AIで自動化する「ものづくり」、製造業の事例研究

AIで自動化する「ものづくり」、製造業の事例研究

製造業は、高度成長期の時代から日本を牽引してきた重要な産業です。しかし、熟練工の高齢化にしたがって、事業継承の問題が浮上するようになりました。若い労働力の確保が難しく、人材不足が深刻です。このような現状を打破するために、産業ロボットの導入とAI(人工知能)の活用が注目されています。

ここでは、製造業の問題を整理し、ものづくりを変えるAIを活用した自動化に焦点をあてて事例を紹介します。

製造業が抱える人材の問題

人材不足を解消するためには、新人を採用することが直接的な解決方法ですが、人材教育には時間がかかります。職場環境によっては、人材が定着しないリスクもあります。そこで熟練工の仕事のノウハウをロボットに代替させる機械化、人工知能でサポートする自動化が検討されるようになりました。

先端テクノロジーを導入するときは、人間特有の問題を整理し、ロボットや人工知能に代替可能かどうか検証することが必要です。まず製造業の現場で生じる問題のうち、人工知能に代替できる問題を3つピックアップします。

人間だからこそ起きる「ミス」

顧客と信頼を築く上で、製品の品質維持は重要です。しかし、複雑な部品で構成された製品の検品作業は、チェック漏れのミスが生じるとともに、手間と時間がかかります。従来は、作業を熟知した先輩社員が、新人を見守りながら指導していました。ところが、人材不足の現在では、監督や監視のできる先輩社員を配置する余裕がないことが現状です。

ミスが生じた場合、業務の改善やアフターフォロー、クレーム対策にもコストが発生します。最小限の人材リソースを活用して、ミスを発生させない仕組みが必要になります。

人間だからこそ起きる「うっかり」

工場など製造業の現場では、働く人の安全を最優先にすべきです。安全な職場は人材の採用や離職を防ぐ効果があります。また、新型コロナウイルスの感染拡大により、職場における従業員の健康が重視されるようになりました。

しかし、人間である以上「うっかり」した不注意が生じます。不注意の生じる要因はさまざまですが、睡眠不足や考えごとなど、体調や精神状態から引き起こされる場合が少なくありません。だからといって仕方がないと片付けられる問題ではなく、ぼんやりによる過ちは、安全を損なう大きな事故に発展するリスクがあります。

人間だからこそ起きる「ばらつき」

ベテランの勘に頼ってきた現場では、新人に勘を伝承するのは困難です。人間の勘は、いわゆる「暗黙知」であり、どんなに熟練であっても数値化や言葉化ができない内容を含んでいます。

この勘を「形式知」に変える必要があります。業務の標準化として重視され続けてきたことですが、機械や人工知能のために標準化することが重要です。

一方で複数の新人に指導しても、人間の理解度には差があります。理解していても即座に的確な作業ができない場合もあるでしょう。加えて、ひとりの先輩社員が、手取り足取り指導できる新人の数は限られるため、すべての新人を均一のレベルに育成するには、時間や手間がかかります。外国人を採用する場合には、言語の壁もあります。

製造業では、作業の品質を維持することが、製品の品質につながります。作業のばらつきを解消する方法を確立することは重要な経営課題です。

AIで解決可能な製造業の問題

「ミス」「うっかり」「ばらつき」の解決には、人材教育を徹底するとともに、AIのサポートを導入すると効果的です。AIは人材と競合する存在ではありません。むしろ、従業員を助ける「頼もしい助手」と考えると、その能力をフルに活用できます。それぞれ活用ヒントを挙げていきましょう。

「ミス」を回避する検品と監視

検品作業の見落とし、部品の取り付け忘れなどのミスは、AIの画像認識により自動的に検知できます。画像認識はAIの中でも実用化が進んでいる分野で、深層学習(ディープラーニング)という技術を使い、大量の画像データから正常と異常の違いを学習して、検品の効率化と精度向上を実現します。

