クラウド移行(インフラ・DB)

SAP ソリューション「クラウド移行時」のポイント

近年、ERPシステムをクラウド環境へと移行する企業が増加傾向にあります。特に2027年にメインストリームサポートが終了するSAP社のSAP ERPを利用している企業は、システム環境の刷新が喫緊の経営課題といえるでしょう。そこで、本記事ではSAPをクラウドへと移行する際のポイントについて解説します。

SAP ソリューション「クラウド移行時」のポイント

クラウド移行 まるわかりガイド

SAPクラウドプラットフォームの種類

SAP社は企業の基幹情報を統合管理するERPシステムのベンダーとして世界トップシェアを誇る企業です。1973年に世界初となるERPシステム「R/1」をリリースし、それ以降も「R/2」「R/3」「SAP ERP」「SAP HANA」とバージョンアップを繰り返してきました。SAP社はオンプレミス型のERPシステムに定評のある企業でしたが、時代の潮流はクラウドファーストへと進んでいることもあり、クラウド市場にも参入しています。SAP社の代表的なクラウドソリューションとして挙げられるのが「SAP S/4HANA Cloud」と「SAP Cloud Platform」の2つです。

SAP S/4HANA Cloudは企業の基幹情報を統合管理するクラウド型のERPシステムです。既存ERPシステムのクラウド化やSAPのクラウド移行を検討している企業であれば、SAP S/4HANA Cloudが主な選択肢となるでしょう。SAP Cloud Platformは、SAP社の製品を拡張するアプリケーション開発用のプラットフォームです。ERPシステムとして運用するのではなく、SAP社のオンプレミスまたはクラウド製品を拡張・連携するためのソリューションといえます。ここからはSAP S/4HANA CloudとSAP Cloud Platformの特長について詳しく見ていきましょう。

SAP S/4HANA Cloud

SAP社が提供しているERPシステムの主力製品であるSAP S/4HANAはオンプレミス版とクラウド版のサービス形態があります。SAP S/4HANA Cloudはクラウド型のERPシステムとして提供されている製品です。SAP S/4HANAは、SAP HANAを標準プラットフォームにした第4世代のERPシステムであり、2015年にリリースされました。そして、その翌年の2016にSaaS型のクラウドサービスとしてリリースされたのがSAP S/4HANA Cloudです。

SAP S/4HANA Cloudのサービス形態は、さらにシングルテナント型の「extended edition」と、マルチテナント型の「essentials edition」の2つに細分化されます。シングルテナント型のextended editionは、自社占有のクラウド環境を構築してシステムを利用するプラベートクラウドと呼ばれるサービス形態です。独自のセキュリティポリシーを適用したり、オンプレミス型のようにシステムを自由に設計したりといった柔軟性の高さが最大の特長です。

マルチテナント型のessentials editionは、複数のユーザーがリソースを共有する仕組みとなっており、いわゆるパブリッククラウドと呼ばれるサービス形態を指します。複数のユーザーがリソースを共有するため、セキュリティ面にやや不安があるものの、シングルテナント型よりもコストを抑えられるという点が大きなメリットです。クラウドサービスの基本形態は、このマルチテナント型のパブリッククラウドが多い傾向にあります。

SAP Cloud Platform

SAP Cloud Platformは、アプリケーションの開発や拡張を目的としたPaaS型クラウドプラットフォームとして2013年にリリースされました。先述したように、SAP Cloud PlatformはERPシステムではなく、アプリケーション開発用のプラットフォームです。開発したアプリケーションとSAP社のさまざまな製品やシステムと連携させたり、オンプレミス製品をクラウド環境で拡張したりと、システムの開発・拡張・結合の土台となるソリューションといえるでしょう。

現代の企業経営において大きな課題のひとつがビッグデータの活用です。IT技術の進歩によって情報爆発時代となり、企業が生み出す情報量は指数関数的に増大しています。このような社会背景のなかで企業が競争優位性を確立するためには、膨大な経営データの活用が不可欠です。SAP Cloud Platformはビッグデータ分析や機械学習、あるいはIoTなど数々のサービスを利用したアプリケーション開発が可能です。たとえば、自社のシステム環境や経営戦略に最適化されたアプリケーションを開発し、既存のシステムに拡張・結合できます。

SAPクラウドソリューション選択のポイント

ITソリューションの選定は企業の未来を左右するといっても過言ではありません。ここでは、SAP社のクラウドソリューションを選ぶ上で重要となるポイントについて解説します。

カスタマイズ性

クラウドサービスはオンプレミス型のシステムと違い、サーバーやネットワーク機器、それらを管理する施設などが不要なため、初期費用や運用コストの大幅な削減につながる点が大きなメリットです。しかし、ベンダーが提供するクラウドサービスを利用するという性質上、オンプレミス型と比較するとカスタマイズ性に劣ります。たとえば、SAP S/4HANA Cloudの導入や移行を検討している場合、カスタマイズ性を求めるのならマルチテナント型のessentials editionではなく、シングルテナント型のextended editionが適切といえるでしょう。

オンプレミス型と同等のカスタマイズ性をクラウド型のERPシステムに求めるのなら、「HANA Enterprise Cloud」が最も適した選択といえます。SAP HANA Enterprise Cloudは、PaaS型のプラベートクラウドサービスで、SAP社の製品をベースとしたERPシステムのプラットフォームです。先述したSAP Cloud Platformがクラウドネイティブのアプリケーション開発に特化したプラットフォームであるのに対し、SAP HANA Enterprise CloudはERPシステムの運用に特化したプラットフォームといえます。

ライセンスの違い

ソリューションのライセンスによって利用できるシステムが異なります。たとえば、SAP HANA Enterprise CloudはBYOL+サブスクリプションというライセンスで提供されるサービスです。一方、SAP S/4HANA CloudはSaaS型のサブスクリプションモデルとして提供されます。

システム管理責任

ITソリューションを導入する場合、システムの管理責任がどこにあるのかという点は非常に重要なテーマです。たとえば、SAP S/4HANA Cloudを導入するケースを想定してみましょう。複数のユーザーでリソースを共有するマルチテナント型のessentials editionであれば、システムの管理責任はベンダーであるSAP社にあります。しかし、占有のクラウド環境で運用するシングルテナント型のextended editionの場合は、自社とSAP社それぞれにシステムの管理責任があるため、注意が必要です。

移行ルート

製品によってオンプレミス型からクラウド型へとシステム環境を移行するルートが異なります。たとえば、SaaS型のSAP S/4HANA Cloudを導入する場合であれば、データやアプリケーションなどを新たに実装するため、ユーザー側で行う作業はほぼ皆無といえるでしょう。しかし、SAP Cloud PlatformのようなPaaS型のソリューションの場合は、新たにシステムを実装するだけでなく、データやアプリケーションなど一部データの選択的移行が必要です。

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まとめ

ERPシステムのベンダーとしてトップシェアを誇るSAP社は数多くのITソリューションを提供しています。ITソリューションの選定は企業の未来を大きく左右するため、自社に適した製品を選ぶ必要があるでしょう。自社の環境を踏まえた上で、クラウド移行やシステムの刷新に取り組んでください。
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