シンギュラリティとは?2045年の未来と人工知能
AI、機械学習

シンギュラリティとは?2045年の未来と人工知能

「シンギュラリティ(Singularity)」の本来の意味は「特異点」です。第3次の人工知能ブームと技術革新を背景に、人工知能(AI)が人間を超える能力を持って世界が著しく変化する「技術特異点」の意味で使われるようになりました。

ここでは、シンギュラリティとは何かという基本的な知識を解説するとともに、シンギュラリティによって世界はどのように変わるのか、特に「2045年問題」とは何か、そもそもシンギュラリティは来るのか来ないのかというテーマを取り上げます。

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シンギュラリティとは何か?

「特異点」を意味するシンギュラリティは、もともとは人工知能の分野に限った用語ではありませんでした。数学や物理学で使われ、文化人類学や人文科学においても「文化的特異点」として用いられていた言葉です。

数学や物理学における特異点とは、ある定められた基準が適用できなくなる点を呼びます。たとえばブラックホールには重力の特異点があると考えられています。ブラックホールの中心に向かうと、物質の密度が無限大になる特異点が発生するということです。

現代コンピュータの父であるジョン・フォン・ノイマンは、1960年代から特異点という言葉を使っていました。そして、世界的な発明家であり未来学者のレイ・カーツワイルは、2005年に著書『ポスト・ヒューマン誕生 コンピュータが人類の知性を超えるとき(原題:THE SINGULARITY IS NEAR ; WHEN HUMANS TRANSCEND BIOLOGY)』で、人工知能と人間が融合して進化する「技術的特異点」をシンギュラリティと呼びました。

レイ・カーツワイルの主張は、当初はどちらかといえば見向きされませんでした。脚光を浴びるようになったのは、2013年頃からになります。ディープラーニングの登場によって第3次の人工知能ブームが起こるとともに、シンギュラリティは注目されるようになりました。

まずレイ・カーツワイルの著作をもとに、なぜ技術の急速な変化は起こるのか、彼の主張するシンギュラリティとは何かということを整理します。

なぜシンギュラリティは起きるのか、ムーアの法則と収穫加速の法則

シンギュラリティが起きる背景として、レイ・カーツワイルは2つの法則を著作で取り上げています。第一に「ムーアの法則」、第二に「収穫加速の法則」です。

ムーアの法則は、「半導体の集積率は18~24か月でおよそ2倍になる」として知られています。インテルの創業者のひとり、ゴードン・ムーアが1965年に論文で発表しました。経験から導き出された法則で、実際にムーアの法則通りに半導体技術は進歩してきました。

しかしながら、ムーアの法則が示したトレンドは今後も続くことを支持する研究者がいる一方で、終焉が指摘されています。レイ・カーツワイルは、この法則に代わって、彼が独自に考え出した「収穫加速の法則」を提唱しました。

収穫加速の法則は、テクノロジーを含む進化のプロセスを考察し、進化によって収穫された複雑な産物が加速度的に生み出されることによって、指数関数的に人間を含む世界全体が成長することをいいます。ムーアの法則の予測を超えて技術革新が大きく進化すると述べています。

レイ・カーツワイルの主張するシンギュラリティとは

重要なことは、レイ・カーツワイルの考えるシンギュラリティは、人工知能の進化だけではないことです。

シンギュラリティというと人工知能ばかりが注目されがちですが、レイ・カーツワイルはバイオテクノロジーとの融合、つまり人工知能が人間の脳や身体と融合することを挙げています。彼が描くシンギュラリティは、病気の克服、不老不死のような人類の限界を超える世界の実現を予測しています。

「特化型人工知能はビジネスに導入されつつあるが、シンギュラリティといっても汎用型人工知能の実現は難しいだろう」という見解をよく耳にするのではないでしょうか。

レイ・カーツワイルの提唱するシンギュラリティは、人類そのものが人工知能と融合する世界です。結果として、ナノボット(血液の中で動き回るロボット)によって身体を自己修復したり、人工知能が自分より能力の上回る人工知能を生み出したり、人類がアップデートした未来図を描いています。