「うっかり」を回避する安全運転の支援システム

製造業では無人搬送車(Automatic Guided Vehicle、AGV)の導入が進んでいますが、フォークリフトで資材を運搬している工場も多いでしょう。安全対策は常に事故が発生する心構えで行うことが大切です。立入禁止区域に入ってしまったり、搬送時に一時停止を忘れたり、あらゆる「うっかり」による状況を想定しておく必要があります。

AIの監視システムを利用すると、ヘルメットや作業服などを認識して警告を発することが可能になります。これが、ただ見守るだけの監視カメラと異なる点であり、監視するだけでなく従業員に注意を促すことで、事故を未然に防ぎます。ズボンなど身体の一部や体格の違いがあっても人間を認識します。工場のレイアウト変更にも柔軟に対応可能です。

「ばらつき」を回避するAIによる検品や検査

AIが人間よりも優れているのは、疲労しない、常に一定の品質を維持する、人間の目では見落としがちな細部の異常を発見できる点です。製品の外観検査では、微妙な傷や形状不良など、人間の目では識別できない異常を検知します。検査員の負荷を削減し、検査の精度を向上することが可能になります。

さまざまな製造業の現場で、既にAIが導入されています。事例を取り上げます。

事例研究1. AIで検品作業のミス、ばらつきを減らす

目視による人間のチェックはミスが生じやすく、単純作業であることから担当者を疲労させますが、AIの自動化に向いている分野です。AIの深層学習という技術を活用します。

製品の検品作業におけるミスを軽減、精度を向上

デジタルカメラを製造している精密機器メーカーでは、本体のほか、バッテリー、充電器、ストラップをパッケージに同梱していました。同梱物のチェックを目視で行っていましたが、単調な作業のために担当者が見落とすことがあり、疲労しやすいことも課題でした。

そこでAIの画像認識を活用して検品を自動化しました。同梱物の画像を深層学習させることで、位置、形状、大きさ、色、個数などを瞬時にAIが判別できるようになります。品番や型番の記載、バーコードも、画像から文字を識別してデータベースと照合可能です。

検品作業を自動化することにより、人手不足の解消、検品精度の向上、検品時間の短縮といった効果が得られました。クレームの減少にも貢献しています。

事例研究2. AIで作業車などの運転をサポート

続いて、現場で利用する作業車の運転をサポートし、安全の確保や最適なオペレーションを自動化した事例を取り上げます。

車載カメラで標識や人間を認識して通知や警告

株式会社豊田自動織機では、工場を走行するフォークリフトの前方に設置された車載カメラを使い、AIによって人やサインボードをリアルタイムで運転者に知らせる自動化システムを導入しました。画像認識の技術を活用しています。

車載カメラから、サインボードに書かれた「STOP」や「SLOW」の標識を認識し、必要に合わせて通知や警告を行います。工場のレイアウト変更や、サインボードを変えても対応ができるため、構築したシステムは継続して利用可能です。

ホイールローダーの掘削方法を熟練レベルに最適化

ある建機メーカーが導入したのは、AIの機械学習により、ホイールローダーの最適な掘削方法を予測するシステムです。

ホイールローダーが砂利を運ぶときのブームとクランクの角度を検証し、エンジンの回転数、所要時間など9つの変数から結果をAIで予測します。作業データをフィードバックさせ、決定係数0.96を超える高い予測精度を得られました。

この結果から、熟練の作業者に匹敵する効率的なオペレーションを導き出し、作業時間を短縮すると同時に、燃費コストの削減を実現しました。

まとめ

「機械には任せられない」という熟練のプライドは尊重すべきです。しかし、次世代と事業の継続性を考慮するのであれば、AIによって解決できる問題が数多くあります。仕事の煩わしさの軽減はもちろん、顧客の信頼を得るためにもAIの導入を検討すべきです。

MicrosoftのクラウドサービスAzureは、製造業の抱えるさまざまな人材に関する問題を解決するために、先進的なAIのサービスを短期間で実用可能にします。

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