を活用し、精度改善を毎月続けられる体制を整備しています。導入後も利用件数とアクティブユーザー数は拡大しており、活用の定着化が進んでいます。
成功企業に学ぶAWSの生成AI導入のポイント
ここでは、AWSを活用して生成AIを導入し、成果を上げている企業に共通するポイントについて解説します。
「GenU」などの既存サンプル活用でコスト削減
AWSが提供するオープンソースの生成AIサンプルアプリケーション「GenU」を活用すれば、独自アプリをゼロから開発する場合に比べて負担を大幅に軽減できます。株式会社東日本計算センターやZACROS株式会社の事例が示すように、既存サンプルを基盤にするだけで開発スピードが向上し、検証段階から本番運用までのコストも抑えられます。GenUはサーバーレス構成のため小規模に始めやすく、利用量に応じた従量課金で無駄な投資を避けられる点も魅力です。
加えて、GenUに含まれるユースケースビルダーを使えば、Reactの知識がなくても、ノーコードで業務特化のユースケースを追加できます。社内ニーズに合わせたアプリを短期間で整備できるため、生成AI活用の幅を広げられます。豊富なサンプルを参考にしながら、自社向けの生成AI基盤を効率よく構築できることが、GenUの大きな強みです。
厳密なアクセス制御とセキュリティ対策
企業の情報資産を守るには、適切なアクセス制御が欠かせません。CHEMIPAZ株式会社やZACROS株式会社が採用するフォルダ単位の権限設定や、Microsoft Entra ID連携は、部署ごとに閲覧範囲を明確に分けるための基盤です。権限のない社員が機密情報にアクセスすることを防ぎ、情報漏洩や改ざん、人為的ミスによる削除・移動といったリスクを軽減します。
さらに、Amazon Bedrockを利用すれば、入力したプロンプトや社内データがAIモデルの学習に再利用されないため、生成AI活用時の安全性も確保できます。また、RAGと認証を組み合わせ、ユーザー権限に応じて必要な情報だけを返す仕組みを整える必要もあります。
こうしたアクセス制御とセキュリティ対策が整った環境であれば、管理者は運用負荷を抑えつつ、安全性の高い情報管理の実現が可能です。
専門知識を持つパートナーとの伴走
大容量データの移行や高度なベクトル検索の最適化といった、自社だけでは解決が難しい技術課題も、サーバーワークスのような専門パートナーと組むことで着実に解決が可能です。
また、生成AIは導入して終わりではなく、精度検証やモデル更新を継続的に行うことが欠かせない領域です。専門家の伴走があれば、急速に変化する技術に対応しつつ、改善サイクルを安定して回し続けられます。
加えて、インフラ管理を専門パートナーに任せることで、情報システム部門は日々の運用負荷から解放され、プロンプト設計やUX向上などの業務に集中できる環境が整います。
まとめ
AWSによる生成AIの活用は、小売・製造・化学など幅広い業界で、業務効率化や知識継承に大きな成果をもたらしています。各社はAmazon BedrockやGenUを活用し、RAGの構築、アクセス制御の強化、短期間でのアプリ開発など、自社の目的に応じて導入を進めることができました。また、専門パートナーの支援を受けることで、精度向上や大容量データ移行といった高度な技術課題にも対応しています。