まるでSFのような世界です。しかし、収穫加速の法則によって、このまま技術が進化を続けたら、2045年にシンギュラリティが訪れるだろうと予測しました。シンギュラリティ大学という教育プログラムまで創設しています。

2045年、シンギュラリティで世界はどう変わるか

それではシンギュラリティによってもたらされる2045年の未来は、どのような世界でしょうか。レイ・カーツワイルは3つの革命を挙げています。

GNRによる3つの革命が同時に進行する世界

シンギュラリティで重要になる革命を、レイ・カーツワイルはGNRという3つの頭文字で表しています。「G」は遺伝学(Genetics)、「N」はナノテクノロジー(Nanotechnology)、「R」はロボット工学(Robotics)です。コロナ以前の時代ですが、遺伝学の革命を実現すれば新型ウィルスの脅威にも防衛が可能になると述べています。

彼は人工知能を革命のひとつとして挙げていません。しかし、すべての革命で人工知能の技術が基盤になります。ロボット工学において、レイ・カーツワイルは「強いAI(人間の知能を超える人工知能)」が重要であり、ソフトウェアとハードウェアの両面から変革の必要性を指摘します。

レイ・カーツワイルが著書で何度か繰り返し強調していることは、人間の脳などのリバースエンジニアリングです。これまで人間の脳の仕組みからニューラルネットワーク、さらにディープラーニングに発展させることによって人工知能は飛躍的な進化を遂げました。その意味では、彼の指摘は間違っていません。

また、多数のテクノロジーが絡み合うことで、シナジー(相乗効果)によってシンギュラリティが実現するとします。ナノテクノロジーの分野では、太陽光や水素などエネルギーの側面からも考察を加えています。

2045年の未来とは

既に述べたように、レイ・カーツワイルによるシンギュラリティは、強いAIが産業や社会のあらゆる分野で基盤になり、GNR革命によって人間と人工知能が融合し、あらゆる病気の脅威を克服、不老不死を手に入れた世界です。コンピュータは人間の知性を超え、みずからをアップデートして進化すると考えられています。

2045年問題というと一般的に「人工知能に人間が支配される」「人工知能に仕事が奪われて職を失う」といった現実的な不安がクローズアップされがちです。

しかし、レイ・カーツワイルの主張に関していえば、こうした現実的な考えを超越しています。ぶっとんだ発想といえるでしょう。ただし、技術的な問題、倫理観の問題からなどさまざまな批判があります。彼自身も著作の中でその批判に応えています。

来る、来ない、シンギュラリティの未来

映画の世界では、人工知能をテーマとしたさまざまな作品があります。

『オートマタ』は、人工知能を搭載したロボットが自分で仲間を修復するとともに、次世代のロボットを生み出します。バイオテクノロジーとの融合では『トランセンデンス』は、まさにシンギュラリティの実現がテーマであり、ナノマシンが登場する作品です。『アップグレード』は身体に埋め込まれた人工知能のチップによって主人公は驚異的な能力を得られますが、チップが独自の人格を持ちはじめて、人工知能に翻弄されます。

このような未来を想像することは容易ですが、実際のところシンギュラリティが来るかどうか、またシンギュラリティが人間にとって歓迎すべき未来なのかについては、賛否両論が展開されています。

2014年に、スティーヴン・ホーキング博は、完全な人工知能の実現は人類の終焉を意味する可能性があるとして警鐘を鳴らしました。電気自動車のテスラや宇宙開発のスペースXなどの実績がある経営者イーロン・マスク、マイクロソフト創業者のビル・ゲイツも懐疑的な見解を示しています。人類を脅かす進歩を理解しつつ、ディストピアを回避することが重要かもしれません。

 

まとめ

シンギュラリティが来るかどうかはともかく、人工知能はさまざまな産業で実用化がはじまっています。レイ・カーツワイルの提唱するような、人工知能がみずからの能力を超える人工知能を生み出し、人類と人工知能が融合するシンギュラリティが2045年に到来するかどうかは懐疑的です。しかし、デジタルトランスフォーメーション(DX)の流れの中で、人工知能を基盤として世界が大きく変革することは十分に予測可能です。

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